異世界陸軍活動記

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ペンダント

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「できたぁ‥‥」

「おう! おめでとう」

 春夏秋冬、乾期と雨季、そんなものが全く無い世界、1年を通し毎日代わり映えのしない天気の中で暮らしていると、本当に1年たったのかも曖昧になってくる、この世界に来て7年目、軍学校に入って3年目を向かえている。

 そして手に持っている物はたった今完成した刀、細見で刃は薄く少しだけ湾曲している、切れ味は一級だが脆いもろい
 そう! みんな大好き日本刀だ、ロマン武器の頂点に立つであろうこの刀を今、手にしている。

「俺にも見せてくれよ」

「どうぞどうぞ」

「どれどれ‥‥うん、歪みはないな、それにしても細いな」
 
 今、俺の打った日本刀を見ているのは4年目の「ペルペ先輩」だ、大体同じ時間に鍛冶場を使うことが多い。
 俺が号泣しているとトイレットペーパーを渡してくれる事が多い。学校の備品を盗むなど手癖は悪いけどいい人だ。

「伸ばしては折って、伸ばしては折って一体何してんだろと思ってたけどね、出来上がって見てみると結構奇麗なもんだな、いやぁ勉強になったよ。でもな、ものっすっごい切れるだろうけどな、実戦ではつかえねぇぞ?」

「でしょうね、一回切っただけで刃こぼれするかもしれないですね」

「じゃー何で作った?」

「自己満足ですよただそれだけ、ということで『硬化』魔法お願いします」

「わかったよ」
 ペルペ先輩が刀に沿って手をなぞると一瞬だけ刀身が発光し収まる
「ほらよ」

「どうもー」
 受け取った刀を『収納』に入れておく、
「あーそうだ先輩、チェーンってもう出来てます」

「出来てるぞ」
 ほれ、と出来たものを投げてよこす

「どうもー」
 飛んできたチェーンをキャッチし傍らに置く、そしてあらかじめ作っておいた、縦3㎝横2㎝の俺の力作ペンダントを用意する。色は銀色、そこに最後の仕上げにかかる。

「チェーン作ってくれって言われて作ったけどアクセサリーだったか、プレゼントか?」
 俺の手元をのぞき込むように見てくるペルペ先輩

「ええ、そうですよ」
そう答えたらペルペ先輩は、ニターっといやらしい笑みを浮かべ顔をこっちに近づけてきた。

「女だな、そうだろ?」

「いえ、男ですけど」
 
 その瞬間、ペルペ先輩の顔からスッと笑みが消え近づけてきた顔を離した、多分こういうやり取りがあるだろうと予想していたので、続けてこう付け加える。

「3年で卒業する奴がいるんで、そいつへのお守りですよ、先輩が思っているようなものじゃないですから」

 一応違いますよとは言ってみたが

 「お、おう‥‥」とだけ返事した先輩はたまに横目でチラチラ見ながらスススと離れていった。そのまま無言になる先輩

 あれ?信じてもらえてない?

 あまりにしつこく訂正すると、逆に本当っぽく聞こえるのでそれ以上は言わない
 
 ペンダントの表には、竜の羽を広げたように見える模様が立体的に盛られていている、羽の真ん中には竜騎士が使うと言われている槍の形が彫られている、その槍の形が掘られた部分に溶かした魔鉱石を流し込む。
 
 魔鉱石は一度溶かすとなかなか固まることは無い、そして粘度も極めて低くサラサラしている、それをボールペンの芯の太さと同じ幅の彫った溝に流し込むのは、かなり集中しないとできない、武器に流し込む幅よりも狭いので専用の器具を使う

「‥‥‥‥ふぅ、終わり! 先輩『硬化』してもらえます?」

「う、うん・・」
 
 まだよそよそしい感じがする、まぁいいや

 ペルペ先輩は指先に魔力を通し『硬化』を発動し、槍の形に流し込んだ魔鉱石の上をなぞる

 気のせいか‥‥‥‥今、息止めてたんじゃない?

