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面接室に入ると、きれいに磨かれた木製の机が整然と並び、窓から差し込む柔らかな光が室内を穏やかに照らしていた。壁には校訓が額縁に収められ、品格ある私立校らしい厳かさを醸し出している。
佑奈は深く息を吸い込み、一礼して席に座る。面接官席には依田朝霞教諭。三十代半ば、知的な雰囲気を持つ女性で、髪をすっきりとまとめ、落ち着いた口調で進行していた。
「では、白石佑奈さんですね。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
佑奈は背筋を伸ばし、しっかりとした声で応じる。
「まずは、本校を志望した理由を聞かせてください」
最初の質問として当然想定していた問だ。佑奈は小さく頷き、一度言葉を整えてから話し始める。
「私は貴校の教育理念に共感し、学業と人間性の両方を高めたいと考え志望しました。また、中学生の頃から自主的に学ぶ習慣をつけてきたので、貴校の自主性を重んじる校風にも魅力を感じています」
「なるほど。自主的に学ぶ習慣は非常に大事ですね。なにか、きっかけがあってのことですか?」
「はい、私の家庭は決して裕福とは言えず、学習の機会は自ら求めなければ得られませんでした。日々の予習復習も当然ですが、自ら応用問題を作成して考えるなど一つの分野から裾野を広げて取り組むよう心掛けていました」
「なるほど、では次にあなたの長所と短所を教えてください」
佑奈は落ち着いてこれまで考えてきた回答を述べていく。長所短所を筆頭に行事への取り組み、中学生活での思い出、時事や一般教養のようなもの、面接の時間は決して長くはないが、佑奈は何度も自分に落ち着くよう言い聞かせ、慌てることなく自分の考えを伝える。
「では次に……あなたにとって、友人とはどのような存在ですか?」
そう問われ、佑奈の心に佳子の顔が浮かぶ。寂しそうにしていた彼女。自分にだけ見せる弱い表情。
そして、これから共に過ごす未来。少しだけ、言葉を選ぶように考えてから、佑奈ははっきりと答えた。
「私にとって友人とは、共に歩んでいく存在です。一緒にいて楽しいだけでなく、困った時に支え合ったり、成長を促してくれる存在だと思っています」
依田はしばらく佑奈を見つめ、それから微笑んだ。
「素敵な考えですね。では、そんな友人と意見や価値観が一致しない時、どうしますか?」
その質問を受け佑奈は以前、佳子が大量の料理を注文した時のことを思い出していた。あの時、佑奈は佳子を叱り、感情的な言葉を放ってしまった。それは正しい対応ではなかったかもしれない、けれどあの時の気持ちは佑奈にとって素直に発せられたもので、偽らざる本音だった。
「お互いの意見を伝えあった上で、正しいと思うものを大事にしたいと思います。私には経済的に裕福な家庭で育った親友がいます。彼女が私との食事で、二人では食べきれないほどの料理を注文したことがありました。もてなしたい彼女と食べ物を粗末にしたくない私で意見が衝突し、私はつい強く言い過ぎてしまったのですが、その後冷静になり、すぐ食べなくてはならないもの、冷蔵すれば翌日食べられるもの、冷凍してもいいものに仕分けして、何日かかけて食べきることができました」
「なるほど、フードロスについての関心があるとも話されていましたね。私も気を付けなくてはなりませんね。それでは面接は以上です。ありがとうございました」
「ありがとうございました」
佑奈は礼をして席を立ち、扉を開けて部屋を出た。
廊下に出た瞬間、ふうっと息を吐く。
大きな失敗はなかったはず。でも、本当にうまく答えられていたかはわからない。それでも、自分の言葉で伝えられた。
そう思うことで、不安の中にも少しの自信が芽生えていた。
佑奈は深く息を吸い込み、一礼して席に座る。面接官席には依田朝霞教諭。三十代半ば、知的な雰囲気を持つ女性で、髪をすっきりとまとめ、落ち着いた口調で進行していた。
「では、白石佑奈さんですね。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
佑奈は背筋を伸ばし、しっかりとした声で応じる。
「まずは、本校を志望した理由を聞かせてください」
最初の質問として当然想定していた問だ。佑奈は小さく頷き、一度言葉を整えてから話し始める。
「私は貴校の教育理念に共感し、学業と人間性の両方を高めたいと考え志望しました。また、中学生の頃から自主的に学ぶ習慣をつけてきたので、貴校の自主性を重んじる校風にも魅力を感じています」
「なるほど。自主的に学ぶ習慣は非常に大事ですね。なにか、きっかけがあってのことですか?」
「はい、私の家庭は決して裕福とは言えず、学習の機会は自ら求めなければ得られませんでした。日々の予習復習も当然ですが、自ら応用問題を作成して考えるなど一つの分野から裾野を広げて取り組むよう心掛けていました」
「なるほど、では次にあなたの長所と短所を教えてください」
佑奈は落ち着いてこれまで考えてきた回答を述べていく。長所短所を筆頭に行事への取り組み、中学生活での思い出、時事や一般教養のようなもの、面接の時間は決して長くはないが、佑奈は何度も自分に落ち着くよう言い聞かせ、慌てることなく自分の考えを伝える。
「では次に……あなたにとって、友人とはどのような存在ですか?」
そう問われ、佑奈の心に佳子の顔が浮かぶ。寂しそうにしていた彼女。自分にだけ見せる弱い表情。
そして、これから共に過ごす未来。少しだけ、言葉を選ぶように考えてから、佑奈ははっきりと答えた。
「私にとって友人とは、共に歩んでいく存在です。一緒にいて楽しいだけでなく、困った時に支え合ったり、成長を促してくれる存在だと思っています」
依田はしばらく佑奈を見つめ、それから微笑んだ。
「素敵な考えですね。では、そんな友人と意見や価値観が一致しない時、どうしますか?」
その質問を受け佑奈は以前、佳子が大量の料理を注文した時のことを思い出していた。あの時、佑奈は佳子を叱り、感情的な言葉を放ってしまった。それは正しい対応ではなかったかもしれない、けれどあの時の気持ちは佑奈にとって素直に発せられたもので、偽らざる本音だった。
「お互いの意見を伝えあった上で、正しいと思うものを大事にしたいと思います。私には経済的に裕福な家庭で育った親友がいます。彼女が私との食事で、二人では食べきれないほどの料理を注文したことがありました。もてなしたい彼女と食べ物を粗末にしたくない私で意見が衝突し、私はつい強く言い過ぎてしまったのですが、その後冷静になり、すぐ食べなくてはならないもの、冷蔵すれば翌日食べられるもの、冷凍してもいいものに仕分けして、何日かかけて食べきることができました」
「なるほど、フードロスについての関心があるとも話されていましたね。私も気を付けなくてはなりませんね。それでは面接は以上です。ありがとうございました」
「ありがとうございました」
佑奈は礼をして席を立ち、扉を開けて部屋を出た。
廊下に出た瞬間、ふうっと息を吐く。
大きな失敗はなかったはず。でも、本当にうまく答えられていたかはわからない。それでも、自分の言葉で伝えられた。
そう思うことで、不安の中にも少しの自信が芽生えていた。
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