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ヨルド要塞陥落
しおりを挟む「ううっ‥‥」
パラパラと微かに土が舞う中、意識を覚醒させる
このまま倒れてしまおうか?
そう思いつつもゆっくりと体を起こす、左手にダメージを受けたみたいで、動かすことが出来ない。
でも、なんとか生き延びることが出来たようだ
ソルセリーと約束をした‥‥だから行かなきゃ
時折突風が吹き荒れる中、立ち上がる、今さっきまで辺りは林だったのが、今はただ開けた土地になってしまっている、俺の盾変わりになったデュラハンのデュラ子とハン子の姿は無く、消滅していた。
その証拠に俺の体から大量の魔力が抜け出ている、ノームは1体だけ消滅だったのでそれほどでもなかったが、デュラハンが消えたことで更に体に負担が掛かってしまっている
起こした体でそのまま立ち上がろうとするが
「おっ‥‥」
上手く力が入らない
早く、ソルセリーの所に
黄色の魔法陣が現れ、ペガサス状態のコスモが出てくる、コスモはそのまま膝を折り姿勢を低くしてくれた。
「はのむぞ」
俺を乗せたコスモは一声嘶くと、そのまま上空へと飛び上がった。
空に上がると風がかなり乱れていた『消滅』魔法の余波だろう、コスモは翼で風を切り羽ばたいて飛んでいる訳ではないので関係が無いけれど、風が吹くたびに体が飛ばされそうになる
なるほど、コレだと竜翼機は飛ぶことすら危険だろう‥‥
ふらついていた頭も少しずつだが鮮明になってくる
上空から見下ろすと辺り一面、広範囲にわたって荒地になっていた。
これでよく生きていられたものだと、我ながら思う
この景色を見るだけでゾッとする、退避するのがもう少し遅かったら駄目だったかもしれない
力が入らず、プラプラと鬱陶しく風で揺れる左腕を、右手で掴み股の所に持ってくる、触れている感覚すらない左手を気にしている余裕もない、一刻も早くソルセリーの所に向かわなくては
とは言っても、このままでも余裕で間に合うだろう、後は先発、後発の部隊が到着するまで守っていればこの作戦は成功となる
‥‥見えた
大地に、豆粒のようにポツンと人影がある、あれがソルセリーで間違いない、まだ遠くてよく見えないが、どうやらソルセリ―の周りの地面もかなりえぐれているようだった。
敵の姿は‥‥
大地に目を向け探すが
よし! 姿は無い、俺が先に到着出来た、作戦は成功だ!
一瞬そう思ったが
遠くから風の切る音が聞こえる、「キーン」といった高い音だった。
そして見えるのは二つの小さな点、その点は徐々に大きくなり、形を表していく、それは絶対に飛べないと言われていたマシェルモビアの竜翼機だった
あっ、ずるい!
その時感じた正直な気持ち、『消滅』使用直後は風が乱れ、竜翼機はお互いに飛ばすことが出来ないと聞いていたのに、向こうはそれを出して来た。
しかし、通常編隊を組み行動する竜翼機だが、数が2機しかいない、2機しかいないというか、2機しか飛ばせなかったと言った方が正しいと思う、ソルセリーに向けて飛行してくる敵竜翼機だが、時折吹く突風に振られ、大きく機体を傾けたりしていた。
この環境の中飛ばせるというのは、余程の熟練パイロットだと思う。
その2機がコチラに気付いたらしく、俺の方に向かってくる
竜翼機と召喚獣のコスモ、どちらが優れているかと言ったら、間違いなく竜翼機に軍配が上がる
真正面から来る竜翼機がチカチカと光る、慌てて回避行動を取ると、今まで居た場所を弾丸らしき物が通り過ぎ、その後、音が通り過ぎていく。
互いに高速で近づいているだけあって、弾丸が通り過ぎすぐに目の前には敵竜翼機の姿があった。
そしてコスモと敵竜翼機が交差する、一瞬ではあったが2機の内の1機のパイロットと目が合う、互いに相手の姿を捉え、本当に一瞬ではあったがそこだけゆっくりに感じる、『キーン』と音を立てすれ違う竜翼機
まずは速度について
速度で言ったら圧倒的に竜翼機の方が速い、交差した後に『ボッ』と、風の衝撃波が俺に降りかかる、コスモに急旋回を命じると、体に「G」がかかり内臓が引っ張られる感覚を味わうが、それを『重力』魔法で軽減する
