28 / 53
第二部
Ⅹ
しおりを挟む
デスクに座る俺は、昨日の水族館デートの余韻がまだ心に残っていた。
「舟形先輩、おはようございます!」
明るく挨拶しながら、早速昨日の話を切り出す。
「実は昨日、水族館に行ってきたんです。ペンギンがちょこちょこ歩くのとか、イルカのジャンプとか……すごく感動しました」
話しながら思わず目を輝かせる。
舟形先輩は微笑みながら聞いているが、話の端々に出てくる「課長」の名前に、ふと耳を澄ます。
「……白鷹課長と一緒に行ったのか?」
「はい! 課長……、迅さんと一緒だったんです。迅さん、イルカショーのときに手を握ってくれたり、大きいペンギンのぬいぐるみも買ってくれたりして……本当に優しくて、なんていうか……すごく嬉しかったです」
舟形先輩は少し苦笑い。
「なるほど……直樹、お前、ちょっと惚気てるな?」
「えっ、いや、違います! 水族館の話ですよ、お魚やイルカの話ですって……」
必死に言い訳するが、頬が赤くなるのを舟形先輩は見逃さない。
「……まぁ、お前が楽しそうならいいんだけどさ」
舟形先輩はにやりと笑う。
俺は照れながらも、自然に昨日の思い出を語り続ける。
「ペンギンのぬいぐるみ、家に帰ってからもずっと抱っこしてて……本当に幸せで……」
舟形先輩は心の中で思う。
「……直樹、デートの話をお魚の話に混ぜつつ、完全に惚気てるぞ……。本当に楽しかったんだろうな。……白鷹課長、大変そうだ」
俺は何気なく楽しそうに話しただけなのに、知らず知らずのうちに、周囲にラブラブオーラを振りまいていたみたいだった。
資料に目を通しながら、頭の中には昨日の水族館デートの光景がちらつく。
「ペンギンのぬいぐるみ……抱っこしたいなぁ……」
ふと微笑んで、手元の書類に目を戻すが、また心がふわりと浮つく。
イルカショーで手を握られた瞬間、ソファで見守られながら話したこと――
「お前、本当に無自覚に可愛いな……」
あの声が頭の中でくるくる回る。
直樹は思わず机に手を置いたまま小さくため息。
「……迅さん、ほんと、優しいな……」
口に出すわけではないけれど、心の奥でじんわりと温かさが広がる。
舟形先輩が隣で作業をしているのを意識しつつも、視線の端には昨日のデートの余韻が残る。
「ああ、俺、こんなに幸せでいいのかな……」
胸の奥がきゅんと締め付けられるような感覚に、思わず肩を小さく揺らす。
目の前の仕事に集中しようと努力するのだが、ふと手元にあるペンを握り直しながら、心は迅さんの笑顔と手の温もりを思い返していた。
「今日も、帰ったら迅さんに会える……」
そう思うだけで、頬は自然と赤みを帯び、仕事に向かう背中に小さな力が入る。
その時、隣の舟形先輩がちらりと俺を見て言う。
「おい、直樹。お前、まだ夢見てるのか?ちゃんと仕事しないと、俺、白鷹課長に告げ口しちゃうぞ」
「えっ、そ、そんなこと……!」
慌てて書類に目を戻す。
しかし、舟形先輩の視線は真剣だ。
「お前がデレデレしてるのは可愛いけど、仕事中は集中しろ」
直樹はハッと我に返り、ペンを握り直す。
「……はい! すみません、舟形先輩!」
心の中で、ちょっと悔しいけど、背筋が伸びる思い。
しばらくは、舟形先輩にチェックされながら資料整理やメールの返信、プレゼン資料の修正に集中。
「ああ、やっぱり舟形先輩の言う通りだ……ちゃんとやらなきゃ……」
机に向かって集中すると、デートの余韻はまだ胸に残るけれど、手元の仕事に自然と気持ちが入っていく。
ふと、昨日のキーホルダーやぬいぐるみのことを思い出し、微笑みつつも、ペンを走らせ、パソコンの画面を確認。
「よし……今日も頑張ろう」
甘く温かい余韻と、仕事をやり切る小さな決意が混ざる昼下がりだった。
家のドアを開けると、迅さんの笑顔が目に飛び込む。
「おかえり、直樹。今日も一日お疲れ」
「ただいまです、迅さん……!」
