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047 一騎討ち
しおりを挟むガッチャーン!
けたたましく鳴り響いたのはガラスが割れる音。
窓から外へと飛び出したのは、布にくるまれた牙寿郎だ。
わたしの仕掛けた罠にはまって、みずから死地へと足を踏み入れた隻眼の死神。
直後にダイナマイトのおもちゃが破裂して、屋内にまき散らされた大量の散弾たち。
いかに優れた目と身体能力を誇る男とて、さすがにこれはかわしきれない。
だがしかし――
絶対絶命のピンチにあって、牙寿郎はとっさに腕をのばし、近くの陳列台に置かれていた生地を引っ掴んだ。これをマントのように頭からかぶることによって、散弾の嵐を防いだばかりか、強引に脱出をも果たす。
一連の牙寿郎の行動を、わたしは身を潜めていたスカートのなかから見ていた。
ありえない超人っぷりに目を見張る。
信じられない光景に愕然とするも、そのわりには妙に落ちついている。
――あぁ、やっぱりダメだったか……
と諦め、受け入れている自分がいたからだ。
わたしなりに知恵を絞って、あれこれと工夫をしてみたけれども。
これならばきっとイケるという手応えみたいなのが、どうしても湧いてこなかったのだ。
それでも他に方法を思いつかなかったので、やるしかなかった。
だが、結果はご覧の通りにて。
「くっ、しょうがない、こうなったらプランBよ!」
わたしは自分が隠れているスカートをはいているマネキンの両足を抱きかかえるなり、「おりゃ」と持ち上げては、煙にまぎれながらよちよち出口へと向かった。
〇
開けっぱなしの扉や割れた窓から、もうもうと煙が立ち昇っている。
爆発したダイナマイトの余波が店の表にまでおよんでおり、一帯はうっすらと薄モヤがかかったような有り様になっていた。
「ゲホゲホ、くそっ、なんてえげつねえマネをしやがる。とんでもねえ嬢ちゃんだぜ」
間一髪のところを逃れた牙寿郎が、涙目で悪態をつきながら立ち上がる。
そこへドドドと向かってくる人影があった。
隻眼の視界が涙でにじむ、粉と煙のせいもあってよく見えない。
だが、それでも自分の方へと近づいてくる者がいるのはすぐにわかった。
牙寿郎はすかさず二丁拳銃を抜き、バンバンと迎え討つ。
全弾命中!
計十一発ものスポンジ弾をまとめて喰らった敵影がぐらりとかしぐ。
「最後に決死の特攻をかけてきたか……。フッ、狙いは悪くなかったぜ。もしも相手がオレじゃなかったら成功していたかもしれんな」
くるくると銃を手の中で回してから、スチャッと腰のホルスターへと華麗に収納するのとほぼ同時に、どうと敵影が倒れた。
でも、その刹那のこと。
ふわりとめくれたスカート、奥から小さな影が飛び出す。
わたしだ。
「うぉおぉぉぉーっ!」
雄叫びをあげてはいっきに詰め寄る。
もう勝負はついたと油断していた牙寿郎は、いきなり突っ込んできたわたしに面喰らいながらも、仕舞ったばかりの銃の一丁をすぐさま抜いた。
優れたガンマンである牙寿郎は、全弾を撃ち尽くすことなく念のためにと一発だけ残していたのだ。
この時点で互いの距離は、ほぼないにも等しい。
零距離にて「「バンッ!」」
ふたつの銃声が重なった。
わたしの放ったスポンジ弾がついに牙寿郎を捉えた。彼の左肩にヒットする。
けれども牙寿郎の放った銃弾もまたわたしの額に命中する。
――相討ち!?
いや、両者の弾が当たった箇所を比べたら差は歴然にて。
せめてもう少し胸の中央寄りのところに当たっていたら……
「なっ! ここまでやってコレなの……ぐぬぬ、む、無念。ガクリ」
やられた者は死体役に徹する。
それがこのサバイバルゲームの掟にて。
わたしはばたりと大の字にひっくり返った。
直後に、ドォオォォォォォーン!
ゲームの終了を告げる空砲が鳴り響いた。
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