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十三章 女神の塔
250. はたらくマンドラゴン
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『ぷぷ!』
〈わぁい! 町長様だ! 後で僕らにも領民カード作って下さい!!〉
「え? えーっと、専用の魔導具が必要だから、エステラに相談してからね」
『ぷぷ!』
〈はーい! こちら町の情報冊子です。情報は随時最新に更新されていきますので、ご安心ください。駐車場はそちら。町役所の方にも駐車場がありますので、このまま魔導車で通ることもできます〉
(とうとう魔獣の領民が出来てしまうのね……)
マグダリーナは、内心の動揺を隠して、そのまま魔導車で町役所まで行くことにした。
エステラの従魔になったプラは真っ白だが、リィンの町のマンドラゴン達は、上品な銀鼠色をしている。
武器屋に装備屋、魔導具屋、宿屋、薬屋、酒場兼食堂、高級感のあるカフェレストラン、屋台……様々なところで、マンドラゴン達が働いている。彼らは立派な町の住民になっていた。
他にも馴染みのある休憩所、領都と同じ噴水のある公園がある。どうやらそこの噴水にも女神像があり、小精霊が集まっているので、一旦車を停めて女神様に挨拶をすることにする。
こちらの女神像のエルフェーラ様は……違う、よく見ると、エルフェーラとは別の、ハイエルフの美しい女性の像だった。女神の闇花を髪に飾り、勇ましく刀を手にしていた。
「…………っ、ディオンヌ……」
エデンがふらふらと噴水の中に入り、その像の足元にしがみつく。
「ああ、女神よ。感謝します」
マグダリーナは領民カードの時計機能で正確に五分計って、アーベルに頼んでエデンを引き剥がした。あんなオプションがくっついていたら、感謝の祈りの邪魔にしかならない。
『ぷ!』
〈女神様から一度だけ、見逃すよう仰せつかっています。次から公共物に何かしたら、しょっぴきますからね!〉
さっそくエデンは、警邏のマンドラゴンに警告されていた。
「女神様、エステラとニレルを無事に返してくれてありがとうございます。それからダンジョンとこの町、住人達、精一杯守れるよう頑張りますので、お見守り下さい」
マグダリーナの祈りの言葉に応えるように、噴水の水が光輝き、マグダリーナの額の精石を濡らした。その一瞬、マグダリーナ自身も淡く輝き、ふわりと青い小鳥が現れた。
『ぴゅん』
「エア! 女神様、ありがとうございます!」
エアはマグダリーナの肩に飛び乗り、いつものように、うっとりと眠りはじめた。
「寝るのが好きなのは、相変わらずなのね」
相棒が戻って来て、マグダリーナは町長という難問も、なんとか出来る気がして来た。直ぐにそう思ったことを後悔することになるが。
町役所にも、すでに働くマンドラゴン達がいた。
皆んなマグダリーナを大歓迎してくれる。一から人手を集めなくてはいけないかと思っていたので、安心した。
ところが。
『ぷぷ!!!』
〈まずは給料日までに、我々のお給金が必要なのです、はい。出店しているもの達は人が居ないと稼ぐことが出来ませんです。ダンジョンも人や従魔が入らないと死んでしまいます。町長様には頑張って、人を集めお金を稼いで貰いたいのです、はい〉
「はい……? え? そういう、あれ……」
マゴーの人件費0レピと違い、マンドラゴンは生きてる魔獣なので、生活するための資金が必要である、と。
『ぷー』
〈一年くらいなら、女神様が授けてくださった宝箱の金貨で凌げますです、はい。しかし一年なんぞあっという間です、はい〉
さっそく町役所の机に、マグダリーナは突っ伏した。
何とか気を取り戻したマグダリーナは、腕輪の魔導具でエステラに連絡を取って、ひとまず町役所に来てもらうことにした。そしてアーベルには町の冒険者ギルドに向かってもらい、そこの様子の確認と、領都のショウネシー冒険者ギルド本部との連携が上手くいくよう、業務を丸投げした。
アーベルは文句も言わずに、ただ頷いて仕事に向かう。マグダリーナが前世のアラサー事務員のままだったら、惚れていたところだ。今世では、ない。アーベルには是非ともデボラとお付き合いをはじめて欲しいところだ。今すぐにも。
そしてエステラは、ほくほくのお顔で、ニレルや従魔達とやってきた。シャロンのところにいた、ハラとゼラも合流している。
「いいわ~いいわ~あの二階のスライムボス部屋、スライム素材がたんまりいただけるのよ」
「もうダンジョン入ってたの?」
エステラは一旦寝ると言っていたし、まだしばらく後だろうと思っていたのだ。
「あの宿屋、高い回復効果があったのよ。ちょっと寝たらすっかり元気になっちゃった。このダンジョンは中で活動する、人や魔獣なんかの魔力が主食らしいから、ご祝儀代わりにサクサクっと皆んなで魔法ぶっ放してきたわ。しばらく活動停止することもないから、安心して」
