1,167 / 1,325
第九章 礼儀を知る人知らない人
124 美味しい匂い 成人
しおりを挟む
「店主、顔を上げろ。連れが迷惑をかけた。入ってよいのか」
「はい、是非!」
人の数は変わらず多い。その上、店から出てきた着物の人が頭を下げたので、なんだなんだと立ち止まる人が出てきた。常陸丸と力丸が警戒を強めている。お忍びだから、目立っては駄目だね。入っていいって言うなら、入らせてもらおう。
「じいじ。入れたね」
良かった良かった。
店の中で待っていてくれたじいじに言うと、じいじも、わははと笑った。
「良かったのう、成人。そこの者、世話になった。足を止めてすまなんだな」
「あ、いえ。うちらはそんな……」
じいじ達くらいの年齢かな? 横に立っていた人達は、じいじに声をかけられて二人でぺこぺこ頭を下げた。
じいじが怖かった?
あ、大丈夫そうだ。
じいじは、声も体も大きくて強いから、初めて会う人には怖がられることが多い。でも、本当は怖くないから、お話したら怖くないって分かってもらえる。もうお話したから、この二人は、じいじが怖くないって分かっているのかもしれない。
「じい様。お忍びっていうなら、ご自分も名乗ったら駄目ですよ」
力丸が、じいじにこそりと言ったのが聞こえた。
お忍びの時は、じいじも名乗っちゃ駄目だったのか。
「うむ、そうじゃな。面目ない。しかしな、力丸。ここに入るために紹介してもらおうと人に頼むのであれば、偽名というのはその者に失礼であろう? 一応、ここだけの話にするつもりであったのだが」
「声が大きいんですよ、声が」
そうだね。じいじの声は大きい。だから、外まで聞こえちゃったんだなあ。
「ははあ、そうであった。成人にも、度々指摘されておったな」
うん。じいじが近くでしゃべると、びっくりする時あるからね。末良が泣いたこともあるし。
「一見断りの店とは知らずに無理を言った、店主。皆も、騒がせたな。詫びに、今ここに居る者らの会計は俺が持つ」
誰も見えない。見えてないんだけど、今、ざわってしたのが分かった。
店の中は、壱臣のやっていたお店みたいに机や椅子がずらっと幾つか並んでいる形じゃなかった。仕切りがたくさんあって区切られていて、食べている人が俺たちから見えなかった。
でも今、ざわってした。耳を澄ませて聞いていた人達がざわざわって。何かいつもと違う話が聞こえたら、真剣に聞いちゃうのは分かる。皆おんなじだ。
緋色が言ったこと、嬉しいことだったんだよね。
さっき、ぺこぺこと頭を下げていた二人が、びっくりして顔を見合わせた後で、にこにこになったから。
「な、なんと、有難く……」
「店主。今更だが、忍びだ」
「ははっ」
着物の人がしようとした包拳礼を、緋色が止めた。
仕切りの向こうが見えないから、どんな食べ物か分からないんだけれど、いい匂いが漂ってくる。
「ご飯食べる」
「美味しかったですよ。ようけ食べてください」
にこにこの二人が、また頭を下げながら言った。
「ありがと」
「いいええ、お役に立てたんなら光栄なんですけど」
すっごくお役に立ちました!
「はい、是非!」
人の数は変わらず多い。その上、店から出てきた着物の人が頭を下げたので、なんだなんだと立ち止まる人が出てきた。常陸丸と力丸が警戒を強めている。お忍びだから、目立っては駄目だね。入っていいって言うなら、入らせてもらおう。
「じいじ。入れたね」
良かった良かった。
店の中で待っていてくれたじいじに言うと、じいじも、わははと笑った。
「良かったのう、成人。そこの者、世話になった。足を止めてすまなんだな」
「あ、いえ。うちらはそんな……」
じいじ達くらいの年齢かな? 横に立っていた人達は、じいじに声をかけられて二人でぺこぺこ頭を下げた。
じいじが怖かった?
あ、大丈夫そうだ。
じいじは、声も体も大きくて強いから、初めて会う人には怖がられることが多い。でも、本当は怖くないから、お話したら怖くないって分かってもらえる。もうお話したから、この二人は、じいじが怖くないって分かっているのかもしれない。
「じい様。お忍びっていうなら、ご自分も名乗ったら駄目ですよ」
力丸が、じいじにこそりと言ったのが聞こえた。
お忍びの時は、じいじも名乗っちゃ駄目だったのか。
「うむ、そうじゃな。面目ない。しかしな、力丸。ここに入るために紹介してもらおうと人に頼むのであれば、偽名というのはその者に失礼であろう? 一応、ここだけの話にするつもりであったのだが」
「声が大きいんですよ、声が」
そうだね。じいじの声は大きい。だから、外まで聞こえちゃったんだなあ。
「ははあ、そうであった。成人にも、度々指摘されておったな」
うん。じいじが近くでしゃべると、びっくりする時あるからね。末良が泣いたこともあるし。
「一見断りの店とは知らずに無理を言った、店主。皆も、騒がせたな。詫びに、今ここに居る者らの会計は俺が持つ」
誰も見えない。見えてないんだけど、今、ざわってしたのが分かった。
店の中は、壱臣のやっていたお店みたいに机や椅子がずらっと幾つか並んでいる形じゃなかった。仕切りがたくさんあって区切られていて、食べている人が俺たちから見えなかった。
でも今、ざわってした。耳を澄ませて聞いていた人達がざわざわって。何かいつもと違う話が聞こえたら、真剣に聞いちゃうのは分かる。皆おんなじだ。
緋色が言ったこと、嬉しいことだったんだよね。
さっき、ぺこぺこと頭を下げていた二人が、びっくりして顔を見合わせた後で、にこにこになったから。
「な、なんと、有難く……」
「店主。今更だが、忍びだ」
「ははっ」
着物の人がしようとした包拳礼を、緋色が止めた。
仕切りの向こうが見えないから、どんな食べ物か分からないんだけれど、いい匂いが漂ってくる。
「ご飯食べる」
「美味しかったですよ。ようけ食べてください」
にこにこの二人が、また頭を下げながら言った。
「ありがと」
「いいええ、お役に立てたんなら光栄なんですけど」
すっごくお役に立ちました!
1,413
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
嫌われ者の長男
りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる