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第一部(侯爵家編)
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「お姉様?」
「お母様は第一王子殿下の婚約者になるようにと……だけどね、私……第二王子殿下が、好きなの」
「まぁ!」
可愛い!! ティーンエイジャーの恋の話が聞けるなんて! 人生巻き戻ってみるものね! なんて、大盛り上がりの内心を隠して続きを促す。
「第二王子殿下とお会いになったことがあるのですか?」
「ないわ。でも姿絵で見てとても素敵だって思って……」
可愛い!!! なんて可愛いの、お姉様!!
もじもじと恥じらっている姿なんてもう、えぇ!? やだ! 抱き締めたい衝動に駆られるわ!!
「第二王子殿下狙いで、行っちゃましょう……!」
「えっ」
「桃色で、行きましょう!!」
戸惑うお姉様を置きざりにして、私とデザイナーが桃色で結託した。この桃色の布にはどの布が合うかしらねと話を進めていく。
「で、でもお母様が……」
「第一王子も第二王子も変わりませんよ。どちらも王族です」
「そうだけれど、でも」
「でももだってもありませんよ。好きな方がいるのなら、好きな方と結婚するのが一番です!」
「でも私は貴族の娘で、政略結婚は義務で」
でもでもでもでも言っているお姉様に、何て言えば奮起してもらえるかしらと考えていたら、デザイナーが控えめに手を挙げた。
「どうぞ」
お姉様が発言を促す。
「これをお伝えするのはあまり褒められたことではありません。ですがこれも私の処世術、営業の一種として捉えていただければと」
「えぇ、分かったわ」
「実は近頃、青系統の布がよく売れている傾向にあります。多くの衣裳店が青いドレスを受注しているのではないかと推測します。スタングロム侯爵夫人と同じ考えのご夫人方が多くいらっしゃるのではないかと……」
「つまり! 戦略として青を避けましょう! ということですわね!」
「えっ?」
「どちらのお家も第一王子殿下の瞳の色を意識して青のドレスを準備しているのです。そこで青青青の中に可憐な桃色! 間違いなくお姉様が目立ちますわ!」
「その通りです!」
そういうわけで……と先程の桃色に合う布選びに戻る私とデザイナー。
青のドレスにしろと言ったお母様の言葉に逆らって別の色にしたけれど、それは決して第一王子殿下狙いで行くのが嫌なわけではなく、青以外のドレスにすることでお茶会で目立つことができると判断したからです。……という表向きの口実ができたので大手を振って桃色で仕立てましょう。
「あの、本当に桃色に……?」
「はい! とーっても愛らしい印象になって、お姉様の魅力が両殿下に伝わると思います!」
うんうんと頷くデザイナー。気が合うわね、あなた。良い処世術してるじゃないの。
「私がそんな色を着て、変じゃないかしら?」
「全く変じゃありません! 絶対一番可愛いです! そうよね!?」
突っ立っていた二人の侍女に問い掛ける。こいつら絶対お母様に言おうかどうしようか悩んでたわ。青以外のドレスにしていたってチクるつもりだったわ。
「もちろんでございます!」
「とってもお似合いでした!」
「ほら、満場一致です。桃色にしましょう!」
仕立てたドレスが青じゃなく桃色だと知ったら、お母様はどんな反応をするかしら。お姉様の恋の応援にもなり、お母様の不興を買うことにもなり、なんて素晴らしい一石二鳥。
あとはお父様に頼んでこっそり第二王子殿下の瞳の色のアクセサリーでも買っていただこうかしら。え、ちょっと待って、それって名案じゃない? お姉様の中でお父様の株も上げられて一石三鳥になるんじゃない? もしお母様が青い宝石のアクセサリーを用意していたら、またお母様の思惑を潰せて一石四鳥? 私ってば嫌がらせの天才では?
「お母様は第一王子殿下の婚約者になるようにと……だけどね、私……第二王子殿下が、好きなの」
「まぁ!」
可愛い!! ティーンエイジャーの恋の話が聞けるなんて! 人生巻き戻ってみるものね! なんて、大盛り上がりの内心を隠して続きを促す。
「第二王子殿下とお会いになったことがあるのですか?」
「ないわ。でも姿絵で見てとても素敵だって思って……」
可愛い!!! なんて可愛いの、お姉様!!
もじもじと恥じらっている姿なんてもう、えぇ!? やだ! 抱き締めたい衝動に駆られるわ!!
「第二王子殿下狙いで、行っちゃましょう……!」
「えっ」
「桃色で、行きましょう!!」
戸惑うお姉様を置きざりにして、私とデザイナーが桃色で結託した。この桃色の布にはどの布が合うかしらねと話を進めていく。
「で、でもお母様が……」
「第一王子も第二王子も変わりませんよ。どちらも王族です」
「そうだけれど、でも」
「でももだってもありませんよ。好きな方がいるのなら、好きな方と結婚するのが一番です!」
「でも私は貴族の娘で、政略結婚は義務で」
でもでもでもでも言っているお姉様に、何て言えば奮起してもらえるかしらと考えていたら、デザイナーが控えめに手を挙げた。
「どうぞ」
お姉様が発言を促す。
「これをお伝えするのはあまり褒められたことではありません。ですがこれも私の処世術、営業の一種として捉えていただければと」
「えぇ、分かったわ」
「実は近頃、青系統の布がよく売れている傾向にあります。多くの衣裳店が青いドレスを受注しているのではないかと推測します。スタングロム侯爵夫人と同じ考えのご夫人方が多くいらっしゃるのではないかと……」
「つまり! 戦略として青を避けましょう! ということですわね!」
「えっ?」
「どちらのお家も第一王子殿下の瞳の色を意識して青のドレスを準備しているのです。そこで青青青の中に可憐な桃色! 間違いなくお姉様が目立ちますわ!」
「その通りです!」
そういうわけで……と先程の桃色に合う布選びに戻る私とデザイナー。
青のドレスにしろと言ったお母様の言葉に逆らって別の色にしたけれど、それは決して第一王子殿下狙いで行くのが嫌なわけではなく、青以外のドレスにすることでお茶会で目立つことができると判断したからです。……という表向きの口実ができたので大手を振って桃色で仕立てましょう。
「あの、本当に桃色に……?」
「はい! とーっても愛らしい印象になって、お姉様の魅力が両殿下に伝わると思います!」
うんうんと頷くデザイナー。気が合うわね、あなた。良い処世術してるじゃないの。
「私がそんな色を着て、変じゃないかしら?」
「全く変じゃありません! 絶対一番可愛いです! そうよね!?」
突っ立っていた二人の侍女に問い掛ける。こいつら絶対お母様に言おうかどうしようか悩んでたわ。青以外のドレスにしていたってチクるつもりだったわ。
「もちろんでございます!」
「とってもお似合いでした!」
「ほら、満場一致です。桃色にしましょう!」
仕立てたドレスが青じゃなく桃色だと知ったら、お母様はどんな反応をするかしら。お姉様の恋の応援にもなり、お母様の不興を買うことにもなり、なんて素晴らしい一石二鳥。
あとはお父様に頼んでこっそり第二王子殿下の瞳の色のアクセサリーでも買っていただこうかしら。え、ちょっと待って、それって名案じゃない? お姉様の中でお父様の株も上げられて一石三鳥になるんじゃない? もしお母様が青い宝石のアクセサリーを用意していたら、またお母様の思惑を潰せて一石四鳥? 私ってば嫌がらせの天才では?
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