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黒豚令息と訳あり令嬢の学園生活〜怒涛の進学編〜
大トカゲ
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なるべく早くシェルリアーナ達と離れたくて、デイビッドは指定された薬草を次々と採取し、カゴに入れていった。
新芽を摘むもの、全草使えるもの、花が要るもの、根が重要なもの、全て的確に集め最後に根茎ごと採取しないと移送に耐えられないものを丁寧に土ごと布に包み、カゴの底に降ろした。
「ほら、これでいいんだろ?!」
「手際いい~!」
「相変わらず見事だね。瞬時に判断付けて一番良いとこを的確に摘んでいくのに、植物へのダメージは最小限に抑えようとするの、そういうところ好きだなぁ。」
「この薬草の見分け方難しくないか?なにかコツとかあったら教えてくれないか!」
採取が終わり転移門まで戻って行く4人を送りながら、今度はコールマンと一緒に騎士科の生徒の指導をする。
「薬草採取中はなるべく離れて、できるだけ何を集めるのか目的を聞いておけ!?最悪、貴重な薬草を護衛が踏み潰してましたなんてことになるから気をつけろよ。」
「必ず2人以上で組み、1人は外、もう1人は対象の方に必ず向いている事!本来なら私語も発言すら許されない事もある。気配を消し邪魔にならないよう行動する事が求められるぞ!?」
「「はいっ!」」
後続隊が他の隊員達に混ざって任務に当たっている間に、デイビッドは焚き火台で米を焚き始めた。
洗った生米に乾燥野菜と干しキノコ、調味料と屑肉を加え、大きな鍋で炊いていく。
香ばしい匂いがして飯が炊き上がると、上に浮いて来ている材料と良く混ぜて、握り飯を作り出した。
大振りの握り飯がいくつも出来上がり、採取中に採ってきた大きな葉の上に並べられていく。
煮出すと甘みの出る野草といくつかの薬草で茶を沸かし、草を食むムスタの横でのんびり待っていると、笛の音がして各隊が任務を終えて解散してきた。
戻って来た生徒達が飯に飛びつこうとするのを防ぎ、手や顔を洗わせてから改めて一人前ずつ分けてやると、一斉にぱくつき出す。
「あ、コレうめー!」
「炒めたのと違うな。」
「手軽に食えて楽。」
「弁当代わりに持って行けねぇかな?」
「はぁ~…このお茶すっきりする。いつもあったかいの飲めるのありがてぇ~…」
中隊がこれから火を起こそうとしている中、後続隊は一足先に昼食を終え、草地で足を放り出し、腹ごなしに一休みしていた。
先行隊の支度が整い時間ギリギリになって、ついに一行は大トカゲのいる岩場へと向かい出した。
雑木が徐々になくなり、大きな岩がそこかしこにそびえる岩山には、遠目に岩肌に空いた穴がいくつも見える。
「これより各隊に別れ、ロックリザードの討伐を行う!!」「毒は無いが素早く尾の攻撃が厄介な上、ひと噛みで肉を食い千切られるぞ?気を抜けば命にかかわると思え!?」
「討伐は正規のものとして扱われる。後に書面での報告も必要とするので、ただ倒せば良いわけではないぞ?気を付けろ。」
引率者達はここで受け持ちの隊から離れ、余程のことがない限り監視に徹するそうだ。
デイビッドはというと手頃な岩場でムスタに餌をやりながら焚き火台に金網を用意して待機していた。
「大丈夫でしょうかね…」
「助言はしておいたから、ある程度は対処出来るだろ。それより、監視は任せていいですかね?俺もその辺見て来るんで。」
「お、おお?!お任せ下さい。彼等の安全は私が守ります故!」
コールマンと別れてデイビッドも岩場へ向かうと、トカゲの巣穴を探し始めた。
ロックリザードは乾燥した土地に住む大トカゲの総称で、数種類いるが、ここに居るのは通称大岩トカゲと呼ばれるもので、鋭い爪と牙を武器に獲物を襲って穴を掘って暮らしている。
尾を含めると3mはあり、図体の割に素早いためなかなが倒すのが厄介だ。
冬眠から目覚めたばかりで気が立っているこの時期、あまり相手にはしたくないが、課題というなら仕方がない。
(本当は冬眠前の肉のついた頃が一番旨いんだけどなぁ…)