『うむ、全力のブレスを放っても、環境を破壊することがないのは素晴らしいのだ!』
ササミ(メス)も、ご満悦だ。
「というわけで、今回の宝箱から出てきた、金貨と宝飾品は、町に寄付するわね」
どどん、とエステラは金貨と宝飾品の入った大きな革袋を山盛り出した。
「ありがとう、すっごく助かる!!!」
マグダリーナは、エステラをぎゅっとした。
◇◇◇
「わぁ、リーナが町長なの?! おめでとう!」
ここに来るまでの経緯を話して、エステラに領民カードの発行を町役所でも出来ないか相談する。
「それなら、すぐ設置出来るわ。任せて」
なんとも頼もしい言葉である。エステラは早速設置をはじめ、使い方を職員に説明している。
それから、地図やパンフレットを広げて、人を集める為にどうするかを話しあう。
まずニレルが、ダンジョンの説明をしてくれた。
「軽く見て回った感じだと、このダンジョンは他のダンジョンに比べたら難易度が高い。だが、他にない利点もある。一~三階は完全に初心者向けだし、各階にそれぞれ、回復機能のついた休憩所があるんだ。マゴー達、魔導人形は魔物に襲われずに動きまわれる。充分気をつければ、他のダンジョンより生還率は高いだろう。それから、宝箱の中に、スキルを授けたり能力を上げたりするものが出ることがある。そうだね……強くなる為の修行の場、みたいな面が強いかな」
ニレル言葉に、マグダリーナは思案した。
「騎士団の訓練とかに使えないかしら……」
冷静になって考えると、個人の冒険者が、わざわざ時間とお金をかけて、国の端のショウネシー領まで来るとは思えなかった。実際、今までショウネシー領から出ていた討伐依頼も、誰も受けなかったのだから。となると、狙う営業先は、各領地の保持する騎士団だろう。貴族が背後にいる分、予算はあるはずだ。
「まず営業は縁故とお金のあるオーズリー公爵からね……となると、やっぱり大勢を運べるマゴー車が欲しいわ……」
「だったら、東門からこの町に直行するマゴー車よね。何色にしようかしら。あ、街中を周回するマゴー車もあった方が良いわね」
エステラはまず、領都と同じ、黄マゴー車を三台作ると、白マゴーも造った。そして各施設や民家にアッシなどの魔導具を設置する。なんと材料は全てエステラの収納に増えていたそうだ。
「きっと女神様の贈り物ね。これで、いつ人がやってきても大丈夫よ」
エステラはいい笑顔で言った。
「じゃあ、次はダンジョンに行ってみよっか」
〈わぁい! 町長様だ! 後で僕らにも領民カード作って下さい!!〉
「え? えーっと、専用の魔導具が必要だから、エステラに相談してからね」
『ぷぷ!』
〈はーい! こちら町の情報冊子です。情報は随時最新に更新されていきますので、ご安心ください。駐車場はそちら。町役所の方にも駐車場がありますので、このまま魔導車で通ることもできます〉
(とうとう魔獣の領民が出来てしまうのね……)
マグダリーナは、内心の動揺を隠して、そのまま魔導車で町役所まで行くことにした。
エステラの従魔になったプラは真っ白だが、リィンの町のマンドラゴン達は、上品な銀鼠色をしている。
武器屋に装備屋、魔導具屋、宿屋、薬屋、酒場兼食堂、高級感のあるカフェレストラン、屋台……様々なところで、マンドラゴン達が働いている。彼らは立派な町の住民になっていた。
他にも馴染みのある休憩所、領都と同じ噴水のある公園がある。どうやらそこの噴水にも女神像があり、小精霊が集まっているので、一旦車を停めて女神様に挨拶をすることにする。
こちらの女神像のエルフェーラ様は……違う、よく見ると、エルフェーラとは別の、ハイエルフの美しい女性の像だった。女神の闇花を髪に飾り、勇ましく刀を手にしていた。
「…………っ、ディオンヌ……」
エデンがふらふらと噴水の中に入り、その像の足元にしがみつく。
「ああ、女神よ。感謝します」
マグダリーナは領民カードの時計機能で正確に五分計って、アーベルに頼んでエデンを引き剥がした。あんなオプションがくっついていたら、感謝の祈りの邪魔にしかならない。
『ぷ!』
〈女神様から一度だけ、見逃すよう仰せつかっています。次から公共物に何かしたら、しょっぴきますからね!〉
さっそくエデンは、警邏のマンドラゴンに警告されていた。
「女神様、エステラとニレルを無事に返してくれてありがとうございます。それからダンジョンとこの町、住人達、精一杯守れるよう頑張りますので、お見守り下さい」
マグダリーナの祈りの言葉に応えるように、噴水の水が光輝き、マグダリーナの額の精石を濡らした。その一瞬、マグダリーナ自身も淡く輝き、ふわりと青い小鳥が現れた。
『ぴゅん』
「エア! 女神様、ありがとうございます!」
エアはマグダリーナの肩に飛び乗り、いつものように、うっとりと眠りはじめた。
