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第6章 魔王視点
第1話:嵐の中の抱擁
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セレは、俺の首に繋がれた鎖を掴んだまま、教会の壁を打ち破り、闇夜の中を駆けた。俺の肩は騎士団の矢で射抜かれ、痛みと出血で意識が朦朧としていたが、彼の光の魔力の奔流が、俺を無理やり引きずっている。
俺の耳に届くのは、彼の荒い呼吸と、彼の瞳の金色の光が闇を切り裂く音だけだ。
「離してなんかやらない……絶対にな」
彼は、何度も同じ言葉を繰り返した。それは、俺に向けた支配の宣言であり、彼自身の孤独への恐怖を打ち消すための呪文のようだった。
数時間、彼は止まらずに走り続けた。王城の追跡の気配が完全に消えたと確信すると、彼は古い山道の、岩陰の小さな洞窟へと俺を引きずり込んだ。
洞窟の中は、湿った土と冷たい空気で満たされていた。セレは俺を地面に乱暴に横たえると、すぐに洞窟の入り口に、以前の教会よりも複雑で強固な結界を張り巡らせた。
「動くな。ここにいろ」
彼は、俺の首の鎖を洞窟の奥の太い岩に巻きつけ、再び固く結びつけた。その行為は、彼がどれほど俺の存在を、手元に確実につなぎとめておきたいと願っているかを物語っていた。
俺は、鎖に繋がれたまま、肩の傷から流れ続ける血を無視して、彼を見上げた。
「セレ……なぜ、王城の罠だと分かっていながら、戻ってきたんだ。僕を置いて、逃げればよかったのに」
俺の問いかけに、セレは激昂した。
「馬鹿を言うな!お前は俺の獲物だ。他の誰にも、指一本触れさせてたまるか!お前を殺していいのは、俺だけだ!」
彼は、俺のすぐそばに座り込むと、激しい怒りのまま、俺の傷口を乱暴に調べ始めた。その指先は震えている。怒りではなく、極度の不安からくる震えだった。
「…血が出すぎだ。お前は、このまま死ぬつもりか」
彼の瞳は、俺の傷に注がれているが、その奥にあるのは、俺の命への懸念ではなく、俺を失うことへの恐怖だ。
彼は、自分のローブを乱暴に引き裂き、俺の肩の傷口に、止血のための光の魔力を流し込みながら、布を強く押し付けた。
「これで、王城はお前を滅却し、俺を裏切り者として追う。お前のせいで、俺は居場所を失ったんだ」
彼はそう言ったが、彼の表情には、解放感が混じっていた。もう、王城の命令に従い、勇者という道具として生きる必要はない。彼は、俺という復讐の鎖と、二人きりになったのだ。
俺は、彼のその歪んだ感情を理解した。彼は、自由を求めていたのではない。彼が求めていたのは、俺との排他的な関係であり、孤独な支配だった。
「……ごめん、セレ。僕のせいで」
俺が謝罪すると、セレは突然、俺の身体を強く抱きしめた。それは、教会での衝動的な抱擁よりも長く、深く、そして熱を帯びたものだった。
「謝るな。俺に謝る権利がお前にあると思うな」
彼の声は、俺の耳元で掠れていた。それは、憎しみの声ではなく、まるで泣き出しそうな、孤独な少年の声だった。
「お前は、俺に償い続けろ。お前はもう、どこにも行けない。俺の檻の中で、一生涯、俺のそばにいるんだ」
彼は、俺に命を救われたのではなく、俺に新たな逃げ場を与えられたのだ。この深い闇の洞窟の中で、鎖に繋がれた俺と、俺に執着する勇者。俺たちの共依存の逃亡劇が、始まった。
俺の耳に届くのは、彼の荒い呼吸と、彼の瞳の金色の光が闇を切り裂く音だけだ。
「離してなんかやらない……絶対にな」
彼は、何度も同じ言葉を繰り返した。それは、俺に向けた支配の宣言であり、彼自身の孤独への恐怖を打ち消すための呪文のようだった。
数時間、彼は止まらずに走り続けた。王城の追跡の気配が完全に消えたと確信すると、彼は古い山道の、岩陰の小さな洞窟へと俺を引きずり込んだ。
洞窟の中は、湿った土と冷たい空気で満たされていた。セレは俺を地面に乱暴に横たえると、すぐに洞窟の入り口に、以前の教会よりも複雑で強固な結界を張り巡らせた。
「動くな。ここにいろ」
彼は、俺の首の鎖を洞窟の奥の太い岩に巻きつけ、再び固く結びつけた。その行為は、彼がどれほど俺の存在を、手元に確実につなぎとめておきたいと願っているかを物語っていた。
俺は、鎖に繋がれたまま、肩の傷から流れ続ける血を無視して、彼を見上げた。
「セレ……なぜ、王城の罠だと分かっていながら、戻ってきたんだ。僕を置いて、逃げればよかったのに」
俺の問いかけに、セレは激昂した。
「馬鹿を言うな!お前は俺の獲物だ。他の誰にも、指一本触れさせてたまるか!お前を殺していいのは、俺だけだ!」
彼は、俺のすぐそばに座り込むと、激しい怒りのまま、俺の傷口を乱暴に調べ始めた。その指先は震えている。怒りではなく、極度の不安からくる震えだった。
「…血が出すぎだ。お前は、このまま死ぬつもりか」
彼の瞳は、俺の傷に注がれているが、その奥にあるのは、俺の命への懸念ではなく、俺を失うことへの恐怖だ。
彼は、自分のローブを乱暴に引き裂き、俺の肩の傷口に、止血のための光の魔力を流し込みながら、布を強く押し付けた。
「これで、王城はお前を滅却し、俺を裏切り者として追う。お前のせいで、俺は居場所を失ったんだ」
彼はそう言ったが、彼の表情には、解放感が混じっていた。もう、王城の命令に従い、勇者という道具として生きる必要はない。彼は、俺という復讐の鎖と、二人きりになったのだ。
俺は、彼のその歪んだ感情を理解した。彼は、自由を求めていたのではない。彼が求めていたのは、俺との排他的な関係であり、孤独な支配だった。
「……ごめん、セレ。僕のせいで」
俺が謝罪すると、セレは突然、俺の身体を強く抱きしめた。それは、教会での衝動的な抱擁よりも長く、深く、そして熱を帯びたものだった。
「謝るな。俺に謝る権利がお前にあると思うな」
彼の声は、俺の耳元で掠れていた。それは、憎しみの声ではなく、まるで泣き出しそうな、孤独な少年の声だった。
「お前は、俺に償い続けろ。お前はもう、どこにも行けない。俺の檻の中で、一生涯、俺のそばにいるんだ」
彼は、俺に命を救われたのではなく、俺に新たな逃げ場を与えられたのだ。この深い闇の洞窟の中で、鎖に繋がれた俺と、俺に執着する勇者。俺たちの共依存の逃亡劇が、始まった。
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