380 / 411
7代目デュロック辺境伯爵編
提案
しおりを挟む
デイビッドは腕組みをして頭を悩ませていた。
「つっても、他国の人間なんざ連れてこれねぇし、血統の縛りもあるから余計な手出しはなぁ…」
「貴族籍さえあればいいんです!」
「それでも魔女の血があるなら魔力持ちが良いんだろ?特殊な血筋は入れられねぇのか?」
「ロシェ家は特殊血統の中でも血筋に関する制約はございません。ただ、シェルリアーナ様は魔女の正当な継承者ですので、お相手の名は継げず、また、ロシェ家自体を継ぐこともできないのでそこにご理解が無いと…それから、特殊な継承を要するので、お相手のご実家とは関係が希薄になるかと思います。そこを受け入れて頂けないと難しいですね。それ故に何か確立したお仕事をされている方が望ましいでしょう。」
「当主だの血筋にあんま興味がなくて、家の繋がりも気にしない、で、収入のある奴か…」
「シェルリアーナ様はいずれお母君の役職を継がれるので、できれば国内で、王都の近くに住まう方が良いかと…お歳もできたら近い方がいいですよね。」
「だんだん条件が膨らんできてねぇか?誰でもいいなんてウソじゃねぇかよ…」
こんな針の穴を通すような条件を満たせる相手など、本当に存在するのだろうか…
「つまり、貴族で、魔力持ちで、当主だの家名だのに興味が無くて、収入があって、王都に住めて、歳が近くて…あとなんだ?やっぱ魔女ってもんに理解があった方がいいよな…」
「そうですね…とても特殊な血筋ですから。」
「う~~ん……」
デイビッドは、長い事口を閉じていたが、アリスティアの前に指を1本立てて見せた。
「ひとりだけ…いないこともない…」
「本当ですか!?」
「俺も、できれば切りたくないカードだぞ?それでもいいなら紹介できる…」
その言葉に突っ伏していたシェルリアーナも跳ね起きた。
「ホントに!?」
「どこの誰ですか、その人!!」
「もうこの際誰でもいいわ!この危機を救ってくれるならどんな相手でも私にとっては英雄よ!!」
「教えて頂けませんか?その方がどこのどなたなのか…」
デイビッドは勿体ぶると言うより、何か渋るように唸っていたが、やがてデスクから封筒を取り出し、中身を3人の方へ向けた。
「「「これは!??」」」
差し出されたのは釣書きで、写真には爽やかな青年が写っている。
ヘーゼルゴールドの髪に、秋の空のような蒼い瞳の、誰もが振り向くだろう整った顔立ちの美男子。
3人はそれを見て空いた口も塞がらず、啞然としていた。
「エリック・ラルスル。元は侯爵家の産まれだが、母親の生家へ戻されてそこの性を名乗ってる。家は叔父が継いでるから継承もない。元より身分だの、長だ主だってな椅子には興味は無いそうだ。精霊血統と妖精の寵愛を受ける血筋の混血で魔力はかなり高い。歳は21、長年外交を務める貴族の侍従として働いてきて、現在の雇用主は知っての通り、この俺だ…」
「びっくりした…」
「これはまた…とんでもないモノを出してきましたね…」
「言っとくが、俺の伝手が限界なだけで、探せば他にもいるかも知れねぇぞ?変態の妨害にどの程度耐えられるかわかんねぇけど。」
「確かに、エリック様ならばレオニード様が何をして来ようと笑って躱してしまわれるでしょうね。」
「びっくりしたぁ!」
「俺に出せる案件はこれしかねぇよ。誰にも勧めるつもりもなかったしな…まさか生徒は引き出せねぇし。悪いが今回俺に頼るのは諦めてくれ。」
そこへタイミング良くか悪くか、エリックが戻って来た。
「たっだいまぁ~!あー、外があっついったらないですよ!頭の上に雪とか振らせたら少しは涼しくなりますかねぇ?」
下らないことを喋りながら、保冷庫を開けてパイナップルの薄切りを浮かべた紅茶のピッチャーを取り出し、グラスに注いで飲み干している。
「なんです?もお~みんなしてこっち見てぇ~…え!?これ僕の釣書き?あー、デイビッド様に預けてたヤツ!よく撮れてるでしょ?出すとこ出したら結構お声も掛かりそうな気がするんですよねぇ、面倒だからしませんけど。」
ヘラヘラしながら自分の釣書きを見て笑うエリックを、その場の4人はそれぞれの思考をぐるぐるにさせながら眺めていた。
「…え?ホントにどうしたんです?何かあったのなら話して下さいよ。ほら、シェル様なんて泣き跡が赤くなってますよ?」
スッとハンカチを差し出すエリックを見て、アリスティアとヴィオラは同時に立ち上がった。
「それでは後はお任せしました!」
「わ、私達はお暇いたしますので!デイビッド様も早く早く!!」
「いや!まだ決まったワケじゃねぇだろ!?」
受け取ったハンカチを握りしめるシェルリアーナを見ると、僅かに震えているが、何かを覚悟したような目でデイビッドの方を見た。
「少し…2人で話しさせて…」
「…わかった…」
複雑な気持ちでデイビッドもヴィオラ達と外へ出た。
「えー?お昼ご飯は?!」
「後にしろ後に!!」
「みんなして僕を除け者ですか?!」
「除け者はこっちだよ!いいからお前は…シェルについててやれ…」
「もー、何があったかくらい話して下さいよー!」
デイビッドに付いて来ようとするエリックを引き止めたのは、シェルリアーナの手だった。
服の端を無言で掴み、何か言いたげに唇を噛んでいる。
「…わかりましたよ。では、話の前に冷たいお茶でも淹れますから、少し待ってて下さいな?」
何かを察してその場に留まりシェルリアーナに向き合うエリックを残して、ヴィオラ達はデイビッドを連れて学生食堂の方へと向かって行った。
「びっくりしました!本当に!!」
「知り合い同士が結ばれるかもと思うと、ちょっとドキドキしますね!」
「話して吐き出したら終わりって可能性もあるだろ?アイツ等以外とそういう仲だし…ああ…そういう仲なんだな…そういや。」
「…ラブロマンスは無理ですかしら…?」
「相性はいい。そこは間違いない。」
「びっくりし過ぎてお腹すきました!」
「後でちゃんとしたもん作るから、ひとまず繋ぎになんか食うか。」
デイビッドはヴィオラとアリスティアを広い食堂の空いたテーブルへ座らせると、学生食堂の調理室で忙しく立ち働く学生達の間に立った。
オーブンをひとつ借りて大きな饅頭を蒸しながらいつの間に持って来ていたのか、大砂鳥の卵とベーコンの塊を取り出して、分厚く切ったベーコンをフライパンで焼き上げ、出て来た脂で野菜と屑肉を炒め、炊いた飯をぶち込んで黒い“タマリ”のソースを掛け回し、香ばしい匂いがしたら皿へ丸くよそって、その上に大きな目玉焼きを被せ、更にベーコンを乗せて一品にすると、蒸し上がった饅頭を大皿へ盛ってサッサと出て行った。
「ムカつくぅっ!!」
「なんだあの人!めっちゃ美味そうなもん作ってどっか行ったぞ?!」
「先生のクセに!先生のクセに!!」
「スゴい自然に厨房を私物化してった!!」
「資本のお金出してるの先生なんだし、いいんじゃない少しくらい…?」
生徒の不満を他所に、滅多に来ない本舎の食堂へ入ると食事や談笑をしている生徒達が驚いた顔で振り向いた。
ヴィオラもデイビッドも、この学生用の食堂には本当に数えるほどしか来た事がない。
珍しい人物が、王族のアリスティアと現れ、おまけに手にしたご馳走からは、良い香りが漂っているのだから仕方がないだろう。
遠慮なく飛び付くヴィオラを真似て、アリスティアもまず王宮では口にできない庶民の味を口にした。
デイビッドは、無言で饅頭と焼き飯に食らいつく二人の淑女を見つめながら、エリックがどうしているか少し心配になっていた。
