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17.依頼
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エレナと共にレベリングを続け、約束の一週間が経過した。
シルバーウルフを瞬殺できるレベルの魔法も覚えさせて、だいぶ仕上がってきた感じだ。
俺はリーナ宛に護衛の準備が整ったと連絡した。
返事はすぐにあり、彼女と待ち合わせをすることになった。
午後3時頃になって、俺はリーナを迎えに学園へ転移した。
魔法学院は主に貴族が通う学び舎で、近隣住民は貴族を怖れてあまり近づかないようにしている。俺がエレナを伴って呑気な顔で歩いてると、学園の門を守る衛兵の注目を集めてしまった。
少し待つと、リーナがローレンを伴って現れた。
俺はさっそくエレナを紹介した。
「彼女はエレナだ。俺の奴隷であると共に、パーティメンバーでもある」
「エレナさんとは久しぶりに会いますね。お母様主催のお茶会以来でしょうか?」
「本日は邪魔にならないよう支援させていただきます。よろしくお願いします」
エレナは澄ました顔で一礼した。普段の気安い態度ではなく、男爵令嬢としての一面を出している。こういう彼女とのプレイもありだな、と思ってしまった。
「さて、ローレン。あとのことは俺に任せてもらおうか」
「やはり私も迷宮に同行させていただけないでしょうか。私は旦那様からリーナ様の護衛を申しつけられているのです」
ローレンの不安は分かるが、迷宮で指揮系統が別れるような事態は避けたい。
なにより、俺はローレンという男を信用していない。護衛でありながら護衛対象に守られる騎士というのは、信頼に値しない。彼を育成することまでは依頼されてないし、そんなサービスをするつもりもない。
「ローレン、既に話した通りです。迷宮内ではミト様に守っていただきます。あなたも納得したではありませんか」
「しかし……!」
尚も言い募ろうとするローレンを片手で制した。
「あんたの不安は理解した。だったら、こうすればいい。俺と手合わせをし、本当にお嬢様を預けるに相応しい男か判断すればいい」
「しかし、ただの平民相手に騎士が剣を抜くというのは……」
侮られているな。これはよくない。
リーナに目配せすると、彼女も頷いた。
「私が許します。ローレン、ミト様と戦いなさい」
「お嬢様が仰られるのであれば……」
この世界では双方が納得し、見届け人の騎士がいれば、あっさり決闘が許可される。俺は近くを警邏していた騎士に銀貨を渡し、見届け人となることを依頼した。
道端で剣を抜くなんて、日本人の感覚からすると違和感がある。
だが、誰も咎めるような視線は送ってこない。
ローレンが剣を抜いた。
「こちらは準備が整いました」
「俺も準備万端だ。いつでも始めてもらって構わない」
「しかし、まだ剣を抜いてないではありませんか」
「十分だと言ったはずだ」
「あまり舐めると……!」
立ち合いの騎士が決闘開始の合図となる鐘を鳴らす。
俺は『剣術(上級)』と『急所攻撃』を発動させ、神速の一撃をローレンの剣に叩きこんだ。秒数にして一秒未満で攻撃動作を終えた為、剣を砕かれたローレン当人も何が起こったか分かってないようだった。
「へ? あ……失礼、剣が折れてしまったようだ」
「折れたんじゃない。俺が折ったんだ。見えなかったのか?」
「馬鹿な……。ありえない。この私が、攻撃されたことさえ知覚できないだなんて」
俺にとって剣で人や魔物を斬ることは、案山子を斬るのと変わらない。
神速の一撃を繰り出せるということは、神速の一撃を知覚できるということだ。集中さえすれば、ローレン程度の動きなら止まって見える。
「何戦かやってもいいぞ」
「……私の力がミト殿の足下にも及ばないことは理解しました。先に屋敷へ戻り、今後足手まといにならないよう鍛錬します」
ローレンはあっさり引き下がった。あまりに素直で逆に怖いほどだ。よからぬことでも考えてるんじゃないだろうな? リーナはローレンを疑うようなこともなく、「精進しなさい」と送り出した。だが、俺は彼女ほど簡単にローレンのことを信用できない。あそこで食い下がるような男が、こんなにあっさり引いた理由を考える。
まさか、リーナの父親にでも言いつけるつもりか? あるいは、他所に訴える手立ても持っていたか……。気になるが、今考えたところで結論はでないだろう。
ここからは彼女を護衛するのが俺の役目だ。
雑念を消して仕事に集中する。
「リーナ、転移を発動させるが問題はないな?」
「ええ。お願いします」
俺は転移を発動させる。行き先は勿論、探索者ギルド一択だ。
