異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!

心太黒蜜きな粉味

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グランエアド王国編

95話 主人公、疲労困憊する

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「おし!最後はタクミだ!特訓だぞ!」
 ソラの声がする。

 僕が違う場所に飛ばされる前の、ソラの言葉に間違いない。

 もっ、戻って来た~!!!
 僕は激しく感動していた。

 何もない真っ白な空間でのソラの特訓は、想像を絶するものだった。もう2度と経験したくない!と切実に思うほどだ。

『タクミ!想像力を働かせるんだ!』

『そうじゃない!イメージが大切だって言ってるだろ?』

『タクミはヒトでは無いんだ!そうあるべきだという固定観念を捨てろ!』

『タクミって本当に頑固なんだな。アース生まれ、アース育ちってのが、影響してるのか?』

『ヒトの姿は仮の姿だ。タクミの真の姿はドラゴン。意識しなくてもドラゴンの姿になれる。タクミがいま、そのヒトの姿になっているのは、ただの条件反射に過ぎない。』

『タクミはもうヒトでは無いんだぞ!』

 はぁ…。散々だったよ。
 僕は日本で生まれて日本で育ち、優しいけど厳しい祖母に育てられた。そういう記憶は、そうそうに無くなるわけじゃない。

 いくらドラゴンだと言われても、実感が無いのだ。それなのに、お前はヒトでは無いから、ヒトの姿をやめろって言われても無理だよ!

 以前トールくんとは、ヒトの姿に戻る特訓をした。やっと、上手く変現できるようになったところだったのに。

 僕の真の姿はドラゴン。
 だからヒトがドラゴンに変現しているのではなく、ドラゴンがヒトに変現しているんだ!と言われても…。
 ヒトの姿が自分だと思っているから、ヒト以外になるなんて、僕には難しいよ。

 いまソラが教えてくれているのは、応用だよね?しかも難易度の高い応用だ。

 ったく。人ごとだと思って!
 無茶を要求するのはやめてほしい。

 結局、身体の一部に竜の鱗を纏えるようになったところで、許してもらう。

 たぶん、24時間以上は特訓していたと思う。
 ソラは僕を異空間に飛ばしたすぐ直後に戻すつもりだから、こんな長時間の特訓をしているに違いない。
 そして、その考えは当たったのであった。

 みんなのいる空間に戻って来た僕のすぐ隣では、リオンとシオンが不思議そうな顔をしている。

「「なに?なんでタクミそんな疲れた顔してるの?」」

 一言では言い表せないことがあったんだよ!いろいろ説明したいが、疲れ過ぎていた僕は、「なんでもないよ」と答える。

「良し!これで褒美はお終いだ!次の遺跡で会うのを楽しみにしているぞ!サーシャとガルシアには、すぐ会えると思うけどな!近日中に移設しておくぞ!攻略しに来てくれよ!」

 そう言うと、ソラの姿は見えなくなった。

「さぁ、この遺跡の謎も解けたし、帰るか!ボクはこの謎が解けただけで満足だよ!」
 エアが嬉しそうに言う。

 エアのこの言葉で、僕達はこの綺麗な神殿から出て階段を降りたのだった。
 ところが、全員が祭壇へと降りた直後、空中に浮いていた神殿が跡形もなく消えた。

 えっ?どうなってるんだ?

「さぁ、帰ろうか!」
 神殿が浮いていた空間を見ながら、そう宣言するエア様。

「綺麗な神殿だったのにね。消えちゃったね。」
「うん、もう見られないなんて残念だよ。」
 双子が残念そうな顔をする。

 エア様も神殿のこと気に入ってたようなのに、残念そうじゃないな。切り替えが早い人なのかな?

 あまり気にしていない様子のエアに違和感を覚えるが、その理由はすぐに分かった。

 ジークが慌てたような様子でエアに声をかけたのだ。

「エア様!王宮前の広場に謎の構造物が現れたと連絡がありました。」

「おっ!ソラはちゃんとお願いを聞いてくれたんだ!やったー!」

「まっ、まさか?エア様、この神殿を広場に移設してくれと頼んだのですか?!」

「えっ?ジークもそれで良いって言ってたじゃん!」

「そうですが…。まさか神殿を移設するなんて…。また街の構造を変更する必要がありますよ!」

「もちろん、そのつもりだよ!さぁ、早く帰ろう!あの神殿が早く見たいよ!」
 エアはそう言うと、小走りで転移扉に向かう。
 僕達は慌てて、一人だけ元気なエア様の後を追いかけたのだった。



 グランエアド王宮の前は、公園のような広場になっている。それなりに広い場所ではあったが、そこの中心に水の神殿が忽然と現れていた。

 これじゃ、周りの人達もビックリだっただろう。そう思ったが、道行く人達は、みんな喜んでいる。

 ???
 この国の人達って?

 祭壇の上に出現していた神殿は水に覆われていたが、目の前の神殿は内部と同じように大理石のような材質に変化していた。

 外観も豪華になってる!

「さすがエア様だね。また新しい劇場を出したんだわ。素晴らしいわね。」
「こんなに綺麗な建物は見たことないよ!」
「早く公開してくれないかな?いつもなら、すぐに見せてくれるけどなぁ。」

 道行く人達が、そう言っている声が聞こえる。

 いつも?また?

「さぁ、少し広場を整備するからね!みんな、広場から出て!」
 エアが大きな声で、呼びかけている。
 人通りがなくなったところで、それは起こった。

 エアの左手が光ったかと思ったら、神殿の周りの景色が一変する。
 神殿の外観に合わせて広場が整備され、前からずっと建っていたかのような風景になる。

 神殿の周りを水で囲い、神殿に至る道ができている。まるで、湖の中に建っているようだ。

「これが本当の水の神殿!」
 エアが嬉しそうに言う。
「ボク、王様で良かったって思えたの、今日が初めてだよ!王の力って最高だね!」

 王の力?
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