「アハハハハハハ!イヤ~あの前髪君、最近やっと大人しくなったのかと思ってたら、またやらかしてきましたねぇ!?」
「笑い事じゃないのよ!!」
「確かに、このままじゃ逃げ道すら無くなっちゃいますねぇ。」
「お母様もお母様よ!!娘に何も知らせ無いで離婚なんて酷過ぎるわ!!」
「もう成人してる訳ですし、継承も上手く行ったから後は自分の人生を歩めと言う事なのでは?」
「にしても放ったらかし過ぎよぉぉ!!」
シェルリアーナは婚約うんぬんは後にして、まずは自分の置かれた状況をエリックに吐き出した。
「あー面白かった!ここ最近デイビッド様が全然構ってくれないもんだから、久しぶりに笑いました!」
「アンタを笑わせようとしてる訳じゃないのよ!!こっちは真剣なの!人生の崖っ縁なのよ!?もうこうなったら本気で誰でもいいから相手見つけてあの変態から逃げたいの!!」
「またそんな事を。あの前髪君を振り切れるお相手なんて、この国には居ませんよ。」
「そんなの…探してみなきゃわかんないじゃない…」
「今から探して見つかるものですかね?せっかく猶予を貰ったのに、全部ご自分のために使っちゃって、もう後が無いんでしょ?」
「わかってるわよ!なんで追い詰めるのよ!今そんなこと言わなくてもいいでしょ!?」
「アハハハハ!あーおっかしー!本気で焦って怒って感情ぐちゃぐちゃになっちゃって!かわいいなぁ!」
「からかわないでよ!年下の女の子が困ってるのよ!?少しくらい助けてよ!!」
エリックは顔を真っ赤にして怒るシェルリアーナを見て、ケラケラ笑った。
「ええ、もちろん!丁度僕もこっち関係で困ってたトコですし。利害が一致したのなら都合もいいじゃないですか、お互いに!」
「利害?」
「え?偽装婚約の話なんじゃないんですか?」
「偽装…婚…約…?!」
「え?だって、そのつもりでコレ引っ張り出して来たんじゃないんですか?」
エリックはテーブルにあった自分の釣書きを引き寄せ、改めてシェルリアーナに差し出した。
書き出された内容を読むと、シェルリアーナには本当に都合の良いお相手と言う事がよく分かる。
シェルリアーナは、表情の抜け落ちた顔で釣書きと本物の顔を見比べていた。
「つっても、他国の人間なんざ連れてこれねぇし、血統の縛りもあるから余計な手出しはなぁ…」
「貴族籍さえあればいいんです!」
「それでも魔女の血があるなら魔力持ちが良いんだろ?特殊な血筋は入れられねぇのか?」
「ロシェ家は特殊血統の中でも血筋に関する制約はございません。ただ、シェルリアーナ様は魔女の正当な継承者ですので、お相手の名は継げず、また、ロシェ家自体を継ぐこともできないのでそこにご理解が無いと…それから、特殊な継承を要するので、お相手のご実家とは関係が希薄になるかと思います。そこを受け入れて頂けないと難しいですね。それ故に何か確立したお仕事をされている方が望ましいでしょう。」
「当主だの血筋にあんま興味がなくて、家の繋がりも気にしない、で、収入のある奴か…」
「シェルリアーナ様はいずれお母君の役職を継がれるので、できれば国内で、王都の近くに住まう方が良いかと…お歳もできたら近い方がいいですよね。」
「だんだん条件が膨らんできてねぇか?誰でもいいなんてウソじゃねぇかよ…」
こんな針の穴を通すような条件を満たせる相手など、本当に存在するのだろうか…
「つまり、貴族で、魔力持ちで、当主だの家名だのに興味が無くて、収入があって、王都に住めて、歳が近くて…あとなんだ?やっぱ魔女ってもんに理解があった方がいいよな…」
「そうですね…とても特殊な血筋ですから。」
「う~~ん……」
デイビッドは、長い事口を閉じていたが、アリスティアの前に指を1本立てて見せた。