無事に転移し、2人の美少女を連れて歩くと、同業者からやっかみの視線を向けられた。
なかには直接的に陰口を叩いている輩もいたが、気に留めることはない。
恵まれた人間に嫉妬するのは当然のことだ。
「では狩りの開始だ。リーナのフォローはエレナに頼む。俺が出張りすぎるとリーナの経験値にならないからな。今回は緊急時のフォロー役に徹するつもりだ」
「分かりました」
レベルを上げさせるだけなら俺が狩るだけで事足りるが、それでは本当の意味での経験値にはならないだろう。
エレナとリーナのコンビネーションは、即席にしては悪くなかった。俺の強化を受けたエレナは、強力な魔法攻撃を撃つことができる。リーナが魔物を押さえてる間に、エレナが魔法を完成させて蹂躙するというフォーメーションが完成していた。
「いい腕ですね。さすがはミト様の相棒です」
「リーナ様も戦い慣れてますね」
「私などまだまだです。エレナさんの魔法がなければ、とても迷宮では戦えません」
鍛錬初日ということもあり、この日は1層を中心にレベリングを行った。
リーナはレベルが18に達し、明日のどこかで2層にも行けそうだと感じた。
「まだミト様を頼って一日目ですが、何だか強くなっているような気がします」
「明日になればもっと成長を実感できるはずだ」
「本当ですか?」
俺が次の目標として設定したレベル20という数値は、キリがいいラインだ。上級魔法を覚えるにあたって、線引きされていてもおかしくないと思う。
鍛錬を終えた俺達は、転移魔法で一度迷宮を出た後、手に入れたアイテムの精算をした。その後、俺はリーナを屋敷まで送り届けた。
「では、明日もよろしくお願いしますね?」
「お任せください」
特に何事もなくレベリングは終わり、この日は問題なく彼女と別れた。
「リーナ様、とても優しかったわね。普通、男爵令嬢に対してあんな風に接してくれないわ。今は奴隷という身分だし、尚更なのに」
「慈悲深い方なんだろうな」
最初に出会った時、護衛のローレンを必死に助けようとしてたし、まっとうな貴族って感じだ。ミーシャがどんな令嬢かは知らないが、国母になってもらうならリーナみたいな娘の方が良さそうだな。
「私、リーナ様の力になりたい」
「俺もだよ」
もっとも、勝ったところで王子に嫁げば苦労ばかりになりそうだが。
それが彼女の選ぶ道だというなら、俺に止める術はない。
ただ、依頼をこなすこと。
それが、今の俺にできることだ。
シルバーウルフを瞬殺できるレベルの魔法も覚えさせて、だいぶ仕上がってきた感じだ。
俺はリーナ宛に護衛の準備が整ったと連絡した。
返事はすぐにあり、彼女と待ち合わせをすることになった。
午後3時頃になって、俺はリーナを迎えに学園へ転移した。
魔法学院は主に貴族が通う学び舎で、近隣住民は貴族を怖れてあまり近づかないようにしている。俺がエレナを伴って呑気な顔で歩いてると、学園の門を守る衛兵の注目を集めてしまった。
少し待つと、リーナがローレンを伴って現れた。
俺はさっそくエレナを紹介した。
「彼女はエレナだ。俺の奴隷であると共に、パーティメンバーでもある」
「エレナさんとは久しぶりに会いますね。お母様主催のお茶会以来でしょうか?」
「本日は邪魔にならないよう支援させていただきます。よろしくお願いします」
エレナは澄ました顔で一礼した。普段の気安い態度ではなく、男爵令嬢としての一面を出している。こういう彼女とのプレイもありだな、と思ってしまった。
「さて、ローレン。あとのことは俺に任せてもらおうか」
「やはり私も迷宮に同行させていただけないでしょうか。私は旦那様からリーナ様の護衛を申しつけられているのです」
ローレンの不安は分かるが、迷宮で指揮系統が別れるような事態は避けたい。
なにより、俺はローレンという男を信用していない。護衛でありながら護衛対象に守られる騎士というのは、信頼に値しない。彼を育成することまでは依頼されてないし、そんなサービスをするつもりもない。
「ローレン、既に話した通りです。迷宮内ではミト様に守っていただきます。あなたも納得したではありませんか」
「しかし……!」
尚も言い募ろうとするローレンを片手で制した。
「あんたの不安は理解した。だったら、こうすればいい。俺と手合わせをし、本当にお嬢様を預けるに相応しい男か判断すればいい」
「しかし、ただの平民相手に騎士が剣を抜くというのは……」
侮られているな。これはよくない。
リーナに目配せすると、彼女も頷いた。
「私が許します。ローレン、ミト様と戦いなさい」
「お嬢様が仰られるのであれば……」
この世界では双方が納得し、見届け人の騎士がいれば、あっさり決闘が許可される。俺は近くを警邏していた騎士に銀貨を渡し、見届け人となることを依頼した。
