異世界陸軍活動記

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消滅魔法 ②

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「ティンパー! グースは俺っちに任せな、お前は一族の首を取ってこい!」
「ああ!」

 ティンパーはソルセリーに向けて走り出すが

 パン! 銃声が聞こえ

 パキン! ティンパーの兜に当たり何かが弾ける

「うおっ!」

 兜に損傷はないが、当たった物が弾け飛び散る破片が視界に映った、一瞬怯んだティンパーだったが、それが銃であり、銃を撃った物がフロルドが相手をしているグースの召喚獣だと知り驚く
 
 だが、すぐさま納得し、銃を撃ってきた小型の人型召喚獣に向け切りかかる、グースの召喚獣でこのタイプは3体で一つの召喚獣だと報告を受けている、残りの2体はフロルドのミオロゼと交戦しているのだろうと思っていたが‥‥

 パン! パン!

「がっっっ! くっ!」
 足と横腹、二つ同時に痛みを感じた。
 そこは軽鎧の金属が覆ってない部分、魔力を通す布で出来ている部分だった。魔力で守っている分怪我は無かったが‥‥
「まだ残っている敵兵がいるのか!」
 ティンパーは2発の銃声が聞こえた方に目を向ける
「なっ!」
 
 そこには、今、ティンパーが切りつけようとした召喚獣と、同じ姿をした召喚獣が2体存在していた

「こっちに3体全ての召喚獣だと!」

 パン! パキン!
「うっ! チィ!!」
 1体の召喚獣が打った銃弾がまたしても兜に直撃し、銃弾だけが弾ける

「このぉお!!」
 撃ってきた召喚獣に向けて切りかかるが、その召喚獣は撃ってからすぐ下がり、どこからともなく小型魔石砲を取り出した。

「マズイ!!」

 パン! パキン!

 魔石砲の照準から避けようとした時、またしても兜に銃弾が当たる、他の2体の内1体の召喚獣が構える銃口から発射された物だった。

「こいつらぁぁ!」

 ティンパーは『土』魔法を使い周りを囲っている召喚獣に向け土弾を放った。







 ◇◆


「俺っちの召喚獣相手に一人でやろうってか? 度胸あんじゃないの!?」

 半分怒りにも似た口調で言う、目の前にいる召喚者フロルド。

 彼の召喚獣ミオロゼ、その特徴は2つの頭がある召喚獣で、その2頭の鋭い歯を持つ口からの噛みつきが最も怖い、例え金属でもたやすく噛み切るという、前足での攻撃もあるが攻撃事態は大したことは無い、しかしその力強い一撃は油断が出来ない。
 
 何度も噛みつこうと近づいてくるが、『土』魔法でミオロゼの足元を急激に隆起させ、タイミングをずらす、すぐさま刀で切りつけるがヒラリとミオロゼは躱す

 先ほどからミオロゼばかりが戦っており、召喚者のフロルドは一切攻撃をしてこない、もしかしたら召喚獣以外の魔法契約が無い者かもしれない。

 一方のミオロゼは、口からよだれを垂らし喚き、吠えながら狂ったように噛みつこうとしてくる。

 その姿は実に不細工、ウチのオル&トロスとは雲泥の差、強さだけでは無く、可愛さもあるウチの子達と比べたら目の前の召喚獣なんか

「ガウ!!!」  ガチン!!

 うぉっと! あぶねぇー、油断するとバックリと体の一部が持ってかれそうだ。
 ミオロゼとの戦いは魔法を多用し、刀で牽制することで何とか持ちこたえている、ただ、持ちこたえているだけでは何も解決しない、このままだと確実にソルセリーの『消滅』に巻き込まれるからだ。

 ノーム達は‥‥

 ノームの方も戦いは拮抗していた、ノームは撃っては下がり、交代し撃っては下がるを繰り返している、時折、小型魔石砲や『火』魔法を付与した人工魔石を投げ付け戦っているが、決まり手に掛けている、何か突破口を‥‥、

 どうやらあのテンパは、『土』魔法を多用しているようだった、使い慣れているのだろうか? もしそれしか使えないのなら‥‥試してみるか

 

