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#6 存在してはいけない駅
#6ー11 第三の遊戯 かくれんぼ
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質問の結果、彼はやはり神である事が分かった。神にしては力が弱い経緯は聞けなかったが、まあ察しは付くから聞かない事にした。まだまだ聞きたい事はある。まあ、勝てば良いのだ。頑張ろう。
「で、次は何で遊ぶんだ?」
「次はかくれんぼだよ!」
「かくれんぼ?こんな田んぼじゃ、隠れる所なんて……」
先生のその言葉は、直ぐに遮られる事になった。何故なら、辺りの風景が次々に塗り替わって行ったからだ。これも権能なのだろう。事実改変、または瞬間移動、或いは空間の改造かも知れない。まあこれなら、隠れる隙間もあるだろうから良しとしよう。
辺りの風景が完全に変わると、そこには時代劇なんかで出て来るような、城下町があった。空には、さっきと同じ時計がある。
「これは……わが故郷?」
「あ、さっきのお侍」
どうやら、ここは彼の故郷を元に造られた空間らしい。地の利があるのは向こうだけではないらしい。これなら、まだ勝ち目はあるかも。
「おい貴様。今の状況を答えろ。さっきから何が何だか……」
「怖くないんですか?」
俺がそう聞くと、彼は鼻で笑って答えた。
「これしきが怖くて、どうして戦ができようか」
「違い無いな」
これなら、多少話しても大丈夫かも知れないな。俺は今の状況と、これからやるべき事を話した。彼は少し、この場所について思い出そうとしているようだった。
「それなら、昔某がよく隠れていた場所がある。某は町人の出でな。多少覚えはある」
「なら、なるべく見つからないように隠れてください。先生、お姉ちゃん、行きましょう」
俺はどこかに去って行くお侍を尻目に、いつもの二人と移動を始めた。
しかし、どこに隠れるのが良いんだろう。この時代の建物の造りは分からないし、何より土地勘も無い。どういう所に隠れれば見つかり難いかとかさっぱりだ。さっきのお侍に多少聞いておけば良かったかな。
「で、どこに隠れる?」
「取り敢えず、建物の中に隠れましょう。押し入れとかもあるでしょうし」
「押し入れ……閉所……フフフ、お姉ちゃん良い事思い付いちゃった」
オイ。今はそういう事言ってる場合じゃ……いやまあ、確かに今真剣になっても変わらないか。でも、隠れる事だけ考えるようにしてほしい。
俺達は霊力をなるべく隠して、それぞれの家の押し入れに隠れた。多分、奴は霊力の感知能力も高い。霊力は隠すに越した事は無いだろう。
そう言えば、大多数の一般人は放置して来たが、大丈夫だっただろうか。まあ、面倒だし良いか。隠れた以上、俺にはもう出る必要が無い。適当な暇潰しでもして待つか。俺は持って来ていた小説を開き、読み始める。秋原祥子作品はまだ読んだ事無かったしな。適当な代表作を持って来ておいたのだ。
先生はこういうのをよく知っている。年代に関わらず、自身が『面白い』と感じた作品を、全て覚えているのだ。先生の実年齢は知らないが、どう考えても生まれていない筈の作品も多く読んでいるらしい。それも名作とかの話ではなく、殆ど無名の作家の作品もだ。正直、人間業とは思えない。
暫く隠れていると、外で霊力の反応があった。どうやら、あの神が何かしたようだ。さっきと同じなら一時間隠れ続ける事にはなるが、俺にはやれる事が無い。無視しよう。
しかし、妙に落ち着かない。俺は狭くて暗い場所でも平気な性格だが、さっきから少しそわそわする。小説にも集中し辛い。外に出ようか。いや、外に出たら見つかるだろう。いくら落ち着かないからと言って、自ら危険を冒すのは駄目だ。それに、もし他の面子が全員見つかっていたら、俺が見つかった時点でゲームオーバーだ。我慢しよう。
俺は違和感を抱えたまま、時間が過ぎるのを待った。瞑想しようとも考えたが、それでは霊力が隠せない。俺は本当にぼーっとして、時間を潰した。
今どれ位の時間が過ぎたかも分からなくなった頃、外から鐘の音が聞こえた。どうやらゲームクリアらしい。俺は外に出る前に、スタート地点に移動させられた。
「あ、お侍」