「ひとりだけ…いないこともない…」
「本当ですか!?」
「俺も、できれば切りたくないカードだぞ?それでもいいなら紹介できる…」
その言葉に突っ伏していたシェルリアーナも跳ね起きた。
「ホントに!?」
「どこの誰ですか、その人!!」
「もうこの際誰でもいいわ!この危機を救ってくれるならどんな相手でも私にとっては英雄よ!!」
「教えて頂けませんか?その方がどこのどなたなのか…」
デイビッドは勿体ぶると言うより、何か渋るように唸っていたが、やがてデスクから封筒を取り出し、中身を3人の方へ向けた。
「「「これは!??」」」
差し出されたのは釣書きで、写真には爽やかな青年が写っている。
ヘーゼルゴールドの髪に、秋の空のような蒼い瞳の、誰もが振り向くだろう整った顔立ちの美男子。
3人はそれを見て空いた口も塞がらず、啞然としていた。
「エリック・ラルスル。元は侯爵家の産まれだが、母親の生家へ戻されてそこの性を名乗ってる。家は叔父が継いでるから継承もない。元より身分だの、長だ主だってな椅子には興味は無いそうだ。精霊血統と妖精の寵愛を受ける血筋の混血で魔力はかなり高い。歳は21、長年外交を務める貴族の侍従として働いてきて、現在の雇用主は知っての通り、この俺だ…」
「びっくりした…」
「これはまた…とんでもないモノを出してきましたね…」
「言っとくが、俺の伝手が限界なだけで、探せば他にもいるかも知れねぇぞ?変態の妨害にどの程度耐えられるかわかんねぇけど。」
「確かに、エリック様ならばレオニード様が何をして来ようと笑って躱してしまわれるでしょうね。」
「びっくりしたぁ!」
「俺に出せる案件はこれしかねぇよ。誰にも勧めるつもりもなかったしな…まさか生徒は引き出せねぇし。悪いが今回俺に頼るのは諦めてくれ。」
そこへタイミング良くか悪くか、エリックが戻って来た。
「たっだいまぁ~!あー、外があっついったらないですよ!頭の上に雪とか振らせたら少しは涼しくなりますかねぇ?」
下らないことを喋りながら、保冷庫を開けてパイナップルの薄切りを浮かべた紅茶のピッチャーを取り出し、グラスに注いで飲み干している。
「なんです?もお~みんなしてこっち見てぇ~…え!?これ僕の釣書き?あー、デイビッド様に預けてたヤツ!よく撮れてるでしょ?出すとこ出したら結構お声も掛かりそうな気がするんですよねぇ、面倒だからしませんけど。」
ヘラヘラしながら自分の釣書きを見て笑うエリックを、その場の4人はそれぞれの思考をぐるぐるにさせながら眺めていた。
「…え?ホントにどうしたんです?何かあったのなら話して下さいよ。ほら、シェル様なんて泣き跡が赤くなってますよ?」
スッとハンカチを差し出すエリックを見て、アリスティアとヴィオラは同時に立ち上がった。
「それでは後はお任せしました!」
「わ、私達はお暇いたしますので!デイビッド様も早く早く!!」
「いや!まだ決まったワケじゃねぇだろ!?」
受け取ったハンカチを握りしめるシェルリアーナを見ると、僅かに震えているが、何かを覚悟したような目でデイビッドの方を見た。
「少し…2人で話しさせて…」
「…わかった…」
複雑な気持ちでデイビッドもヴィオラ達と外へ出た。
「えー?お昼ご飯は?!」
「後にしろ後に!!」
「みんなして僕を除け者ですか?!」
「除け者はこっちだよ!いいからお前は…シェルについててやれ…」
「もー、何があったかくらい話して下さいよー!」
デイビッドに付いて来ようとするエリックを引き止めたのは、シェルリアーナの手だった。
服の端を無言で掴み、何か言いたげに唇を噛んでいる。
「…わかりましたよ。では、話の前に冷たいお茶でも淹れますから、少し待ってて下さいな?」