そして旋回能力
旋回能力で言ったらコスモが有利なのだが‥‥コスモの旋回が終わる時には、敵竜翼機も旋回が終わろうとしていた。
地球の戦闘機と比べると、スピードは圧倒的に地球の戦闘機の方が速い、竜翼機はスピードはそれほどでもないが、その旋回能力が優れている。風を放出して飛ぶ竜翼機は急旋回の場合、後部のエンジンノズルを停止してから、機首を少し上げ、機体の前方と下部にあるスラスターを噴射させる事で急停止させる事が出来る、速度を完璧に落とした竜翼機はその場でクルリと方向を変えた。
旋回能力はコスモが上でも、ほとんど誤差の範囲
旋回が終わる直前の竜翼機に向かって火弾を数発、同時に2機に向けて放つが、竜翼機は回避行動を取りつつ、躱しきれなかった魔法はパイロット自身が持つ魔法を使い爆発させ消滅させられた。
最後に攻撃能力と装甲(防御)
俺が放った魔法の内、1つだけが敵魔法の迎撃をすり抜け翼に掠ったが、少しだけバランスを崩しただけだった。
竜翼機は当然ながら機体全体が金属で出来ている、表面には鎧と同じで、人工魔石を用いて魔力が纏わりついており、多少の攻撃なら弾いたり耐えたりする。
なので竜翼機を落とすには、機体が耐えられる以上の魔法を使い直撃させなければならない
対してコスモは防御能力が全くない、敵パイロットの魔法でもダメージを受けるし、竜翼機の機銃に撃たれただけでも消滅する、それに俺自身にも現在防御力が無い
既に盾は存在せず、鎧は破損し、体に掛けられた『耐壁』も全て『消滅』魔法で破壊されてしまった。
ランスで突くことが出来れば一発なのだけれど、高速で移動する竜翼機には当てることすら出来ない、まず不可能、なので魔法を使い攻撃を試みるが‥‥
当たらない、何故だか狙いが定まらない、その場に留まってくれれば当てられると思うが、左右に、そして上下に移動する竜翼機に狙いを定め魔法を放つが、思った場所には飛ばず、放った魔法のほとんどが見当違いの場所に飛んで行く、大気に留まる魔力を利用し、放った魔法の進路を変えるがそれでも外れてしまう
何で当たらないんだよ!
いつもなら簡単に当てる自信はあるが、『消滅』魔法で頭を揺さぶられたせいか思うように当てられないし、魔法の出力を思うように調整出来ない、自分ではかなり魔力を込めて放ったはずなのに、出て来たのは小さな火弾だったりもする
あまりにも当たらないので、ショットガンのように拡散させ魔法を放つが、いいように躱され相手の魔法で迎撃させられる
『消滅』魔法の余波で乱れていた風も少しずつ収まりつつあり、竜翼機が飛行するのに適した状態になってくると、完全にコチラが不利になってきた。
当たれ! 当たれ!
無理にでも魔法を当てようとしたのがまずかったのか‥‥
ヒュン!
俺の後方から右手の方を何かが掠めていった、慌てて後ろを振り向くと、そこには1機の竜翼機が俺の後ろに付いていた。
しまった! 前の1機に集中しすぎてもう1機に後ろを取られた!
次々に撃たれる機銃に回避行動を取るが、回避する方向ににパイロット自身の魔法攻撃が飛んできて阻害される
「うう‥‥」
『重力』魔法を使い「G」を抑えつつ急旋回を繰り返し、後ろから追ってくる竜翼機を振り切ろうとするが、速度は相手の方が早く、旋回能力もほぼ一緒の為振り切れない
このままだと俺が落とされる、どうしたら‥‥
・・・・・
あっ! そうだ後ろに魔法を放てばいいんだ。
単純な事だった。
戦闘機と戦っているので何となく自身も戦闘機に乗っている雰囲気になっていた。しかも地球の戦闘機の考えが強く、さっきまでバンバカ魔法を使っていたのに、ここが魔法がある世界だと頭から抜けていた所があった。
なんて馬鹿な俺、対処方法が分かったらあとはやるだけ
高速で飛行し、俺の後ろから付いてくる竜翼機に向け、大きな氷で出来た壁を出現させる、同時に『硬化』も付与しておく
突然目の前に現れた氷の壁に、後ろを付いてきた竜翼機はそれに激突‥‥せずヒラリと躱した。
えっ!? あれも躱すのか?
