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グランエアド王国編
96話 主人公、王の力を知る
しおりを挟む「王様の力って、前にガルシア様が見せてくれたヤツ?国にいる時限定で、紋章システムに似た力が使えるって聞いたけど、こんなすごい事もできるんだ!」
「タクミ。また口開いてるよ。」
「驚くと口が開いたままになるクセ、直した方がいいよ。」
リオンとシオンにそう言われて、慌てて口を閉じる。
「おし!良いもの見せてもらったし、俺達はもう帰るな!ガンガルシアでソラがダンジョンと共に現れるのを待つよ。」
ガルシア達がもう国に帰ると言う。
「あっ!ガルシア様。ソラのこと、よろしくお願いします!」
「おぅ!何かあったら、タクミにすぐ連絡するからな!ガンガルシアの遺跡も探しておくから!」
「はい!お願いします!」
ガルシア達が帰って行く。
ガンガルシア王国の遺跡も行かないとな。
ガルシア様も帰ったし僕も部屋に戻って休むかな、と思っていると、エアが僕達を王宮の最上階に誘う。
「タクミ、リオン、シオン。ボクを連れていってくれてありがとう。お礼に一緒に食事でもどう?ウチの料理人のご飯、すごく美味しいよ!」
美味しいご飯!
ソラの特訓で疲れていた僕は、ご飯の言葉につられて、ご馳走になることをすぐに了承したのだった。
「さぁ、いっぱい食べてくださいね。どんどん出てきますから。」
「これも、これも。全部美味しいです。ありがとうございます!ジーク!」
「いえいえ、こんなに食べていただけるとは、自分も作り甲斐がありますよ。」
「ジークの料理、美味しいだろ?」
エアが自分のことのように自慢している。
「まさかジークが料理人だとは思わなかったよ。エアリーのマネージャーで、戦闘も出来て、楽器も弾けて、料理も上手って!なんでも出来るんだね!」
「いえいえ。エア様に比べたら、自分なんてまだまだですよ。」
ジークが謙遜している。
「そうだ!エア様もすごかったよ!アッという間に神殿の周りがキレイになって驚いたよ。王様の力って何でもできるんだね!」
さっきの光景を思い出した僕は、エアに感動を伝える。
「王の力は、何でもできるわけじゃないよ。自分のためには使えないんだ。タクミ、見ててよ。ご飯出して!」
エアが左手にお願いする。が、何も起こらない。
「ボク達、王には精霊がいない。呪いのせいで、紋章が授かれないからね。でも、この国の守護精霊と契約をしているから、紋章システムに似た力が使えるんだ。」
「契約?」
「そうだ。この世界の人々は亡くなると、安らぎの大樹で大地に還る。でも王は、死んだら守護精霊に身を捧げる約束なんだ。その代わりに、この力を使うことが許される。でもこの力は自分のためには使えない。」
そうか!ガルシア様も服とかを出してくれていたけど、それは僕のためだ。
「詳しい仕組みはセシルにしか分からない。聞いても教えてくれないしね。ボクは、守護精霊を介して紋章システムを使えるようになってるんじゃないかって推測してるけど。」
「なるほどね。でも今回みたいなことはよくあることなの?歩いている人達が、またかって言ってた。」
「タクミ。このグランエアド王国はね。王様が変わるごとに、王が街を造るっていう風習なんだよ。だから、この街もボクが造ったんだ。」
えっ?街をひとつ造るって?
「成人した直後に、この街を作り上げた。国民が住んでくれるように、いろいろ工夫したよ。グランエアドは芸術の国だけど、その中でもボクは特に舞台に興味があったからね。演劇やコンサートが出来る劇場をこの街にたくさん造ったんだ。」
「じゃあ、前の王様が造った街は、どうなるの?」
「住みたい人がいれば、そのままだよ。家とか道路は、その街の住人が整備することになっている。大きな建物は賛同者がたくさんいると、出せるしね。」
賛同者?
「一緒に住みたいって言う人が何人も集まれば、この王宮みたいな建物を出すことが出来るってことだよ。」
シオンが補足説明してくれる。
なるほどね。
「ボクがこの王宮を建てたのは、この街を造ってから数年後だ。ここに住みたいって言ってくれる国民が増えたから。ジークもその中のひとりだよ。」
「エア様はこう見えて、とても勤勉ですからね。そこに心底、感服したのです。」
勤勉を絵に描いたような見た目のジークが、そう言う。
ジークの方が勤勉で真面目そうだよ?
「例えば。先程のセイレーン文字ですが、エア様には分かっていたと思いますよ。」
「えっ?解読する前に分かってたの?じゃあ、言ってよ~。」
リオンがエアに抗議する。
「ボクが知っていたのは、歌としてだから、文字の意味なんて分からないよ。文字の後に数字があっただろ?あれはハープの弾き方を示すものだ。ボクは以前、セイレーン族の血をひく人に教えてもらったことがあったから分かったんだ。セイレーン族特有の歌い方で覚えたから、文字の意味は分からなかった。」
「そうか!でもそのおかげで、あの遺跡が発動したのかも!あれは、セイレーン族の歌で発動する仕掛けだったんだよ。エア様、セイレーン語の発音なんて、よく知ってたね?」
リオンが疑問を口にする。
「だからボクが知ってのは歌だよ。セイレーン族は閉鎖的な種族だったと聞く。どんどん数が減って、あの神殿を維持することができなくなった。だから、あの仕掛けをして、後世に残そうとしたんだと思う。そして、その鍵である歌を大事に語り継いだ。」
「あの仕掛けを解くことができたのは、本当に奇跡なんだね!」
僕のこの発言に、ジークが異論を唱える。
「タクミ、それは違いますよ。エア様の勤勉があったからです。エア様はこの世界にある、ほとんどの楽器や歌を学んでいますから。どんなに無名なものでも、エア様は、良いと思ったものは必ず学びに行きます。自分はそういうエア様をとても尊敬しています。」
「あー、だからいつも王宮には居ないんだね。エア様って遊び歩いてるんだと思ってたよ。」
シオンの嫌味のような発言にも、エアは動じない。
「その通りだよ!ボクはボクのしたい事しかしないからね!」
ここまで言い切れるエア様ってすごいな。僕は素直に感心したのだった。
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