わたし"だけ"が魔法使い

丸晴いむ

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12 南棟

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 翌日、双子の話をもとにある仮説をたてて井戸へと向かった。
朝にも先生と来たけど、今は昼過ぎ。いつもは誰も居ないのに、お昼を食べた弓術科の生徒と時々すれ違う。

「ティティくんが言ってたでしょ、ご飯の時に水をあげるって」

 わたしの抱える鉢の双葉は、正確には木ではない。でも、似通った部分はある。

「成長が遅いのは、何かが足りてないからだと思うのよね」

 皆はどう思う?と視線をやれば、リーグは面白そうにニヤニヤしてるし、リナーも嬉しそうに飛び跳ねている。
ダナーは広範囲に広がりすぎて姿が見えないけど、ルーフもぷるぷる弾んだ動きをしているので多数決で賛成とみた。

 毎朝、コップ一杯程度の井戸水をあげている。水は溜まることも下から零れてくることもなく、すぐに吸収されていた。
思い返せば、やっぱり水が足りていなかったのでは?という結論にいきつく。

「まずは、いつも通りほどほどに」

 井戸から引き上げた桶をひっくり返して、少しだけ水をやる。

「うん、吸収したよ」

 朝にもあげたけど、まだ溢れない。

「また放課後来ようね!」

 用が済んだので、井戸を後にする。畑を抜けて南棟に入って、来た道を戻るのだ。
南棟の畑は弓術科の生徒が育てている薬草や毒草でいっぱいで、なんだか不思議なにおいがする。
矢に毒を塗って攻撃手段にするみたいだけど、ちょっと怖いよね。

「何してるの?昼間に水をあげちゃダメよ」

 わさわさ茂る薬草畑の真ん中で、声をかけられた。畑の周りを歩くのがベストだけど、かなり遠回りになって時間のロスだから、わたしはいつも真ん中を突き抜けさせてもらっている。
この大きい畑は別に関係者以外立ち入り禁止というわけではないそうだが、ちょっとばつがわるい。

「ごめんなさい、通っただけです」
「あら…確か、シェリーさん?弓術科に用事?」

 声の主は、入学式でお隣だった、レナさんだった。

「レナさん!こんにちは。うん、井戸水が必要だからね、貰いに来てるの」
「魔術科から転入してきたのかと思ったわ」

「しません!!」

 っと、いけないいけない。ついつい最初の喧嘩腰のまま返しちゃった。

「魔術科も何か育ててるの?」
「あ、この鉢ね。魔法使いの杖を育ててるんだ」
「そう、なら力になれそうにないわね。魔法薬に使う植物なら余剰分があるから、いつでも言って」

 あれ、気遣ってくれてる…いい人じゃん。

「一人で全部やるだなんて、大変でしょうから」

 一言多いんだよなぁ。

「お気遣いありがとうございますー」

 でもそうか、魔法薬…今はまだ魔法の勉強だけど、二年になったら物に魔力を込める授業もやるって言ってたっけ。
弓術科の畑は大きいけど、人も多いから当番制だって隣部屋の弓術科の子が言ってたなぁ。

 ふっ、当番制か…夢のある響きだわ…。

「それじゃあ」

 わたしはこれで、と別れの言葉を結ぶつもりだったけど、がさがさと葉が擦れる音に遮られた。

 がさがさがさ、 ざっ

「レナ様!」

 背の高い葉の茂みから顔を出したのは、背の高い男の人。
…今、レナ様

って言った?

「草抜き、既に終わらせてありますよ。レナ様の担当区も引き受けておきました」
「ご苦労様です先輩」

「え、先輩って」

 何で先輩の方が敬語使って、様とか言ってんの?何事?

「あぁ、この畑は学年区別なく担当を振られるの。共有財産よ」
「気になったのは、そこではないかなぁ…」
「仕事さえ出来ていれば、誰がやっても大丈夫なの。問題ないわ」
「さようでございますかー」

 分からない、何も分からない。レナさんが弓の達人で、師弟関係でも結んでるんだろうか?
それか同学年だけど、背が固いから先輩ってあだ名で呼ばれてる人なのかも…。

 いや、どう説明付けても様

はないよね。

「どうかした?」

 聞きたい事があるんだけど、聞いて良いことなのか図り兼ねてます。

「ううん、なんでもない。じゃあね…わっ」

 そう返したら、ダナーが目の前を黒い靄で覆って通せんぼしてきた。

「ダナー、危ないからやめて…」

 リナーも、それでいいのかと顔を覗き込んでくる。別にこの子達の野次馬根性が凄いってわけではない。
ただただわたしがもやもやしてる事を気にしてくれているのだ。

 …えーい聞いちゃえ聞いちゃえ!今を逃したらもうタイミングないしね。
ちょうど、独り言を言いだしたわたしに、2人とも注目してるし。

「なんで…なんでレナ様って呼ばれてるの?」
「別に強要した覚えはないよ」

 涼しい顔で返答が来た。ちらっと先輩を見ると、なんだか驚いた顔をしている。
これは…わたしに対して?

「君はレナ様の…何だ?顔合わせに居なかったし、弓術科じゃないな」
「あ、わたしは魔術科一年のシェリーです。お邪魔してます。レナさんとは入学式の時席が隣だっただけで…」
「ならあまり馴れ馴れしい態度をとるな。レナ様はミルバイム家の一人娘だぞ」

 ミルバイムさんがどんな人達かは知らないけど、住んでいる地名じゃなくて家名が別にあるってことは、貴族だ。
田舎者なもんで全然ピンとこないけど、偉い人ってことでいいのかな。

「いいの。先輩は、そうしたいからそうしているんでしょう。他人に強制するものじゃないわ」
「…出過ぎた真似を…」
「貴方は、私の役に立ちたいと言ったわ。なら、そうすればいい。貴方の自由よ」

 え、偉そう~~。

「彼女は、仲良くして欲しいと言ったわ。だから仲良くしていいの。私達、友達だもの」
「えっ」
「…違った?」
「ううん、そう言った!けど、もう友達だと思ってくれてるとは思わなかった…今度、一緒にご飯食べよ!見かけたら声かけてもいい?」
「ええ」

 貴族だってことより、友達と思われてたことに驚いた。
嬉しいけど、なんていうか展開が早いって言うか…レナさんってちょっと変わってるのかもしれない。
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