33 / 67
33
しおりを挟む
「リサ嬢は王都に来てから魔法が使えるようになったということですか」
ジョンさんに聞かれ、私はうなづいた。正式にはリサではなく、【私】になってからだろう。でもそれは言わない。
「それまでは使えなかったということですね」
ジョンさんはそう言ってから考え込んでいる。
「何かあるのか?」
ジョンさんの様子を見て王子が聞くと、陛下もダン様も興味深げにこちらを見ていた。
「いえ、昔読んだ本に書かれていたのを思い出したのです。魔法は生まれた土地を離れると使えなくなると」
え?そうなの?そんな設定あるの?と、私は口には出さないが驚いた。そんなことマンガでは触れていなかった。
「ということは、リサは王都で生まれたってことか?」
王子が驚いたように私を見た。いや、見られても困るんだけど。リサの出自はマンガでは不明のままだ。生まれてすぐの状態で孤児院の玄関前に捨てられていた、と書かれていたのみのはず。
「いや・・・そんなこと・・・でも・・・」
ダン様が歯切れ悪く1人で自問自答している。
「ダン様が考えていることは・・・私も想像したことと同じと思います」
「やはり・・・そうか。でも」
「それしかございませんでしょう」
ダン様とジョンさんは2人でうなづき合っている。何を考えているのだろう。どうせ的外れなことと思うが。
「叔父上、何を考えているんですか」
「つまりこういうことだろう」
それまで静かにしていた陛下が話し出した。よく通る声である。やっぱり舞台役者って感じなんだよな。陛下にスポットライトが当たっている感じだ。堂々とした立ち姿である。迂闊にも一瞬見惚れてしまった。
「魔法は主に貴族が使えるとされていた。稀に平民でも使える者がいるが、先祖を辿れば貴族がいたという」
王子はうなづきながら聞いている。律儀に頭を上下するので人形のようにも見えてくる。思わず笑いそうになるが、場はやや緊張感に満ちているので堪える。
「ということを踏まえると、リサは貴族の娘。貴族の血を引いているということだ」
王子は納得したように大きくうなづき、私を見た。その目が輝いているように見えて、私はゾッとした。確かマンガでもリサと王子が出会った頃、リサを見て王子の目が輝くシーンがあった。庶民のリサの反応が面白くて興味が沸いたからだ。その後、リサと王子はどんどん親しくなっていく。しかしそれを良く思わない人たちがリサをいじめる。それでも負けない2人。と、マンガは続くのだ。
まさか王子が今私に興味を持ったわけではないよね。興味を持たれると私は不幸になるのだ。注意しなくちゃ。
「ではなんで、孤児院に・・・」
王子の疑問にダン様は神妙な顔つきで言った。
「世の中には祝福されない出産があるのです」
王子がショックを受けた顔をした。
「え?どういうこと・・・ですか・・・」
そんなにショックを受けるようなことだろうか。と、思ったが温室育ちの王子には理解を超えていたのかもしれない。ダン様は王子から目を逸らし、陛下は優しげな目つきで息子を見守る。ジョンさんは何も言わずただ立っている。
おかしな沈黙が流れた。誰も何も言わない。そんなことよりも私が驚いたのは、リサが貴族の血を引いているかもしれないと解釈されていることだ。
「子どもを育てずに捨てた貴族がいる、ということですか」
王子の声には怒気が含まれている。手は小刻みに震えているし、顔は赤くなっている。
「せっかく授かった命を捨てるような行為!決して許されることではありません!」
それはそうだろうけどさ。何か事情があったのかもしれないよ。王子があんまりに怒っているので、私は逆に冷静になっていた。身分というものがあれば、好き合っていても結婚できなかったり、授かった命を育てられないこともあるんだよ。いいことでないことは重々承知しているけどさ、それでもリサは成長しているんだから今はそれでいいじゃないの。
「せっかくシュバシコウが神からの遣いで子を運んできたというのに。どうして無駄にできるのでしょうか。シュバシコウが気の毒です」
この世界ではシュバシコウが運ぶというんだね。コウノトリではなくて。王子らしい上品な言い方だね。と、聞いていたのだが、陛下とダン様の様子がやや変だ。
「父上、シュバシコウはカンカラ山にいるのでしょう。私が行って謝ってきましょうか」
もしかしてだけど、王子は赤ちゃんは本当にトリが運んでくると思っている?それともこの世界では本当にトリが運ぶのかな?
「殿下、このジョンめがきちんと教育いたしますよ」
というジョンさんの目はどこか虚ろだった。あ、知らないんだ。王子教育の欠如だね。思わず生温かい目になってしまうのだった。
ジョンさんに聞かれ、私はうなづいた。正式にはリサではなく、【私】になってからだろう。でもそれは言わない。
「それまでは使えなかったということですね」
ジョンさんはそう言ってから考え込んでいる。
「何かあるのか?」
ジョンさんの様子を見て王子が聞くと、陛下もダン様も興味深げにこちらを見ていた。
「いえ、昔読んだ本に書かれていたのを思い出したのです。魔法は生まれた土地を離れると使えなくなると」
え?そうなの?そんな設定あるの?と、私は口には出さないが驚いた。そんなことマンガでは触れていなかった。
「ということは、リサは王都で生まれたってことか?」
王子が驚いたように私を見た。いや、見られても困るんだけど。リサの出自はマンガでは不明のままだ。生まれてすぐの状態で孤児院の玄関前に捨てられていた、と書かれていたのみのはず。
「いや・・・そんなこと・・・でも・・・」
ダン様が歯切れ悪く1人で自問自答している。
「ダン様が考えていることは・・・私も想像したことと同じと思います」
「やはり・・・そうか。でも」
「それしかございませんでしょう」
ダン様とジョンさんは2人でうなづき合っている。何を考えているのだろう。どうせ的外れなことと思うが。
「叔父上、何を考えているんですか」
「つまりこういうことだろう」
それまで静かにしていた陛下が話し出した。よく通る声である。やっぱり舞台役者って感じなんだよな。陛下にスポットライトが当たっている感じだ。堂々とした立ち姿である。迂闊にも一瞬見惚れてしまった。
「魔法は主に貴族が使えるとされていた。稀に平民でも使える者がいるが、先祖を辿れば貴族がいたという」
王子はうなづきながら聞いている。律儀に頭を上下するので人形のようにも見えてくる。思わず笑いそうになるが、場はやや緊張感に満ちているので堪える。
「ということを踏まえると、リサは貴族の娘。貴族の血を引いているということだ」
王子は納得したように大きくうなづき、私を見た。その目が輝いているように見えて、私はゾッとした。確かマンガでもリサと王子が出会った頃、リサを見て王子の目が輝くシーンがあった。庶民のリサの反応が面白くて興味が沸いたからだ。その後、リサと王子はどんどん親しくなっていく。しかしそれを良く思わない人たちがリサをいじめる。それでも負けない2人。と、マンガは続くのだ。
まさか王子が今私に興味を持ったわけではないよね。興味を持たれると私は不幸になるのだ。注意しなくちゃ。
「ではなんで、孤児院に・・・」
王子の疑問にダン様は神妙な顔つきで言った。
「世の中には祝福されない出産があるのです」
王子がショックを受けた顔をした。
「え?どういうこと・・・ですか・・・」
そんなにショックを受けるようなことだろうか。と、思ったが温室育ちの王子には理解を超えていたのかもしれない。ダン様は王子から目を逸らし、陛下は優しげな目つきで息子を見守る。ジョンさんは何も言わずただ立っている。
おかしな沈黙が流れた。誰も何も言わない。そんなことよりも私が驚いたのは、リサが貴族の血を引いているかもしれないと解釈されていることだ。
「子どもを育てずに捨てた貴族がいる、ということですか」
王子の声には怒気が含まれている。手は小刻みに震えているし、顔は赤くなっている。
「せっかく授かった命を捨てるような行為!決して許されることではありません!」
それはそうだろうけどさ。何か事情があったのかもしれないよ。王子があんまりに怒っているので、私は逆に冷静になっていた。身分というものがあれば、好き合っていても結婚できなかったり、授かった命を育てられないこともあるんだよ。いいことでないことは重々承知しているけどさ、それでもリサは成長しているんだから今はそれでいいじゃないの。
「せっかくシュバシコウが神からの遣いで子を運んできたというのに。どうして無駄にできるのでしょうか。シュバシコウが気の毒です」
この世界ではシュバシコウが運ぶというんだね。コウノトリではなくて。王子らしい上品な言い方だね。と、聞いていたのだが、陛下とダン様の様子がやや変だ。
「父上、シュバシコウはカンカラ山にいるのでしょう。私が行って謝ってきましょうか」
もしかしてだけど、王子は赤ちゃんは本当にトリが運んでくると思っている?それともこの世界では本当にトリが運ぶのかな?
「殿下、このジョンめがきちんと教育いたしますよ」
というジョンさんの目はどこか虚ろだった。あ、知らないんだ。王子教育の欠如だね。思わず生温かい目になってしまうのだった。
79
あなたにおすすめの小説
冤罪で断罪されたら、魔王の娘に生まれ変わりました〜今度はやりたい放題します
みおな
ファンタジー
王国の公爵令嬢として、王太子殿下の婚約者として、私なりに頑張っていたつもりでした。
それなのに、聖女とやらに公爵令嬢の座も婚約者の座も奪われて、冤罪で処刑されました。
死んだはずの私が目覚めたのは・・・
姑に嫁いびりされている姿を見た夫に、離縁を突きつけられました
碧井 汐桜香
ファンタジー
姑に嫁いびりされている姿を見た夫が、嬉しそうに便乗してきます。
学園進学と同時に婚約を公表し、卒業と同時に結婚したわたくしたち。
昔から憧れていた姑を「お義母様」と呼べる新生活に胸躍らせていると、いろいろと想定外ですわ。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
夢を現実にしないための正しいマニュアル
しゃーりん
恋愛
娘が処刑される夢を見た。
現在、娘はまだ6歳。それは本当に9年後に起こる出来事?
処刑される未来を変えるため、過去にも起きた夢の出来事を参考にして、変えてはいけないことと変えるべきことを調べ始める。
婚約者になる王子の周囲を変え、貴族の平民に対する接し方のマニュアルを作り、娘の未来のために頑張るお話。
“ざまぁ” をします……。だけど、思っていたのと何だか違う
棚から現ナマ
恋愛
いままで虐げられてきたから “ざまぁ” をします……。だけど、思っていたのと何だか違う? 侯爵令嬢のアイリス=ハーナンは、成人を祝うパーティー会場の中央で、私から全てを奪ってきた両親と妹を相手に “ざまぁ” を行っていた。私の幼馴染である王子様に協力してもらってね! アーネスト王子、私の恋人のフリをよろしくね! 恋人のフリよ、フリ。フリって言っているでしょう! ちょっと近すぎるわよ。肩を抱かないでいいし、腰を抱き寄せないでいいから。抱きしめないでいいってば。だからフリって言っているじゃない。何で皆の前でプロポーズなんかするのよっ!! 頑張って “ざまぁ” しようとしているのに、何故か違う方向に話が行ってしまう、ハッピーエンドなお話。
他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる