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第4章
第75話:新しい城と、二人の門出
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二人が五年間過ごした森の近くの小屋は、静かで安全な「避難所」だった。けれど、薬師として生きる決意をしたセシルには、もっと街の人々が寄り添いやすい場所が必要だった。
「ここなら、市場からも近いし、陽当たりもいい。……どうかな、アルヴィス」
セシルが指差したのは、街の端、緩やかな坂道の途中に建つ小さな空き家だった。
かつては腕の良い細工師が住んでいたというその家は、一階が仕事場、二階が居住スペースになっていて、裏には小さな薬草園を作れそうな庭まで付いている。
「……悪くない。地盤もしっかりしているし、裏手は崖になっているから、背後からの急襲も防ぎやすい」
「もう、まだそんなこと言ってるの? 僕は庭に何を植えようかって話をしてるんだよ」
セシルは苦笑しながら、錆びついた鍵を開けて中に入った。
埃が舞う室内。けれど、窓から差し込む午後の陽光は驚くほど温かく、壁の至る所に前任者が残した仕事への愛着が感じられる。
「アルヴィス、見て。このカウンター、すごく立派だよ。ここにお薬を並べて、隣に君が座る椅子を置いて……」
セシルが楽しそうに部屋を歩き回る姿を、アルヴィスは静かに見守っていた。
王宮の、あの贅を尽くした冷たい大理石の部屋よりも。黄金の装飾に彩られた寝台よりも。埃っぽく、狭いこの家で、未来を語るセシルの瞳はずっと輝いている。
「セシル、掃除から始めましょう。二階は私たちが眠る場所。一階は貴方が命を救う場所だ。……今日からはここが、俺たちの『家』になります」
「うん、僕たちの家だね」
二人はさっそく、腕まくりをして作業に取り掛かった。
アルヴィスが驚異的な怪力で大きな家具を動かし、積もった埃を掃き出していく。セシルは窓を磨き、何年も閉ざされていた空気を入れ替えた。
作業の合間、セシルはふと手を止めて、窓の外に広がる街の景色を眺めた。
遠くで教会の鐘が鳴り、市場の喧騒がかすかに風に乗って聞こえてくる。
かつては「民」として遠い場所から見下ろすだけだった人々。けれど、これからはこの街の一員として、彼らと同じ空気を吸い、同じ土の上で生きていくのだ。
「……アルヴィス。僕、今、すごく幸せだよ。……生きていて、本当に良かったって、心の底から思う」
背後から近づいたアルヴィスが、煤で少し汚れたセシルの頬を指先で優しく拭った。
「貴方がそう笑ってくれるなら、俺は他に何も望みません。……さあ、夜になる前に二階のベッドを整えてしまいましょう。新しい家での最初の夜ですから」
「ふふ、そうだね。……アル、今日の夕飯は奮発して、市場でお肉を買ってこようか」
新しい鍵の束が、セシルのポケットの中でカチリと音を立てる。
それは、過去の自分を閉じ込めていた監獄の鍵ではなく、自分の人生を自由に開くための、輝かしい真実の鍵だった。
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「アルヴィス、見て。このカウンター、すごく立派だよ。ここにお薬を並べて、隣に君が座る椅子を置いて……」
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「うん、僕たちの家だね」
二人はさっそく、腕まくりをして作業に取り掛かった。
アルヴィスが驚異的な怪力で大きな家具を動かし、積もった埃を掃き出していく。セシルは窓を磨き、何年も閉ざされていた空気を入れ替えた。
作業の合間、セシルはふと手を止めて、窓の外に広がる街の景色を眺めた。
遠くで教会の鐘が鳴り、市場の喧騒がかすかに風に乗って聞こえてくる。
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「……アルヴィス。僕、今、すごく幸せだよ。……生きていて、本当に良かったって、心の底から思う」
背後から近づいたアルヴィスが、煤で少し汚れたセシルの頬を指先で優しく拭った。
「貴方がそう笑ってくれるなら、俺は他に何も望みません。……さあ、夜になる前に二階のベッドを整えてしまいましょう。新しい家での最初の夜ですから」
「ふふ、そうだね。……アル、今日の夕飯は奮発して、市場でお肉を買ってこようか」
新しい鍵の束が、セシルのポケットの中でカチリと音を立てる。
それは、過去の自分を閉じ込めていた監獄の鍵ではなく、自分の人生を自由に開くための、輝かしい真実の鍵だった。
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