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第2章
第42話:カラスへの嫉妬
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レリルとの奇妙な交流が重なり、塔を訪れる頻度が週に一度からそれ以上に増えていくにつれ、俺の視界にはどうしても看過しがたい、そして猛烈に鼻につく「邪魔者」が居座るようになった。
あの不吉な漆黒の翼を持つカラス――レリルが愛おしげにその名を呼ぶ、「レイブン」という名の魔物だ。
「レイブン、本当にお利口さんだね。今日もお外で元気に遊んできたの? ほら、いい子だね……」
レリルが慈しむようにその名を呼び、宝石を散りばめたかのように目をキラキラと輝かせて、満面の笑みを浮かべる。それは俺がどれほど贅沢な食材を運び込み、不器用な言葉を尽くしても一度として向けられたことのない、純粋無垢で心からの笑顔だった。 あの大罪人が、あろうことか一羽の「魔物」にだけ、魂の奥底を見せるような無防備な親愛を注いでいる。その光景を目の当たりにするたび、俺の胸の奥には、熱い鉄を流し込まれたような猛烈ないら立ちが渦巻いた。
俺は自制が利かず、知らず知らずのうちに苦虫を噛み潰したような、険悪な表情を顔に出してしまっていた。
「魔物を使役して何か良からぬことでも企んでいるのではないか」
などと、かつて自分が無知ゆえに放った心ない言葉を、レリルは今も鮮明に覚えているのだろう。彼は俺の険悪な気配を察するやいなや、目に見えて怯えたように、大切な宝物を隠すようにしてレイブンを自分の胸元へ強く抱き寄せ、庇うような素振りを見せた。
「……すみません。辺境伯様には不気味に見えますよね。でも、この子は本当に安全なんです。私を助けてくれた、ただ一人の……家族なんです」
(……分かっている。その鳥が貴殿にとって救いであることなど、今の俺には痛いほど分かっている。……だが、どうしても面白くないのだ)
喉元まで出かかった本音を、俺は辛うじて飲み込んだ。 一方のレイブンといえば、レリルの肩越しに黒い瞳を光らせ、こちらをじっと見つめていた。その表情は、言葉こそ発しないものの、明らかに俺の焦燥を見透かし、勝ち誇ったような――いわゆる「ドヤ顔」でマウントを取ってきているようにしか見えなかった。 あの魔物には、俺がレリルの関心を惹こうとして空回りしている無様な様が、すべて丸見えだというのか。
「……勝手にしろ。貴殿の趣味嗜好に口を出すつもりはない。俺は……忙しい、もう帰る」
なんだか、いい大人が小鳥相手に無性に悔しくなり、投げやりな返事をして逃げるように塔を去った。 冷たい夜風に吹かれながら屋敷に戻る道すがら、一羽の魔物相手に何を躍起になって嫉妬しているんだと、自分の器の小ささと情けなさに、深いため息をつくしかなかった。
あの不吉な漆黒の翼を持つカラス――レリルが愛おしげにその名を呼ぶ、「レイブン」という名の魔物だ。
「レイブン、本当にお利口さんだね。今日もお外で元気に遊んできたの? ほら、いい子だね……」
レリルが慈しむようにその名を呼び、宝石を散りばめたかのように目をキラキラと輝かせて、満面の笑みを浮かべる。それは俺がどれほど贅沢な食材を運び込み、不器用な言葉を尽くしても一度として向けられたことのない、純粋無垢で心からの笑顔だった。 あの大罪人が、あろうことか一羽の「魔物」にだけ、魂の奥底を見せるような無防備な親愛を注いでいる。その光景を目の当たりにするたび、俺の胸の奥には、熱い鉄を流し込まれたような猛烈ないら立ちが渦巻いた。
俺は自制が利かず、知らず知らずのうちに苦虫を噛み潰したような、険悪な表情を顔に出してしまっていた。
「魔物を使役して何か良からぬことでも企んでいるのではないか」
などと、かつて自分が無知ゆえに放った心ない言葉を、レリルは今も鮮明に覚えているのだろう。彼は俺の険悪な気配を察するやいなや、目に見えて怯えたように、大切な宝物を隠すようにしてレイブンを自分の胸元へ強く抱き寄せ、庇うような素振りを見せた。
「……すみません。辺境伯様には不気味に見えますよね。でも、この子は本当に安全なんです。私を助けてくれた、ただ一人の……家族なんです」
(……分かっている。その鳥が貴殿にとって救いであることなど、今の俺には痛いほど分かっている。……だが、どうしても面白くないのだ)
喉元まで出かかった本音を、俺は辛うじて飲み込んだ。 一方のレイブンといえば、レリルの肩越しに黒い瞳を光らせ、こちらをじっと見つめていた。その表情は、言葉こそ発しないものの、明らかに俺の焦燥を見透かし、勝ち誇ったような――いわゆる「ドヤ顔」でマウントを取ってきているようにしか見えなかった。 あの魔物には、俺がレリルの関心を惹こうとして空回りしている無様な様が、すべて丸見えだというのか。
「……勝手にしろ。貴殿の趣味嗜好に口を出すつもりはない。俺は……忙しい、もう帰る」
なんだか、いい大人が小鳥相手に無性に悔しくなり、投げやりな返事をして逃げるように塔を去った。 冷たい夜風に吹かれながら屋敷に戻る道すがら、一羽の魔物相手に何を躍起になって嫉妬しているんだと、自分の器の小ささと情けなさに、深いため息をつくしかなかった。
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