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「本当だったらエレナが入学できるはずだったのに、あんたなんかが入学したからエレナは落とされたのよ!」
赤リボンはそう叫んで顔を両手で覆い泣き出した。えー、なんで泣くの?めんどくさいなぁ。そんなこと言われてもリサが入学できたのは魔力量が多いから。つまり、リサのほうがエレナより優れていると判断されたからだ。エレナが誰だか知らないが、そんなことで私を敵視されても困る。
「平民を入れたせいで私たち貴族が不利益を被っています」
「しかも王族を突き飛ばすような人間、私たちも何をされるかわかりません」
「彼女を退学させてください」
他の人も口々に言い出す。あぁ、本当にもうめんどくさい。入りたくて入ったわけじゃないのに。いい加減うんざりだ。
「お静かになさい!」
いきなり聞こえた声の方を振り返ると、そこには年配の女性が立っていた。品のいいマダムといった感じのその女性は、ドアの前で仁王立ちしている。本を手にしているのでおそらく教師なのだろう。その瞬間、教室内の空気がひんやりしたように感じた。
「マダム・リゼ」
アメリアさんが背筋を伸ばしお辞儀をした。優雅な仕草に思わず見惚れる。見るとシャロンも同じようにお辞儀していた。
「いったい何をしているのですか」
マダム・リゼ先生がアメリアさんの前まで来た。アメリアさんはどこか緊張した面持ちである。
「あなたはこの学校の生徒ではないでしょう。何故教室にいるのですか」
厳しい声だ。教室内は静まりかえっていてその声が響いている。
「私はここにいるリサ嬢の護衛を務めております。リサ嬢が教室内で理不尽な扱いを受けていたため、仲裁に入りました」
何人かの女子生徒が護衛と聞いて動揺した様子を見せている。憧れのアメリア様がリサなんかを護衛しているのかと驚いているのだろう。
「理不尽?」
マダム・リゼ先生の片方の眉毛がクイッと上がった。目つきが鋭くなっている。
「それはどういうことですか?誰か説明を」
アメリアさんが赤リボンを見た。赤リボンの顔が引き攣っている。
「説明を。できる人はいないのですか?」
マダム・リゼ先生の声が響く。年はとっているが背筋もピンとしていて声にもハリがある。綺麗なグレーヘアは艶もあるし、綺麗に一つにまとめられ控えめなパールの髪飾りをつけている。品の良いマダムと思うが、おそらく厳しい教師なのだろう。アメリアさんまでもが緊張しているのだ。
「説明もできないのにこれだけ騒いだということですか?」
抑揚のない声が怖い。存在だけでも恐怖を感じる先生だ。高校の時、こんな先生がいたなと思い出す。下校中にこっそりアイスを買って食べながら歩いていたら、翌日呼び出されてお説教された。歩きながら食べるな、邪魔にならないような場所で立ち止まって食べろと怒られた。懐かしい思い出である。
「わ、私・・・」
周囲の視線に耐えられなかったのか、赤リボンが小さな声を出した。その瞬間マダム・リゼ先生の目が赤リボンを捉える。こえー。
「聞こえません。はっきり名前を名乗りなさい」
「レイジー・ミルトン。ミルトン男爵家の長女でございます」
赤リボンは消え入りそうな震える声で名乗った。さっきまでの態度とは違い、明らかに手が震えているのが見えた。どうでもいいけど、ミルトン男爵の長女、と名乗らないといけないのか。きょうだいが多いと大変だろうな。
「ミルトン男爵」
マダム・リゼ先生が復唱するとレイジーは俯いた。
「何故目を逸らすのです!」
カツカツという靴音を響かせて先生がレイジーの前に立つと、レイジーは青白い顔を上げた。見ている方が辛い。この先生怖い、怖すぎる。
「いいですか、あなたは今ミルトン家の代表として発言するのです。家名を汚すことのないよう発言は慎重になさい、いいですね」
有無を言わせぬ言い方である。最後のほうは強制というか恫喝に近いのではないか。静かなのに迫力がある。
「は、はい・・・」
今にも倒れそうなくらいレイジーは震えている。立っているのもやっとという状態に見える。気の毒だがどうすることもできない。
「では、話してください」