相手パイロットの能力に驚いた時、機銃の音と同時に俺の前から弾ける様な音が聞こえた、慌てて音のした方を見ると‥‥
コスモの首が吹っ飛んでいた。
しまった!
もう1機の竜翼機によってコスモは機銃によって撃ち抜かれていた、瞬時にコスモが光になり消滅する、それと同時に俺からは魔力がごっそりと消えていく
コスモが消滅した事で、当然俺はそのまま地面に向かって落下して行った。
‥‥やられた、でもこのまま落ちていくとソルセリーの近くに落ちるな、『風』魔法で減速して、『重力』を使えば無事に着地できる、そうすればソルセリーを‥‥
ソルセリーを守れると思ったが、竜翼機の1機がソルセリーに向けて方向を変えた。
直接狙う気か!? やらせないよ!
魔法でソルセリーを狙う竜翼機を牽制しつつ、俺は『風』魔法を体に当てソルセリーの方角に向けて加速する
俺の放つ魔法を敵竜翼機は、どこに目が付いているんだと言わんばかりに全て躱し、ソルセリーに迫る、更にもう1機の竜翼機が俺に対して機銃を撃ってきた。
打たれた弾丸を連続で魔法を放ち撃ち落とす、今これに当たってしまうと『耐壁』が切れている俺はコスモのように体が吹っ飛ぶだろう、そこに恐怖を感じる暇もない、『風』魔法で押された俺の体は物凄い速さで地面に迫り、ソルセリーを狙う竜翼機とソルセリーの丁度間に着地出来た。
だが着地する瞬間に『風』魔法と『重力』でブレーキをかけたが、落下速度が速すぎたせいで間に合わなかった。
ボキッ!!
実際に耳に聞こえる様な音だったのか、それとも振動が伝わったのか? 骨が折れるような音が聞こえるが不思議と痛みは無い、ただ足に衝撃があったのは分かった。
もしかして折れて‥‥
足を見ると変な方向に右足が曲がっていた
折れたよ、チクショー
ダダダダ!!
機銃の音が聞こえ、慌てて魔法を連射する
ボン!ボン! と弾丸と魔法が当たり爆発、辺りに煙が立ち込める、さらに俺とソルセリーの頭の上を通過する際、ついでとばかりにパイロットが魔法を放つ
なんて容赦ない!
頭上を通り過ぎたのを確認すると、俺とソルセリーの周りに土で壁を作る、高さは1メートル半ほど、それに『硬化』『耐壁』を付与
魔力が籠った弾丸だから一発しか受けられないだろうけど、それでも無いよりはましだろう、ただこのままでは後発の部隊が来た時にあの竜翼機は邪魔になる、敵との戦闘中に空からの掃射は危険すぎる、本当は今使いたくは無かったんだけれど‥‥今やるしかない!
一旦通り過ぎていった竜翼機が旋回し、またこっちに向かい迫ってくる。俺を狙っていた竜翼機もほぼ同時に迫ってきた
ダダダダ!
ダダダダ!
2方向からの機銃の攻撃を魔法の連射で弾丸を撃ち落とす
ドン! 作った土の壁が壊され土が巻き上がる、やっぱり駄目だったかと思ったが、意外にも2発程持ちこたえた。
そして2機が最も近づいた時
俺の真上に輝く魔法陣、中からは召喚獣のヤタが飛び出す
6つの属性の魔法を操り、一度にその体にため込んだ魔力を放出するヤタは、魔法陣から飛び出した瞬間翼を広げ、その全ての力を2機の竜翼機に叩き込んだ。
『消滅』魔法程ではないが、眩しいほどの光と音が辺りに轟く、それは一瞬だったが、その一瞬でも十分だった。
魔力を使い果たしはヤタは光の粒になり魔法陣の中に消えていく、ヤタが魔法陣に帰った後は、さっきまで空を飛んでいた竜翼機の姿は、欠片も見当たらなかった。
残業は絶対しないヤタ、自身の魔力で魔法を放つヤタは、自身の魔力が回復するまで暫くは召喚出来なくなる、本当は味方の後発部隊が遅れた時の為に使いたくは無かったんだけど‥‥
「ハヤト隊長‥‥」
魔力切れで気絶しているだろうと思っていたが、ソルセリーはまだ意識があった。
「ソルセリーよくやぁた、ふしに『消滅』ははつおうしたし、あとは後発の部隊か来るのを待つたけたよ」
「そう‥‥姉さんたちの仇を取れたのね‥‥」
意識が朦朧としているらしく、目がぼーっと空を見ている、そしてその目が俺の方に向けられた。
「ふふっ‥‥ひどい顔ね」
うっさいわ! この顔なのは俺のせいじゃない、文句があるなら俺の親に言ってくれ
「もう辛いたろう? 少し目を閉したらとう?」
「そうね‥‥そうするわ‥‥そうだ、ハヤト隊長、この作戦が成功したご褒美が欲しいのだけれど‥‥」
「ほうひ? 何あ欲しいの?」
「そうね‥‥ベルフが食べていたあの黒い物が食べたいわ‥‥」
チョコレートの事か?
