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前回は死んでいた子を偶然助けた
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「いたたた……」
部屋に戻ったレイナはまず最初にクラッチバッグを開いて、栄養ドリンクみたいな飲み物を一本取り出した。
これはゲームのポイントで交換したアイテム――治癒薬だ。
効果は確かながらコストはうまい棒並の優秀アイテム。ただし治癒レベルは低い。
どんな怪我でも病でも完璧に回復できる万能薬もあるが、それはコストが非常に高いので交換したことがない。
それに、ほぼ現実世界と変わらないこのノベルゲームの世界において魔法じみた万能薬など存在してはいけないもの。
使えば確実に厄介ごとを引き寄せる。
死んでも何度でもやり直しができるレイナにとってコストの高い万能薬は不要の長物。完治1か月の重傷を半分に縮めるくらいの効果があればじゅうぶんだった。
治癒薬を一気飲みしたレイナの体から痛みがスッと消えていく。
よし。これなら明日には普通に歩いて帰れそう。
痛みで丸めていた背中をしゃんと伸ばした。
その時、レイナの視界がパッと明るくなる。
――花火だ。
12時になり、ジュディの誕生日を祝う花火が打ちあがったのだ。
海上で上がるその花火はレイナの部屋の窓からもしっかり鑑賞できた。
窓際に立ち、次々に花が開く夜空をじっと眺める。
色とりどりの美しい花火は定番のダリヤ型からやがてハート型になり、いくつものハートが夜空と海面に浮かぶ。
……ジュディに捧げる愛、ね。
急にバカバカしくなって花火から目を逸らし、カーテンを閉めようとした。
その時。
花火の光で埠頭が照らされ、不自然に蠢く2人の人影が見えた。
どうやら突然の花火に慌てているようで、何か抱えていたものを乱暴に海に捨て一目散に逃げ出していく。
どう考えてもまともな人達じゃない――悪役ロワールの右腕として表の世界も裏の世界も散々見てきたレイナは、それが何かしらの犯罪の現場だったことにすぐに気が付いた。
あの人達が海に投げ込んだもの……見えたのは花火が上がった瞬間だけだけど、どうも人間の子どものようにしか思えない。
その瞬間、レイナの脳裏に前回の記憶が甦る。
確か、この誕生日パーティーの1か月後くらいにこのホテルから数キロ離れた地点で10歳くらいの子どもの溺死体が発見されていた。
長い時間海中を漂っていたらしく、体は既に魚に啄まれほとんど残っていなかったと報道で見た記憶がある。
衣服は量販店のごく一般的なもので、歯型も乳歯の生え替わりの時期と重なっていたせいか一致するものがなかなか見付からず、身元の特定に時間がかかっているという話だった。
なんて残酷な……当時はそう思っただけで、特に何かする訳でもなかったけど。
でも、さっき海に投げ込まれたのって……もしかして、あの時の溺死した子どもなんじゃ……?
ぞわりと背筋が震え、いてもたってもいられずクラッチバッグを引っ掴んで部屋から飛び出した。
エレベーターを待てず非常階段を転がるように駆け降り、途中でヒールの靴を脱ぎ捨てる。
この辺りの地理からして、ホテルの正面出口から出ると埠頭までの距離が遠くなる――そう思ったレイナは迷わず一階の厨房に駆け込み、明日の仕込みをしているコナー達に「ちょっとゴメンね!」と言って窓を開けた。
「レイナ!?」
びっくりしているコナー達を無視してドレスのスカートを太ももの位置まで引き上げ、邪魔にならないよう縛ってまとめる。
レイナの白くて長い脚が露わになり、コナー達は慌てて目を逸らした。
窓枠に裸足の足をかけ、夜の埠頭へ向かってひらりと飛び出す。
あの現場に一番近いのはこの窓だ。
事態は一秒を争う。急がないと。
夜の海は真っ暗で、レイナの心に本能的な恐怖を掻き立てた。
でも花火が断続的に海を照らしてくれる。
じっと目を凝らして海面を観察すると、ある一定の箇所でボコボコと空気の泡が立っていることに気が付いた。
あそこだ!
