無自覚オメガとオメガ嫌いの上司

蒼井梨音

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第二部

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青い光に包まれた水族館の館内。
俺は目を輝かせながら、泳いでいる色とりどりの魚やクラゲを見ている。
「わぁ……きれい……」
思わず小さな声でつぶやくと、手をつないで歩く迅さんが微笑む。

「楽しそうだな、直樹」
「はい! すごく……すごく綺麗で……」
俺は少し興奮しながらも、ふと自分の手を見下ろす。
「あ、手、つないでますね……」
照れたように小さく笑う直樹に、迅さんはさっと手を握り直す。
「当たり前だろ。迷子になったら大変だ、お前は俺の直樹だ」
その一言に、頬が赤く染まっていくのがわかる。


プロジェクトが終わって、俺が「デートがしたい」と言ったら、迅さんは日曜日に水族館に連れてきてくれた。
迅さんの運転でドライブしながら、海の近くの水族館まで、朝から俺のテンションは爆上がりだった。


ペンギンの展示に差し掛かると、俺は目を輝かせながら歓声を上げる。
「かわいい……! かわいいですよ、見てください! あのちょこちょこ歩く感じ、たまらないです!」
「……お前、本当に楽しそうだな」
迅さんは小さく笑いながら、ペンギンの前で俺を軽く抱き寄せる。
俺は照れながらも、ぎゅっとしがみついた。

それから、イルカショーの時間になると、俺は興奮で体を揺らしながら迅さんの手を握る。
「すごい……ジャンプの高さ、めっちゃ高い! 想像以上です……」
「よし、写真撮ってやろう」
迅さんがスマホを取り出すと、俺は思わず顔を隠す。
「や、やめてください……俺はいいですって、恥ずかしいです……」
「いいだろ、俺は直樹のほうが可愛いから撮りたいんだ」
無理やりではなく、微笑みながらそっとシャッターを押す迅さんに、俺は小さく笑った。

休憩スペースでアイスを食べながら、二人でベンチに座る。
「迅さん……、楽しいです……」
「俺もだ。お前がこんなに楽しそうにしてるのを見てるだけで、楽しいし、幸せな気分になる」
俺は顔を赤くしながら、照れ隠しに小さくアイスを口に運ぶ。
「迅さん、俺、ずっとこのままがいいです……」
迅さんは笑いながら、俺の髪にそっと手を通す。
「……俺もだ。ずっと一緒にいような」

水族館を出る頃になっても、俺は興奮冷めやらずで、心もお腹も満たされたまま。
初めてのデートだったけど、自然に甘えられて、照れて、そして愛される幸福を全身で感じられた。


水族館を出て、駐車場に向かう俺は、小さな紙袋を握りしめて、心臓がドキドキしている。

「迅さん……、ちょっと……いいですか?」
俺はそっと紙袋を差し出す。
「ん?」
迅さんが受け取ると、中にはお揃いの小さなキーホルダーが入っていた。
「……これ、直樹が?」
「はい……迅さんと同じのが欲しくて……」
俺は顔を赤くして、恥ずかしそうに下を向いてしまう。
迅さんは一瞬目を細め、にやりと笑った。
「……お前、反則だろ……かわいすぎる」

車に乗り込むと、迅さんが運転席に座り、エンジンをかける。
俺は助手席で迅さんが買ってくれたペンギンのぬいぐるみを抱え、窓の外を見ながらも胸の中はドキドキでいっぱいだった。
「……迅さん、運転姿カッコいい……」
思わず口に出てしまった言葉に、迅さんはちらりと横目で微笑む。
「……お前、全然油断できないな」
その声だけで、俺の頬はまた赤くなる。


帰宅すると、俺はペンギンのぬいぐるみを抱え、ソファにちょこんと座る。
「今日、本当に楽しかったです……」
まだ頬を赤くて、興奮がおさまらないのがわかる。
迅さんはソファの隣に腰を下ろし、自然に肩に手を回す。
「そうか……お前が楽しそうだと、俺も嬉しい」
その声に、俺は思わず顔を上げて、にっこりと微笑む。

「ペンギンの歩き方とか、イルカショーもすごくて……あの瞬間、心が弾けちゃいました」
「ふふ、よかったな。俺も一緒に見れて楽しかった」
迅さんは優しく微笑みながら、俺の頭をそっと撫でる。

俺はペンギンのぬいぐるみを抱きしめながら、デートの思い出をぽつぽつ話す。
「キーホルダーも……ちょっと照れちゃいましたけど……、迅さんとお揃いって、すごく嬉しいです」
「お前はほんと……無自覚に、可愛いな」
迅さんは優しく笑い、俺の手を取って軽く握る。

まったりとした空気の中、俺はデートの余韻に浸り、ソファに座ったまま幸せそうに微睡む。
迅さんはそんな俺を見守りながら、心の中でつぶやく。

「……俺の直樹は、今日もやっぱり可愛くて、たまらない」

外はもう薄暗く、でも二人のリビングには、初めてのデートの余韻と、温かい幸福感だけが静かに残っていた。
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