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グランエアド王国編
94話 主人公、変現を学ぶ
しおりを挟む気がつくと、さっきとは全然違う場所に居た。
ここは?
周りには天井も壁もない。見渡す限り、真っ白い空間だ。
「ここなら、邪魔は入らないからな!まず最初に、タクミにはありがとうと言うぞ!こんなにすぐ、また会えるとは!次は100年後くらいかと思ってたぞ。」
「あははっ。100年は考えてなかったけど、僕もこんなに早くソラに会えるとは思ってなかったよ。でも今のこの世界には、紋章システムっていう便利な道具があるんだ。情報を集約してるから、他の国の遺跡もすぐ見つかると思うよ。それにしても、万能のソラなら、そんなことすぐに分かりそうなのに。」
「タクミにだけ白状するけど。僕は生物の感情や思考を感じることができるだけなんだ。だから、道具や機械なんかはデータとして把握できても、理解できない。意思が宿ってないからな。ドラゴンの瞳も、そういう意味では万能じゃないんだ。」
「あっ、それで!僕も、さっきのセイレーン文字はデータとしては把握できたけど、意味は分からなかった。」
「理解できないものの意味はわからないってことだよ。しっかし、タクミには詩的感覚がないんだな。あの文言は、セイレーン族に古くから伝わる歌だぞ!」
歌?なるほどね。
たしかに僕には詩的センスは無い。
「それより、そろそろ左肩の幼体を紹介してほしいぞ!」
「あっ!そうだった!あれからジルっていう改良家が、僕のために人工精霊を誕生させてくれたんだよ!ミライ、大先輩のソラだよ!」
僕はミライをソラに紹介する。
「あい!はじめまして、ソラ。ミライだよ!」
「おぉ!なかなか可愛いじゃないか!人工精霊ね。精霊種を人工的に生み出したってことか。」
「えっ?ミライって精霊種なの?それって、エルと一緒ってこと?」
「精霊とは、この世界エレメンテに漂う空気のような存在だ。その精霊が何かの衝撃で意思を持って具現化したものが、精霊種と呼ばれる存在なんだよ。紋章システムに使われているパートナー精霊は、使用者の思考を利用して人らしく振る舞っているだけで、自分の意思で具現化したわけじゃない。だから、精霊種とは言えないんだ。そういう意味では、ミライも完全な精霊種ではないな。」
「ミライは、紋章システムのパートナー精霊や精霊種とも違うってこと?」
「そうだ。ミライはドラゴンの力を核として生み出されている。意思があって生まれたわけじゃない。タクミという存在があったから生まれたってことを考えると、パートナー精霊と精霊種の中間のような存在ってことだな。」
「僕がいたから、生まれた?」
「そうだ。ミライはね。まさに、タクミ専用のパートナーだよ。大事に育てるんだぞ!」
「うん!分かったよ!それにしても、ソラ、詳しいね。」
「僕はこの世界最強のドラゴンだぞ!それくらい分かる!」
うーん、最強ってのはあまり関係ないと思うんだけど。ソラって、実はびっくりするくらい長生きしてるんじゃないのか?いったい何才なんだろう?
「じゃあ、今回の遺跡攻略の褒美として、ひとつの質問に答えるぞ!何が知りたいんだ?」
「それなら、ドラゴンの能力について教えて欲しい。前回は結局、ドラゴンの瞳のことしか分からなかったから。」
「そうだった?ドラゴンの能力についてね。まぁ、いろいろ出来るんだけど。それより、ドラゴンの瞳はもうかなり上手に使えるようになってるだろ?誰かの記憶が見えたりしたんじゃないか?」
「そういえば、ジルが病気で苦しそうな映像が見えたんだけど、どうも過去の映像じゃない感じだったんだ。あれも記憶を読むってことだったのかなぁ?」
「なるほどね。タクミは本当に、ドラゴンの瞳が使えるようになってるな。その映像は、起こるであろう未来の映像だよ。タクミが見たのは、ジルの可能性だ。」
「可能性?」
「未来はひとつじゃない。何個もある中で起こりそうなものを見たんだ。俗に言う、予知ってヤツだぞ!予知までできるようになってるなんて、タクミは才能があるなぁ。」
「予知ができるようになってる?信じられないよ。」
「鍛えれば、意識して使えるようになるぞ!」
「そんなことできるようになるんだ!」
ドラゴンってヤバいなあ。
「他の能力は、さっき見た変現だ。多くの種族は、ひとつの姿にしか変現できないのが普通だ。だが、精霊種の中には、そうではない者もいる。もともと、姿形の無い者が、ヒトらしく見せているだけだからな。自分の姿を自在に変えられるんだ。」
「ドラゴンも精霊種ってこと?」
「ドラゴンはドラゴンだ!どこにも属さない存在だよ。ドラゴンは特別だからね。どんな姿にでも変現することができるぞ!」
ソラはそう言うと、ドラゴンの姿に変現する。
「これが真の姿。一番チカラを発揮できる形態だ。次にこれだ。」
ソラは、ドラゴノイドに変現する。
「ヒトと闘う時に、この形態になることが多い。竜の鱗を身にまとったこの姿は、天然の鎧を着ているようなものだよ。鎧と違うのは、自由に変形可能だということ。僕の手を見ていろ。」
すると、ソラの手が倍近くになり、鋭い爪が現れる。
「常に相手に合わせて変化できる。だから、武器や防具は必要ないんだ。」
武器も防具も必要ない?ドラゴンって、本当に万能だな!
「そして、僕くらいになると、こんなこともできるようになる。」
僕の見ている前で、ソラの形が変化する。子供から大人へ。そして、どこかで見たような顔に…。
「って!これ!僕だ!」
「そうだ!タクミになることもできる。ミライ、どっちが本物か分かる?」
「あい!分析するよ!」
ミライの金色の瞳が光る。
「組成はまったく同じ。双子やクローン以上の存在。完全なコピー。タクミと同一の存在であることを確認しました。」
いつものミライの口調とは、まったく違う。分析モードのミライだ。
「おっ!よく分かったな!賢いぞ!ミライ!」
「あい!」
ソラに褒められて、ミライはとても嬉しそうだ。
でも。僕の姿になるのは、やめてほしい。同じ人物がいるって、何だかちょっと気持ち悪い。
「ということで!今回のレッスンはこれだ!変現を特訓するぞ!覚悟はいいな!」
えっ?覚悟ってなに?
酷いことは無しでお願いしたい!
が、そんなことは聞いてくれないよなぁ。
僕の顔でニッコリ笑っているソラを見て、僕は覚悟を決めたのだった。
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