ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない

ゆーぞー

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「そ、そんなことが!」

 悲痛な叫びと共に王子がうずくまっている。ジョンさんは王子の肩に手を置き、何かを囁いていた。何があったのかというと。王子に子どもがどうやったらできるか簡単に教えられたのだ。真実を知った王子はショックを受けたようで、大袈裟なくらいに動揺している。その姿を見て私も動揺した。

 それまで本当に知らなかったの?そっちのほうが驚きなんだけど。王子は確か婚約者がいたよね。学校を卒業したら結婚するんだよね。確かマンガでそう触れられていた。

 子作りは王族の義務とか言われてるんじゃないの?それなのに今まで本当に知らなかったの?本当にトリが運んでくると思ってたの?そうだとしたらものすごい温室育ちですね、心配であります。

「そ、そんなことをしてまでできた子をどうして捨てるんだ・・・」

 王子は涙を浮かべ苦痛に満ちた表情で床を睨んでいる。そんなこと、なんて言い方するのもどうかと思うよ。でも早く子を欲しがる、というか子作りをしたがるよりはマシか。そう思うことにして陛下とダン様を見ると、2人とも複雑な表情をしていた。まさか本当に知らなかったとは思っていなかったのだろう。教育方針を今から改めた方がいいかもしれない。

 しかし王子、純粋過ぎないか。大丈夫なのか、そんなんで。これでは適当な女に騙されて王子の子どもがあちこちに、なんて事態にならないとも限らない。そしてそんな性格だったから王子はリサに振り回されたのだろう。

 そもそも、捨てられた子って私のことだよね。つまりは私のために王子は泣いているわけだ。泣くことないじゃんか、他人の生い立ちだよ。と、思ってみたがそういうところが王子のいいところなのだろうな。私がリサならきっと惚れちゃうよね。でも私イコールリサではない。やっぱり王子のことは残念な気持ちで見てしまう。

「子を捨てねばならぬ理由があったのであろう」

 厳かな声が聞こえてきた。室内のおかしな空気をどうにかしたいと思ったのか、陛下が沈痛な面持ちで言ったのである。重々しいその言い方に私はまたもや舞台を思い浮かべる。なんとなく悲しげなバイオリンのメロディが聞こえてくるようだ。

「お互いに婚約者がいる身で惹かれあってしまったのだろう」

    陛下は、リサの両親について言及した。つまりはお互い相手がいるのに浮気した、だから育てることができなかった、だから捨てた。ということになるのだが、王子は何故か納得したみたいだ。キラキラした目で陛下を見ている。

「愛し合ったうえでのことだったのですね」

 王子は、良かったねと言わんばかりの笑顔で私を見てきた。え?それは無理がないか?だいたい身重になった女性はどうなる?貴族なら隠して産むことは難しいし、産んだあとで別の人と結婚も大変だろう。そもそも愛し合っている2人の間に生まれた子どもを孤児院に捨てるなんて、愛はどこへ行ったんだ。貴族ならお金もあるだろうし、他にいくらでも方法を見つけられるだろう。

 しかし陛下の横でダン様も頷いている。これ以上王子に動揺を与えないためにか、どこか綺麗な話に持っていこうとしているようだ。

「これを真実の愛って言うのですね」

 王子よ、そんな言葉を覚えるから余計なことになるのだよ。王子の言う真実の愛ほど虚しいものはないのだ。ラノベでもマンガでも乙女ゲームでもアニメでも。その言葉は不幸の始まりなのだよ。私はよく知っているんだ。

「リサはいらない子どもではなかったのだな。真実の愛で結ばれた愛しあう両親から生まれてきたのだな」
「そうです」   

   王子の言葉にジョンさんが力強く後押しをする。勝手に2人で盛り上がるのもいいが、もう少し考えて話をしてくれ。

「いらない子なんていません。孤児院は子を棄てるところではありません。子を成長させるところなのです」 

 ジョンさんはそう言いながら圧のこもった目で私を見てくる。つまりは、私のために言ってくれているのか。私は棄てられた子ではない、いらない子ではないと言いたいようだ。そんなこと思ったこともないけどな。

「そうだ、リサはすごい魔法を使える、唯一無二の存在なのだ」

 唯一無二なんて言葉を知っているんだな、子どもの作り方を知らないくせに。笑顔で私に話しかける王子を私は半ば呆れた気持ちで見返すのだった。

    
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