「おお。貴様も残っていたようだな」
ふむ。やはり故郷だけあって、しっかり見つからない所に隠れられていたらしい。土地勘という物は侮れないな。
「あれ?またお兄ちゃんに負けちゃった」
「はは。まあ、勝ちは勝ちだ。質問に答えてもらうぞ」
「いいよ。何が聞きたいの?」
さて何を聞こう。ここに居る理由か、権能の内容か。或いはもっと別の……いや、ここは一応、ここに居る理由を聞いておこう。もしかしたら、ここから全員を元の場所に戻す事もできるかも。
「じゃあ、なんで君はここに居る?どうやって来た?」
「『退魔師』って名乗った人が、僕をここに置いて行ったんだ。『適当な奴と遊べ』って言ってね」
ふむ。益々謎が深まるな。協会の履歴に、『神と接触した』という記録は多くある。神事だけに限らず、ご機嫌取りなんかもあるからだ。しかしその中に、『神を神隠しに放置した』なんて馬鹿げた記録は無い。正直、この神隠しが協会の管理下に無いだけでも不思議なのに、『退魔師』という言葉が出て来るとは。ここまで来ると、もう本当に訳が分からない。
「あ、皆を戻すの忘れてた」
そう言った神が指を鳴らすと、先生達を含めた全ての人間が、この場所に集まった。
「先生!お姉ちゃん!」
「どうやらクリアできたようだね」
「悔しい!」
この二人も捕まっていたとは。正直、俺だけが見つからなかった理由が分からないな。やはり何かしらの権能を使ったんだろうか。次はそれについて聞こう。
「次は何で遊ぶんだ?」
「次は『ベーゴマ』だよ!ちょっと待ってて、今準備するから……」
その瞬間、子供の神の頭が、何かに貫かれた。一般人は泣き喚き、侍は刀を構え、俺達は自然に戦闘するのだと察知し、身構える。
今一瞬だけ、何かが見えた。今は影も形も無いが、神の頭を貫いた物が見えた。飛んできた方向を考えると、俺達の右に、この状況を作った人間が居る。俺はその方向を見据えて、走り出す。
「八神くん!」
「俺は追います!先生達は取り敢えず、一般人を安全な場所まで!」
「分かった!お姉ちゃんに任せなさい!」
犯人は誰だ?霊力の感知にまるで引っ掛からなかった。もう一体の神?なら何故殺そうとした?敵対?何故?
様々な疑問を抱えたまま、俺は建物の屋根から屋根へと飛び移り、敵が向かったであろう方角を目指す。
空間には、亀裂が入っていた。
「で、次は何で遊ぶんだ?」
「次はかくれんぼだよ!」
「かくれんぼ?こんな田んぼじゃ、隠れる所なんて……」
先生のその言葉は、直ぐに遮られる事になった。何故なら、辺りの風景が次々に塗り替わって行ったからだ。これも権能なのだろう。事実改変、または瞬間移動、或いは空間の改造かも知れない。まあこれなら、隠れる隙間もあるだろうから良しとしよう。
辺りの風景が完全に変わると、そこには時代劇なんかで出て来るような、城下町があった。空には、さっきと同じ時計がある。
「これは……わが故郷?」
「あ、さっきのお侍」
どうやら、ここは彼の故郷を元に造られた空間らしい。地の利があるのは向こうだけではないらしい。これなら、まだ勝ち目はあるかも。
「おい貴様。今の状況を答えろ。さっきから何が何だか……」
「怖くないんですか?」
俺がそう聞くと、彼は鼻で笑って答えた。
「これしきが怖くて、どうして戦ができようか」
「違い無いな」
これなら、多少話しても大丈夫かも知れないな。俺は今の状況と、これからやるべき事を話した。彼は少し、この場所について思い出そうとしているようだった。
「それなら、昔某がよく隠れていた場所がある。某は町人の出でな。多少覚えはある」
「なら、なるべく見つからないように隠れてください。先生、お姉ちゃん、行きましょう」
俺はどこかに去って行くお侍を尻目に、いつもの二人と移動を始めた。
しかし、どこに隠れるのが良いんだろう。この時代の建物の造りは分からないし、何より土地勘も無い。どういう所に隠れれば見つかり難いかとかさっぱりだ。さっきのお侍に多少聞いておけば良かったかな。
「で、どこに隠れる?」
「取り敢えず、建物の中に隠れましょう。押し入れとかもあるでしょうし」
「押し入れ……閉所……フフフ、お姉ちゃん良い事思い付いちゃった」
オイ。今はそういう事言ってる場合じゃ……いやまあ、確かに今真剣になっても変わらないか。でも、隠れる事だけ考えるようにしてほしい。
俺達は霊力をなるべく隠して、それぞれの家の押し入れに隠れた。多分、奴は霊力の感知能力も高い。霊力は隠すに越した事は無いだろう。
そう言えば、大多数の一般人は放置して来たが、大丈夫だっただろうか。まあ、面倒だし良いか。隠れた以上、俺にはもう出る必要が無い。適当な暇潰しでもして待つか。俺は持って来ていた小説を開き、読み始める。秋原祥子作品はまだ読んだ事無かったしな。適当な代表作を持って来ておいたのだ。
先生はこういうのをよく知っている。年代に関わらず、自身が『面白い』と感じた作品を、全て覚えているのだ。先生の実年齢は知らないが、どう考えても生まれていない筈の作品も多く読んでいるらしい。それも名作とかの話ではなく、殆ど無名の作家の作品もだ。正直、人間業とは思えない。
暫く隠れていると、外で霊力の反応があった。どうやら、あの神が何かしたようだ。さっきと同じなら一時間隠れ続ける事にはなるが、俺にはやれる事が無い。無視しよう。
しかし、妙に落ち着かない。俺は狭くて暗い場所でも平気な性格だが、さっきから少しそわそわする。小説にも集中し辛い。外に出ようか。いや、外に出たら見つかるだろう。いくら落ち着かないからと言って、自ら危険を冒すのは駄目だ。それに、もし他の面子が全員見つかっていたら、俺が見つかった時点でゲームオーバーだ。我慢しよう。
俺は違和感を抱えたまま、時間が過ぎるのを待った。瞑想しようとも考えたが、それでは霊力が隠せない。俺は本当にぼーっとして、時間を潰した。
今どれ位の時間が過ぎたかも分からなくなった頃、外から鐘の音が聞こえた。どうやらゲームクリアらしい。俺は外に出る前に、スタート地点に移動させられた。
「あ、お侍」
「おお。貴様も残っていたようだな」
ふむ。やはり故郷だけあって、しっかり見つからない所に隠れられていたらしい。土地勘という物は侮れないな。
「あれ?またお兄ちゃんに負けちゃった」
「はは。まあ、勝ちは勝ちだ。質問に答えてもらうぞ」
「いいよ。何が聞きたいの?」
さて何を聞こう。ここに居る理由か、権能の内容か。或いはもっと別の……いや、ここは一応、ここに居る理由を聞いておこう。もしかしたら、ここから全員を元の場所に戻す事もできるかも。
「じゃあ、なんで君はここに居る?どうやって来た?」
「『退魔師』って名乗った人が、僕をここに置いて行ったんだ。『適当な奴と遊べ』って言ってね」
ふむ。益々謎が深まるな。協会の履歴に、『神と接触した』という記録は多くある。神事だけに限らず、ご機嫌取りなんかもあるからだ。しかしその中に、『神を神隠しに放置した』なんて馬鹿げた記録は無い。正直、この神隠しが協会の管理下に無いだけでも不思議なのに、『退魔師』という言葉が出て来るとは。ここまで来ると、もう本当に訳が分からない。
「あ、皆を戻すの忘れてた」
そう言った神が指を鳴らすと、先生達を含めた全ての人間が、この場所に集まった。
「先生!お姉ちゃん!」
「どうやらクリアできたようだね」
「悔しい!」
この二人も捕まっていたとは。正直、俺だけが見つからなかった理由が分からないな。やはり何かしらの権能を使ったんだろうか。次はそれについて聞こう。
「次は何で遊ぶんだ?」
「次は『ベーゴマ』だよ!ちょっと待ってて、今準備するから……」
その瞬間、子供の神の頭が、何かに貫かれた。一般人は泣き喚き、侍は刀を構え、俺達は自然に戦闘するのだと察知し、身構える。
今一瞬だけ、何かが見えた。今は影も形も無いが、神の頭を貫いた物が見えた。飛んできた方向を考えると、俺達の右に、この状況を作った人間が居る。俺はその方向を見据えて、走り出す。
「八神くん!」
「俺は追います!先生達は取り敢えず、一般人を安全な場所まで!」
「分かった!お姉ちゃんに任せなさい!」
犯人は誰だ?霊力の感知にまるで引っ掛からなかった。もう一体の神?なら何故殺そうとした?敵対?何故?
様々な疑問を抱えたまま、俺は建物の屋根から屋根へと飛び移り、敵が向かったであろう方角を目指す。
空間には、亀裂が入っていた。
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