ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ

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十三章 女神の塔

251. ダンジョン初心者向け階層

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「え? 一人一回、五千レピも入場料とるの?!」
『ぷ』
『ぷぷ!』
〈一年間入り放題の、年間入場権は二万レピとお得になってます!〉

 マグダリーナは、ちょっと思案した。薬草採取だけに寄るには、割りに合わない事になりそうだった。ラノベ定番、ダンジョンで成り上がり的なのも、ここでは無一文
では成り立たない。

「因みに、魔導人形の入場料は?」
『ぷ!』
〈所有者の方の入場権に準じます〉
 つまり特別入場権を持つエステラの魔導人形は、何回入場しても無料だ。

 マグダリーナがそんなやり取りをしている最中に、ニレルが全員分の年間入場権を購入した。
「ご祝儀だよ。僕らはしばらく此処に通うし、かなり稼がせてもらうからね」
 戸惑うダーモット達に、ニレルは綺麗に微笑んだ。めいめい、ニレルに礼を述べる。
 マグダリーナも慌てて、ニレルにお礼を言った。

 門番のマンドラゴンが扉を開けると、そこは明るいエントランスホールになっていた。外観と同じく美麗で高級感と清潔感の漂うその先に、大きな扉が見える。あと目の錯覚で無ければ、男女従魔別のおトイレの表示も。

「各階にこういうホールがあって、正面が階層の入り口、左手に有るのが次の階層への階段とトイレ、右手に有るのが階層のスキップ用魔法陣だ。行きたい階層を唱えるだけで、移動できる。使用出来るのは、一度三階までクリアしたものだけだ。三階をクリアしたら、自己鑑定スキルが与えられて、自分のレベルやスキル、魔法属性などがわかるようになる」
 ニレルが穏やかな声で説明してくれる。

「待って、それって、十万エルの教会の鑑定より価値があるんじゃないの?!」
 マグダリーナは驚いた。レベルなんて、普通に鑑定魔法でもわからない。

「ただし、こういう特典は、創世の女神を信じるものだけに与えられる。このダンジョンには、他にも様々な《女神の恩恵》があるよ」

「レベルって何ですの? 普通はレベル幾つだと良いんですの?」
 レベッカの手が挙がった。それには、エステラが答える。
「レベルは、戦闘で得られた経験を数値化して計算された成長の目安かな? 多分このダンジョンの為に、女神様が見える化してくれたものだから、平均がどのくらいのレベルかは、これから統計取ってみないとわからないかな……でも実際、自分のレベルがわかると、え? 思ったより低くない? って落ち込むかもだけど、私もニレルの半分以下のレベルしか無かったから、そんなもんだと思って」
「落ちこみましたのね?」
 レベッカの言葉に、エステラは深く頷いた。

「三千年と十年ちょっとの戦闘経験を、比べちゃダメだよ」
「でも私を仕込んでくれたのは、つよつよつよのお師匠だから、もっといっぱい経験値あたってたと思ったんだもん……」

「なあ、参考にエステラのレベル聞いていい?」
 ヴェリタスの問いに、ニレルは首を横に振った。
「全く参考にならないから、むしろ聞かない方がいい。僕と比べたから落ち込んでるだけで、普通につよつよつよのお師匠仕込みの経験値は大きかったから」

 ふと情報冊子を見ていたライアンが、何かに気づいた。
「この階層に記載されてる、推奨レベルって……」
「うん、それが女神様の優しさよ。でもパーティメンバーの相性や、装備なんかでも変わってくるから、油断はしない方がいいわ」
「わかった」
 ライアンは、素直に頷いた。

 一階層は、本当に長閑だった。魔物もスライムばかりで、ある程度距離を詰めないと、攻撃もして来ない。
「ここのスライムはレベル1~2、残念ながら、スライムはレベル10を超えないと強くならないから、未経験者向けよ。でも、ドロップ品は、なかなかいいの。《女神の恩恵》のおかげでね」
 ヒラがシュシュっと数体のスライムを倒すと、スライムはさらりと光の粒になって消え、代わりにドロップ品が現れる。薬草の束と、魔石、それから宝箱もあって、開けると、目を瞑ったマンドラゴラが三株入っていた。