先生に促され、レイジーが私を見た。なんで私を見るの、と思ったら先生も私を見た。マジか、と思わず口に出てしまうのだった。
赤リボンはそう叫んで顔を両手で覆い泣き出した。えー、なんで泣くの?めんどくさいなぁ。そんなこと言われてもリサが入学できたのは魔力量が多いから。つまり、リサのほうがエレナより優れていると判断されたからだ。エレナが誰だか知らないが、そんなことで私を敵視されても困る。
「平民を入れたせいで私たち貴族が不利益を被っています」
「しかも王族を突き飛ばすような人間、私たちも何をされるかわかりません」
「彼女を退学させてください」
他の人も口々に言い出す。あぁ、本当にもうめんどくさい。入りたくて入ったわけじゃないのに。いい加減うんざりだ。
「お静かになさい!」
いきなり聞こえた声の方を振り返ると、そこには年配の女性が立っていた。品のいいマダムといった感じのその女性は、ドアの前で仁王立ちしている。本を手にしているのでおそらく教師なのだろう。その瞬間、教室内の空気がひんやりしたように感じた。
「マダム・リゼ」
アメリアさんが背筋を伸ばしお辞儀をした。優雅な仕草に思わず見惚れる。見るとシャロンも同じようにお辞儀していた。
「いったい何をしているのですか」
マダム・リゼ先生がアメリアさんの前まで来た。アメリアさんはどこか緊張した面持ちである。
「あなたはこの学校の生徒ではないでしょう。何故教室にいるのですか」
厳しい声だ。教室内は静まりかえっていてその声が響いている。
「私はここにいるリサ嬢の護衛を務めております。リサ嬢が教室内で理不尽な扱いを受けていたため、仲裁に入りました」
何人かの女子生徒が護衛と聞いて動揺した様子を見せている。憧れのアメリア様がリサなんかを護衛しているのかと驚いているのだろう。
「理不尽?」
マダム・リゼ先生の片方の眉毛がクイッと上がった。目つきが鋭くなっている。
「それはどういうことですか?誰か説明を」
アメリアさんが赤リボンを見た。赤リボンの顔が引き攣っている。
「説明を。できる人はいないのですか?」
マダム・リゼ先生の声が響く。年はとっているが背筋もピンとしていて声にもハリがある。綺麗なグレーヘアは艶もあるし、綺麗に一つにまとめられ控えめなパールの髪飾りをつけている。品の良いマダムと思うが、おそらく厳しい教師なのだろう。アメリアさんまでもが緊張しているのだ。
「説明もできないのにこれだけ騒いだということですか?」
抑揚のない声が怖い。存在だけでも恐怖を感じる先生だ。高校の時、こんな先生がいたなと思い出す。下校中にこっそりアイスを買って食べながら歩いていたら、翌日呼び出されてお説教された。歩きながら食べるな、邪魔にならないような場所で立ち止まって食べろと怒られた。懐かしい思い出である。
「わ、私・・・」
周囲の視線に耐えられなかったのか、赤リボンが小さな声を出した。その瞬間マダム・リゼ先生の目が赤リボンを捉える。こえー。
「聞こえません。はっきり名前を名乗りなさい」
「レイジー・ミルトン。ミルトン男爵家の長女でございます」
赤リボンは消え入りそうな震える声で名乗った。さっきまでの態度とは違い、明らかに手が震えているのが見えた。どうでもいいけど、ミルトン男爵の長女、と名乗らないといけないのか。きょうだいが多いと大変だろうな。
「ミルトン男爵」
マダム・リゼ先生が復唱するとレイジーは俯いた。
「何故目を逸らすのです!」
カツカツという靴音を響かせて先生がレイジーの前に立つと、レイジーは青白い顔を上げた。見ている方が辛い。この先生怖い、怖すぎる。
「いいですか、あなたは今ミルトン家の代表として発言するのです。家名を汚すことのないよう発言は慎重になさい、いいですね」
有無を言わせぬ言い方である。最後のほうは強制というか恫喝に近いのではないか。静かなのに迫力がある。
「は、はい・・・」
今にも倒れそうなくらいレイジーは震えている。立っているのもやっとという状態に見える。気の毒だがどうすることもできない。
「では、話してください」
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