銀の鳥籠

善奈美

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銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編

224 素朴な疑問

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 なんとなくだけど、オレ以外はある疑問を持ってねぇんだよな。つまり、知ってるからなんだろうけど。
 
「あのさ、卵をどうやって割るんだ?」
 
 オレの素朴な疑問にみんなが固まった。いやさ、オレは卵から孵化する命を初めて目撃すんだよ。まあ、育った卵生まれが目の前にたくさんいるけどさ。
 
「だってよ。鳥は嘴っていう武器を持ってるだろう? その他、卵生生物だって、卵から自力で出てくる武器があると思うんだけどさ。人間って武器になりそうなものねぇじゃん」
 
 頭突きは考えたけど、基本的に新生児の頭蓋骨って柔らかいイメージがあるんだよな。
 
「ルイの時は魔力が殻を破ったよね」
 
 カエデさんがクレハさんに確認してる。魔力か。なるほどな。確かに魔力の強い魔法使いのみ卵生らしいからそれは納得できる。
 
「そうね。魔力でうまく殻を割れる子はいいけど、そうでない子は親が手助けするって聞いてるわ」
 
 それって?
 
「亀裂は入るらしいのよ。でもね。この卵の殻って、落としても割れないくらい硬いらしいのよ」
 
 ……それを割るくらいの魔力って。
 
「そう考えると、ルイの魔力は誕生時、相当な強さだったんだな」
 
 クチバさんが変に納得してる。
 
「基本的に成長過程で放出された魔力が卵の内部に溜まって、完全に成長しきると、出口を求めて殻を割る。そういう話だな」
 
 クレハさんが尤も分かりやすい説明をしてくれた。じゃあさ、この時々動くのは?
 
「時々卵が動くのは?」
「胎動でしょう? 卵内部で動いてるからだと思うけど」
 
 ルイが首を傾げつつ、そう言った。そう言えば、母さんが言ってたな。オレが体内で激しく動くたびにあっち蹴られこっち蹴られで痛かったって。父さんの話だと出産前は母さんのお腹がオレが動くたびに変形したとか。それをこの硬い殻の中でしてるのか? ……落としても割れない殻に激突して痛くないのかよ?
 
 何かが割れるような音が響いて、慌てて卵に視線を向ける。淡い赤い色を映してる卵はルイの兄弟のもの。その卵の表面に亀裂が入ってる。待て、これ、危険な感じがすんだけど。何がって分かんねぇけど、とりあえず警告音が!
 
 そう思って咄嗟に両目を瞑った。結構、凄い音が響いて、恐る恐る目を開くと、火の精霊が卵の周りに結界みたいな膜を張ってた。そのおかげで、卵の殻は飛び散らなかったみたいなんだけど……。
 
 ピクリと動いた小さな体。勢いよく息を吸い込んだかと思うと、元気な声で泣き始めた。うわあ、元気だな。火の精霊が結界を解除して、それを確認したカエデさんが抱き上げる。赤ちゃんをあやす姿が、様になってるのが不思議だ。
 
「あれ? この子」
「どうかしたのか?」
「男の子じゃない」
 
 激しく泣いた後、疲れたのかおとなしくなった赤ちゃんをみんなで見下ろす。確かに、本来付いているモノがない。つまり……。
 
「信じられないわ。両親が男で女の子が孵化するなんて」
 
 ……それって、オレとルイが随分前に話していた内容じゃねぇか。
 
「あのさ。仮にもレディなわけだし、何か着せてやったら?」
 
 驚くのは分かるけど、その前に、女の子なんだ。他人に肌を晒してたなんて後から知られてみろよ。女っていうのは恐ろしい生き物なんだぞ。報復の恐ろしさを知らねぇんだろうけどさ。オレの言葉に慌てて、お包みに赤ちゃんを包んだカエデさん。後さ、普通の出産だと産湯で体を洗うんだけど、見た感じ必要ねぇのな。クレハさん譲りの癖のない黒髪。瞳の色は分かんねぇけど、色白の美人さんだ。孵化したてでこの整った顔立ちは詐欺だ。本当にそう思った。
 
 
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