 『硬化』を発動させたペルペ先輩はサササと、自分の場所に戻った。

 これで魔鉱石の部分が固まったな、あとは後ろに。

 ペンダントをひっくり返し今度はそこに文字を掘る、お守りとして作りたいのでどんな文字にするか悩んだが、この世界の文字ではなく、自分の国の文字、漢字を掘ることにした。そっちの方が想いが伝わるような気がしたからだ。
 それにあれだ、外人って漢字好きじゃん? タトゥーとか入れたりする人もいるし、それに、ここにいる人達全員外人だし。
 まぁ、この国の人達から見たら俺の方が外人になるんだけど。

 
 たった3年、もう3年と言うべきか、短かい付き合いで、まだお互いに全部は知っているわけではない、進む道も違うし、卒業してもしかしたらもう二度と会うことは無いかもしれない、いや、多分よっぽどのことがない限り会う事は無理だろう。

 お互いに忙しくなるし、戦死だってありうる、多分俺の方が死ぬ確率は高いと思う、ただ彼には死んでほしくない、俺にとって、27年生きてきた中で初めての親友と呼べる存在だったから。
 欧米ズ達と一緒に飯を食うこともあったけど、殆どは彼と一緒だった。
 自分の話、相手の話、昔のこの国はこうだった、これからはどうなるか、色々語り合って正直楽しかった、出来ることなら軍を退役した後にでも。もう一度彼と話をしたいと思った。
 
 その願いを叶えてくれる言葉はこれしかないと思い、その文字を掘る。



『武運長久』


 ◇



 この世界の`文明度`と言えばいいのか発展具合というのか、要するに俺の星と比べてどちらが進んでいるか、と言われると正直悩む、「科学」だけで見ると圧倒的に地球の方だろう、むしろ無いに等しい、ただしこの世界には「魔法」がある、それを付け加えると地球よりも進んでいるように見えるが一概には言えない。
 
 魔法によるレールガンを完成させた時、科学の知識を魔法に生かせないか? と思うようになってきた。レールガンが出来たのだから当然生かせるはずなのだが‥‥‥‥
 どうやって結びつけるか、どれが利用できるか? 全く思いつかない

 後々やって行こうと問題を後回しにし、日々が過ぎていく。

 そして軍学校に入学し、3年目が終了しようとしていた。それは一部の人達との別れを意味している



 ◇◆◇◆


「・・・と思います、今日は皆さん卒業おめでとうございます、それに伴い・・・・」


 校長の話は長い

 ここの世界でもそれは当てはまったようだ、「私から一言」この言葉に騙されてはいけない。
 大体10分くらいは話そうとする、この後に来賓の人たちからの話が待っている、その人たちも10分くらい話すんだろう
 ホラ! 前の席の人がお尻をモジモジしだした、辛いんだろう? 俺も辛いからおまえも頑張れ! としか言えない。

 俺は3年なので卒業式は関係ない、挨拶をしなければいけない人はいるが、ただ‥卒業式を見ていると来年は自分達があそこにいるのか、と考えてしまう、軍に正式に配属されてもやっていけるか正直心配だ。
 
 でも何をしても次はあそこに自分達がいなければならない、それに来年から始まる一時的な軍への仮入隊も待っている、もうすでに俺の仮入隊する分隊は決まっているとのこと。
 
 噂によると俺が入る隊が決まった瞬間、そこの部隊長は両手の拳を天に掲げ叫び、そのあと休暇中だった分隊員全員で朝まで飲み明かしたらしい。
 そのあと全員酔いつぶれ、道で寝ていたところをお巡りさんにお世話になり、その日のうちに怒られたとかなんとか。
 そこまで期待されると頑張らなければと考える。