俺は脱ぎかけのコートもそこそこに、リビングに飛び込み、ぺたんとソファに腰を下ろす。
「今日、ちゃんと仕事頑張ったんです……舟形先輩に『白鷹課長に直樹が仕事サボってるって告げ口するぞー』って言われて、ハッとして」
思わず手を握りながら、嬉しそうに報告する。
「それで、資料の整理もプレゼンの修正も全部終わらせてきました……!」
顔を赤くして、ちょっと得意げな笑みを浮かべる。
迅さんはその様子を見て、自然に手を伸ばして直樹の頭を撫でる。
「……よくやったな、直樹」
その声に、直樹は胸がぎゅっと熱くなる。
「迅さん……褒めてくれるんですか……?」
「当然だろ。頑張ったお前をちゃんと褒めないでどうする」
直樹はぬいぐるみを抱きしめたまま、思わずソファにもたれかかる。
「迅さん……俺、今日、すごく幸せです……」
迅さんは笑いながら、直樹の手をそっと握る。
「……お前、今日も可愛いな。無自覚に惚れさせやがって」
俺は顔を赤くしながらも、ぬいぐるみを抱きしめ、安心したように体を預ける。
「えへへ……迅さんに褒めてもらえて、やっぱり嬉しいです……」
そのままソファに座ったまま、二人で静かに、甘く温かい時間を共有した。
迅さんが作ってくれた夕ごはんを食べて、
お風呂を済ませて、俺はソファに座り、ぬいぐるみを抱きしめる。
今日一日の頑張りとデートの余韻を思い返していた。
「迅さん……今日も、美味しいごはんと、いっぱい褒めてくれて……ありがとうございます……」
小さな声でつぶやくと、迅さんはすぐに隣に座り、そっと肩に手を回す。
「お前、本当に無自覚に可愛いな……」
俺は顔を真っ赤にしながらも、安心したようにぺたりと身を寄せる。
「褒めてもらえると、なんだか……嬉しすぎて……」
ぬいぐるみを抱きしめたまま、少し照れた笑みを浮かべる。
迅さんは優しく頭を撫でながら、ささやく。
「……お前がこんなに一生懸命で、頑張って、甘えてくるから……たまらないんだ」
俺はその言葉に胸がぎゅっと温かくなり、思わず顔を上げてちらりと見つめる。
「課長……俺、今日、すごく幸せでした……」
「そうか……なら、今夜はこのままゆっくり休め」
迅さんは俺の肩を抱き寄せ、二人でソファに沈み込むようにして座る。
俺はぬいぐるみを抱えたまま、少しずつまどろみながら、迅さんの温もりに包まれ、口付けをされる。
「……迅さん……ずっと、こうしていてくれますか……」
「……ああ、ずっとだ」
迅さんの声に、胸はぽかぽかと温かく、自然と安心の笑みがこぼれる。
夜の静かなリビングには、甘く穏やかな時間だけが流れていった。
「舟形先輩、おはようございます!」
明るく挨拶しながら、早速昨日の話を切り出す。
「実は昨日、水族館に行ってきたんです。ペンギンがちょこちょこ歩くのとか、イルカのジャンプとか……すごく感動しました」
話しながら思わず目を輝かせる。
舟形先輩は微笑みながら聞いているが、話の端々に出てくる「課長」の名前に、ふと耳を澄ます。
「……白鷹課長と一緒に行ったのか?」
「はい! 課長……、迅さんと一緒だったんです。迅さん、イルカショーのときに手を握ってくれたり、大きいペンギンのぬいぐるみも買ってくれたりして……本当に優しくて、なんていうか……すごく嬉しかったです」
舟形先輩は少し苦笑い。
「なるほど……直樹、お前、ちょっと惚気てるな?」
「えっ、いや、違います! 水族館の話ですよ、お魚やイルカの話ですって……」
必死に言い訳するが、頬が赤くなるのを舟形先輩は見逃さない。
「……まぁ、お前が楽しそうならいいんだけどさ」
舟形先輩はにやりと笑う。
俺は照れながらも、自然に昨日の思い出を語り続ける。
「ペンギンのぬいぐるみ、家に帰ってからもずっと抱っこしてて……本当に幸せで……」
舟形先輩は心の中で思う。
「……直樹、デートの話をお魚の話に混ぜつつ、完全に惚気てるぞ……。本当に楽しかったんだろうな。……白鷹課長、大変そうだ」