 『土』魔法でミオロゼの攻撃を防ぎ、叩き、いなす。その間に『火』魔法で火弾を作り出し、テンパに向けそれを打ち出した、火弾は高速で発射され、テンパの背中に直撃する直前で、彼の持つ刀によって切り捨てられた。

「チィ! グースが! 狡い真似を!!」

 死角からの攻撃だったのに、簡単に対処される。

「俺っちの相手してんのによそ見してんじゃねーよ!」
 元々切れやすい性格なのか、自分を無視されたと思ったのか、敵召喚者フロルドは怒り狂い、俺に向け切り裂くような『水』魔法を放ってきた。

 魔法使えるのかよ!

 戦闘で俺は殆ど『水』魔法を使わない、理由は若干使いずらいし威力に欠けるから、他の兵士も同じであまり戦闘中に使う物はいないと聞く
 だから、『水』魔法を放たれた時、俺は対処が遅れた。
 普段から戦闘でも使っていればこうはならなかった。
 
 俺が相殺しようと放った魔法が『氷』魔法、一応似ているが全く違う、魔法同士がぶつかった瞬間

 ドン!    ‥‥爆発した

「「ガァァァァア!!」」
 爆発で出来た煙からミオロゼが飛び出してくる、反射的に愛刀・雷雲で切り付けるが

 ガブッ! パキン!

 ミオロゼの大きな口で受け止められ、そのまま中程からかみ砕かれる、そしてもう一つの頭が俺に向かって‥‥

 パァァァァアン!!

 俺は即座にレールガンを放ちもう一つの頭を狙ったが、寸での所で躱される、まぶたの辺りに傷が付いただけだった。
 しかし、ミオロゼが体を捻って躱したことで、ミオロゼと少し距離を取ることが出来た

「よし! いいぞ武器を破壊した! ミオロゼ! グースの頭をかみ砕いちまいな!」
 フロルドは俺の武器を破壊出来た事で、自身の召喚獣に追撃を命令する

 
 このなまくら刀め、また折れたよ

 切れ味は素晴らしいがポキポキ折れる愛刀(笑)・雷雲を仕舞い、俺がたまたま『収納』から取り出したのは、俺が改造した槍だった。
 ランスではなく槍を手にしたのは、ランスよりもリーチが長い槍を選んだ俺の、ミオロゼと距離を取りたいと思う心がそうしたのだと思う
 
 槍に魔力を通した瞬間、黄色の光が穂先から飛び出す、それは紫色に光る人工魔石が手元に無く、仕方なしに取り付けた黄色い光の出る槍だった。


「フロルド待て! 引くんだ!」
 テンパが叫ぶ、その声を聞いたフロルドのミオロゼは急停止する、勢いが殺せず前足で踏ん張る形になった、
 たまたま手に取った槍だったが、マシェルモビアの兵士にとっては信じられない物を見ることになる

「な‥‥なんで、なんでお前が召喚者殺しを持ってんだよ!」

 ん?

「フロルド、ミオロゼを引かせろ!」
「くっ!」
 フロルドは直ぐにミオロゼを魔法陣の中に戻した。

 
 よく分からないが、「召喚者殺しを持っている」と言っていた、今持っているのはこの黄色に穂先が輝く槍の事だろう、そしてフロルドは召喚獣を下がらせた、つまり、この槍に似た物がマシェルモビアにあり、それと間違えたと‥‥。

 よし! この流れに乗ろう

「ハルツールの情報が筒抜けのように、マシェルモビアの情報も筒抜けなんだよ! 軍の上層部でも疑ってみるんだな、よっっと!!」

 そのままその槍でフロルドを突く

「くっ、クソッ」
 すぐさまフロルドは刀を取り出し応戦してきた。

 相手の召喚獣が出せなくなったおかげでかなり楽になる、しかし、既に時間が無い、二人を殺すにしても手間がかかるのは分かり切っている。

 だから一気に終わらせる!

