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第四部
Ⅸ
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会社を出たらすぐにタクシーに乗せられ、すぐに帰宅した。
俺はずっと迅さんに顔をうずめてた。
……いい匂い。
俺は、気持ち悪さとかだるさとか、すっかりよくなってニヨニヨしていた。
玄関に入ると、すぐに迅さんが抱きしめて、キスをしてくれた。
「おかえり。……こんなになっちゃうのに仕事行くとか、やめろよ、心配で仕方ない……」
心配そうな優しい顔の迅さんを見上げる。
「……迅さん見たら安心しちゃって。……だ、から、迅さんのせいです、よ……」
顔が正気を保てなくて、緩んだまま。
「……ヒートきたんだな」
迅さんはそう言うと、俺にシャワーを浴びさせて、食べやすいものを食べさせてくれ、寝室へ連れて行った。
もうヒートの熱にやられて、つらかった俺はされるがまま。
ベッドに向かい合って座って、迅さんが俺の頭を支えて、キスをする。
何度も何度も……
角度を変えて、深く深く……
迅さんの分厚い舌に翻弄されて
俺は頭がぽおってなって
唾液が流れててる。
もうそれだけで、達しそうになってる。
「エロい顔、かわいいな、直樹は……」
迅さんはそう言うと、俺をベッドに押し倒して、腕を縫いつける。
「……は、早く、迅さんが……欲、しい……です」
息も絶え絶え。
迅さんのアルファの匂いにやられて、俺のオメガがどんどん引き出されていく。
「……ばか、煽るなよ」
迅さんを俺に覆い被さってくる。
項の匂いを嗅いでいる。
「……すっげぇ、匂い」
「……俺を、迅さんの、番にして、ください」
それから、迅さんは優しく俺を抱いてくれて、
項を噛まれたときに、身体に電気が走ってみたいになって、迅さんを好きって気持ちで満たされて。
……俺は意識を手放した。
「……直樹、平気か?」
枕元には、ほんのりと落ち着く香り。
記憶はまだ霧がかかっているのに、その匂いだけははっきりと胸の奥に染みていて、
自分が危険ではなく、守られている場所にいるとすぐに分かった。
俺は目を覚ます。
いつものスエット着てて、シーツもきれいになってて、項にはガーゼがあててあった。
「……迅さん」
かすれた声を出した瞬間、胸の奥がとろんと緩んだ。
なんだろう、この感じ。
昨日までの自分とは違う。
体の奥に、静かで確かな“繋がり”が残っている。
迅さんがそっと近づき、頭を撫でるように手を置いた。
「まだ無理はしなくていいよ。……お腹すいてない?」
……ぐぅぅー
腹の音が響いた。
「……あ、うん、はい」
「食事にしようか」
立とうとしたけど、足に力が入らなくて、迅さんにもたれながら歩く。
ダイニングにはいつもと同じような湯気のたった味噌汁があって、迅さんの焼いた鮭があった。
「こういうのでよかった? 刺激物は避けた方がいいと思って」
「……すごくいいです。なんか……落ち着きます、ね」
箸を持つ指が、どこか震えているのを自分でも分かった。
迅さんは何も言わず、ただ優しく微笑んだ。
一口味噌汁を飲んだだけで、胸がじんわりと温まる。
数日ぶんの空白があるはずなのに、不安は一切なくて、
“ここは自分の帰る場所なんだ”と身体が勝手に理解していた。
「俺、どのくらい寝てたんですか」
「んー、俺が直樹の会社に行ったのが木曜で、今日は火曜だ」
……四日も記憶がない!
俺が驚いていると、
「今週いっぱいは休むと言ってあるから大丈夫だ」
えっ! そうなの?
「……あ、でも俺、もう大丈夫です……」
「何言ってんだよ、まだ体がぼろぼろじゃねえかよ、少し休め」
体がぼろぼろって、なんか恥ずかしくなる。
「俺も今週中は家でできる作業くらいだから、一緒にいてやるよ」
ぶわって、優しい気持ちになる。
「……はいっ!」
食事を片付けたあと、自然な流れでソファに座った。
陽の光の入るリビングはあたたかく、
気づけば、迅さんの肩にもたれかかっていた。
「眠い?」
「……ちょっとだけ。でも離れたくないです」
「じゃあ、このままでいいよ」
大きな手が、背中をゆっくり撫でてくれる。
そのリズムが心臓と同じ速度になって、
まるで世界がゆっくり呼吸しているみたいだ。
俺がぽつりと呟いた。
「……俺、仕事もしたいけど……帰る場所は、ここがいいです」
「うん。ここはいつでも直樹の場所だよ」
「迅さんの……隣で」
「そう。俺の隣で」
静かな部屋に、互いの呼吸だけが混ざり合った。
俺は目を閉じた。
包まれて、ほどけて、ようやく見つけた“自分の場所”の感触に心が満たされていく。
この時間がずっと続けばいいなと、心から思った。
俺はずっと迅さんに顔をうずめてた。
……いい匂い。
俺は、気持ち悪さとかだるさとか、すっかりよくなってニヨニヨしていた。
玄関に入ると、すぐに迅さんが抱きしめて、キスをしてくれた。
「おかえり。……こんなになっちゃうのに仕事行くとか、やめろよ、心配で仕方ない……」
心配そうな優しい顔の迅さんを見上げる。
「……迅さん見たら安心しちゃって。……だ、から、迅さんのせいです、よ……」
顔が正気を保てなくて、緩んだまま。
「……ヒートきたんだな」
迅さんはそう言うと、俺にシャワーを浴びさせて、食べやすいものを食べさせてくれ、寝室へ連れて行った。
もうヒートの熱にやられて、つらかった俺はされるがまま。
ベッドに向かい合って座って、迅さんが俺の頭を支えて、キスをする。
何度も何度も……
角度を変えて、深く深く……
迅さんの分厚い舌に翻弄されて
俺は頭がぽおってなって
唾液が流れててる。
もうそれだけで、達しそうになってる。
「エロい顔、かわいいな、直樹は……」
迅さんはそう言うと、俺をベッドに押し倒して、腕を縫いつける。
「……は、早く、迅さんが……欲、しい……です」
息も絶え絶え。
迅さんのアルファの匂いにやられて、俺のオメガがどんどん引き出されていく。
「……ばか、煽るなよ」
迅さんを俺に覆い被さってくる。
項の匂いを嗅いでいる。
「……すっげぇ、匂い」
「……俺を、迅さんの、番にして、ください」
それから、迅さんは優しく俺を抱いてくれて、
項を噛まれたときに、身体に電気が走ってみたいになって、迅さんを好きって気持ちで満たされて。
……俺は意識を手放した。
「……直樹、平気か?」
枕元には、ほんのりと落ち着く香り。
記憶はまだ霧がかかっているのに、その匂いだけははっきりと胸の奥に染みていて、
自分が危険ではなく、守られている場所にいるとすぐに分かった。
俺は目を覚ます。
いつものスエット着てて、シーツもきれいになってて、項にはガーゼがあててあった。
「……迅さん」
かすれた声を出した瞬間、胸の奥がとろんと緩んだ。
なんだろう、この感じ。
昨日までの自分とは違う。
体の奥に、静かで確かな“繋がり”が残っている。
迅さんがそっと近づき、頭を撫でるように手を置いた。
「まだ無理はしなくていいよ。……お腹すいてない?」
……ぐぅぅー
腹の音が響いた。
「……あ、うん、はい」
「食事にしようか」
立とうとしたけど、足に力が入らなくて、迅さんにもたれながら歩く。
ダイニングにはいつもと同じような湯気のたった味噌汁があって、迅さんの焼いた鮭があった。
「こういうのでよかった? 刺激物は避けた方がいいと思って」
「……すごくいいです。なんか……落ち着きます、ね」
箸を持つ指が、どこか震えているのを自分でも分かった。
迅さんは何も言わず、ただ優しく微笑んだ。
一口味噌汁を飲んだだけで、胸がじんわりと温まる。
数日ぶんの空白があるはずなのに、不安は一切なくて、
“ここは自分の帰る場所なんだ”と身体が勝手に理解していた。
「俺、どのくらい寝てたんですか」
「んー、俺が直樹の会社に行ったのが木曜で、今日は火曜だ」
……四日も記憶がない!
俺が驚いていると、
「今週いっぱいは休むと言ってあるから大丈夫だ」
えっ! そうなの?
「……あ、でも俺、もう大丈夫です……」
「何言ってんだよ、まだ体がぼろぼろじゃねえかよ、少し休め」
体がぼろぼろって、なんか恥ずかしくなる。
「俺も今週中は家でできる作業くらいだから、一緒にいてやるよ」
ぶわって、優しい気持ちになる。
「……はいっ!」
食事を片付けたあと、自然な流れでソファに座った。
陽の光の入るリビングはあたたかく、
気づけば、迅さんの肩にもたれかかっていた。
「眠い?」
「……ちょっとだけ。でも離れたくないです」
「じゃあ、このままでいいよ」
大きな手が、背中をゆっくり撫でてくれる。
そのリズムが心臓と同じ速度になって、
まるで世界がゆっくり呼吸しているみたいだ。
俺がぽつりと呟いた。
「……俺、仕事もしたいけど……帰る場所は、ここがいいです」
「うん。ここはいつでも直樹の場所だよ」
「迅さんの……隣で」
「そう。俺の隣で」
静かな部屋に、互いの呼吸だけが混ざり合った。
俺は目を閉じた。
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この時間がずっと続けばいいなと、心から思った。
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