俺は何気なく楽しそうに話しただけなのに、知らず知らずのうちに、周囲にラブラブオーラを振りまいていたみたいだった。
資料に目を通しながら、頭の中には昨日の水族館デートの光景がちらつく。
「ペンギンのぬいぐるみ……抱っこしたいなぁ……」
ふと微笑んで、手元の書類に目を戻すが、また心がふわりと浮つく。
イルカショーで手を握られた瞬間、ソファで見守られながら話したこと――
「お前、本当に無自覚に可愛いな……」
あの声が頭の中でくるくる回る。
直樹は思わず机に手を置いたまま小さくため息。
「……迅さん、ほんと、優しいな……」
口に出すわけではないけれど、心の奥でじんわりと温かさが広がる。
舟形先輩が隣で作業をしているのを意識しつつも、視線の端には昨日のデートの余韻が残る。
「ああ、俺、こんなに幸せでいいのかな……」
胸の奥がきゅんと締め付けられるような感覚に、思わず肩を小さく揺らす。
目の前の仕事に集中しようと努力するのだが、ふと手元にあるペンを握り直しながら、心は迅さんの笑顔と手の温もりを思い返していた。
「今日も、帰ったら迅さんに会える……」
そう思うだけで、頬は自然と赤みを帯び、仕事に向かう背中に小さな力が入る。
その時、隣の舟形先輩がちらりと俺を見て言う。
「おい、直樹。お前、まだ夢見てるのか?ちゃんと仕事しないと、俺、白鷹課長に告げ口しちゃうぞ」
「えっ、そ、そんなこと……!」
慌てて書類に目を戻す。
しかし、舟形先輩の視線は真剣だ。
「お前がデレデレしてるのは可愛いけど、仕事中は集中しろ」
直樹はハッと我に返り、ペンを握り直す。
「……はい! すみません、舟形先輩!」
心の中で、ちょっと悔しいけど、背筋が伸びる思い。
しばらくは、舟形先輩にチェックされながら資料整理やメールの返信、プレゼン資料の修正に集中。
「ああ、やっぱり舟形先輩の言う通りだ……ちゃんとやらなきゃ……」
机に向かって集中すると、デートの余韻はまだ胸に残るけれど、手元の仕事に自然と気持ちが入っていく。
ふと、昨日のキーホルダーやぬいぐるみのことを思い出し、微笑みつつも、ペンを走らせ、パソコンの画面を確認。
「よし……今日も頑張ろう」
甘く温かい余韻と、仕事をやり切る小さな決意が混ざる昼下がりだった。
家のドアを開けると、迅さんの笑顔が目に飛び込む。
「おかえり、直樹。今日も一日お疲れ」
「ただいまです、迅さん……!」
俺は脱ぎかけのコートもそこそこに、リビングに飛び込み、ぺたんとソファに腰を下ろす。
「今日、ちゃんと仕事頑張ったんです……舟形先輩に『白鷹課長に直樹が仕事サボってるって告げ口するぞー』って言われて、ハッとして」
思わず手を握りながら、嬉しそうに報告する。
「それで、資料の整理もプレゼンの修正も全部終わらせてきました……!」
顔を赤くして、ちょっと得意げな笑みを浮かべる。
迅さんはその様子を見て、自然に手を伸ばして直樹の頭を撫でる。
「……よくやったな、直樹」
その声に、直樹は胸がぎゅっと熱くなる。
「迅さん……褒めてくれるんですか……?」
「当然だろ。頑張ったお前をちゃんと褒めないでどうする」
直樹はぬいぐるみを抱きしめたまま、思わずソファにもたれかかる。
「迅さん……俺、今日、すごく幸せです……」
迅さんは笑いながら、直樹の手をそっと握る。
「……お前、今日も可愛いな。無自覚に惚れさせやがって」
俺は顔を赤くしながらも、ぬいぐるみを抱きしめ、安心したように体を預ける。
「えへへ……迅さんに褒めてもらえて、やっぱり嬉しいです……」
そのままソファに座ったまま、二人で静かに、甘く温かい時間を共有した。
迅さんが作ってくれた夕ごはんを食べて、
お風呂を済ませて、俺はソファに座り、ぬいぐるみを抱きしめる。
今日一日の頑張りとデートの余韻を思い返していた。
「迅さん……今日も、美味しいごはんと、いっぱい褒めてくれて……ありがとうございます……」
