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ケーキも食べ終わり、なんとなくダラダラしていた。いいかげん帰りたいなと思っている。だがどう切り出していいのかわからない。なんとかならないかとダン様やジョンさんをチラ見してみる。陛下や王子が当てにできないことはわかっているので。
しかし2人とも私の視線を無視していると思われる。なんでこっち見ないのよ、こんちくしょうめ。心の中で悪態をつくも、どうにもできない自分。帰ります、と言えば済むことなのに。その一言が言えない。あぁ、この感じ。よく経験したなぁ。結局残業する羽目になったんだ。
どうにかならないかと無駄とわかって陛下とダン様に視線を送る。食事とデザートを出したんだから、労う気持ちがあってもいいのに。王族って、結局は人の好意を当然と捉えているよね。文句は最高潮に達している。
「リサは・・・」
突然陛下が私の名前を言ったので笑顔で陛下を見た。よし帰ろう、すぐ帰ろう。ニコニコと笑う。しかし陛下とダン様は何やらコソコソと話していて、私のことは気にしていないようだ。何の話をしているのよ、悪口じゃないよね。と、さらにイライラしてきてしまう。
黙って帰ってもいいのかな。帰りますって言えばいい?それか、お疲れ様でしたって笑顔で言う?どう言えばいいか考えてみるが、思い浮かばない。
「今までどうしてたんだ?」
王子に話しかけられた。王子の顔を見ると、少女マンガの登場人物らしくクリッとした瞳のイケメンがそこにいた。先ほどまでは残念な様子を余すところなく見せつけていたのに、今は白馬に乗った王子様という感じだ。
彼はリサに話しかけ、そして親しくなる。貴族しかいない校内で、平民ということで浮いた存在になったリサ。彼女に手を差し伸べたのは王子だった。リサに惹かれたわけではない。王子が世話焼きで良い人だったからだ。おそらく男性でも老人でも王子は同じ態度で接するのだろう。リサはそれを恋と思った。そんなことはないのに気づかなかったのだ。
マンガのリサは哀れだ。平民ゆえに王子に話しかけられただけ。いや、平民でもうまく立ち回って目立たなければ、王子はリサに興味を持たなかっただろう。
王子とは関わらないつもりだった。関わって悲惨な目に遭うのであれば、関わらずに行きたい。そう思っていたのに出だしから失敗した。この状態だと王子と距離を取るのは困難だろう。それならば、事務的に付き合うのみだ。
「どういう意味でしょうか」
私は笑顔を見せた。相手は王族。失礼がない程度に関わらなければならない。
「こんなに魔力を使って魔力切れになることはないのか」
魔力があると言われても、それが何かよくわかっていない。よく体内を巡る温かいもの、とラノベなどで表現されてはいるが、実際書いている人に魔力がないのだから想像上のものである。そして今の私は体内を巡るものなど分からない。それに魔力切れとは何か。息切れとかスタミナ切れみたいなものなのだろうか。具合も悪くならないし、体力も問題ないと思う。
「それに水が料理になるというのなら・・・」
彼は言いにくそうにしていた。確かに水が料理になるのなら、食事代はいらなくなる。そうなると孤児院の生活費もかなり安く抑えられる。おそらく彼は孤児院で私が無理に魔法を使っていたのではないか、無理矢理魔法を使わされていたからこんなことができるのではないかと考えているのではないかと思う。
「いえ、実はこちらに来てから魔法が使えるようになりました」
孤児院の名誉のためにも私は言った。実際それは事実だからだ。
「そうか」
王子は安心した顔だ。本当に王子は良い人なのだ。
「本を読むのが好きでよくいろんな想像をしました。美味しい食事とか、温かさが持続する鉄板でお肉を焼いて出したらどうだろうとかいろいろと考えて・・・。リクライニングチェアもこういうものがあれば便利だし、お皿やカップも綺麗な絵が描いていれば楽しいし。食いしん坊だから美味しいものや甘いものを考えて・・・」
嘘をつくときは本当のことを織り交ぜて話すことだ。と、誰かが言ってたっけ。いや、本で読んだのかな?リサとしては嘘だけど、私は嘘は言っていない。しかし小心者のせいか、どうしても嘘をいうときは饒舌になってしまう。
「そうか」
何故か王子はしんみりとした顔をしている。ふと見ると、陛下もダン様もジョンさんも目が優しかった。ものすごく同情されている。気がついた時は手遅れで、私を見る目はどこまでも優しかったのだった。
しかし2人とも私の視線を無視していると思われる。なんでこっち見ないのよ、こんちくしょうめ。心の中で悪態をつくも、どうにもできない自分。帰ります、と言えば済むことなのに。その一言が言えない。あぁ、この感じ。よく経験したなぁ。結局残業する羽目になったんだ。
どうにかならないかと無駄とわかって陛下とダン様に視線を送る。食事とデザートを出したんだから、労う気持ちがあってもいいのに。王族って、結局は人の好意を当然と捉えているよね。文句は最高潮に達している。
「リサは・・・」
突然陛下が私の名前を言ったので笑顔で陛下を見た。よし帰ろう、すぐ帰ろう。ニコニコと笑う。しかし陛下とダン様は何やらコソコソと話していて、私のことは気にしていないようだ。何の話をしているのよ、悪口じゃないよね。と、さらにイライラしてきてしまう。
黙って帰ってもいいのかな。帰りますって言えばいい?それか、お疲れ様でしたって笑顔で言う?どう言えばいいか考えてみるが、思い浮かばない。
「今までどうしてたんだ?」
王子に話しかけられた。王子の顔を見ると、少女マンガの登場人物らしくクリッとした瞳のイケメンがそこにいた。先ほどまでは残念な様子を余すところなく見せつけていたのに、今は白馬に乗った王子様という感じだ。
彼はリサに話しかけ、そして親しくなる。貴族しかいない校内で、平民ということで浮いた存在になったリサ。彼女に手を差し伸べたのは王子だった。リサに惹かれたわけではない。王子が世話焼きで良い人だったからだ。おそらく男性でも老人でも王子は同じ態度で接するのだろう。リサはそれを恋と思った。そんなことはないのに気づかなかったのだ。
マンガのリサは哀れだ。平民ゆえに王子に話しかけられただけ。いや、平民でもうまく立ち回って目立たなければ、王子はリサに興味を持たなかっただろう。
王子とは関わらないつもりだった。関わって悲惨な目に遭うのであれば、関わらずに行きたい。そう思っていたのに出だしから失敗した。この状態だと王子と距離を取るのは困難だろう。それならば、事務的に付き合うのみだ。
「どういう意味でしょうか」
私は笑顔を見せた。相手は王族。失礼がない程度に関わらなければならない。
「こんなに魔力を使って魔力切れになることはないのか」
魔力があると言われても、それが何かよくわかっていない。よく体内を巡る温かいもの、とラノベなどで表現されてはいるが、実際書いている人に魔力がないのだから想像上のものである。そして今の私は体内を巡るものなど分からない。それに魔力切れとは何か。息切れとかスタミナ切れみたいなものなのだろうか。具合も悪くならないし、体力も問題ないと思う。
「それに水が料理になるというのなら・・・」
彼は言いにくそうにしていた。確かに水が料理になるのなら、食事代はいらなくなる。そうなると孤児院の生活費もかなり安く抑えられる。おそらく彼は孤児院で私が無理に魔法を使っていたのではないか、無理矢理魔法を使わされていたからこんなことができるのではないかと考えているのではないかと思う。
「いえ、実はこちらに来てから魔法が使えるようになりました」
孤児院の名誉のためにも私は言った。実際それは事実だからだ。
「そうか」
王子は安心した顔だ。本当に王子は良い人なのだ。
「本を読むのが好きでよくいろんな想像をしました。美味しい食事とか、温かさが持続する鉄板でお肉を焼いて出したらどうだろうとかいろいろと考えて・・・。リクライニングチェアもこういうものがあれば便利だし、お皿やカップも綺麗な絵が描いていれば楽しいし。食いしん坊だから美味しいものや甘いものを考えて・・・」
嘘をつくときは本当のことを織り交ぜて話すことだ。と、誰かが言ってたっけ。いや、本で読んだのかな?リサとしては嘘だけど、私は嘘は言っていない。しかし小心者のせいか、どうしても嘘をいうときは饒舌になってしまう。
「そうか」
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