ここは少女マンガの世界みたいだけど、そんなこと知ったこっちゃない

ゆーぞー

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「ずいぶん騒々しいですね」

 私の背後からそんな声が聞こえ、肩にそっと手を置かれた。目の前にいる人たちが全員驚いた表情をしている。シャロンもだ。

「アメリア様!」

 え?アメリアさん?振り返ると、確かにそこにはアメリアさんがいた。ついさっき、プリンアラモードを食べていたアメリアさん?一口食べるたびに惚けた顔をしていたあのアメリアさん?と、私は二度見してしまった。

「アメリア様!聞いてください!」

 女生徒たちが口々に声を出す。

「この人、ダン様を突き飛ばしたんです」
「私、見ました!」
「図々しいんですよ、やっぱり平民って怖いです!」

 さっきまで私に向かって悪口言っていた彼女たちは、今度もアメリアさんに私の悪口を言っている。ダン様を突き飛ばしたことが問題なのか。でもわざとじゃないし、ダン様も別に気にしていないはずだし。あれで罰せられるなんて、この国の司法制度おかしいよ。

 しかし女性生徒の発言は止まらない。

「牢屋に入れましょう!」
「そうですわ、こんな野蛮な人。一緒に学ぶなんてできません」
「平民のくせに生意気ですわ!」
 
 聞いてるとめちゃくちゃだ。黙っているアメリアさんをそっと見てみると、表情もないまま、ただ聞いているのだ。えー、そこはさ、なんか言ってよ。ご飯食べさせてあげたじゃない。アメリアさんが黙っているので調子に乗ったのか、彼女たちはどんどんしゃべってくる。

「変な髪型してるのも平民だからですわね」
「物置小屋に住んでいるそうですわ」
「お情けで通わせて差し上げているのに厚顔無恥とはこのことですわね」
「平民と同じ教室なんて、末代までの恥です」

 好き勝手言ってるぞ。変な髪型とは誰のことか。断じて私ではないぞ。

「黙りなさい!」

 アメリアさんが怒鳴った。驚いたのか何人か涙を浮かべている。しかしアメリアさんは無視して話し出した。

「リサ嬢は確かに平民、しかも孤児です。孤児とは親のいない子どものこと。親のいない子がどれだけの苦労をしてきたか、皆さんは理解もできないのですか」

 シーンとなる教室。アメリアさんの声が教室内に響く。

「皆さんは貴族です。ノブレス・オブリージュをご存知ですよね」

 貴族の義務ってやつか。それよりもアメリアさんを見る全員の目が怖い。瞳が潤んでいたり、キラキラしていたり。推しを見る瞳ってやつだ。アメリアさん、気づいていないかもしれないけど女子にモテモテだよ。

「自分たちが淑女とありたいのであれば、リサ嬢にどのように接すればいいかわかりますよね」

 は~い、と可愛らしい素直な返事があちこちから聞こえる。えっと、どうなってるの。アメリアさんの演説で状況は変わったってことでいいの?

「で、でも・・・」

 ほぼ全員がハート型の目でアメリアさんを見つめていたが、そうではない人もいる。

「私、見ました!」

 そう言って一歩前に出てきたのは、真っ赤なリボンを頭のてっぺんにつけている小柄な子だった。

「ダン様を突き飛ばしていました。明らかに犯罪行為です」

 まっすぐ前を向いて話す彼女。アメリアさんを前にしても怯えることもなく正々堂々としている。まぁ確かにダン様を突き飛ばしたのは事実だ。でもやろうとしたわけではない。元はと言えば、ダン様が私を引っ張った結果なのだ。悪いのは私ではなくダン様自身である。

「では、どこで見たのですか?」

 冷静にアメリアさんは聞いた。

「廊下です。私はご不浄場から戻るところでした」

 ご不浄場、つまりトイレのことか。そういう言い方をするって貴族のご令嬢は奥ゆかしいのだな。と感心した。が、生徒たちの反応はさまざまだった。恥ずかしそうに顔を伏せる人、コソコソと何かを言い合う人、顔を見合わせ驚き合う人・・・。どうもはっきり口に出して言ってはいけない言葉だったようである。

 アメリアさんも一瞬戸惑った様子を見せ、誤魔化すように咳払いをした。しかし言った本人は臆することもなく、私を睨みつけていた。

「授業を受けさせないようにダン様が教室から追い出したんです。それを抵抗してダン様を突き飛ばして・・・」

 真相は全然違うんだけど。しかしその赤リボンの子は私をキッと睨みつけた。

「あなたが入学したせいで、エレナが入学できなくなったのよ!」

 と、怒鳴られた。エレナって誰?どういうこと?面倒な話になったなと私はアメリアさんを見てしまうのだった

 
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