 ミオロゼが邪魔で召喚者本人に攻撃出来なかったが、居なくなったおかげで直接攻撃が通る、フロルドに向け火弾を数発を、一気に放った

 ボン!
「うっ‥‥腐れグースが!」
 防具のおかげで大きなダメージは防げたが、フロルド後ろに飛ばされる

「『火』よ『土』よ‥‥」

「マジっ!」
 目の前のグースが続けて攻撃しようとしているのに危機を感じたフロストは、両手をクロスして防御の体制に入った。
 『火』そして『土』の両方の魔法を詠唱している、それは普段使い慣れていない強力な魔法だと感じたからだ。
 しかし、それは自分に向けられたものではなかった‥‥

 ノーム畳み掛けろ!
 
 その指示でノーム達は銃を構えたままテンパに向けて突撃する、近距離からの発砲と思ったテンパは、打たれる前に切り伏せようとする、銃弾が当たっても魔力が通っている防具がある分、怪我はほとんどしない
 だから油断した。

 突撃してくるノームが持つ銃の先がぶれたかと思ったその時、銃の先には銃剣が装着されていた。

「な!」
 驚いたテンパは刀を振るい、何とか真正面から来たノームの首を刎ねることは出来たが、左右から突撃してきた2体のノームが彼軽鎧の金属が無い部分を貫いていた。
「ぐあっ!」

「いけ!」
 俺は詠唱が完了した魔法を、目の前にいる召喚者フロルドではなく、ノーム達と戦っているテンパに向けてそれを放った。
 大きさはボーリングの玉のように真ん丸で、硬い『土』魔法で覆われている、ノーム達にわき腹を刺されたフロルドは、俺が魔法を放った瞬間、自信に魔法が迫っていると察知し、それを見て、ノームに刺されながらも相殺・・しようとギリギリの所で『土』魔法を放った。

 自身に魔法が放たれると思ったフロルドはテンパに向けて叫ぶ、『火』と『土』を使った混合魔法だと知らせるために

「ティンパーそれは!━━」
 『パン!』
「ぐあっ!」

 しかし、それを知らせることは出来なかった。
 テンパに首を刎ねられたノームの銃はフロルドに向けられ、彼目掛けて銃弾が発砲された。そして首を刎ねられたノームはそのまま消滅する

 そしてテンパのギリギリの所でその魔法は相殺・・され‥‥

 中から溶岩が現れテンパの顔めがけ、降り注いだ

「え?」
 バシャァァ!

「あああああああ゛!!!」




 ・・・・
 
 ・・・・
 
 俺の好物は餃子だ
 日本で一番消費が多い県に住んでいるだけあって、ウチの家族全員が大好きだ。
 そしてもう一つ好物がある、それは「たこ焼き」、餃子とどっちが好きか? と聞かれたら甲乙つけがたい、それくらいたこ焼きも好きだ。
 しかしながら、たこ焼きは外側がそうでなくても中の方がかなりの高温になっている、俺もよく
「アチチ!」となった。

 テンパに放ったこの魔法「たこ焼き」は、元々は対ワーム用に開発した魔法だった、音に反応するワームに対し、このたこ焼きを地面に音を立てるように置く、そうするとその音に反応したワームがそれをパクリ‥‥
「アチチ!」となるわけだ。

 この「たこ焼き」
 中は溶岩が詰まっていて、外を『土』魔法でガワを作っている、溶岩とガワはそれぞれ独立していて、外のガワを相殺させても、中の溶岩は影響を受けない

 テンパ‥‥ティンパーって言ってたか? ティンパーは『土』魔法を多用していた、それしか使えないかどうかまでは分からないが、『土』魔法が飛んで来たら、間違いなく同じ『土』で相殺すると判断した。
 案の定彼は躱すことなく相殺を選んだ、その結果が‥‥

「ティ、ティンパー!」
 フロルドは即座にミオロゼを再召喚し、その背に乗り、顔面で溶岩を受け止めたティンパーを掴み上げ即座に撤退した。

「ふぅ、やっと行ったか‥‥」

 顔面で溶岩を受け止めたティンパーの顔はどうなったか? 想像すらしたくない
 しかし二人が撤退したことでこちらも退避出来る、だが、もう少しあの二人が離れるまでここに居なければならない

