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第一章・婚約破棄
馬車の車内にて、姉を想う
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修道院へ向う馬車の中で私はこれまでの自分を振り返り、姉への罪の意識と浅はかな行動を取った事への後悔に押しつぶされそうになっていました。
「ねぇ、私の行く修道院まではどれくらいかかるの?」
「二日はかかります。今晩宿に泊まり翌朝早く出発して夜には着きますよ。それほど遠くなくて良かったですね」
「……十分遠いと思うけど」
窓の外を眺め、自分がどこで道を間違えてしまったのか考える。
お母様が亡くなった日から姉は変わり、父を手伝い、領地を回って領民の手伝いをし始めました。毎日一緒に遊んでいた友達のような姉は居なくなり、私は一人で遊ぶようになったのです。母に似て小柄で可愛らしい姉は一緒に居ると私の方が姉だと思われる事もしばしば。それが少し嬉しかった。姉よりちょっとだけ上に立てた気がして。
先に学園に入った姉に一年掛けて淑女としての立ち居振る舞いや勉強を教え込まれ、学園入学後の私は自分がいかに狭い世界で生きていたのか痛感しました。そこには高位貴族の令嬢や令息がたくさん居てどこか入り込めないオーラを感じ、男爵家の娘として誇りを持ってきたけれどここに居ると自分が平民にでもなった気分でした。
姉がどうしてあれほど厳しく淑女教育を施してくれたのか、この時やっと理解できました。私が困らないように先手を打ってくれていたのです。おかげで初めて友人が出来、姉以外と女同士で遊ぶ楽しさを知りました。
「レギーナ様はユーリア様の妹だったのね。私の憧れの方なのよ、あなたが羨ましいわ。だってお勉強は出来てお友達は公爵家のご令嬢を筆頭に高位の方ばかり。あんなに凄い方たちと居ても少しも卑屈にならずに対等にお付き合いしているの。私には無理だわ、ちょっと睨まれただけで縮こまってしまうもの」
残念ながら身分差で蔑まされてしまう事は良くあります。私の友人は下位貴族の令嬢ばかり。姉はどうやって取り入ったのか、学年の頂点に君臨するグループに所属しているのです。不思議な事に、煌びやかな令嬢達の中にみすぼらしく身形を気にしない姉が入っていても誰もそれを気にしません。逆に憧れるなどと言うのです。母が生きていた頃の姉ならば、あの中にいても見劣りしないのにと思わずにいられません。
学業は一年前倒しで姉に教わっていた為、一年目は何と学年上位に入る好成績を収めました。父にも褒められ友人達にも関心されました。姉はと言えば、褒めてはくれましたが更に厳しく礼儀作法や勉強を教えようとしたのです。私は段々姉が鬱陶しく感じ始めました。
「お姉ちゃん、私の事はもういいから自分の身形をどうにかしたら? 恥ずかしいのよ、あの方達の中でお姉ちゃんだけが浮いていてそれが私の姉だと思われるのが。もう自分で出来るから私の事は放っておいて!」
初めて姉に反抗したあの日、とても悲しい顔をされたけど私は引き下がる事も出来ずそこから関係が変わってしまった。姉は変わらず私を注意したけど、素直に聞くことが出来なくなってしまったのです。
そのうち男の子達が私に群がるようになり、お姫様の様に扱われて私は誰もが認める美人として、まだデビューもしていない社交界の噂の的になっていました。
お父様が仕事で海外に出ていたのはその頃で、家の中はピリピリとした空気が漂っていたけど事故の事は私だけ知らされておらず、何も知らない私は毎日男の子達と遊んでいました。予定を大幅に遅れて帰国した父に話を聞き初めて事故の事を知った私は、子供扱いされた事に憤慨し、一つしか違わないのに知っていた姉に嫉妬のような感情を持ちました。
私の友人だった女の子達は、私がモテ始め周りに男の子がまとわりつく様になってから徐々に疎遠になって行き、最終的に友人の婚約者が私を好きになった事で完全に付き合いは無くなりました。
姉と同じく高位貴族のお友達に囲まれる日々は私に自信を与え、社交界デビューした頃には誰もが認める国一番の美人の名をほしいままにしていました。王子までもが自分にひれ伏し恋人になって欲しいと懇願します。私と付き合いたい大人の男性からの贈り物は途切れる事を知らず、誰かが私の為に部屋まで借りてくれて私はそこで皆と楽しく語らっていました。
贈り物を貰う事が当たり前となった私はそれに見返りが必要だなんて思いもせず、年上の恋人はどんどん増えてもう後戻りできなくなっていました。
「馬鹿よね、私なんて結局下位貴族の娘でしか無かったのよ。それが証拠に誰も私に結婚を申し込んで来なかったじゃない。殿下にそれとなく結婚について聞いた時には笑われてしまって。姉の方なら考えるとまで言われてしまったわ。お姉ちゃんだって同じ男爵家の娘なのにってあの時は腹が立ったけど、分かってるわよ。私は見た目だけで中身が無いって言いたかったのでしょ。
