聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~

高井繭来

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【42話】

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 時を戻そう。

 武道大会が終わってすぐ、サイヒはルークに手を引かれ早足で駆けていた。

「ルーク、何処に向かっているのだ?」

「国盗りのの準備だ。宣戦布告の衣装を揃える!」

 頬を染めてうっとりとした笑顔を浮かべるルークがサイヒの言葉に答えた。
 やはりサイヒと2人だと冷徹な面は鳴りを潜めるらしい。
 本来の生まれ持った性格はコチラなのかも知れない。
 冷徹な性格は毒にやられたのを我慢するために、隙を見せぬようにと作られた後天的な性格だからだ。

 走る2人を見ている者は居ない。
 サイヒが【認識阻害】を”強”にしてかけているからだ。

 かなりの距離を走って、目的の場所に着く。
 王都の外れにあったその家は、正直ボロ屋だった。

「ココが目的の場所か?」

「昔からの友人が住んでいる」

 ルークの言葉にサイヒは”クオン以外に友達が居たのか”と驚いたが顔には出さなかった。
 多分言ったらルークは捨てられた子犬のようなウルウルお目目になりかねないからだ。
 可愛いからそれはそれでみたい気もするが。
 あの庇護欲をそそるルークの表情はサイヒのお気に入りである。
 勿論、本人に言うことはないが。

 もしクオンがその事を知ったらスタイリッシュに吐血してくれたであろう。

 ソレくらいには自分の思考がヤバいことだとはサイヒは自覚している。

 コンコンコン

 ノッカーを3回叩く。

「ふぁ~い~」

 気の抜けた女の声が聞こえて来た。

(ルークに女の友達!?)

 サイヒの気配が毛羽立つ。
 半身であり伴侶にもなった以上、サイヒはルークの女問題に対しては心が狭い。
 もともと恋愛結婚をしたくて国を飛び出した身だ。
 今まで対象が現れなかっただけで、意外とサイヒは執着心が強いのだ。

 後宮が潰れたところで 第1皇太子妃と第2皇太子妃はどう身を振るか分からないが、マロンはクオンが居るので幸せになる事間違いなしなので問題はない。

「いらっしゃ~い、てルークじゃないか~、どうしたんだい~?」

 眼鏡をかけた痩身の女性。
 背はサイヒと同じくらいだ。
 赤いフレームの眼鏡の奥の瞳が眠そうだ。

 桃色の肩に付くほどの長さの髪を、適当に首の根元で縛っている。
 眠そうな瞳の色は金色だ。

(無防備に項を出すとは男心を分かっているな。胸は無いが細い腰だ。顔は美人系でなく気だるげな可愛い系。これは…間違いなく男にモテる!が……)

 だがサイヒが気を乱すことは無かった。

「初めまして、麗しいルークの友人殿」

 その手を取り、手の甲へ口づけを落とす。
 現在にサイヒは男冒険者風なので、色合いが異なる2人の男女に見えて中々絵になる。

「な、ななななな何をしているサイヒ!?」

「何って挨拶だが?」

「何故手にキスをする?」

「美しい異性に挨拶するなら礼をかかさぬようにするのは普通だろう?」

「あははぁ~僕の性別勘違いしてませんか~」

「いや、勘違いしていないつもりだが?」

「んん~、あ~君は女の子か~。確かに異性だね。初めましてお嬢さん~」

「ほぅ、私の性別が分かるのか。大したものだ友人殿今後とも宜しく願おう」

「ん~?ルークが女の子連れて来たのも初めてだけど~それ以上に想像してたタイプと違って驚いたよ~」

「しかしすぐに私の性別が分かるとは…こちらも驚いた」

「一応デザイナーだからね~。それでも一瞬性別が分からなかったよ~凄い出来の男装だね~」

「ほうほう、デザイナ―殿か。素敵な職業だ。美しいものに囲まれているから貴方も美しいのかな?」

 クスリ、とサイヒが微笑む。
 その笑みにルークの友人は頬を赤らめた。

「ル~ク~、このお嬢さん、格好良すぎない~?」

 ルークがサイヒを奪え返す。
 ギュウ、と抱きしめて友人を睨む。

「サイヒはこの者の様な男性が好みなのか?」

「可愛い男は好きだが、ちゃんと1番はお前だよルーク。最初、女かと思って嫉妬したからやり返させて貰った。悪趣味な事をしてすまなかったな」

 サイヒの手がルークの頬を滑る。
 頬染めたルークを、愛おしいものを見る目で見つめて笑みを浮かべる。

「嫉妬してくれたのか?」

「言っただろう?私は嫉妬深いぞ」

「そんなの私だって同じだ」

「お2人さん~僕の家の前でイチャつくのとめてね~」

 ルークの友人が間の抜けた声で抗議の声をあげた。

 :::

「で、僕のアトリエに何の用~?」

「晩餐会に出るためサイヒのドレスを作って欲しい」

「晩餐会って今日の?ル~ク~、普通ドレス1着作るのにかかる時間分かっている~?」

 のほほんとした顔だが怒っているらしい。
 それはそうだろう。
 あまりに無謀な時間だ。
 後数時間しか残された時は無い。

「お前なら出来るだろ、ガフティラベル帝国1のデザイナー”フェルゴール”?」

「まぁ皇太子の命なら断るけど~友人のルークの初めてのお願いだし~まぁ頑張らせて貰うよ~」

「助かる」

「でも寸法はかるのに彼女さんのサイズ測るけど良いの~?」

「ッ!?」

(私も知らない女としてのサイヒの体のサイズを測る!?私も見た事がないのに?サイヒの体を触られる?いやしかし今すぐ用意しないと時間が間に合わないが、私より先にサイヒの体を知るなど!!)

「う~ん、葛藤してるね~どうしよ~」

「では先に私の肌をルークに見せよう。今後ドレスが必要になる度に世話になるのなら1度しっかり測って貰った方が良いだろう」

「は、肌を見せる!?」

「男に肌を晒すのは初めてだぞ?嫌なのかルーク?」

「い、いや…それで譲歩する……」

 この後、サイヒの裸体を見てルークが鼻から血を流し意識を失ったことはココだけの秘密である。

 数時間後、完璧なレディに仕上がったサイヒを見てルークが硬直しふたたび気絶したため、会場入りに2時間遅れたのは誰が悪かったのだろうか?
 それは誰にも分らない……。
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