「撤退すると思った? 残念でした!」 なんてことがあるかもしれない

 ソルセリーの方をチラリと見る、トランス状態となっているソルセリーは頭を垂れ、女神に対する祈りの形を取りながら詠唱を続けている‥‥





 刻々と時間が過ぎて行くなか、じんわりと冷や汗の様な物が頬を伝う、最後に上空に撃たれた赤の信号弾、あれが撃たれてからかなりの時間が過ぎたと思う、かなりの時間と言っても、もしかしたらそれほど過ぎてはいないのかもしれない、実際はどれくらい時間がたったのかさえ分からない。

 最後に撃たれた赤の信号弾は、兵士が自分の足で走って逃げた場合ギリギリ間に合うとされている、俺の場合は召喚獣がいるから、その分多少の融通は効く、しかし

 ‥‥マズイ、そろそろ退避した方がいいか? でも、あの二人が逃げてからまだそんなに時間は経っていない、まだここに留まるべきか‥‥

 ソルセリーに目を向けると、先程までは祈りの恰好をし頭を下げていたはずなのに、ソルセリーは組んでいた手を解き、目を見開いた状態で空を見上げていた

 
 限界だ!!

 全身に寒気が走る、ネクターに威圧を受けたような恐怖が全身を駆け巡った。

「ハン子!」
 デュラハンの馬の方、ハン子を呼び出し、そのまま飛び乗って全力でその場から離脱する
 
 ペガサス体形のコスモは飛べる分は早いが、もし『消滅』が途中で発動された時、上空にいた場合は間違いなく吹っ飛ばされ命にかかわる、もしこのような場合になった時は飛ぶなとベルフに忠告を受けている、それとユニコーン体形のコスモよりも、ハン子の方が足が速い

「急げ! 時間がもう無い!」
 ハン子に激を飛ばし急がせる

 あの場所に留まりすぎたか? いや、あれは必要だった。
 必要だからあそこに留まった。
 だがそのせいで生命の危機に直面している、実際見たことも無い魔法で何故そこまで言えるのか?
 何故かは分からない、がしかし、あそこにいては危険だと本能が警鐘を鳴らしていた。

 背中を押すように冷たい物が覆いかぶさってくる、フロルドの召喚獣に噛みつかれそうになった所をギリギリで躱し、ヒヤッとしたのが児戯だったかのよう。ネクターの威圧にも似ているがそれとはまったく別の物が迫ってくる、ソルセリーとの距離はかなり離れたのに、背中に迫る恐怖は段々と強くなってきた。

「ハン子! もっとスピードを出せ!」
 これ以上スピードが出ないのは分かっている、でも言うしかなかった。
 
 あとどれくらい離れなくてはならないのか? 先発の皆が戻っているであろう安全地帯まではあとどれくらいなのか? 自分で走っているわけではないのに息が荒くなっている

「はぁ! はぁ! はぁ! 駄目だ、このままじゃ 死ぬ」
 弱気とも取れる情けない言葉が口から洩れる

 木が密集する中を掻い潜り、ハン子は全力で走り抜けようとする、が‥‥

「ハン子! もっと! もっと早‥‥」
 

 


 その時、後方から凄まじい光が放たれた。あまりの光に視界が全て「白」に染まる

「ブヒヒィン!」
 ハン子が俺を振り落とし、爆心地と俺の間に入る様な形になる、それと同時に、黄色の魔法陣が現れ、そこからは重装備姿のデュラハンのデュラ子が飛び出し、俺の前で盾を構える

 俺はハン子に振り落とされ、そのまま地面で一回転し、以前作ったアタッチメント式重装甲のパーツを瞬時に『収納』から呼び出し、一回転し終わった時にはパーツを全て装着し、左手には盾を装備し構えた

 その瞬間

 今まで体験したことのない衝撃が体に走り、今まで聞いたことのない音、いや、音の無い音が耳の鼓膜を震わせ

 一瞬で盾、鎧全ての『耐壁』を突き破り

 パリン!!

 自身の体に掛けていた『耐壁』すら破られ

 そのまま視界も、そして意識も‥‥真っ白に染まった
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