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第1章 勇者視点
第3話 居場所
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魔物の唸り声が、すぐ頭上から聞こえた。肉を引き裂く、ぞっとするような音が響くはずだった。俺は最後の痛みに備えて、全身の力を抜いた。
──ガキィン! ギィヤアアアアッ!
しかし、予想していた痛みは来なかった。代わりに、耳をつんざくような鋭い金属音と、魔物の甲高い断末魔が響き渡った。空気は一瞬で熱くなり、そして、強烈な血の匂いが鼻をついた。激しい戦闘があったことを示していた。その音は、まるで俺の命を救うための、荒々しい鎮魂歌のようだった。
恐る恐る目を開けると、俺の目の前に、一人の少年が立っていた。
魔物は地面に倒れ伏し、その横に立つ少年は、俺と歳が変わらないくらいだろう。だが、その立ち姿は堂々としていて、手には血のついた細身の剣を握っていた。その剣からは、今しがた魔物を打ち倒したという強い力が感じられた。
彼は、森の闇に不似合いな、上質な黒い衣装を着ていた。その服は、貴族か、あるいは王族のような、手の込んだ刺繍が施されている。黒髪は静かで、夕焼けの残光を浴びたように僅かに赤く輝いている。
そして、その顔立ちは、まるで精巧な彫刻のように整っていた。
少年は、剣を鞘に納めると、ゆっくりと俺に視線を向けた。
その瞳は、深淵のような黒曜石。しかし、その黒の中には、この屋敷と森に閉じ込められた、底知れない孤独が宿っているように見えた。彼は、俺を見つけるまで、ずっとこの森で一人だったのだろう。
俺は、彼のその視線に、初めて拒絶ではない感情を見た。
それは、俺の存在を否定しない、純粋な好奇心だった。まるで珍しい生き物を観察するような、無垢で、しかし貪欲な視線。彼は、人間である俺を見るのが初めてなのだろう。
少年は俺に駆け寄り、その小さな手で俺の手を握りしめた。彼の指先からは、剣を振るった後の熱が伝わってきた。その熱は、俺の凍えきった身体だけでなく、心までをも温めた。
「ヒトだ!自分以外のヒトだ!ねえ、君、名前は?」
「セ、セレ……」
「セレ……。俺の名前はノアールだよ!」
ノアールは、初めて手に入れた宝物のように俺の顔を覗き込むと、信じられないほど幸せそうな、純粋な笑顔を見せた。そして、彼の瞳が、内側から光を放つようにキラキラと輝いたのだ。その輝きは、俺の瞳の金色の光を、まるで美しいものとして容認しているかのようだった。
「君、目がすごく綺麗だね。夜空の光を閉じ込めたみたいだ」
俺の目の光彩を、気持ち悪いと言う代わりに、綺麗だと、彼は言った。彼の言葉には、俺を否定する要素が微塵もなかった。ただ純粋な賞賛だけがあった。
その言葉を聞いた瞬間、俺の胸の中で、凍っていた何かが溶け、熱いものが込み上げてきた。ノアールの言葉は、俺の存在のすべてを肯定してくれた。
「よし!決めた!君は俺のペットだ!」
ノアールはそう言うと、俺を抱き上げ、森の奥へ連れて行った。俺は、この少年に従うこと以外、考えられなかった。
──ガキィン! ギィヤアアアアッ!
しかし、予想していた痛みは来なかった。代わりに、耳をつんざくような鋭い金属音と、魔物の甲高い断末魔が響き渡った。空気は一瞬で熱くなり、そして、強烈な血の匂いが鼻をついた。激しい戦闘があったことを示していた。その音は、まるで俺の命を救うための、荒々しい鎮魂歌のようだった。
恐る恐る目を開けると、俺の目の前に、一人の少年が立っていた。
魔物は地面に倒れ伏し、その横に立つ少年は、俺と歳が変わらないくらいだろう。だが、その立ち姿は堂々としていて、手には血のついた細身の剣を握っていた。その剣からは、今しがた魔物を打ち倒したという強い力が感じられた。
彼は、森の闇に不似合いな、上質な黒い衣装を着ていた。その服は、貴族か、あるいは王族のような、手の込んだ刺繍が施されている。黒髪は静かで、夕焼けの残光を浴びたように僅かに赤く輝いている。
そして、その顔立ちは、まるで精巧な彫刻のように整っていた。
少年は、剣を鞘に納めると、ゆっくりと俺に視線を向けた。
その瞳は、深淵のような黒曜石。しかし、その黒の中には、この屋敷と森に閉じ込められた、底知れない孤独が宿っているように見えた。彼は、俺を見つけるまで、ずっとこの森で一人だったのだろう。
俺は、彼のその視線に、初めて拒絶ではない感情を見た。
それは、俺の存在を否定しない、純粋な好奇心だった。まるで珍しい生き物を観察するような、無垢で、しかし貪欲な視線。彼は、人間である俺を見るのが初めてなのだろう。
少年は俺に駆け寄り、その小さな手で俺の手を握りしめた。彼の指先からは、剣を振るった後の熱が伝わってきた。その熱は、俺の凍えきった身体だけでなく、心までをも温めた。
「ヒトだ!自分以外のヒトだ!ねえ、君、名前は?」
「セ、セレ……」
「セレ……。俺の名前はノアールだよ!」
ノアールは、初めて手に入れた宝物のように俺の顔を覗き込むと、信じられないほど幸せそうな、純粋な笑顔を見せた。そして、彼の瞳が、内側から光を放つようにキラキラと輝いたのだ。その輝きは、俺の瞳の金色の光を、まるで美しいものとして容認しているかのようだった。
「君、目がすごく綺麗だね。夜空の光を閉じ込めたみたいだ」
俺の目の光彩を、気持ち悪いと言う代わりに、綺麗だと、彼は言った。彼の言葉には、俺を否定する要素が微塵もなかった。ただ純粋な賞賛だけがあった。
その言葉を聞いた瞬間、俺の胸の中で、凍っていた何かが溶け、熱いものが込み上げてきた。ノアールの言葉は、俺の存在のすべてを肯定してくれた。
「よし!決めた!君は俺のペットだ!」
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