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第2章
第41話:罪悪感
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屋敷に戻ってからも、俺の頭の中は塔の沈み込むような冷たい空気と、そこで独り、今にも消え入りそうな灯火のように震えていたレリルの姿で占められていた。
火もろくに使えず、満足な明かりすら乏しいあの監獄同然の場所で、奴は一ヶ月もの間、一体何を糧にして命を繋いでいたのか。氷のように固くなったパンを、凍てつく水で無理やり流し込むだけの毎日を想像するたび、俺の胸の奥は鋭いナイフで抉られるような、焼けるような罪悪感と焦燥感でいっぱいになった。
(……あんな過酷な環境で、あんなに細い男が、まともに生きていけるはずがないだろう。なぜ、もっと早く気づかなかった……!)
最初に抱いていた「目障りな大罪人」という、氷のように冷徹な感情は、いつの間にか春の霧のように跡形もなく霧散していた。今、俺の胸に重く、けれど熱く居座っているのは、彼に少しでも穏やかに、人間として最低限の尊厳を守れる暮らしをしてほしいという、もはや祈りにも近い切実な願いだった。
そこからの俺の行動は、周囲の家臣たちが目を剥くほどに、自分でも驚くほど素早く、そして執拗なものとなった。
「管理責任があるからだ。貴重な『資源』を死なせては領地の損失になる」
そんな、誰が聞いても苦し紛れな言い訳を自分に盾のように言い聞かせながら、俺は領都で最も新鮮な肉や、まだ跳ねている魚を強引に買い込み、まるで何かに憑りつかれたかのように毎週、あの塔へと馬を飛ばすようになった。
「おい、レリル! 入るぞ。貴殿は相変わらず痩せすぎだ、風が吹けば折れるのではないか。もっとまともな栄養のあるものを食え。ほら、今日も特別にいい川魚が入ったんだ、今すぐ焼いて食わせてやる」
塔の中に土足同然で押し入り、頼まれてもいないのに次から次へと、自分でも驚くほど饒舌に心配の言葉を並べ立てる。レリルには少し呆れられているような、あるいは戸惑いを隠せないような困惑の表情を向けられたが、今の俺にはそんな些細なことはどうでもよかった。
孤独に、そして静かに摩耗していく彼への制御不能な心配が、俺がこれまで命懸けで守ってきた騎士としての矜持や、領主としての冷徹な体裁を、容赦なく塗りつぶしていく。……あるいは、ただ単に、俺自身が彼という存在に触れ、同じ時間を共有したかっただけなのかもしれない。そんな、己の魂の根幹を揺るがすような恐ろしい自覚は、まだ心の最奥に深く、厳重に封じ込めていた。
火もろくに使えず、満足な明かりすら乏しいあの監獄同然の場所で、奴は一ヶ月もの間、一体何を糧にして命を繋いでいたのか。氷のように固くなったパンを、凍てつく水で無理やり流し込むだけの毎日を想像するたび、俺の胸の奥は鋭いナイフで抉られるような、焼けるような罪悪感と焦燥感でいっぱいになった。
(……あんな過酷な環境で、あんなに細い男が、まともに生きていけるはずがないだろう。なぜ、もっと早く気づかなかった……!)
最初に抱いていた「目障りな大罪人」という、氷のように冷徹な感情は、いつの間にか春の霧のように跡形もなく霧散していた。今、俺の胸に重く、けれど熱く居座っているのは、彼に少しでも穏やかに、人間として最低限の尊厳を守れる暮らしをしてほしいという、もはや祈りにも近い切実な願いだった。
そこからの俺の行動は、周囲の家臣たちが目を剥くほどに、自分でも驚くほど素早く、そして執拗なものとなった。
「管理責任があるからだ。貴重な『資源』を死なせては領地の損失になる」
そんな、誰が聞いても苦し紛れな言い訳を自分に盾のように言い聞かせながら、俺は領都で最も新鮮な肉や、まだ跳ねている魚を強引に買い込み、まるで何かに憑りつかれたかのように毎週、あの塔へと馬を飛ばすようになった。
「おい、レリル! 入るぞ。貴殿は相変わらず痩せすぎだ、風が吹けば折れるのではないか。もっとまともな栄養のあるものを食え。ほら、今日も特別にいい川魚が入ったんだ、今すぐ焼いて食わせてやる」
塔の中に土足同然で押し入り、頼まれてもいないのに次から次へと、自分でも驚くほど饒舌に心配の言葉を並べ立てる。レリルには少し呆れられているような、あるいは戸惑いを隠せないような困惑の表情を向けられたが、今の俺にはそんな些細なことはどうでもよかった。
孤独に、そして静かに摩耗していく彼への制御不能な心配が、俺がこれまで命懸けで守ってきた騎士としての矜持や、領主としての冷徹な体裁を、容赦なく塗りつぶしていく。……あるいは、ただ単に、俺自身が彼という存在に触れ、同じ時間を共有したかっただけなのかもしれない。そんな、己の魂の根幹を揺るがすような恐ろしい自覚は、まだ心の最奥に深く、厳重に封じ込めていた。
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