新しい足跡を追って巣穴を見つけ、針金入りの縄を輪にして穴に掛けると、中に向かって石をいくつか投げ入れてみる。
すると勢い良く巨大な頭が飛び出してくるのですかさず縄を引くと首に輪が掛かる。
縄を引き絞ったら、暴れだす前に背中に飛び乗り即座に首筋を掻っ切ると頭は直ぐに絶命した。
しかし体の方はしばらく動いているので、岩に斜めに立てかけておくと勝手に血抜きができるため、しばしそのまま放って置く。
若い雄の個体は脱皮し立てのようで鱗がまだツヤツヤしている。
大岩トカゲは肉も革も需要があり、肝も骨も薬になるため素材としても優秀な獲物だ。
トカゲを担いで水場まで持って行くと、既に何人かの生徒達が来てそれぞれロックリザードを解体していた。
が、ただぶつ切りにして袋に詰めるだけで、あれでは直ぐに傷んで素材もダメになってしまう。
そもそも魔法でも放ったのか真っ黒に焦げていたり、切り傷でズタズタになっていたりで、デイビッドは思わず目を背けた。
腹も背中もなるべく傷つけないよう、腹鱗と背鱗の境に沿ってナイフを滑らせ、そこから手を入れ繊維に逆らわず肉と皮の間に指を差し入れていくと、つるりと剥けて頭から尻尾まで綺麗に剥がれる。
指先は切れ込みを入れて引っ張ると、手の形そのまま爪まで向けて気持ちがいい。
内臓を洗い出し今回は日持ちしないため直ぐに埋めてしまう。
と、ここでデイビッドの手が止まった。
(これは…まさか、ガーネットか…?)
トカゲの胃袋には胃石と呼ばれる消化を助けるための石が良く入っている。
長く入っていたものは丸く表面がつるつるになり、売り物になることもあるので取り出そうとしたところ、中から真っ赤なガーネットの原石が現れた。
角が取れて丸くなった天然のガーネットは、恐らくトカゲの掘った巣穴の中にあったのだろう。
もしかしたら鉱脈があるのかも知れない。
3つの胃石の内2つがガーネットという幸運くじを引いてしまい、デイビッドは少しだけこの仕事を引き受けて良かったと思っていた。
捌いた手足はスープの出汁に使い、肉は豪快に金網で炙って焼き目がついたら塩とスパイスを振りかける。
その辺りでそろそろ生徒達の様子を見に行くと、暴れるトカゲの背中に乗ったカインがロデオの様にしがみつき、仲間が追い込んでいる所だった。
「ナイフ落としたぁぁ!!」
「何やってんだよ!」
「縄!早く縄こっちに寄越せ!!」
「絶対離すなよ?!」
「頭狙え頭!!」
大騒ぎしながら大トカゲと奮闘する姿を、ハラハラしながらコールマンが見ている。
「結構上手くやってんな。」
「かなり大きな個体に当たってしまい、そろそろ助太刀するか悩んでおりまして…」
「大丈夫だろ。急所は分かってるから自分等で何とかするよ。」
デイビッドの言う通り、その後直ぐに1人が首後ろの急所に剣を一撃叩き込み、トカゲは動きを鈍らせた。
「まだ動いてるぅぅ!!」
「尻尾捕まえろ!!」
「このまま手足落としちまえ!」
わぁわぁ騒ぎながらようやく仕留めた大岩トカゲを前に、8人は歓声を上げた。
「倒せたぁーー!!」
「はぁはぁ…あーもうくたくただ!!」
「俺、尻尾で吹き飛ばされたから背中痛ぇ…」
「よぉ!よくやったな。あっちで手と顔拭いて来い。少し早いが、飯が出来てるぞ?!」
「やったぁ!!」
「すげぇなぁ!なんかして戻って来ると必ず飯があるの!」
「腹減ってすぐ食えるの、ありがてぇよな。」
そうまさに、任務を終え休息を求める隊員が即座に補給を行える環境は、騎士団としても理想的だ。
コールマンはこの演習が始まってからずっとそのことを考えていた。
始めデイビッドに期待したのは体術や剣術の指導であったが、今やそんなものどうでもいい。
隊全体の動きを見て、的確なタイミングで行われる栄養補給と休息、衛生管理と個々のフォロー。
何度も先行隊と中隊に顔を出していたコールマンは、明らかに生徒の疲労感が違う事に気が付いていた。
たった2日の行軍の内に、空腹を抱え足を引きずり体の痛みに耐える生徒の多いこと。
靴擦れすらまともに治療せず、上官の命に従いただただ動く屍の様な顔をした生徒達と比べ、カイン達はこの実習を楽しんでさえいる。
