【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第九章 礼儀を知る人知らない人

74 とりあえず深呼吸  成人

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「か、かがみ、つるま、る……?」
「あれ? うちの名前知っとる感じ? 話が早うて助かるわ。ええっと、蕪木かぶらぎさん? やったっけ?」

 にこにこ笑ったままの鶴丸つるまるが、ずいっと蕪木かぶらぎに近寄った。蕪木かぶらぎの後ろにいた男が、動こうとして止まる。男の真横に那月なつきが立っただけで止まれるんだから、こっちは護衛だったのか。止まれる人で良かった。こんなとこで暴れられて、清さんのお店に何かあったら大変だ。鶴丸つるまるが出てきた時少し驚いてたから、気配読むのは上手じゃないっぽい。

「わが主の名を認識して尚、その姿勢か」

 那月なつきの低い声。蕪木かぶらぎの護衛が震え始めた。蕪木かぶらぎは、は、はは、と笑ってるのか何なのか分からない声を出した。目の前の鶴丸つるまるをじっと見ている。那月なつきの殺気に気付いていなくて、そんなことをしてるのかな。それなら凄い。お客さんたちも、しんと静かになったのに。

「いや、そんな、まさか……」
「頭が高い」
「は。ははっ」

 膝をつこうとする蕪木かぶらぎの腕を掴んだ鶴丸つるまるが、ぐいっとその体を持ち上げた。鶴丸つるまるは、細くて背もそんなに高くないのに力持ちだ。

那月なつき。ここでそれやったら、お客さんも清さんも、皆頭下げんなんなるやろ。包拳礼もせんなんから大変や。こんなんにうちが呼び捨てされて頭きとんはよう分かっとる。うちかて許す気ないで」
「すんません」

 那月なつきが深呼吸して、少しだけ殺気を引っ込めた。

「ほ、包拳礼……?」
「皇族への礼や。皇国へ商売に来とって、知らんとは言わせへんで」
「こう、ぞく」
「ずっといらっしゃるやろ、目の前に」

 はーい。俺です、俺。緋色ひいろもいるよ。ちょっと離れてるけど。

成人なるひとさまへの度重なる不敬も、許す気ありませんので」

 半助はんすけも深呼吸してね。我慢してたの知ってる。

「服に、赤の、模様……? 片目、隻腕、の……」
「ほな、清さん。この人引き受けるわ」
「はい、鶴丸つるまるさま。今後とも、よろしくお願い致します」

 清さんが、深々と頭を下げる。鶴丸つるまる蕪木かぶらぎをがしっと掴んだまま、にこにこと言った。

「こちらこそ、よろしく。産地直送頑張るわ。皆も、これからもよろしくな。この印がついてたらうちの品やで。この印ついてたら本物。分かりやすいやろ。ほな、これからもご贔屓に。あ、頭は下げんでええで。そのままそのまま。騒がせて、すまんかったなあ」
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