「宝箱は罠がある場合もあるから気をつけてね。あと宝箱のまま持ち出しは出来ないから、魔法収納か収納鞄は必須かな」

 マンドラゴラの買取価格を知っているマグダリーナは、驚いた。
「こんな未経験者用の階層で、さくっとマンドラゴラが手に入るんだったら、借金してでも入るわ、ダンジョンに!!」
「まあ、これはヒラに《女神の恩恵》を強めるスキルがあるからで、普通は宝箱なら下級ポーションとかじゃないかな?」
 流石《神獣》、女神様との相性バッチリだ。

 タマもレベル1スライムに体当たりしてなんとか倒したが、ドロップしたのは紅茶だった。

「こんなものまで……」
 紅茶は高級嗜好品だ。市場では一缶数万レピする。ショウネシーではマゴーが作っているのでお安いが。
 女神の塔の絵のラベルが付いた紅茶缶を見て、マグダリーナは入場料、高く無かった……と呟いた。

 二回層は、スライムと一緒に角兎がいた。ここから各階層ごとにボス部屋があり、倒さないと次の階層に登れない。それはともかく、めちゃくちゃ広い。元々ダンジョンに入るつもりでいたから、運動服に運動靴で来たけれど、ウイングボードはかなり使えるアイテムではなかろうか。
 それに上階へ挑むほど、日数がかかりそうだから、休憩所や安全地帯で使えるテントや食料なども必要だろう。情報冊子の内容を公開しても良いか、あとで聞いてみなければ。
 マグダリーナは、兎に角気づいたことを、片っ端から手帳に書き込んだ。角兎を避けながら。

 二階のボス部屋に辿り付いた時に、前を歩いていたニレルとエステラが振り向いた。
「ボス部屋の難易度は、扉を開けたもののレベルで難易度が変わるの。普通と超難どっちがいい?」
「エステラ、俺たち超難で行けるのか?」
 エステラはヴェリタスに頷いた。
「うちの子達も参加したいみたいだし、いざとなったら、アーベルとエデンがいるから大丈夫。もちろん私とニレルもね。……ここのボス部屋にいるのは、スライムか角兎、もしくは両方とも。上位種もでる可能性があるわ。因みにハラが開けると、確実にスライムだけよ」

 ヴェリタスは、真っ直ぐニレルを見た。
「ニレルが開けてくれ」
「良いのかい? 僕が開けると超難コースだよ」
「そんなの、ニレルが居なきゃ挑戦できないじゃん」

 ヴェリタスは魔剣を鞘から抜く。
 ライアンも弓をつがえた。
 アンソニーも杖を取り出す。
 レベッカはワイバーン革で作ったグローブを嵌める。

 ニレルが扉を開けた。広い部屋にみっちりと、滴り落ちそうなほどのスライムと角兎が蠢き、奥には巨大な三つ角兎が三体と、巨大スライムが一体いた。扉が閉まれば、特別な脱出アイテムがない限り、全部倒さないと出られないとのこと。子供達が大きなボスに向かう中、エステラの従魔は子供達の邪魔にならぬよう、大量のスライムや角兎を、確実に屠っていく。
 マグダリーナは、すごく素早く動く彼らに、回復魔法をかける方法を、エステラに習いながら、補助に徹する。

 超難といえども、初心者コース。
 エステラの従魔も加わったので、戦闘は程よく終わった。

 無事全部倒し終わったあとは、大量のドロップ品と宝箱の中身の回収作業だ。ヴェリタスとマグダリーナで、罠の鑑定を覚えて、シンとタマ、ナードが罠の解除方法を覚えた。

 大量のスライム素材は、エステラに進呈する。ただしスライムコラーゲン液は、美容液やポーションに使えるので、レベッカへ。
 角兎の肉や毛皮、角や牙等は冒険者ギルドで買取方向だ。お肉の品質は、ダンジョンを出るまでは、新鮮ぴちぴちのまま保たれる。

 小さな雑魚魔物からも確率で宝箱は出たが、ボスは一体につき、三箱宝箱が現れた。三箱のうち、一箱は現金が入っている。
 
 残り八箱には、びっしりと詰まった中級回復薬。
 収納鞄や装備品の入った、初心者冒険者セット。
 箱いっぱいの珈琲豆。
 香辛料、五袋。
 箱いっぱいの小粒魔石。
 水の入ったボトル十本。これは鑑定すると、使った分、水が補充される魔導具だ。
 そして、残り四つはスキル覚醒の卵石で、割ればスキルが得られる。

 ボス部屋の奥に、次の階への扉が現れたので、分配は後回しにして、とりあえず先へと向かうことにした。
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