コールマンは思わぬ死角から一撃食らった気持ちで、トカゲの肉にかぶりついた。
新芽を摘むもの、全草使えるもの、花が要るもの、根が重要なもの、全て的確に集め最後に根茎ごと採取しないと移送に耐えられないものを丁寧に土ごと布に包み、カゴの底に降ろした。
「ほら、これでいいんだろ?!」
「手際いい~!」
「相変わらず見事だね。瞬時に判断付けて一番良いとこを的確に摘んでいくのに、植物へのダメージは最小限に抑えようとするの、そういうところ好きだなぁ。」
「この薬草の見分け方難しくないか?なにかコツとかあったら教えてくれないか!」
採取が終わり転移門まで戻って行く4人を送りながら、今度はコールマンと一緒に騎士科の生徒の指導をする。
「薬草採取中はなるべく離れて、できるだけ何を集めるのか目的を聞いておけ!?最悪、貴重な薬草を護衛が踏み潰してましたなんてことになるから気をつけろよ。」
「必ず2人以上で組み、1人は外、もう1人は対象の方に必ず向いている事!本来なら私語も発言すら許されない事もある。気配を消し邪魔にならないよう行動する事が求められるぞ!?」
「「はいっ!」」
後続隊が他の隊員達に混ざって任務に当たっている間に、デイビッドは焚き火台で米を焚き始めた。
洗った生米に乾燥野菜と干しキノコ、調味料と屑肉を加え、大きな鍋で炊いていく。
香ばしい匂いがして飯が炊き上がると、上に浮いて来ている材料と良く混ぜて、握り飯を作り出した。
大振りの握り飯がいくつも出来上がり、採取中に採ってきた大きな葉の上に並べられていく。
煮出すと甘みの出る野草といくつかの薬草で茶を沸かし、草を食むムスタの横でのんびり待っていると、笛の音がして各隊が任務を終えて解散してきた。
戻って来た生徒達が飯に飛びつこうとするのを防ぎ、手や顔を洗わせてから改めて一人前ずつ分けてやると、一斉にぱくつき出す。
「あ、コレうめー!」
「炒めたのと違うな。」
「手軽に食えて楽。」
「弁当代わりに持って行けねぇかな?」
「はぁ~…このお茶すっきりする。いつもあったかいの飲めるのありがてぇ~…」
中隊がこれから火を起こそうとしている中、後続隊は一足先に昼食を終え、草地で足を放り出し、腹ごなしに一休みしていた。
先行隊の支度が整い時間ギリギリになって、ついに一行は大トカゲのいる岩場へと向かい出した。
雑木が徐々になくなり、大きな岩がそこかしこにそびえる岩山には、遠目に岩肌に空いた穴がいくつも見える。
「これより各隊に別れ、ロックリザードの討伐を行う!!」「毒は無いが素早く尾の攻撃が厄介な上、ひと噛みで肉を食い千切られるぞ?気を抜けば命にかかわると思え!?」
「討伐は正規のものとして扱われる。後に書面での報告も必要とするので、ただ倒せば良いわけではないぞ?気を付けろ。」
引率者達はここで受け持ちの隊から離れ、余程のことがない限り監視に徹するそうだ。
デイビッドはというと手頃な岩場でムスタに餌をやりながら焚き火台に金網を用意して待機していた。
「大丈夫でしょうかね…」
「助言はしておいたから、ある程度は対処出来るだろ。それより、監視は任せていいですかね?俺もその辺見て来るんで。」
「お、おお?!お任せ下さい。彼等の安全は私が守ります故!」
コールマンと別れてデイビッドも岩場へ向かうと、トカゲの巣穴を探し始めた。
ロックリザードは乾燥した土地に住む大トカゲの総称で、数種類いるが、ここに居るのは通称大岩トカゲと呼ばれるもので、鋭い爪と牙を武器に獲物を襲って穴を掘って暮らしている。
尾を含めると3mはあり、図体の割に素早いためなかなが倒すのが厄介だ。
冬眠から目覚めたばかりで気が立っているこの時期、あまり相手にはしたくないが、課題というなら仕方がない。
(本当は冬眠前の肉のついた頃が一番旨いんだけどなぁ…)
新しい足跡を追って巣穴を見つけ、針金入りの縄を輪にして穴に掛けると、中に向かって石をいくつか投げ入れてみる。
すると勢い良く巨大な頭が飛び出してくるのですかさず縄を引くと首に輪が掛かる。
縄を引き絞ったら、暴れだす前に背中に飛び乗り即座に首筋を掻っ切ると頭は直ぐに絶命した。