でももしかしたら、お姉ちゃんがアキムと婚約していなかったら殿下からの求婚はあったのかもしれない。よく殿下からお姉ちゃんの事を聞かれていたし、王家から素行調査もされているって噂されていたもの。でもお父様がアキムとの婚約を突然決めてしまってそれからその話は聞かなくなったわ」
私が反抗せず姉のいう事を聞いていたら、きっと人生は違ったものになっていたでしょう。姉に言われた最後の言葉「もっと厳しく接していれば何かが違ったのかしら」そんな事を言わせてしまった事が悔しくて悲しくて、姉は十分厳しかった。よく出来た姉への劣等感は、男性からの癒しで考えないようにしてきたけど、段々自分の表面しか見てもらえない事に不満を感じ満足できなくなっていた。
そんな時、見つけてしまった見慣れぬ文字の書かれた封筒は私の好奇心を止められず、つい中身を見てしまった。そこが最大の間違いでした。私はこのままでは外国に嫁がされてしまうと焦り、学園の取り巻きの男の子達にあなたと結婚しても良いわよと言ってみたけど誰も本気にしてくれなかった。
彼らも知っていたのでしょうか、私が殿下や高位貴族の男性達におもちゃ扱いされていたことを。
もう後が無いと感じた私はついに禁断の果実に手を出してしまいました。姉への劣等感の解消と、外国に嫁がされる危機を同時に解消できる最後の手段。姉の婚約者、アキム・グランフェルトを落とすことにしたのです。私は毎晩離れに通い、彼を誘惑しましたが中々一線を越えてはくれず、この私の手に触れる事すら躊躇したのです。見た目はそこそこ素敵で学生時代モテていたアキムですがその真面目さから軽い恋人すら作った事も無かったようで、私が初めての相手でした。
快楽を知ってしまった彼は私に溺れ、それでも姉への気持ちが捨てられないようだったので、妊娠をほのめかし逃げ道を塞ぎました。彼も私も性に関して浅い知識しか無く避妊しなければ簡単に子供ができると思っていたのです。
姉にアキムとの関係を暴露した時、何とも言えない優越感を感じ、愚かな私は初めて姉に勝った気になりました。あの時、私はどれだけ醜悪な表情を姉に見せていたのでしょう。
眉をひそめた姉は自分の両手を見て泣きそうな顔をしていました。
アキムには、前から私の事を好きだったと姉に言うように頼みました。出来るだけ姉を傷つけて、想いを断ち切らせてちょうだいと。でもあの人は次の日には発言を後悔して、私の部屋に来て発言を撤回したいと言ってきたわ。馬鹿な人。撤回したところでもう姉の心は戻らないのに。
私があれだけの事をしたのに、それでもなお私を庇い自分を貶めてまで領民に説明して回ったと聞いた時はさすがに呆れてしまいました。私の事など罵って張り倒せば良いのに。自分が逆の立場なら、相手の髪を掴んで振り回し、顔の原型が無くなるまで殴っていた事でしょう。
予想だにしなかった和の国の美青年達を見てしまった時は失敗したと後悔したけど、あの人達には私を美しいとは思わないと言われ、私の存在価値を全否定された気がして取り乱してしまいました。自分の薄っぺらい生き方では本当の意味で人を魅了できないのだと、その事実を突きつけられ暴れた後に残ったのは虚しさだけでした。
父に修道院へ入れると決められ、男性達からの贈り物は売却したと言われた時、あの部屋で行われていた行為が走馬灯の様に頭を流れ、その事が家族に知られてしまった恥ずかしさと後悔で気が変になりそうでした。
私を更生させる機会をくれたつもりかもしれないけど、私はあの貴族達のおもちゃだった頃の生活から逃げられてホッとしている。アキムと結婚してもきっと幸せにはなれなかった。彼が好きなのはお姉ちゃんなんだもの。遠く離れてもずっと思い続けるに決まっている。
お姉ちゃんの部屋に手紙を隠してきたけど、気付いてくれたかしら。いつか見つけて読んでくれたら良い。あんな手紙は自己満足でしかないし謝って済む事じゃないってわかってるもの。
お姉ちゃん、遠い海の向こうで幸せになってね。
レギーナを乗せた馬車は翌日サン・ルカニ修道院へと無事に着き、憑き物の落ちた彼女は修道女として姉の幸せを願い、神に祈りを捧げる生活を送りました。
「ねぇ、私の行く修道院まではどれくらいかかるの?」
「二日はかかります。今晩宿に泊まり翌朝早く出発して夜には着きますよ。それほど遠くなくて良かったですね」
「……十分遠いと思うけど」
窓の外を眺め、自分がどこで道を間違えてしまったのか考える。
お母様が亡くなった日から姉は変わり、父を手伝い、領地を回って領民の手伝いをし始めました。毎日一緒に遊んでいた友達のような姉は居なくなり、私は一人で遊ぶようになったのです。母に似て小柄で可愛らしい姉は一緒に居ると私の方が姉だと思われる事もしばしば。それが少し嬉しかった。姉よりちょっとだけ上に立てた気がして。
先に学園に入った姉に一年掛けて淑女としての立ち居振る舞いや勉強を教え込まれ、学園入学後の私は自分がいかに狭い世界で生きていたのか痛感しました。そこには高位貴族の令嬢や令息がたくさん居てどこか入り込めないオーラを感じ、男爵家の娘として誇りを持ってきたけれどここに居ると自分が平民にでもなった気分でした。
姉がどうしてあれほど厳しく淑女教育を施してくれたのか、この時やっと理解できました。私が困らないように先手を打ってくれていたのです。おかげで初めて友人が出来、姉以外と女同士で遊ぶ楽しさを知りました。
「レギーナ様はユーリア様の妹だったのね。私の憧れの方なのよ、あなたが羨ましいわ。だってお勉強は出来てお友達は公爵家のご令嬢を筆頭に高位の方ばかり。あんなに凄い方たちと居ても少しも卑屈にならずに対等にお付き合いしているの。私には無理だわ、ちょっと睨まれただけで縮こまってしまうもの」
残念ながら身分差で蔑まされてしまう事は良くあります。私の友人は下位貴族の令嬢ばかり。姉はどうやって取り入ったのか、学年の頂点に君臨するグループに所属しているのです。不思議な事に、煌びやかな令嬢達の中にみすぼらしく身形を気にしない姉が入っていても誰もそれを気にしません。逆に憧れるなどと言うのです。母が生きていた頃の姉ならば、あの中にいても見劣りしないのにと思わずにいられません。
学業は一年前倒しで姉に教わっていた為、一年目は何と学年上位に入る好成績を収めました。父にも褒められ友人達にも関心されました。姉はと言えば、褒めてはくれましたが更に厳しく礼儀作法や勉強を教えようとしたのです。私は段々姉が鬱陶しく感じ始めました。
「お姉ちゃん、私の事はもういいから自分の身形をどうにかしたら? 恥ずかしいのよ、あの方達の中でお姉ちゃんだけが浮いていてそれが私の姉だと思われるのが。もう自分で出来るから私の事は放っておいて!」
初めて姉に反抗したあの日、とても悲しい顔をされたけど私は引き下がる事も出来ずそこから関係が変わってしまった。姉は変わらず私を注意したけど、素直に聞くことが出来なくなってしまったのです。
そのうち男の子達が私に群がるようになり、お姫様の様に扱われて私は誰もが認める美人として、まだデビューもしていない社交界の噂の的になっていました。
お父様が仕事で海外に出ていたのはその頃で、家の中はピリピリとした空気が漂っていたけど事故の事は私だけ知らされておらず、何も知らない私は毎日男の子達と遊んでいました。予定を大幅に遅れて帰国した父に話を聞き初めて事故の事を知った私は、子供扱いされた事に憤慨し、一つしか違わないのに知っていた姉に嫉妬のような感情を持ちました。
私の友人だった女の子達は、私がモテ始め周りに男の子がまとわりつく様になってから徐々に疎遠になって行き、最終的に友人の婚約者が私を好きになった事で完全に付き合いは無くなりました。
姉と同じく高位貴族のお友達に囲まれる日々は私に自信を与え、社交界デビューした頃には誰もが認める国一番の美人の名をほしいままにしていました。王子までもが自分にひれ伏し恋人になって欲しいと懇願します。私と付き合いたい大人の男性からの贈り物は途切れる事を知らず、誰かが私の為に部屋まで借りてくれて私はそこで皆と楽しく語らっていました。
贈り物を貰う事が当たり前となった私はそれに見返りが必要だなんて思いもせず、年上の恋人はどんどん増えてもう後戻りできなくなっていました。
「馬鹿よね、私なんて結局下位貴族の娘でしか無かったのよ。それが証拠に誰も私に結婚を申し込んで来なかったじゃない。殿下にそれとなく結婚について聞いた時には笑われてしまって。姉の方なら考えるとまで言われてしまったわ。お姉ちゃんだって同じ男爵家の娘なのにってあの時は腹が立ったけど、分かってるわよ。私は見た目だけで中身が無いって言いたかったのでしょ。
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私が反抗せず姉のいう事を聞いていたら、きっと人生は違ったものになっていたでしょう。姉に言われた最後の言葉「もっと厳しく接していれば何かが違ったのかしら」そんな事を言わせてしまった事が悔しくて悲しくて、姉は十分厳しかった。よく出来た姉への劣等感は、男性からの癒しで考えないようにしてきたけど、段々自分の表面しか見てもらえない事に不満を感じ満足できなくなっていた。
そんな時、見つけてしまった見慣れぬ文字の書かれた封筒は私の好奇心を止められず、つい中身を見てしまった。そこが最大の間違いでした。私はこのままでは外国に嫁がされてしまうと焦り、学園の取り巻きの男の子達にあなたと結婚しても良いわよと言ってみたけど誰も本気にしてくれなかった。
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