道端で剣を抜くなんて、日本人の感覚からすると違和感がある。
だが、誰も咎めるような視線は送ってこない。
ローレンが剣を抜いた。
「こちらは準備が整いました」
「俺も準備万端だ。いつでも始めてもらって構わない」
「しかし、まだ剣を抜いてないではありませんか」
「十分だと言ったはずだ」
「あまり舐めると……!」
立ち合いの騎士が決闘開始の合図となる鐘を鳴らす。
俺は『剣術(上級)』と『急所攻撃』を発動させ、神速の一撃をローレンの剣に叩きこんだ。秒数にして一秒未満で攻撃動作を終えた為、剣を砕かれたローレン当人も何が起こったか分かってないようだった。
「へ? あ……失礼、剣が折れてしまったようだ」
「折れたんじゃない。俺が折ったんだ。見えなかったのか?」
「馬鹿な……。ありえない。この私が、攻撃されたことさえ知覚できないだなんて」
俺にとって剣で人や魔物を斬ることは、案山子を斬るのと変わらない。
神速の一撃を繰り出せるということは、神速の一撃を知覚できるということだ。集中さえすれば、ローレン程度の動きなら止まって見える。
「何戦かやってもいいぞ」
「……私の力がミト殿の足下にも及ばないことは理解しました。先に屋敷へ戻り、今後足手まといにならないよう鍛錬します」
ローレンはあっさり引き下がった。あまりに素直で逆に怖いほどだ。よからぬことでも考えてるんじゃないだろうな? リーナはローレンを疑うようなこともなく、「精進しなさい」と送り出した。だが、俺は彼女ほど簡単にローレンのことを信用できない。あそこで食い下がるような男が、こんなにあっさり引いた理由を考える。
まさか、リーナの父親にでも言いつけるつもりか? あるいは、他所に訴える手立ても持っていたか……。気になるが、今考えたところで結論はでないだろう。
ここからは彼女を護衛するのが俺の役目だ。
雑念を消して仕事に集中する。
「リーナ、転移を発動させるが問題はないな?」
「ええ。お願いします」
俺は転移を発動させる。行き先は勿論、探索者ギルド一択だ。
無事に転移し、2人の美少女を連れて歩くと、同業者からやっかみの視線を向けられた。
なかには直接的に陰口を叩いている輩もいたが、気に留めることはない。
恵まれた人間に嫉妬するのは当然のことだ。
「では狩りの開始だ。リーナのフォローはエレナに頼む。俺が出張りすぎるとリーナの経験値にならないからな。今回は緊急時のフォロー役に徹するつもりだ」
「分かりました」
レベルを上げさせるだけなら俺が狩るだけで事足りるが、それでは本当の意味での経験値にはならないだろう。
エレナとリーナのコンビネーションは、即席にしては悪くなかった。俺の強化を受けたエレナは、強力な魔法攻撃を撃つことができる。リーナが魔物を押さえてる間に、エレナが魔法を完成させて蹂躙するというフォーメーションが完成していた。
「いい腕ですね。さすがはミト様の相棒です」
「リーナ様も戦い慣れてますね」
「私などまだまだです。エレナさんの魔法がなければ、とても迷宮では戦えません」
鍛錬初日ということもあり、この日は1層を中心にレベリングを行った。
リーナはレベルが18に達し、明日のどこかで2層にも行けそうだと感じた。
「まだミト様を頼って一日目ですが、何だか強くなっているような気がします」
「明日になればもっと成長を実感できるはずだ」
「本当ですか?」
俺が次の目標として設定したレベル20という数値は、キリがいいラインだ。上級魔法を覚えるにあたって、線引きされていてもおかしくないと思う。
鍛錬を終えた俺達は、転移魔法で一度迷宮を出た後、手に入れたアイテムの精算をした。その後、俺はリーナを屋敷まで送り届けた。
「では、明日もよろしくお願いしますね?」
「お任せください」
特に何事もなくレベリングは終わり、この日は問題なく彼女と別れた。
「リーナ様、とても優しかったわね。普通、男爵令嬢に対してあんな風に接してくれないわ。今は奴隷という身分だし、尚更なのに」
「慈悲深い方なんだろうな」
最初に出会った時、護衛のローレンを必死に助けようとしてたし、まっとうな貴族って感じだ。ミーシャがどんな令嬢かは知らないが、国母になってもらうならリーナみたいな娘の方が良さそうだな。
「私、リーナ様の力になりたい」
「俺もだよ」
もっとも、勝ったところで王子に嫁げば苦労ばかりになりそうだが。
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ただ、依頼をこなすこと。
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