聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~

高井繭来

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【43話】

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※腐臭が致します。
 苦手の方はご注意を!!

「ルーク様、皇太子妃の方とダンスを踊られては如何ですか?」

「……良いのか?」

 少しむくれてルークはサイヒの言葉に答えた。
 自分以外の女と関係を持つなと言う割にはサイヒの言葉は矛盾している。

「嫌だが仕方ないであろう?これも将来の為だ。帰ってきたらマーキングだらけにしてやるから覚悟しておけ」

 ドレス姿だが無駄に漢らしい。
 サイヒの男の色香(?)に当てられてルークの頬がバラ色に染まった。
 マーキングされるのを想像したのだろう。

 初めてのマーキングから、ルークは首の鬱血が消えかけるたびに上から跡を付けられている。
 マーキングだらけと言うなら、おそらく首だけに止まらないと言う事だろう。
 サイヒに押し倒されて、体中に跡を付けられる。
 何と甘美な時間だろうか。

 サイヒの部屋でされるのか、ルークの部屋でされるのか?

 サイヒの部屋でサイヒの匂いに囲まれるのも良いが、自分のテリトリーにサイヒが入って来てくれるのも捨てがたい。
 甘い想像にルークはうっとりと微笑む。
 正直サイヒの【認識阻害・微弱】がかかっていなかったら会場中の視線を釘付けにしたことだろう。

「あまり可愛い顔をするな。捕って喰われるぞ」

「サイヒ以外に喰われるつもりはない」

「分かっているじゃないか、イイ子だな。では冷徹な皇太子の仮面を着けて皇太子妃と踊って来てくれ。私もやりたい事があるのでな」

「了解した」

 ルークがカスタットの方へと向かった。
 カスタットが嬉しそうにしているのが見える。

(あの第1皇太子妃も単純な所は可愛いのだよな)

 単純なカスタットはサイヒにとっては手駒にしやすいため好感度は悪くない。
 その間にアンドュアイスの元へ向かう。
 マカロは別の男性と踊っているところだった。

(手強いのはこいつ等だな。朝まで嬌声聞かされて睡眠不足になった恨みもあるし、仕掛けるか…)

「初めましてアンドュアイス様」

「初めまして、かな?」

「はい、私とは初めてですわ」

「そう、君とは初めてかい?ダンスを誘っても」

「光栄です」

 伸ばされたアンドュアイスの手をサイヒは取る。

「何とお呼びすればよいかなご令嬢?」

「レイランとお呼び下さい」

 手を取り合い、体を密着させてホールでリズムに乗って足を運ぶ。
 サイヒは同時に【認識阻害・中】をかける。
 会話を周囲に聞かれたくは無いのだ。

「ねぇ知ってますかアンドュアイス様?」

「何を?」

「ルクティエス様がどんな声でお鳴きになるのかを」

 耳元で熱い声で囁く。
 そのサイヒの言葉にアンドュアイスは目を見開いた。

「ルクティエス様の体に所有印があるのを。涙を浮かべ頬をバラ色に染める表情を。そしてその体の熱を…」

「君は、ソレを知っていると?」

「私たちは知っております。私は女ですが、宦官の者。アレは去勢した男性ではありませんのよ?」

「な、に?」

「言っておりましたわ。ルクティエス様の中はそれは熱くて蕩けそうだと」

 アンドュアイスの表情が険しいものになる。

「欲張るからこんな事になるのですわ。王座かルクティエス様、どちらか1つに絞れば良かったのです。
ルクティエス様が欲しければ1番傍で仕え、その心を通じ合わせる事が出来たかも知れません。
王座が欲しければ備蓄性の毒などではなく即死する毒を飲ませるべきだったのです。
貴方は両方を欲した。だから両方を取り逃がす。
人魚の時も貴方が助け出すシナリオだったのでしょう?でも貴方は出遅れた。全てルクティエス様が誰かのモノになる可能性を考えてなかったからですわ」

「お前等は、ルークと交わったのか?あの潔癖な男と?」

「一緒に寝るときにはルクティエス様は私の胸に顔を埋めてお眠りになるの。それはそれは子供のようで可愛らしく庇護欲すら抱かせます。アンドュアイス様はルクティエス様と褥を共にしたことがおありで?」

 ギリッ、とアンドュアイスが奥歯を噛む。
 強く噛み締めた為、口の端から血が流れた。

「もうルクティエス様は私の匂いが無いと熟睡出来ないそうですわ。あぁ愛され過ぎて夢でないかと怖いくらいです」

「……っやる」

「何か仰りました?」

「殺してやる、お前ら全員!!」

「フフフ、貴方如きが私を殺せると?ご自分の才覚を過信しすぎですわ。それでも殺したければ私を探せばいい。
でも私が死んだら、きっとルクティエス様は私たちの後を追うでしょうね。そうすれば肉体だけは手に入れられますわね」

 クスクスとサイヒが笑う。
 その声が耳障りだと言うように、アンドュアイスの双眸が吊り上がる。
 視線だけで人を殺せるなら今この瞬間サイヒの命は無かっただろう。
 だが生憎、アンドュアイスにそんな能力はない。
 サイヒなら瞳に魔力を込めて、視線だけで生き物を殺すことも出来るのだが。

 殺したい者と命を狙われる者は、それでも音楽に乗って華麗に踊る。

「第2皇太子妃と寝る時は誰を想像していらっしゃるの?」

「…れ」

「銀髪の男を買うとき誰の面影を重ねてらっしゃるの?」

「黙れ」

「エメラルドの瞳の男と褥を共にするとき、誰の名前を呼びますの?」

「黙れっ!!」

 気づけば音楽が変わっていた。
 ダンスのパートナーの変え時らしい。

 大きな声で叫んだアンドュアイスだったがソレに気づいた者は存在しなかった。
 その事にアンドュアイスは驚きを覚える。

「宦官は魔術に特化しておりますの。私たちの会話を聞いていたものはおりませんから大丈夫でしてよ、お可哀想な皇子様。
今度欲しいものがある時には1つのモノだけを追いかける事ですわね。
では、楽しいダンスの時間を有難うございましたアンドュアイス様」

 華麗に礼をしてサイヒはアンドュアイスから離れた。
 その足でルークの元へ向かう。
 ルークが幸せそうに微笑んだ。
 アンドュアイスの知らない顔で。

「何故!私ではなく別の者を愛するルクティエス!!」

 最後の恩情でアンドュアイスその叫びは誰にも聞き取れないよう、サイヒは【認識阻害】の魔術をアンドュアイスにかけてやっていた。


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 アンドュアイスの衝撃の事実の回でした。
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