小さな声でつぶやくと、迅さんはすぐに隣に座り、そっと肩に手を回す。
「お前、本当に無自覚に可愛いな……」
俺は顔を真っ赤にしながらも、安心したようにぺたりと身を寄せる。
「褒めてもらえると、なんだか……嬉しすぎて……」
ぬいぐるみを抱きしめたまま、少し照れた笑みを浮かべる。
迅さんは優しく頭を撫でながら、ささやく。
「……お前がこんなに一生懸命で、頑張って、甘えてくるから……たまらないんだ」
俺はその言葉に胸がぎゅっと温かくなり、思わず顔を上げてちらりと見つめる。
「課長……俺、今日、すごく幸せでした……」
「そうか……なら、今夜はこのままゆっくり休め」
迅さんは俺の肩を抱き寄せ、二人でソファに沈み込むようにして座る。
俺はぬいぐるみを抱えたまま、少しずつまどろみながら、迅さんの温もりに包まれ、口付けをされる。
「……迅さん……ずっと、こうしていてくれますか……」
「……ああ、ずっとだ」
迅さんの声に、胸はぽかぽかと温かく、自然と安心の笑みがこぼれる。
夜の静かなリビングには、甘く穏やかな時間だけが流れていった。
22
あなたにおすすめの小説
恋が始まる日
一ノ瀬麻紀
BL
幼い頃から決められていた結婚だから仕方がないけど、夫は僕のことを好きなのだろうか……。
だから僕は夫に「僕のどんな所が好き?」って聞いてみたくなったんだ。
オメガバースです。
アルファ×オメガの歳の差夫夫のお話。
ツイノベで書いたお話を少し直して載せました。
幸せごはんの作り方
コッシー
BL
他界した姉の娘、雫ちゃんを引き取ることになった天野宗二朗。
しかし三十七年間独り身だった天野は、子供との接し方が分からず、料理も作れず、仕事ばかりの日々で、ずさんな育て方になっていた。
そんな天野を見かねた部下の水島彰がとった行動はーー。
仕事もプライベートも完璧優秀部下×仕事中心寡黙上司が、我が儘を知らない五歳の女の子と一緒に過ごすお話し。
【完結】浮薄な文官は嘘をつく
七咲陸
BL
『薄幸文官志望は嘘をつく』 続編。
イヴ=スタームは王立騎士団の経理部の文官であった。
父に「スターム家再興のため、カシミール=グランティーノに近づき、篭絡し、金を引き出せ」と命令を受ける。
イヴはスターム家特有の治癒の力を使って、頭痛に悩んでいたカシミールに近づくことに成功してしまう。
カシミールに、「どうして俺の治癒をするのか教えてくれ」と言われ、焦ったイヴは『カシミールを好きだから』と嘘をついてしまった。
そう、これは───
浮薄で、浅はかな文官が、嘘をついたせいで全てを失った物語。
□『薄幸文官志望は嘘をつく』を読まなくても出来る限り大丈夫なようにしています。
□全17話
勘違いへたれアルファと一途つよかわオメガ──ずっと好きだったのは、自分だけだと思ってた
星群ネオン
BL
幼い頃に結婚の約束をした──成長とともにだんだん疎遠になったアルファとオメガのお話。
美しい池のほとりで出会ったアルファとオメガはその後…。
強くてへたれなアルファと、可愛くて一途なオメガ。
ありがちなオメガバース設定です。Rシーンはありません。
実のところ勘違いなのは二人共とも言えます。
α視点を2話、Ω視点を2話の後、その後を2話の全6話完結。
勘違いへたれアルファ 新井裕吾(あらい・ゆうご) 23歳
一途つよかわオメガ 御門翠(みがと・すい) 23歳
アルファポリス初投稿です。
※本作は作者の別作品「きらきらオメガは子種が欲しい!~」や「一生分の恋のあと~」と同じ世界、共通の人物が登場します。
それぞれ独立した作品なので、他の作品を未読でも問題なくお読みいただけます。
【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
AI比較企画作品
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる