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証明編
25話
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フレーゴ様の謝罪は誠心誠意という言葉が似合う程だった、「顔を上げてください」と何度言っても謝罪を止めず、私達への賛辞と謝罪を繰り返す。
「君たちには、謝罪しかできない。本当に申し訳ない。これほど、素晴らしい行動を起こして、考えをまとめているなど思ってもいなかったのだ」
「フレーゴ様、お顔を上げてください。私は……フレーゴ様が言ってくださったおかげで覚悟が決まったのですから」
「いや、私のおかげなどあるものか。この結果はリディア嬢と、息子であるアルバートのもたらした結果だ」
「父様……」
一通りの謝罪の意志を示し終わったのか、フレーゴ様は渋い表情を浮かべる。
「今さらなにをと思うだろうが、私の亡き妻も……母方の血筋が平民である事で苦しい思いをしていたのだ」
「っ!! 母様が……?」
驚きを浮かべたアルを、フレーゴ様は落ち着いた表情で見つめる。
「アルバート、お前には言っていなかったな。お前の母は公家に嫁ぐ資格などないと影で言われ続けていたようなんだ。そうやって疲弊した心に、病魔が目を付けた」
アルのお母様が、平民の血筋を引いていた。たったそれだけの事で迫害を受けて、心を追い詰められていた。
その事実が、アルの表情を悔しさで歪ませた。
「気付いた私が、当事者達を罰した時には……妻は、帰らぬ場所へと逝ってしまった」
「……」
「アルバートに平民と同様の生活させて欲しいと言ったのは、妻なんだ。私はその遺言を果たそうと思ったが……アルバートとリディア嬢の仲が深い事を聞き、当時は遠ざけてしまった」
アルが突然、村を離れて留学していたのも……フレーゴ様が関係していたのだ。
告げられる真実に言葉が出ず、アルも同様に視線を逸らさず見つめる。
「二人が特別な仲となれば、傷つくのはリディア嬢だと思ったのだ。妻のように、アルバートの目の届かぬ所で追い詰められ、生末は誰も望まぬ結果となってしまうかもしれないと危惧した。しかし、リディア嬢には立ち向かう意志があり、それを支えるアルバートがいる」
フレーゴ様はようやく顔を上げて、私とアルを真っ直ぐ見つめる。
その瞳は、私達の仲を否定していた淀みを消して、綺麗な深紅に輝いていた。
「二人の関係に、私が忠告するなどおこがましかったな。立派だ。二人とも」
「っ……ありがとうございます。フレーゴ様」
「父様、一人で抱えず……僕にも相談してください」
「今度は、亡き妻と共に……二人の未来を見守らせてくれ」
「はい、フレーゴ様」
答えた言葉、フレーゴ様は瞳を潤ませて目元を拭う。
亡くなった奥様と重なり合ったような状況の私を心配してくださった気持ちは、本当のはずだ。
だから、私にはもうフレーゴ様を責めるような言葉を胸に抱くことなんてなかった。
その後、学園長は訪れた騎士団によって隠蔽の罪を問われることになった。
余罪を見つけるため、取り調べを受けるようであり。アルが言うには恐らく幾つか他の罪が見つかるだろうと推測していた。
グレアルフ達、他加害生徒達も処罰を受ける。イジメによる退学だけではなく、暴行などの罪は犯罪として連行される事が決まった。
ナタリーは騎士団に連れられる際、叫びながら救いを懇願して悲痛に顔を歪ませた。そこにはかつて学園で一二を争う美貌は消え去っており、哀れにも見える程に嘆きの表情で連行された。
対してグレアルフは大人しく、全てを諦めたように連行を受けた。
最後にチラリと私を伺い見ていたけど、父に強制された時以外の謝罪はなく沈黙のまま連れて行かれた。
私は、もう彼らを気にする事はなく、とある場所へアルと向かう。
もう俯きはしない、胸を張って私を育ててくれた村へ、母の元へと帰るのだ。
◇◇◇
懸念も、憂いもなく「ただいま」と母に告げに向かう。それが、今はただ胸を満たす程に嬉しい。
久しぶりに訪れた村は変わらない土と、作物の匂い。晴れ渡るような晴天は私とアルを照らしてくれて、迷いなく母の元へと歩いて行ける。
「リディアちゃん! 帰ってきたのね! あら、カッコイイ人連れて~」
「あら、これ、採れたて持っていきなさい!」
「お~リディアじゃねぇか! 母さんとこに帰るんだろ? これ持ってけ!」
いじめられていた時と違って、隠れなどしない。
そんな私を、村の皆は優しくすれ違うたびに声をかけてくれるかた、足を止める。それが今はただ心地よい。
アルにさえ物怖じしないのは、彼らが誰でも分け隔てなく接するからだ。
優しさと、懐かしさに包まれる中で最も見覚えのある。
帰ってきたかった場所へと、たどり着く。
「お母さん!」
叫び、走り出す。
私と同じ、茶色の髪を後ろにまとめ……今も私のために汗水を流して働いてくれている。
大好きな母の元へと。