何かを察してその場に留まりシェルリアーナに向き合うエリックを残して、ヴィオラ達はデイビッドを連れて学生食堂の方へと向かって行った。
「びっくりしました!本当に!!」
「知り合い同士が結ばれるかもと思うと、ちょっとドキドキしますね!」
「話して吐き出したら終わりって可能性もあるだろ?アイツ等以外とそういう仲だし…ああ…そういう仲なんだな…そういや。」
「…ラブロマンスは無理ですかしら…?」
「相性はいい。そこは間違いない。」
「びっくりし過ぎてお腹すきました!」
「後でちゃんとしたもん作るから、ひとまず繋ぎになんか食うか。」
デイビッドはヴィオラとアリスティアを広い食堂の空いたテーブルへ座らせると、学生食堂の調理室で忙しく立ち働く学生達の間に立った。
オーブンをひとつ借りて大きな饅頭を蒸しながらいつの間に持って来ていたのか、大砂鳥の卵とベーコンの塊を取り出して、分厚く切ったベーコンをフライパンで焼き上げ、出て来た脂で野菜と屑肉を炒め、炊いた飯をぶち込んで黒い“タマリ”のソースを掛け回し、香ばしい匂いがしたら皿へ丸くよそって、その上に大きな目玉焼きを被せ、更にベーコンを乗せて一品にすると、蒸し上がった饅頭を大皿へ盛ってサッサと出て行った。
「ムカつくぅっ!!」
「なんだあの人!めっちゃ美味そうなもん作ってどっか行ったぞ?!」
「先生のクセに!先生のクセに!!」
「スゴい自然に厨房を私物化してった!!」
「資本のお金出してるの先生なんだし、いいんじゃない少しくらい…?」
生徒の不満を他所に、滅多に来ない本舎の食堂へ入ると食事や談笑をしている生徒達が驚いた顔で振り向いた。
ヴィオラもデイビッドも、この学生用の食堂には本当に数えるほどしか来た事がない。
珍しい人物が、王族のアリスティアと現れ、おまけに手にしたご馳走からは、良い香りが漂っているのだから仕方がないだろう。
遠慮なく飛び付くヴィオラを真似て、アリスティアもまず王宮では口にできない庶民の味を口にした。
デイビッドは、無言で饅頭と焼き飯に食らいつく二人の淑女を見つめながら、エリックがどうしているか少し心配になっていた。
「アハハハハハハ!イヤ~あの前髪君、最近やっと大人しくなったのかと思ってたら、またやらかしてきましたねぇ!?」
「笑い事じゃないのよ!!」
「確かに、このままじゃ逃げ道すら無くなっちゃいますねぇ。」
「お母様もお母様よ!!娘に何も知らせ無いで離婚なんて酷過ぎるわ!!」
「もう成人してる訳ですし、継承も上手く行ったから後は自分の人生を歩めと言う事なのでは?」
「にしても放ったらかし過ぎよぉぉ!!」
シェルリアーナは婚約うんぬんは後にして、まずは自分の置かれた状況をエリックに吐き出した。
「あー面白かった!ここ最近デイビッド様が全然構ってくれないもんだから、久しぶりに笑いました!」
「アンタを笑わせようとしてる訳じゃないのよ!!こっちは真剣なの!人生の崖っ縁なのよ!?もうこうなったら本気で誰でもいいから相手見つけてあの変態から逃げたいの!!」
「またそんな事を。あの前髪君を振り切れるお相手なんて、この国には居ませんよ。」
「そんなの…探してみなきゃわかんないじゃない…」
「今から探して見つかるものですかね?せっかく猶予を貰ったのに、全部ご自分のために使っちゃって、もう後が無いんでしょ?」
「わかってるわよ!なんで追い詰めるのよ!今そんなこと言わなくてもいいでしょ!?」
「アハハハハ!あーおっかしー!本気で焦って怒って感情ぐちゃぐちゃになっちゃって!かわいいなぁ!」
「からかわないでよ!年下の女の子が困ってるのよ!?少しくらい助けてよ!!」
エリックは顔を真っ赤にして怒るシェルリアーナを見て、ケラケラ笑った。