「寝るのが好きなのは、相変わらずなのね」
相棒が戻って来て、マグダリーナは町長という難問も、なんとか出来る気がして来た。直ぐにそう思ったことを後悔することになるが。
町役所にも、すでに働くマンドラゴン達がいた。
皆んなマグダリーナを大歓迎してくれる。一から人手を集めなくてはいけないかと思っていたので、安心した。
ところが。
『ぷぷ!!!』
〈まずは給料日までに、我々のお給金が必要なのです、はい。出店しているもの達は人が居ないと稼ぐことが出来ませんです。ダンジョンも人や従魔が入らないと死んでしまいます。町長様には頑張って、人を集めお金を稼いで貰いたいのです、はい〉
「はい……? え? そういう、あれ……」
マゴーの人件費0レピと違い、マンドラゴンは生きてる魔獣なので、生活するための資金が必要である、と。
『ぷー』
〈一年くらいなら、女神様が授けてくださった宝箱の金貨で凌げますです、はい。しかし一年なんぞあっという間です、はい〉
さっそく町役所の机に、マグダリーナは突っ伏した。
何とか気を取り戻したマグダリーナは、腕輪の魔導具でエステラに連絡を取って、ひとまず町役所に来てもらうことにした。そしてアーベルには町の冒険者ギルドに向かってもらい、そこの様子の確認と、領都のショウネシー冒険者ギルド本部との連携が上手くいくよう、業務を丸投げした。
アーベルは文句も言わずに、ただ頷いて仕事に向かう。マグダリーナが前世のアラサー事務員のままだったら、惚れていたところだ。今世では、ない。アーベルには是非ともデボラとお付き合いをはじめて欲しいところだ。今すぐにも。
そしてエステラは、ほくほくのお顔で、ニレルや従魔達とやってきた。シャロンのところにいた、ハラとゼラも合流している。
「いいわ~いいわ~あの二階のスライムボス部屋、スライム素材がたんまりいただけるのよ」
「もうダンジョン入ってたの?」
エステラは一旦寝ると言っていたし、まだしばらく後だろうと思っていたのだ。
「あの宿屋、高い回復効果があったのよ。ちょっと寝たらすっかり元気になっちゃった。このダンジョンは中で活動する、人や魔獣なんかの魔力が主食らしいから、ご祝儀代わりにサクサクっと皆んなで魔法ぶっ放してきたわ。しばらく活動停止することもないから、安心して」
『うむ、全力のブレスを放っても、環境を破壊することがないのは素晴らしいのだ!』
ササミ(メス)も、ご満悦だ。
「というわけで、今回の宝箱から出てきた、金貨と宝飾品は、町に寄付するわね」
どどん、とエステラは金貨と宝飾品の入った大きな革袋を山盛り出した。
「ありがとう、すっごく助かる!!!」
マグダリーナは、エステラをぎゅっとした。
◇◇◇
「わぁ、リーナが町長なの?! おめでとう!」
ここに来るまでの経緯を話して、エステラに領民カードの発行を町役所でも出来ないか相談する。
「それなら、すぐ設置出来るわ。任せて」
なんとも頼もしい言葉である。エステラは早速設置をはじめ、使い方を職員に説明している。
それから、地図やパンフレットを広げて、人を集める為にどうするかを話しあう。
まずニレルが、ダンジョンの説明をしてくれた。
「軽く見て回った感じだと、このダンジョンは他のダンジョンに比べたら難易度が高い。だが、他にない利点もある。一~三階は完全に初心者向けだし、各階にそれぞれ、回復機能のついた休憩所があるんだ。マゴー達、魔導人形は魔物に襲われずに動きまわれる。充分気をつければ、他のダンジョンより生還率は高いだろう。それから、宝箱の中に、スキルを授けたり能力を上げたりするものが出ることがある。そうだね……強くなる為の修行の場、みたいな面が強いかな」
ニレル言葉に、マグダリーナは思案した。
「騎士団の訓練とかに使えないかしら……」
冷静になって考えると、個人の冒険者が、わざわざ時間とお金をかけて、国の端のショウネシー領まで来るとは思えなかった。実際、今までショウネシー領から出ていた討伐依頼も、誰も受けなかったのだから。となると、狙う営業先は、各領地の保持する騎士団だろう。貴族が背後にいる分、予算はあるはずだ。
「まず営業は縁故とお金のあるオーズリー公爵からね……となると、やっぱり大勢を運べるマゴー車が欲しいわ……」
「だったら、東門からこの町に直行するマゴー車よね。何色にしようかしら。あ、街中を周回するマゴー車もあった方が良いわね」
エステラはまず、領都と同じ、黄マゴー車を三台作ると、白マゴーも造った。そして各施設や民家にアッシなどの魔導具を設置する。なんと材料は全てエステラの収納に増えていたそうだ。
「きっと女神様の贈り物ね。これで、いつ人がやってきても大丈夫よ」
エステラはいい笑顔で言った。
「じゃあ、次はダンジョンに行ってみよっか」
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