【本編完結】人形と皇子

かずえ

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第十章 されど幸せな日々

71 鍛錬所の引継ぎ  成人

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成人なるひと殿下」
「あれ? 半助はんすけ

 鍛錬所では半助はんすけが待っていた。

荘重むらしげさまから使いが参りまして、昼食後に城の鍛錬所に来るように、と」
「そっか。壱臣いちおみは?」

 鍛錬所に壱臣いちおみの姿はない。まあ、壱臣いちおみが来ても危ないだけなんだけどね。壱臣いちおみは、人の気配なんてちっとも分からないし、飛んでくる人や武器を避けることもできない。人や物が目の前に見えていても、考え事をしていたら気付かない時もある。……よく今まで無事だったなあ、壱臣いちおみ。守り切ったげんさんと半助はんすけは本当にすごい。
 
「厨房に置いてきました。本人も楽しいやろし、村次むらつぐがおるんで安心です」
「うん」

 村次むらつぐは鍛錬所には呼ばれなかったか。壱臣いちおみが来たなら厨房に村次むらつぐがいてくれた方が安心だもんな。
 つごもりのところの二人、まゆ三十日みそかはもう村次むらつぐに捕まってしまっているし、少し鍛えてから村次むらつぐが呼ばれるのかもしれない。
 俺の足に亀吉かめきちがつかまって、ほけっと半助はんすけを見ていた。半助はあまり城には来ていないから、顔や気配を覚えていないかな。半助は、気配をあまり感じさせないし。
 後ろから付いてきていたつごもりたちが、こんにちは、と半助に挨拶をした。

「こんにちは、初めまして。成人なるひと殿下の護衛を務めます、半助と申します」
「初めまして。西賀国から参りました。各務原かがみはらつごもり小望こもちまゆ三十日みそかです。よろしくお願いします」

 つごもりが代表して全員の名前を言って頭を下げた。

西賀さいか国から。なるほど……」

 頷く半助の右手を、皆見ている。

「護衛……?」
「皇族の護衛?」
「片腕で……?」

 ああ、それね。半助は俺と違って全部ない。右の袖はいつも、中身なくひらひら揺れている。

「強いよ?」

 片腕なんてなくても戦えるし、何でもできる。鍛えなおした半助は本当にすごい。ちょっとうらやましい。俺は内臓も傷んでいるから鍛えなおせなかった。でも、気配を探ったり、片目だけど目で見ることはできるから、その辺は衰えないようにしたい。相手の力を利用してひっくり返す技も少し覚えたし、西賀さいか国や西中さいちゅう国にきて本当に良かった。

「強いんは分かります」
「それが分かれば、まずは上々」
「あ、じや」

 つごもりたちは、すぐ側に現れたじいやから、ざっと距離を取った。亀吉は相変わらず気付くのが早い。

「急に現れるんは心臓に悪いです」
「こ、こ、怖いぃ」
「気配、気配が」
「いやいや、なかなか悪くない。さて、半助。急な呼び出しですまんな。少し稽古をつけてやってくれ」
「了解いたしました」

 半助はすたすたと鍛錬所の真ん中に歩いて立つ。

「デートの予定をつぶされて少々気が立っとるんで、気合い入れて来てください」

 あちゃー。ごめん。

 
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