「ええ、もちろん!丁度僕もこっち関係で困ってたトコですし。利害が一致したのなら都合もいいじゃないですか、お互いに!」
「利害?」
「え?偽装婚約の話なんじゃないんですか?」
「偽装…婚…約…?!」
「え?だって、そのつもりでコレ引っ張り出して来たんじゃないんですか?」
エリックはテーブルにあった自分の釣書きを引き寄せ、改めてシェルリアーナに差し出した。
書き出された内容を読むと、シェルリアーナには本当に都合の良いお相手と言う事がよく分かる。
シェルリアーナは、表情の抜け落ちた顔で釣書きと本物の顔を見比べていた。
54
あなたにおすすめの小説
国王一家は堅実です
satomi
恋愛
オスメーモ王国…そこは国王一家は麗しくいつも輝かんばかりのドレスなどを身につけている。
その実態は、国王一家は国民と共に畑を耕したり、国民(子供)に読み書きを教えたり庶民的な生活をしている。
国王には現在愛する妻と双子の男女の子に恵まれ、幸せに生活している。
外部に行くときは着飾るが、領地に戻れば庶民的で非常に無駄遣いをしない王族である。
国庫は大事に。何故か、厨房担当のワーグが王家の子どもたちからの支持を得ている。
『伯爵令嬢 爆死する』
三木谷夜宵
ファンタジー
王立学園の中庭で、ひとりの伯爵令嬢が死んだ。彼女は婚約者である侯爵令息から婚約解消を求められた。しかし、令嬢はそれに反発した。そんな彼女を、令息は魔術で爆死させてしまったのである。
その後、大陸一のゴシップ誌が伯爵令嬢が日頃から受けていた仕打ちを暴露するのであった。
カクヨムでも公開しています。
冷徹侯爵の契約妻ですが、ざまぁの準備はできています
鍛高譚
恋愛
政略結婚――それは逃れられぬ宿命。
伯爵令嬢ルシアーナは、冷徹と名高いクロウフォード侯爵ヴィクトルのもとへ“白い結婚”として嫁ぐことになる。
愛のない契約、形式だけの夫婦生活。
それで十分だと、彼女は思っていた。
しかし、侯爵家には裏社会〈黒狼〉との因縁という深い闇が潜んでいた。
襲撃、脅迫、謀略――次々と迫る危機の中で、
ルシアーナは自分がただの“飾り”で終わることを拒む。
「この結婚をわたしの“負け”で終わらせませんわ」
財務の才と冷静な洞察を武器に、彼女は黒狼との攻防に踏み込み、
やがて侯爵をも驚かせる一手を放つ。
契約から始まった関係は、いつしか互いの未来を揺るがすものへ――。
白い結婚の裏で繰り広げられる、
“ざまぁ”と逆転のラブストーリー、いま開幕。
力は弱くて魔法も使えないけど強化なら出来る。~俺を散々こき使ってきたパーティの人間に復讐しながら美少女ハーレムを作って魔王をぶっ倒します
枯井戸
ファンタジー
──大勇者時代。
誰も彼もが勇者になり、打倒魔王を掲げ、一攫千金を夢見る時代。
そんな時代に、〝真の勇者の息子〟として生を授かった男がいた。
名はユウト。
人々は勇者の血筋に生まれたユウトに、類稀な魔力の才をもって生まれたユウトに、救世を誓願した。ユウトもまた、これを果たさんと、自身も勇者になる事を信じてやまなかった。
そんなある日、ユウトの元へ、ひとりの中性的な顔立ちで、笑顔が爽やかな好青年が訪ねてきた。
「俺のパーティに入って、世界を救う勇者になってくれないか?」
そう言った男の名は〝ユウキ〟
この大勇者時代にすい星のごとく現れた、〝その剣技に比肩する者なし〟と称されるほどの凄腕の冒険者である。
「そんな男を味方につけられるなんて、なんて心強いんだ」と、ユウトはこれを快諾。
しかし、いままで大した戦闘経験を積んでこなかったユウトはどう戦ってよいかわからず、ユウキに助言を求めた。
「戦い方? ……そうだな。なら、エンチャンターになってくれ。よし、それがいい。ユウトおまえはエンチャンターになるべきだ」
