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第3章
第64話:爆発する憤怒
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「僕が、魔石化すればいい」
レリルが、まるでお茶でも勧めるような穏やかさで、その禁忌の言葉を口にした瞬間――俺の視界は、どす黒い灼熱の怒りで塗り潰された。
塔を飛び出し、夜の冷気を切り裂くように愛馬を狂ったように駆り立てている今この瞬間も、握りしめた革の手綱が千切れんばかりに震え、掌には爪が食い込んで血が滲んでいる。
あいつは……レリルは、自分の吐いた言葉がどれほど恐ろしい、取り返しのつかない意味を持っているのか、本当に、これっぽっちでも理解しているのか!?
「石化」するというのは、月に一度、俺の手を介して魔力を提供させるのとは、文字通り次元が違う。それは、ただの死よりも遥かに残酷な、永遠に続く拷問に他ならないのだ。
血の通った柔らかな肉体を、温かな鼓動を、誰かに触れれば熱を感じるその肌をすべて捨て去り、己の意識を永久に冷たい石の檻の中に閉じ込めるということだ。その命が、最後の火花を散らして尽き果てるまで、ただの「高純度な魔力資源」として、物言わぬ鉱石として、無機質に、そして徹底的に搾取され続ける。
石になれば、もう二度と、あいつは自ら笑うことも、泣くことも、助けを求めて叫ぶことすらできない。誰に優しく触れられることもなく、たとえどんなに酷い扱いをされようとも抗う術を持たず、ただ思考だけが止まった永遠の闇の中で、孤独に死を待ち続ける地獄。
それを――ああもあっさりと。俺を守るためだと、あろうことか、この世で最も愛おしく、尊いものを見つめるような微笑みを湛えながら、自分という存在をゴミ同然に差し出そうとした。
「ふざけるな……! そんな血塗られた、呪いのような救いを、この俺が受け取ると本気で思っているのか……ッ!!」
喉を引き裂くように吠えた叫びは、無情な北風にかき消され、誰に届くこともなく散っていく。
怒りの矛先は、自分を容易く捨てようとしたレリルだけではない。彼にそんな残酷な選択肢を、それこそが唯一の「正解」だと思い込ませてしまうほどに追い詰めてしまった、自分自身の無力さと不甲斐なさに、何よりも、誰よりも激しい憎悪を覚えていた。
俺は、レリルを護ろうとしていたはずだった。
魔力搾取でボロボロになったその体を抱き上げ、美味いものを腹一杯食べさせ、凍えないように暖かな寝床を整え……いつかあのアスファルトのような冷たく無機質な石壁の外へ連れ出し、その瞳に本物の空の青さを、世界の色彩を見せてやりたいと、魂の底から願っていたのだ。
それなのに、護ろうとしていた、愛惜してやまなかった当の本人が、あろうことか俺を生かすために、俺を救うために、自分自身の尊厳も未来も、その存在のすべてを真っ先に投げ捨てようとしている。
レリルが、俺がこれほどまでに愛おしみ、慈しんできたその存在を、自ら「ただの便利な道具」として定義したことが――。
その歪んだ自己犠牲が、何よりも耐え難く、そして、狂おしいほどに悔しかった。
馬の蹄が石畳を叩く音が、今の俺にはレリルという存在が壊れていくカウントダウンのように聞こえて、胸が焼けるような焦燥感に締め付けられていた。
レリルが、まるでお茶でも勧めるような穏やかさで、その禁忌の言葉を口にした瞬間――俺の視界は、どす黒い灼熱の怒りで塗り潰された。
塔を飛び出し、夜の冷気を切り裂くように愛馬を狂ったように駆り立てている今この瞬間も、握りしめた革の手綱が千切れんばかりに震え、掌には爪が食い込んで血が滲んでいる。
あいつは……レリルは、自分の吐いた言葉がどれほど恐ろしい、取り返しのつかない意味を持っているのか、本当に、これっぽっちでも理解しているのか!?
「石化」するというのは、月に一度、俺の手を介して魔力を提供させるのとは、文字通り次元が違う。それは、ただの死よりも遥かに残酷な、永遠に続く拷問に他ならないのだ。
血の通った柔らかな肉体を、温かな鼓動を、誰かに触れれば熱を感じるその肌をすべて捨て去り、己の意識を永久に冷たい石の檻の中に閉じ込めるということだ。その命が、最後の火花を散らして尽き果てるまで、ただの「高純度な魔力資源」として、物言わぬ鉱石として、無機質に、そして徹底的に搾取され続ける。
石になれば、もう二度と、あいつは自ら笑うことも、泣くことも、助けを求めて叫ぶことすらできない。誰に優しく触れられることもなく、たとえどんなに酷い扱いをされようとも抗う術を持たず、ただ思考だけが止まった永遠の闇の中で、孤独に死を待ち続ける地獄。
それを――ああもあっさりと。俺を守るためだと、あろうことか、この世で最も愛おしく、尊いものを見つめるような微笑みを湛えながら、自分という存在をゴミ同然に差し出そうとした。
「ふざけるな……! そんな血塗られた、呪いのような救いを、この俺が受け取ると本気で思っているのか……ッ!!」
喉を引き裂くように吠えた叫びは、無情な北風にかき消され、誰に届くこともなく散っていく。
怒りの矛先は、自分を容易く捨てようとしたレリルだけではない。彼にそんな残酷な選択肢を、それこそが唯一の「正解」だと思い込ませてしまうほどに追い詰めてしまった、自分自身の無力さと不甲斐なさに、何よりも、誰よりも激しい憎悪を覚えていた。
俺は、レリルを護ろうとしていたはずだった。
魔力搾取でボロボロになったその体を抱き上げ、美味いものを腹一杯食べさせ、凍えないように暖かな寝床を整え……いつかあのアスファルトのような冷たく無機質な石壁の外へ連れ出し、その瞳に本物の空の青さを、世界の色彩を見せてやりたいと、魂の底から願っていたのだ。
それなのに、護ろうとしていた、愛惜してやまなかった当の本人が、あろうことか俺を生かすために、俺を救うために、自分自身の尊厳も未来も、その存在のすべてを真っ先に投げ捨てようとしている。
レリルが、俺がこれほどまでに愛おしみ、慈しんできたその存在を、自ら「ただの便利な道具」として定義したことが――。
その歪んだ自己犠牲が、何よりも耐え難く、そして、狂おしいほどに悔しかった。
馬の蹄が石畳を叩く音が、今の俺にはレリルという存在が壊れていくカウントダウンのように聞こえて、胸が焼けるような焦燥感に締め付けられていた。
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