情けなさも、何もなく。純粋な子共に戻って……。
「っ!? リディア? 帰ってきたの?」
「ただいま……お母さん」
とびきりの笑顔で。愛する母の元へと。
「君たちには、謝罪しかできない。本当に申し訳ない。これほど、素晴らしい行動を起こして、考えをまとめているなど思ってもいなかったのだ」
「フレーゴ様、お顔を上げてください。私は……フレーゴ様が言ってくださったおかげで覚悟が決まったのですから」
「いや、私のおかげなどあるものか。この結果はリディア嬢と、息子であるアルバートのもたらした結果だ」
「父様……」
一通りの謝罪の意志を示し終わったのか、フレーゴ様は渋い表情を浮かべる。
「今さらなにをと思うだろうが、私の亡き妻も……母方の血筋が平民である事で苦しい思いをしていたのだ」
「っ!! 母様が……?」
驚きを浮かべたアルを、フレーゴ様は落ち着いた表情で見つめる。
「アルバート、お前には言っていなかったな。お前の母は公家に嫁ぐ資格などないと影で言われ続けていたようなんだ。そうやって疲弊した心に、病魔が目を付けた」
アルのお母様が、平民の血筋を引いていた。たったそれだけの事で迫害を受けて、心を追い詰められていた。
その事実が、アルの表情を悔しさで歪ませた。
「気付いた私が、当事者達を罰した時には……妻は、帰らぬ場所へと逝ってしまった」
「……」
「アルバートに平民と同様の生活させて欲しいと言ったのは、妻なんだ。私はその遺言を果たそうと思ったが……アルバートとリディア嬢の仲が深い事を聞き、当時は遠ざけてしまった」
アルが突然、村を離れて留学していたのも……フレーゴ様が関係していたのだ。
告げられる真実に言葉が出ず、アルも同様に視線を逸らさず見つめる。
「二人が特別な仲となれば、傷つくのはリディア嬢だと思ったのだ。妻のように、アルバートの目の届かぬ所で追い詰められ、生末は誰も望まぬ結果となってしまうかもしれないと危惧した。しかし、リディア嬢には立ち向かう意志があり、それを支えるアルバートがいる」
フレーゴ様はようやく顔を上げて、私とアルを真っ直ぐ見つめる。
その瞳は、私達の仲を否定していた淀みを消して、綺麗な深紅に輝いていた。
「二人の関係に、私が忠告するなどおこがましかったな。立派だ。二人とも」
「っ……ありがとうございます。フレーゴ様」
「父様、一人で抱えず……僕にも相談してください」
「今度は、亡き妻と共に……二人の未来を見守らせてくれ」
「はい、フレーゴ様」
答えた言葉、フレーゴ様は瞳を潤ませて目元を拭う。
亡くなった奥様と重なり合ったような状況の私を心配してくださった気持ちは、本当のはずだ。
だから、私にはもうフレーゴ様を責めるような言葉を胸に抱くことなんてなかった。
その後、学園長は訪れた騎士団によって隠蔽の罪を問われることになった。
余罪を見つけるため、取り調べを受けるようであり。アルが言うには恐らく幾つか他の罪が見つかるだろうと推測していた。
グレアルフ達、他加害生徒達も処罰を受ける。イジメによる退学だけではなく、暴行などの罪は犯罪として連行される事が決まった。
ナタリーは騎士団に連れられる際、叫びながら救いを懇願して悲痛に顔を歪ませた。そこにはかつて学園で一二を争う美貌は消え去っており、哀れにも見える程に嘆きの表情で連行された。
対してグレアルフは大人しく、全てを諦めたように連行を受けた。
最後にチラリと私を伺い見ていたけど、父に強制された時以外の謝罪はなく沈黙のまま連れて行かれた。
私は、もう彼らを気にする事はなく、とある場所へアルと向かう。
もう俯きはしない、胸を張って私を育ててくれた村へ、母の元へと帰るのだ。
◇◇◇
懸念も、憂いもなく「ただいま」と母に告げに向かう。それが、今はただ胸を満たす程に嬉しい。
久しぶりに訪れた村は変わらない土と、作物の匂い。晴れ渡るような晴天は私とアルを照らしてくれて、迷いなく母の元へと歩いて行ける。
「リディアちゃん! 帰ってきたのね! あら、カッコイイ人連れて~」
「あら、これ、採れたて持っていきなさい!」
「お~リディアじゃねぇか! 母さんとこに帰るんだろ? これ持ってけ!」
いじめられていた時と違って、隠れなどしない。
そんな私を、村の皆は優しくすれ違うたびに声をかけてくれるかた、足を止める。それが今はただ心地よい。
アルにさえ物怖じしないのは、彼らが誰でも分け隔てなく接するからだ。
優しさと、懐かしさに包まれる中で最も見覚えのある。
帰ってきたかった場所へと、たどり着く。
「お母さん!」
叫び、走り出す。
私と同じ、茶色の髪を後ろにまとめ……今も私のために汗水を流して働いてくれている。
大好きな母の元へと。
情けなさも、何もなく。純粋な子共に戻って……。
「っ!? リディア? 帰ってきたの?」
「ただいま……お母さん」
とびきりの笑顔で。愛する母の元へと。
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