『収納』からチョコレートの入った箱を取り出し、箱ごとソルセリーに渡した。
「ほえ、全部あえるから、目あ覚めたら食えな、えルフとあクティアに取あれないようにね」
ベルフは一度口にして味を知っているし、タクティアはオヤスの店で食べて以降
「ハヤト隊長あのチョコレートまだありませんか?」
などといつも聞いてくる、ヨルド要塞に向けて出発した時も
「チョコレートありませんか?」
と聞いてきた。実際持っていたんだけれど、何となく渡したくなくて「持ってない」と答えてしまった。
「そうね‥‥気をつけるわ、目が覚めるのが楽しみね‥‥」
ソルセリーはゆっくりと目を閉じていき
「ありがとう‥‥ハヤト隊長‥‥」
小さな声でそう言った
さてと
目の前からは召喚獣のカーネロらしき生き物が数十匹コチラに向かい走ってくる、
後ろは‥‥おっと、もう来たか
どうやら本当に作戦は成功したようだ、ただ数が少ないか‥‥、
「隊長お待たせしました!」
ポージュの召喚獣が最初に到着し、その後ろからライカが飛び降りる、俺を見た瞬間ギョッとしたライカは
「直ぐにエクレールも来ますから、隊長はそのままでいて下さい、後は自分がやります!」
「ああ、頼う」
頼むと言っても俺にはまだ仕事があるんだけれど、それに敵の方が数が多い俺の仕事を後回しにしてそっちを手伝った方がいいか?
次々とハルツール軍の後発が到着する中、少し遅れてついに敵の第一波との戦闘が始まった
「ポージュ、頼む!」
「あいよ、任せときな!」
真っ先に敵に向かって切り込んでいくライカ、それをポージュが魔法と召喚獣でサポートする、敵の真っただ中に切り込んでいくと、普通は敵に挟まれやられてしまうが、ポージュは魔法で敵の足止めだけをし、ライカが処理できる数以上の敵兵が近寄らないようにしていた。
長い事一緒の隊にいて、ライカの事をよく知っているポージュだからできるのだろう
正直俺には出来ない
「敵の足止めをすればいいんだね? 分かった!」
と言って、全部の敵に魔法を叩き込むだろう、そうすれば今度はライカの邪魔をしかねない、
そして、ライカもライカで、防具の金属が無い部分を的確に突いて行く、一人切るのに二振りすれば相手を倒せている、一刀目で相手の刀をいなし、二刀目で切り伏せる、無駄の無くとてもキレイな太刀筋だった。
が‥‥
ライカが切り込み過ぎたせいか、もしくはポージュの援護が遅れたせいか、ライカは二人同時に攻撃を受けようとしていた
あっ! マズイ! と、一瞬焦ったのだが
ライカは二人に対し刀を横に一線した後、すぐさま他の敵兵に向かい切り付けていく
ライカを同時に攻撃しようとした敵兵二人は、そのままドサリと地面に倒れた
‥‥一振りで2人も倒すとは‥‥前から思ってたけど、やっぱこの人強いわ、どうやら俺がいなくても大丈夫だな、ライカ含め後発の部隊に任せて俺の仕事をしよう
『収納』から地下『探知』用の杖を取り出し口に咥え、ソルセリーの『消滅』魔法でえぐれた地面の方に移動する、左手は動かないし両足は骨が折れているので、右手で這うようにえぐれた場所に転がるようにして降りた。
少しでも空洞との距離が近い方がいいし‥‥と、そこに
「すまない隊長! 遅れてしまった」
エクレールが到着する
口に咥えた杖を右手で取り
「エクレールか? 戦ほうでけかをしているへいしかいるかもしれないから、そっちにまあってくえ」
エクレールに振り向いてそう指示を出すが
「う゛っ!! 何を言っている! 隊長の方が重傷だろう!」
顔をしかめ俺を重傷だと言って来た、そしてすぐさま俺に対し回復魔法を掛けてくる
確かに骨は折れているけれど、そこまででもないだろうに?
「少しはなえていろ、下にいるやつあをたたく」
杖を地面に突き刺し『探知』をする
『消滅』発動前に確認はしていたが、場所はドンピシャだ。
トンネルの真上に陣取った俺の下には、いるわいるわ、要塞までかなりの距離があるはずなのにここまで敵兵らしき者達がいた。
それもその敵兵らしき反応は、どうやら要塞の方に向かっているようだった。
「『火』よ『土』よ━━」
対ワーム用の魔法、置き土産を発動するために詠唱を始める
「待て、待つんだ隊長! 今の状態で魔法なんか使ったら!」
エクレールは何やら慌てているが、今は相手をしていられない、終わったら相手をしてあげるからちょっと黙っててね
「━━飲み込め!」
置き土産が発動する、辺りが急激に熱を持ち始め、俺の足元の下には溶岩が作り出される、そして溶岩は土を侵食して行き‥‥ついには地下にある空洞へと流れ込んでいく
よし、通った! これで粘度を柔らかくして更に流し込む!
後発の部隊が到着し、ソルセリーも後方に下げられている今、俺の役割はほぼ終わっている、だから、今俺がする事はこの空洞内にいる敵兵の殲滅、なので俺の持つ全ての魔力を使う!
次々と空洞に向けて溶岩を流す中、時折「ズン‥‥」と、地下深く、遠くで爆発している様な音が聞こえてくる、以前と比べて魔力量が飛躍的に上がったため、召喚獣2体失ったせいで魔力を持っていかれても、今の俺にはまだ十分な魔力がある、どんどん溶岩を流し込むが‥‥‥
「止めるんだ隊長! それ以上魔法を使用するな!」
エクレールが必死になって止めようとするが、もうちょっと待って欲しい、もうちょっとで終わるから
地面から火が吹き出し辺りに熱が立ち込めてくる、ちょっと熱いけど我慢しないと、と思ったがすぐにその熱が柔らかくなった。
多分エクレールがまた氷で壁を作ってくれたんだろう
お手数おかけします
頭がくらくらとしてくる、魔力が尽きる寸前なのだろう、エクレールがまだ何か言っているが、もうほとんど声が聞こえない、そして少しずつ考えることが出来なくなっていき‥‥
ぷつりと意識が途絶えた
◇◆◇◆◇
「やめて! 何でそんなことをするの!?」
何者かに追われている
ああ、夢だな
というのが分かった
夢と分かっていても目が覚める事は無く、その夢を見続けている
夢ではナイフのようなものを持った人? 達が俺の体を切り刻み、切り取った肉をその口に運んでいる
必死で逃げるが逃げ切ることが出来ず、追いつかれては体を切られ
肉をはぎ取られていく
とてもとても恐ろしい夢だが覚める事が出来ない
追ってくる人の中に、ひと際大きな剣をもった人物がいて
その人物に追いつかれ
そして首を刎ねられた
・・・・・
・・・・・
いやぁ~ひどい夢だった。
心臓から音が出る位、激しく鼓動している、体から汗が吹き出し少し冷たい位になっていた。
目が覚めると俺はベッドに寝かされていた。白い天井が目に映る
「知らない天井‥‥あ、いや、知ってるよこの天井」
軍の治療施設かな?
以前一度来た事があるので何となく覚えている、軍の医療施設の天井は、少しだけ個性的な模様の天井なので何となく覚えていた。
・・・
・・
こんな場面の時、この部屋のドアが開いて
「目が覚めましたか?」
何て言って、花を持った女性が入ってくるはずなんだけれど‥‥
「誰もきませんねぇ‥‥」
ベッドの横に付いているボタンを押すと誰かが来るんだろうけど、何となくそれだと負けた気がするので押さない
テンプレを大事にする俺は、ボタンを押さないまま‥‥そのまま2時間が過ぎた‥‥
ガチャリとドアが開く、待ってました!