レイナは迷わず飛び込んだ。
幸いなことに泳ぎは得意。だてにロワールとかいう外道の元で何十年も過ごしてない。
レイナ本人は気付いていないが、ガーネット家と双璧を成す財閥・クワイエット家の跡継ぎの側近として、また、心に決めた女性がいる彼をどうにかして振り向かせるために、レイナはありとあらゆる努力を数十年に渡ってし続けてきた。
その上、無茶をして体を壊しても治癒薬があるのだ。医者もびっくりの早さで回復できるレイナは常人ではなし得ない量の経験を積み重ね、今じゃ本人の意識しないところでトンデモ人材として仕上がっていた。
泡の立つところまでたどり着き、息を大きく吸って海中に潜る。
暗くてほとんど何も見えないが、幸いなことにここは岸に近くて沖合いほど深くはない。
あらかじめ位置を特定できていたレイナは底の方でもがく子どもを見付け、素早く背後に回って抱え込み水面に向かって浮上した。
「ぷはっ!!」
子どもは手足を縛られているようだ。
ひとまずそのまま抱えて泳ぎ、地上の係船柱から海に垂れ下がっているロープを発見して、それを使って地上に上がった。
呼吸をしていないようだったのですぐに心肺蘇生を開始する。
気道を確保し胸骨を圧迫、人工呼吸を行う。
数十回目の胸骨圧迫で子どもは息を吹き返し、大きく咳き込んだ。
ホッとして体の向きを変えてやり、水を吐き出させつつ手足を縛る紐を切る。
ロワールを常に完璧な状態でいさせるために、ポケットサイズのミニ裁縫セットを持ち歩いていたのだ。それが功を奏した。
「すぐに救急車を呼ぶね」
そう言ってスマホを取り出すと、子どもは吐きながら「だめ……!」と言った。
「だめなの?」
答えることができずに水を吐き続ける子どもの様子を見て、スマホをそっとしまった。
確かに、今は身を隠すべきなのかもしれない。
ざっと観察すると、その子の体には外傷は見当たらなかった。でも医療は絶対に必要だと思う。
――仕方ない。せっかく助けた命だし、特別に薬を分けてやろう。
レイナはスマホを一旦しまい、咳が落ち着いてきた頃を見計らって例の治癒薬を差し出した。
これはコストが安いのでたくさん持っているのだ。
ちなみにレイナがポイントで交換したものはレイナが所有するバッグを通じて取り出すことが出来る。
さっき部屋から飛び出す時にわざわざクラッチバッグを持ってきたのは治癒薬を使うかもしれないという予感があったから。
案の定必要になったその薬を見て、子どもは困惑の表情を浮かべた。
「これ、なに……?」
部屋に戻ったレイナはまず最初にクラッチバッグを開いて、栄養ドリンクみたいな飲み物を一本取り出した。
これはゲームのポイントで交換したアイテム――治癒薬だ。
効果は確かながらコストはうまい棒並の優秀アイテム。ただし治癒レベルは低い。
どんな怪我でも病でも完璧に回復できる万能薬もあるが、それはコストが非常に高いので交換したことがない。
それに、ほぼ現実世界と変わらないこのノベルゲームの世界において魔法じみた万能薬など存在してはいけないもの。
使えば確実に厄介ごとを引き寄せる。
死んでも何度でもやり直しができるレイナにとってコストの高い万能薬は不要の長物。完治1か月の重傷を半分に縮めるくらいの効果があればじゅうぶんだった。
治癒薬を一気飲みしたレイナの体から痛みがスッと消えていく。
よし。これなら明日には普通に歩いて帰れそう。
痛みで丸めていた背中をしゃんと伸ばした。
その時、レイナの視界がパッと明るくなる。
――花火だ。
12時になり、ジュディの誕生日を祝う花火が打ちあがったのだ。
海上で上がるその花火はレイナの部屋の窓からもしっかり鑑賞できた。
窓際に立ち、次々に花が開く夜空をじっと眺める。
色とりどりの美しい花火は定番のダリヤ型からやがてハート型になり、いくつものハートが夜空と海面に浮かぶ。
……ジュディに捧げる愛、ね。
急にバカバカしくなって花火から目を逸らし、カーテンを閉めようとした。
その時。
花火の光で埠頭が照らされ、不自然に蠢く2人の人影が見えた。
どうやら突然の花火に慌てているようで、何か抱えていたものを乱暴に海に捨て一目散に逃げ出していく。
どう考えてもまともな人達じゃない――悪役ロワールの右腕として表の世界も裏の世界も散々見てきたレイナは、それが何かしらの犯罪の現場だったことにすぐに気が付いた。
あの人達が海に投げ込んだもの……見えたのは花火が上がった瞬間だけだけど、どうも人間の子どものようにしか思えない。
その瞬間、レイナの脳裏に前回の記憶が甦る。
確か、この誕生日パーティーの1か月後くらいにこのホテルから数キロ離れた地点で10歳くらいの子どもの溺死体が発見されていた。
長い時間海中を漂っていたらしく、体は既に魚に啄まれほとんど残っていなかったと報道で見た記憶がある。
衣服は量販店のごく一般的なもので、歯型も乳歯の生え替わりの時期と重なっていたせいか一致するものがなかなか見付からず、身元の特定に時間がかかっているという話だった。
なんて残酷な……当時はそう思っただけで、特に何かする訳でもなかったけど。
でも、さっき海に投げ込まれたのって……もしかして、あの時の溺死した子どもなんじゃ……?
ぞわりと背筋が震え、いてもたってもいられずクラッチバッグを引っ掴んで部屋から飛び出した。
エレベーターを待てず非常階段を転がるように駆け降り、途中でヒールの靴を脱ぎ捨てる。
この辺りの地理からして、ホテルの正面出口から出ると埠頭までの距離が遠くなる――そう思ったレイナは迷わず一階の厨房に駆け込み、明日の仕込みをしているコナー達に「ちょっとゴメンね!」と言って窓を開けた。
「レイナ!?」
びっくりしているコナー達を無視してドレスのスカートを太ももの位置まで引き上げ、邪魔にならないよう縛ってまとめる。
レイナの白くて長い脚が露わになり、コナー達は慌てて目を逸らした。
窓枠に裸足の足をかけ、夜の埠頭へ向かってひらりと飛び出す。
あの現場に一番近いのはこの窓だ。
事態は一秒を争う。急がないと。
夜の海は真っ暗で、レイナの心に本能的な恐怖を掻き立てた。
でも花火が断続的に海を照らしてくれる。
じっと目を凝らして海面を観察すると、ある一定の箇所でボコボコと空気の泡が立っていることに気が付いた。
あそこだ!
レイナは迷わず飛び込んだ。
幸いなことに泳ぎは得意。だてにロワールとかいう外道の元で何十年も過ごしてない。
レイナ本人は気付いていないが、ガーネット家と双璧を成す財閥・クワイエット家の跡継ぎの側近として、また、心に決めた女性がいる彼をどうにかして振り向かせるために、レイナはありとあらゆる努力を数十年に渡ってし続けてきた。
その上、無茶をして体を壊しても治癒薬があるのだ。医者もびっくりの早さで回復できるレイナは常人ではなし得ない量の経験を積み重ね、今じゃ本人の意識しないところでトンデモ人材として仕上がっていた。
泡の立つところまでたどり着き、息を大きく吸って海中に潜る。
暗くてほとんど何も見えないが、幸いなことにここは岸に近くて沖合いほど深くはない。
あらかじめ位置を特定できていたレイナは底の方でもがく子どもを見付け、素早く背後に回って抱え込み水面に向かって浮上した。
「ぷはっ!!」
子どもは手足を縛られているようだ。
ひとまずそのまま抱えて泳ぎ、地上の係船柱から海に垂れ下がっているロープを発見して、それを使って地上に上がった。
呼吸をしていないようだったのですぐに心肺蘇生を開始する。
気道を確保し胸骨を圧迫、人工呼吸を行う。
数十回目の胸骨圧迫で子どもは息を吹き返し、大きく咳き込んだ。
ホッとして体の向きを変えてやり、水を吐き出させつつ手足を縛る紐を切る。
ロワールを常に完璧な状態でいさせるために、ポケットサイズのミニ裁縫セットを持ち歩いていたのだ。それが功を奏した。
「すぐに救急車を呼ぶね」
そう言ってスマホを取り出すと、子どもは吐きながら「だめ……!」と言った。
「だめなの?」
答えることができずに水を吐き続ける子どもの様子を見て、スマホをそっとしまった。
確かに、今は身を隠すべきなのかもしれない。
ざっと観察すると、その子の体には外傷は見当たらなかった。でも医療は絶対に必要だと思う。
――仕方ない。せっかく助けた命だし、特別に薬を分けてやろう。
レイナはスマホを一旦しまい、咳が落ち着いてきた頃を見計らって例の治癒薬を差し出した。
これはコストが安いのでたくさん持っているのだ。
ちなみにレイナがポイントで交換したものはレイナが所有するバッグを通じて取り出すことが出来る。
さっき部屋から飛び出す時にわざわざクラッチバッグを持ってきたのは治癒薬を使うかもしれないという予感があったから。
案の定必要になったその薬を見て、子どもは困惑の表情を浮かべた。
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