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第2章
第40話:鼓動
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食事が終わり、空になった器を置いたヨハンの大きな掌が、名残惜しさを断ち切るようにゆっくりと僕の体から遠のいていこうとした。
その瞬間、僕の中に言いようのない、胸を掻き毟るような寂しさが込み上げた。 さっきの夢の中で、冷たい石の門の前、誰の手も掴めずにたった一人で暗闇の奥へ消えていったあの子供の絶望が、麻痺していた僕の腕を衝動的に動かした。
(行かないで……。僕を、独りにしないで……っ)
気づけば、僕はソファから前のめりに身を乗り出し、ヨハンの逞しい体に腕を回して、しがみつくように抱きしめていた。 出会った頃はあんなに恐ろしく、死の象徴のようにさえ思えたこの人の大きな体が、今は何よりも頼もしく、決して失いたくない唯一の温もりに感じられたのだ。
「……っ!? 」
ヨハンの強靭な体が、予期せぬ事態に驚愕し、まるで鉄の塊のように一瞬で硬くなった。 不敬だと拒絶されるかもしれない。罪人の分際で、この地の支配者に何という無礼を働くのだと激しく怒鳴りつけられ、突き飛ばされるかもしれない。 けれど、僕はそんな恐怖よりも、今この瞬間の温もりを失うことの方が何倍も恐ろしかった。ただ必死に、彼の分厚い軍服の生地を指が白くなるまで掴み、その胸に顔を埋め続けた。
やがて、極限まで強張っていたヨハンの体から、溜息と共にふっと力が抜けた。 彼は言葉を失ったように何も言わず、けれど、折れてしまいそうなほど細く震える僕の背中に、そっと、躊躇いながらも大きな掌を添えた。そして、この世で最も脆く壊れやすい硝子細工を扱うような、途方もなく慎重な手つきで、僕を静かに抱きしめ返してくれた。
その腕の確かな強さと、服越しに伝わる力強い鼓動。
「僕は、ここに存在していいんだ」 そんな根源的な実感が、砂漠に染み込む水のように、乾ききった心にようやく湧き上がってくる。 さっきまで僕の魂を鋭く支配していた、あの幼いレリルの記憶の痛みも、この包容の温もりに溶かされるようにして、少しずつ、少しずつ遠ざかっていく。
(……温かい……。ずっと、こうして……)
心身ともに限界をとうに超え、泥のように疲れ切っていた僕は、彼の大きな腕の中で得たかつてない安らかな安心感に包まれ、深い、深い眠りの淵へと再び意識を暗転させた。
その瞬間、僕の中に言いようのない、胸を掻き毟るような寂しさが込み上げた。 さっきの夢の中で、冷たい石の門の前、誰の手も掴めずにたった一人で暗闇の奥へ消えていったあの子供の絶望が、麻痺していた僕の腕を衝動的に動かした。
(行かないで……。僕を、独りにしないで……っ)
気づけば、僕はソファから前のめりに身を乗り出し、ヨハンの逞しい体に腕を回して、しがみつくように抱きしめていた。 出会った頃はあんなに恐ろしく、死の象徴のようにさえ思えたこの人の大きな体が、今は何よりも頼もしく、決して失いたくない唯一の温もりに感じられたのだ。
「……っ!? 」
ヨハンの強靭な体が、予期せぬ事態に驚愕し、まるで鉄の塊のように一瞬で硬くなった。 不敬だと拒絶されるかもしれない。罪人の分際で、この地の支配者に何という無礼を働くのだと激しく怒鳴りつけられ、突き飛ばされるかもしれない。 けれど、僕はそんな恐怖よりも、今この瞬間の温もりを失うことの方が何倍も恐ろしかった。ただ必死に、彼の分厚い軍服の生地を指が白くなるまで掴み、その胸に顔を埋め続けた。
やがて、極限まで強張っていたヨハンの体から、溜息と共にふっと力が抜けた。 彼は言葉を失ったように何も言わず、けれど、折れてしまいそうなほど細く震える僕の背中に、そっと、躊躇いながらも大きな掌を添えた。そして、この世で最も脆く壊れやすい硝子細工を扱うような、途方もなく慎重な手つきで、僕を静かに抱きしめ返してくれた。
その腕の確かな強さと、服越しに伝わる力強い鼓動。
「僕は、ここに存在していいんだ」 そんな根源的な実感が、砂漠に染み込む水のように、乾ききった心にようやく湧き上がってくる。 さっきまで僕の魂を鋭く支配していた、あの幼いレリルの記憶の痛みも、この包容の温もりに溶かされるようにして、少しずつ、少しずつ遠ざかっていく。
(……温かい……。ずっと、こうして……)
心身ともに限界をとうに超え、泥のように疲れ切っていた僕は、彼の大きな腕の中で得たかつてない安らかな安心感に包まれ、深い、深い眠りの淵へと再び意識を暗転させた。
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