「おや? ハヤト隊長、ようやく目が覚めましたか」
ドアを開け部屋に入ってきたのはタクティアだった。
なんだ、タクティアかよ‥‥‥
「タクティア‥‥」
詳しい今の状況を聞こうとしたが
「ここは軍の治療施設です、作戦は成功、ソルセリーは無事です。ハヤト隊長はあの後倒れ、怪我を治す為にここにいます、怪我は8日前に完治、あの作戦から既に1ヵ月は過ぎています」
「お、う、うん‥‥」
じっくり順を追って聞こうとしたが、簡潔に結果を話されてしまった。ものすごくネタバレをされたような気になってくる
もう少し掘り下げて聞いてみると、今現在ハヤト隊は全員休暇中とのこと、それぞれ訓練に励んだり休暇を楽しんだりしているらしい、ただ皆3日に1度は俺のお見舞いに来ているようだ。
そしてヨルド要塞について、要塞を攻略してから分かったことは、どうやらあの要塞は地下に大規模な基地を建設していたらしく、表の要塞自体は飾りに等しいらしい、兵の数もこちらの3倍はいたことが分かった。
それでも要塞を完全に攻略できたのは、敵兵の大部分が地下で死亡していたからだという
「私も地下の方を見ましたが‥‥あれはかなり悲惨でしたよ」
「へぇー、どうなってたの? 『消滅』余波で天井が崩れてたとか?」
「いえ、ハヤト隊長の魔法が原因ですね」
「俺の? そんなに焼け死んでたの?」
「はい、それも多少はあるんですが、ほとんどは圧死です、特に出口の方に行くにつれて多くなり、出口付近は完全に人で詰まってました」
将棋倒しになったのか‥‥
「生き残った者に聞いたところ、ハヤト隊長のあの魔法に追われて出口まで逃げたそうです、ただ出口もソルセリーの魔法のせいでいくつかの出口が崩壊し、出口の数が減ったのも原因だと思われます。
なので戦闘があったのは最初の方だけでしたね、後は殆ど戦意を失って投降していました」
「へぇー大変だったんだね」
「随分と他人事みたいにいいますね、あの後結構大変だったんですよ、まぁ‥‥ハヤト隊は直ぐにサーナタルエに戻ったので関係は無いのですが」
「それにしても1ヵ月も俺寝てたの? 随分と寝たもんだね」
顔を手で触って見ると何だか痩せているように感じる
「ハヤト隊長は瀕死の状態でしたからね、私はハヤト隊長の姿を見て、胃の中の物を戻してしまいましたよ、あの状態で人って生きていられるものなんですねぇ、感心しました」
「瀕死? 足を骨折しただけでしょ? あ、いや待てよ‥‥左腕も動かなかったから、もしかして左手も折れてた?」
「骨折どころじゃありませんでしたよ、顔が半分ありませんでしたから」
「‥‥あ?」
「ハヤト隊長は、両足の骨折、そして左肩から肘まで完全になくなった状態でした。脇のしたに少し残っていたインナーのおかげで、肘から手まで引っかかってただけです。
そして顔ですが、顔の左の頬肉と歯が無くなっており、骨が露出していました。
当然、左目、左耳がありませんでしたね、頭は頭蓋骨にヒビが入っていましたね、そこが一番危なかったですよ、あとちょっとで中が見えそうだったとエクレールが言ってました」
「‥‥‥‥」
えぇ‥‥
手でもう一度顔を触ってみる、大丈夫だよね?
「もう大丈夫ですよ既に完治してますから」
「‥‥結構やばかったのね」
頭の左側の髪の毛が野球部の様に短くなっていた。どうやら本当らしい
「ええ、その体で更に魔力を使ったんですから本当に危なかったですよ」
危ないわ、ホント危ない‥‥
「所で、召喚獣の方は戻ってきましたか? 水を貰いに行ったはずなんですが、水差しが無いんですよね」
「召喚獣? ああ、勝手に魔法陣から出て来てたのか」
「ええ、自分達が看病すると言って隊長の身の回り事は全て、召喚獣達がしていましたよ」
「そうか、デュラ子にも世話を掛けるな」
「いえ、そっちじゃなくて3人組の方です」
「そっちかよ!」
ノーム達か、そう言えば‥‥いないな、感じ取れない
「それにしても隊長の召喚獣は変わってますね本当に」
「そりゃー変わってるよ、あいつ等の事はもう慣れたけど」
その時ガヤガヤと、にぎやかに話ながら近づいてくる声があった
「おや、今頃きたようですよ」
「水貰いにいったんだっけ? 遅すぎるよね、叱ってやらなきゃ」
水貰うだけで2時間とは‥‥やっぱりあいつ等戦闘以外は駄目だな
ガチャリとドアが開くと
「おう、大将! ようやく目が覚めやしたか」
そこにはタクティアよりも背が高く、ガッチリとした体で、更に厳つい同じ顔をした3人の男が水差しを持ってそこにいた。
「‥‥あの、部屋間違えてませんか?」
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大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
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