 ◇


「先輩方、おめでとうございます」
 長い長い卒業式が終わり、俺は卒業する先輩たちに挨拶をして回っていた

「ああ、ありがとう!」
「ありがとねハヤト!」

 召喚科の先行隊志望のカップル先輩だ、以前俺の剣技を見学に来ていた人達でその後も、召喚獣の訓練や剣技の訓練なども一緒にしたことがある、今回この二人は入隊する隊は別々だが、その両方の隊も大体同じような場所に派遣されるという、なので遠距離になることはないだろう

「俺卒業したらこいつと結婚するんだ」

 と、以前俺に言ってきて「あっ!」と思ったけど、まぁ大丈夫だろうここ異世界だしと思い、話を流したことがある、‥‥‥‥大丈夫だよね? フラグとか
 
 カップル先輩達と少し話をしていたが、他にもカップル先輩達と話をしたそうな生徒がいたので、その生徒に相手を譲り俺はどうしても最後に話をしなくてはいけない卒業生を探す。

 
 俺と同じ3年にも関わらず、今年卒業することが決まった男

 いた・・・女子7人くらいに囲まれて

「バールに会えなくなると寂しいよー」
「先輩、落ち着いたら絶対私に連絡くださいよー」
「うっ・・うっう・・・ぐすっ・・せんぱーい!」
 
 モテモテじゃないですか、今までそんな場面見たことないんだけど? 俺に隠れて何してたの?
 
 バールは顔はいい方だと思う、本当は陸でもやっていけるだけの才能もある訳だし、なんだろう‥‥嫉妬してしまう、俺も来年になったら女子に囲まれてキャキャー言われるよね?

「先輩がいなくなると寂しくなるっすねぇ」
「先輩!俺にはちゃんと連絡欲しいっすよ!」
「俺、うっ・・先輩と離れ離れになって悲しいっす・・うわーーん!!」
 
 駄目だ! 欧米ズしか思い浮かばない、というか女子とあんまり話した記憶がない。

 来年の不安材料が増えて鬱になっていると、バールがこっちに気付き近づいてきた「ちょっとごめんね」と気遣いの断りも忘れずかけ。

「おう! ハヤトお祝いの言葉をまだお前から貰ってないぞ?」

「えっ? 欲しいの?」

「えっ? くれないの?」
 二人で顔を見合わせ

「「あはははは」」

 二人で笑い合う、こういうことももう出来なくなる。

「あーははっ‥‥‥‥フフッ、卒業おめでとうバール」

「ありがとう!」

「それでな‥‥バール、お前に渡すものがある」
 今日のために作っておいた物を取り出しバールに渡した

「これ、貰ってくれないか? 卒業祝いというかお守りだ」

「ん? これ‥‥お前が作ったのか?」

「ああ」

「俺のこと分かってるじゃないか、竜騎士の印のお守りとか」
 ペンダントを受け取ったバールは満面の笑顔だった
「すげー嬉しいよ、一生大事にする!」

「そう言ってくれると作った甲斐がある」

「この後ろの模様?」
 ペンダントの裏を見たバールは裏に彫ってある物を見て困惑する、初めて見たのだから一体何だろうとは思うだろう。

「それな、俺の生まれた国の文字で『ぶうんちょうきゅう』って彫ってあるんだ、『戦場での運が一生続きますように』って意味がある、生きて生きて生き延びて、退役したらまた一緒に酒でも飲もう」

 それを聞いたバールはとても優しく笑った顔でペンダントの文字を見ていた、目は少し潤んでいるように見える

「ああ‥‥ああ、そうだな、親友の頼みなら仕方ないな、あの喫茶店にもまた行きたいし」

 親友と言われ、ちょっと照れ臭くなり顔が熱くなるのが感じる、多分赤くなっていると思う、恥ずかしいので俺は下にうつ向いた、バールも一緒にうつ向いていた、理由は俺と一緒だろう。

 さっきバールの周りにいた女子のうち数人が
「「「きゃー!!」」」 
 と歓喜の悲鳴をあげていた。

 ああ‥‥‥‥こっちの世界でもいるんだなと思った




 この世での7年目が終了し8年目を迎え、いよいよ実戦を経験することになる
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