ユウトは、多少はその意見に疑問を抱きつつも、ユウキに勧められるがまま、ただひたすらに付与魔法(エンチャント)を勉強し、やがて勇者の血筋だという事も幸いして、史上最強のエンチャンターと呼ばれるまでに成長した。
ところが、そればかりに注力した結果、他がおろそかになってしまい、ユウトは『剣もダメ』『付与魔法以外の魔法もダメ』『体力もない』という三重苦を背負ってしまった。それでもエンチャンターを続けたのは、ユウキの「勇者になってくれ」という言葉が心の奥底にあったから。
──だが、これこそがユウキの〝真の〟狙いだったのだ。
この物語は主人公であるユウトが、持ち前の要領の良さと、唯一の武器である付与魔法を駆使して、愉快な仲間たちを強化しながら成り上がる、サクセスストーリーである。
【完結】お荷物王女は婚約解消を願う
miniko
恋愛
王家の瞳と呼ばれる色を持たずに生まれて来た王女アンジェリーナは、一部の貴族から『お荷物王女』と蔑まれる存在だった。
それがエスカレートするのを危惧した国王は、アンジェリーナの後ろ楯を強くする為、彼女の従兄弟でもある筆頭公爵家次男との婚約を整える。
アンジェリーナは八歳年上の優しい婚約者が大好きだった。
今は妹扱いでも、自分が大人になれば年の差も気にならなくなり、少しづつ愛情が育つ事もあるだろうと思っていた。
だが、彼女はある日聞いてしまう。
「お役御免になる迄は、しっかりアンジーを守る」と言う彼の宣言を。
───そうか、彼は私を守る為に、一時的に婚約者になってくれただけなのね。
それなら出来るだけ早く、彼を解放してあげなくちゃ・・・・・・。
そして二人は盛大にすれ違って行くのだった。
※設定ユルユルですが、笑って許してくださると嬉しいです。
※感想欄、ネタバレ配慮しておりません。ご了承ください。
逆ハーレムを完成させた男爵令嬢は死ぬまで皆に可愛がられる(※ただし本人が幸せかは不明である)
ラララキヲ
恋愛
平民生まれだが父が男爵だったので母親が死んでから男爵家に迎え入れられたメロディーは、男爵令嬢として貴族の通う学園へと入学した。
そこでメロディーは第一王子とその側近候補の令息三人と出会う。4人には婚約者が居たが、4人全員がメロディーを可愛がってくれて、メロディーもそれを喜んだ。
メロディーは4人の男性を同時に愛した。そしてその4人の男性からも同じ様に愛された。
しかし相手には婚約者が居る。この関係は卒業までだと悲しむメロディーに男たちは寄り添い「大丈夫だ」と言ってくれる。
そして学園の卒業式。
第一王子たちは自分の婚約者に婚約破棄を突き付ける。
そしてメロディーは愛する4人の男たちに愛されて……──
※話全体通して『ざまぁ』の話です(笑)
※乙女ゲームの様な世界観ですが転生者はいません。
※性行為を仄めかす表現があります(が、行為そのものの表現はありません)
※バイセクシャルが居るので醸(カモ)されるのも嫌な方は注意。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げてます。
結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?
おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました!
皆様ありがとうございます。
「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」
眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる