復讐の鎖に繋がれた魔王は、光に囚われる。

篠雨

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第1章 勇者視点

第4話:絶対に離さない

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ノアールに連れてこられたのは、森の闇に隠れるように建つ、豪華絢爛な大屋敷だった。外壁は石造りで重厚だが、内部は豪華な絨毯や、見事な彫刻が施された家具で埋め尽くされていた。屋敷全体は広大で美しかったが、使用人の気配は全くなく、不気味なほど静かだった。まるで、巨大な檻の中で暮らしているかのようだった。

大広間に通され、ノアールは俺をソファに座らせると、どこからか小さな銀色の鎖と、飾り気のない革製の首輪を持ってきた。その鎖は、冷たく鈍い光を放っていた。

「セレ。これをつける」

ノアールは、その黒曜石の瞳を真っ直ぐにして、言った。彼の顔には、一片の迷いもなかった。

「今日から、君は俺のペットだ。俺がずっと可愛がって、守ってやる。だから、俺のそばから離れちゃダメだ」

『ペット』。その言葉には、俺の自由を奪うという響きが含まれていた。しかし、俺が森に捨てられた事実は、俺が自由であってはならない、不要な存在であることを示していた。誰かの管理下になければ、俺は死ぬ。ノアールは、俺を死から救い、そして、彼のそばにいることを許してくれた。

ノアールは、首輪を俺の首にそっとあてた。革の感触は冷たいが、ノアールの指が触れた部分は温かい。カチリ、と金具が嵌まる。首輪の重みが、俺の喉に微かな圧迫感を与えた。

俺の心の中には、恐怖と、それを上回る安堵が激しく混ざり合っていた。

(怖い。また誰かに拘束され、捨てられるのではないか)
(でも、これで、俺はもう一人じゃない。彼は、俺を捨てるつもりはない。俺を必要としてくれている)

ノアールは、鎖を自分の手首に巻きつけながら、真剣な瞳で宣言した。彼の声には、強い決意と、切実な願いが込められていた。

「これがあれば、セレはもうどこにも行かないだろ?絶対に離さない!俺から君を奪わせたりしないからね!」

その言葉は、ノアールの内側に渦巻く強い独占欲そのものだった。彼は、自分以外の人間を見たことがなかった。俺という唯一の温かい存在を、二度と孤独にさせないための、切実な執着だった。彼は、俺を繋ぐことで、自分自身も繋ぎ止めていたのだ。

俺は、鎖の冷たさよりも、ノアールの手の温もりを感じた。鎖は、俺の自由を奪うものでありながら、同時に、俺の居場所を証明してくれる、確かな保証のように思えた。初めて人に優しくされた俺にとって、それは最高の幸福の形だった。

「うん……ノアールと、ずっと一緒にいる」

俺は、生まれて初めて誰かに必要とされ、優しくされたことに、心から感動した。ノアールの独占的な愛情は、俺にとって、生まれて初めて得た、唯一無二の幸福だった。俺は、ノアールの鎖の先にいることが、何よりも嬉しかった。
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