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第十章 されど幸せな日々
45 簡単な仕事なんてなかった 西賀国役人
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簡単な仕事や、と思っとった。西中国から預かる七人の人間を、これからその者らが住み込みで仕事をする場所に届けるだけの、簡単な仕事。住み込みの場所は、城の近くの畑や工場が選ばれとるから、ちょっと案内して置いてくるだけ。
城に近ければ、何か問題が起こった時にすぐに知らせが届くし、すぐに城の誰かが駆け付けられる。そういったことを考えて選ばれた場所やから、行って帰っても、昼飯にはちと早いくらいに終わるかな、と考えとった。
それがまあ甘かった。
まず、七人と聞いとったのが、頼むと引き渡されたんは六人。一人は、来る途中で皇国の緋色殿下と妃殿下へ不敬を働いたことで緋色殿下のお怒りを買い、別の車に乗せられたとの事。何をしたんか、酷く汚れとるから洗てから引き渡すと先方に伝えてくれ、とのことやった。
もう一回行かんなんのか。手間やな……。ま、しゃあない。
そうして、目的の場所へ向かって歩き始めたんやが、これがまあ、この預かった人間らが、ちぃともまともに歩かない。大した荷物を持っとる訳やない。天気は悪くなく足元がぬかるんどる訳でもないというのに、こちらがどんなにゆっくり歩いてもついてこれずに、ひいひい言うとる。
預かる人間が、もともとは西中国のお偉いさんやということは聞いとった。そやけど、こんなに歩けんもんか? お偉いさんと言われても、自分の知っとるお偉いさんしか頭には浮かばんから、何というか、こう、しっかりした動ける人しか思い浮かんどらんかったのは認めるけども。それにしてもや……。
あまりに自分の知らない世界に、ちょっと呆然とする。
けどまあ、こんな人らもおるんやな、と気を取り直した。できんもんは、できん。急にできるようにはならん。しゃあない。
どうしてものんびりとしか進めんから、仕方なくその速度で歩いていく。遅すぎて疲れる。
一人目を引き渡す場所でもう、遅かったな、と言われた。
いや、まあ、と曖昧に返事をして一人引き渡すと、引き渡した人間のくたびれ具合に色々と察してくれたようで、お疲れさんと労われる。
いや、こちらこそ、こんな役に立たなそうな人間を引き渡して申し訳ない、と言いそうになった。そのくらい、誰も彼もが、ただ歩くだけで疲れ果てていた。
西中国へ行かれた殿や奥様、若たちの助けになれるんならこっちは喜んで預かるで、と皆言うてくれたけども、案内しているだけの俺が何か言うのもおかしいけども、何か、すまん。ほんま、ごめん。
騒ぎを起こされるよりは余程ええんかもしれんけど、でも、仕事の手伝いにと渡した人手があまりに役に立たなさそうやと、とても申し訳ない気持ちになってしまった。
そういえば。殿があちらの国の領主になってから、特に騒ぎが起きたとも聞かん。いざという時は、総出で駆けつけるつもりやったから、この人ら、新しい殿なんて認めんと声を上げ拳を振り上げたりはせんかったんやな、殿はすぐ受け入れられたんやな、と何となく不思議に思うとったけど。
こんな体力では何もできんか、とちょっと納得した。
そうして、たくさん時間をかけて引き渡して歩いた。最後の一人を渡したら、昼はすっかり過ぎとった。
「うわ、この調子でもう一回か」
もう一人残っとる。洗った後で、また俺が連れて行かんなんのかあ、とちょっとため息が出たんは許してほしい。
城に近ければ、何か問題が起こった時にすぐに知らせが届くし、すぐに城の誰かが駆け付けられる。そういったことを考えて選ばれた場所やから、行って帰っても、昼飯にはちと早いくらいに終わるかな、と考えとった。
それがまあ甘かった。
まず、七人と聞いとったのが、頼むと引き渡されたんは六人。一人は、来る途中で皇国の緋色殿下と妃殿下へ不敬を働いたことで緋色殿下のお怒りを買い、別の車に乗せられたとの事。何をしたんか、酷く汚れとるから洗てから引き渡すと先方に伝えてくれ、とのことやった。
もう一回行かんなんのか。手間やな……。ま、しゃあない。
そうして、目的の場所へ向かって歩き始めたんやが、これがまあ、この預かった人間らが、ちぃともまともに歩かない。大した荷物を持っとる訳やない。天気は悪くなく足元がぬかるんどる訳でもないというのに、こちらがどんなにゆっくり歩いてもついてこれずに、ひいひい言うとる。
預かる人間が、もともとは西中国のお偉いさんやということは聞いとった。そやけど、こんなに歩けんもんか? お偉いさんと言われても、自分の知っとるお偉いさんしか頭には浮かばんから、何というか、こう、しっかりした動ける人しか思い浮かんどらんかったのは認めるけども。それにしてもや……。
あまりに自分の知らない世界に、ちょっと呆然とする。
けどまあ、こんな人らもおるんやな、と気を取り直した。できんもんは、できん。急にできるようにはならん。しゃあない。
どうしてものんびりとしか進めんから、仕方なくその速度で歩いていく。遅すぎて疲れる。
一人目を引き渡す場所でもう、遅かったな、と言われた。
いや、まあ、と曖昧に返事をして一人引き渡すと、引き渡した人間のくたびれ具合に色々と察してくれたようで、お疲れさんと労われる。
いや、こちらこそ、こんな役に立たなそうな人間を引き渡して申し訳ない、と言いそうになった。そのくらい、誰も彼もが、ただ歩くだけで疲れ果てていた。
西中国へ行かれた殿や奥様、若たちの助けになれるんならこっちは喜んで預かるで、と皆言うてくれたけども、案内しているだけの俺が何か言うのもおかしいけども、何か、すまん。ほんま、ごめん。
騒ぎを起こされるよりは余程ええんかもしれんけど、でも、仕事の手伝いにと渡した人手があまりに役に立たなさそうやと、とても申し訳ない気持ちになってしまった。
そういえば。殿があちらの国の領主になってから、特に騒ぎが起きたとも聞かん。いざという時は、総出で駆けつけるつもりやったから、この人ら、新しい殿なんて認めんと声を上げ拳を振り上げたりはせんかったんやな、殿はすぐ受け入れられたんやな、と何となく不思議に思うとったけど。
こんな体力では何もできんか、とちょっと納得した。
そうして、たくさん時間をかけて引き渡して歩いた。最後の一人を渡したら、昼はすっかり過ぎとった。
「うわ、この調子でもう一回か」
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