しかし体の方はしばらく動いているので、岩に斜めに立てかけておくと勝手に血抜きができるため、しばしそのまま放って置く。
若い雄の個体は脱皮し立てのようで鱗がまだツヤツヤしている。
大岩トカゲは肉も革も需要があり、肝も骨も薬になるため素材としても優秀な獲物だ。
トカゲを担いで水場まで持って行くと、既に何人かの生徒達が来てそれぞれロックリザードを解体していた。
が、ただぶつ切りにして袋に詰めるだけで、あれでは直ぐに傷んで素材もダメになってしまう。
そもそも魔法でも放ったのか真っ黒に焦げていたり、切り傷でズタズタになっていたりで、デイビッドは思わず目を背けた。
腹も背中もなるべく傷つけないよう、腹鱗と背鱗の境に沿ってナイフを滑らせ、そこから手を入れ繊維に逆らわず肉と皮の間に指を差し入れていくと、つるりと剥けて頭から尻尾まで綺麗に剥がれる。
指先は切れ込みを入れて引っ張ると、手の形そのまま爪まで向けて気持ちがいい。
内臓を洗い出し今回は日持ちしないため直ぐに埋めてしまう。
と、ここでデイビッドの手が止まった。
(これは…まさか、ガーネットか…?)
トカゲの胃袋には胃石と呼ばれる消化を助けるための石が良く入っている。
長く入っていたものは丸く表面がつるつるになり、売り物になることもあるので取り出そうとしたところ、中から真っ赤なガーネットの原石が現れた。
角が取れて丸くなった天然のガーネットは、恐らくトカゲの掘った巣穴の中にあったのだろう。
もしかしたら鉱脈があるのかも知れない。
3つの胃石の内2つがガーネットという幸運くじを引いてしまい、デイビッドは少しだけこの仕事を引き受けて良かったと思っていた。
捌いた手足はスープの出汁に使い、肉は豪快に金網で炙って焼き目がついたら塩とスパイスを振りかける。
その辺りでそろそろ生徒達の様子を見に行くと、暴れるトカゲの背中に乗ったカインがロデオの様にしがみつき、仲間が追い込んでいる所だった。
「ナイフ落としたぁぁ!!」
「何やってんだよ!」
「縄!早く縄こっちに寄越せ!!」
「絶対離すなよ?!」
「頭狙え頭!!」
大騒ぎしながら大トカゲと奮闘する姿を、ハラハラしながらコールマンが見ている。
「結構上手くやってんな。」
「かなり大きな個体に当たってしまい、そろそろ助太刀するか悩んでおりまして…」
「大丈夫だろ。急所は分かってるから自分等で何とかするよ。」
デイビッドの言う通り、その後直ぐに1人が首後ろの急所に剣を一撃叩き込み、トカゲは動きを鈍らせた。
「まだ動いてるぅぅ!!」
「尻尾捕まえろ!!」
「このまま手足落としちまえ!」
わぁわぁ騒ぎながらようやく仕留めた大岩トカゲを前に、8人は歓声を上げた。
「倒せたぁーー!!」
「はぁはぁ…あーもうくたくただ!!」
「俺、尻尾で吹き飛ばされたから背中痛ぇ…」
「よぉ!よくやったな。あっちで手と顔拭いて来い。少し早いが、飯が出来てるぞ?!」
「やったぁ!!」
「すげぇなぁ!なんかして戻って来ると必ず飯があるの!」
「腹減ってすぐ食えるの、ありがてぇよな。」
そうまさに、任務を終え休息を求める隊員が即座に補給を行える環境は、騎士団としても理想的だ。
コールマンはこの演習が始まってからずっとそのことを考えていた。
始めデイビッドに期待したのは体術や剣術の指導であったが、今やそんなものどうでもいい。
隊全体の動きを見て、的確なタイミングで行われる栄養補給と休息、衛生管理と個々のフォロー。
何度も先行隊と中隊に顔を出していたコールマンは、明らかに生徒の疲労感が違う事に気が付いていた。
たった2日の行軍の内に、空腹を抱え足を引きずり体の痛みに耐える生徒の多いこと。
靴擦れすらまともに治療せず、上官の命に従いただただ動く屍の様な顔をした生徒達と比べ、カイン達はこの実習を楽しんでさえいる。
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◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
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