30 / 50
29.結末
しおりを挟む
いつものごとく2人きりの執務室に何回目かのレイノルドのため息が響く。
今回の件は軍部も一部関わっていたこともあり、煩雑な事後処理に追われているのは俺もこいつも変わらない。
終わったらしばらく休みをもぎ取る!と息巻いていたが、2人とも定期の休みすらまともに取れていない。
叩けば埃だらけのガリアス公爵家の家宅捜査に始まって、武器商人やら出入りの業者、さらに関係する貴族や文官たちを調べ上げている。
内容が内容だけに、数人の信頼できる部下に限定して、追加調査と過去資料の精査を含め、様々な処理にあたっていることも仕事量が膨大になっている要因でもある。
それ故に、一刻も早く片をつけたいという気持ちは一致している。
「にしてもさぁ、動機があんまにあんまりじゃない?」
「俺たちには分からない世界だな」
「いや、お前だって貴族なんだしって…、無理か。結局、要は、気に食わないからだなんて、我儘なクソガキかよ」
地方の弱小貴族の俺が、将軍までなったのが気にくわないから始まり、そこそこ邪魔や妨害工作も多かった。それはそれで、老害だと思い無視してきたが、それが気に食わなかったらしい。
さらに先日の褒賞としての伯爵の地位と、王族であるシェリルノーラとの結婚が、貴族として許せないというのが、公爵の動機といえば動機のようだった。戦も終わり、目障りだから潰してやるという。
軍部の改革で、長年裏で受け取っていた金が得られなくなったこともあるようだが。
そんなに金を溜め込んで何がしたいのか、俺には分からないが奴には奴の論理があるのだろう。例え、腐り切っていたとしても。
姑息な手や悪事にだけ頭が回る男だったようだ。今まで影でこそこそ動くことは得意なのか、意外と尻尾を出さなかった。
それがここに来て気が急いたのか、おおっぴらに動きすぎた。
南はガリアス公爵家の広大な領地もある。屋敷に浸入した男の南の訛りも、そちらの関係者だろう。
行方をくらませているが、残していった剣を分析させた結果、一部に南の領地でしか使われない鉱石が使われていた。
部下であるザイルは妹と母親をガリアス公爵の手の者に誘拐され、それを元に脅されていたらしい。俺の情報を流すだけで解放すると言われ、休みや耳にしたことを伝えていた。
それを元に遠乗の際も金を使い、野盗に襲わせたことが分かっている。
この時点で相談してくれていたらとは思うが、怪しい動きを少しでもしたら2人がどうなるか分からないと脅されれば仕方なかっただろう。しかし、上司として信頼されてなかったのは自分の責任でもある。
業を煮やした公爵は直接屋敷に忍び込み、俺に罪を擦りつけるための証拠を仕込みたかったようだ。
そのために警備の者たちを使えなくしたのもザイルだった。予定があるからと担当を交代し、その夜の警備に付いて隙を見て渡された薬を使った。この時も薬で動けなくさせるだけで、誰も危害は加えないと言われ、やむなく協力したと。
自分も薬の影響が出たが、正気になり状況が分かると自害しようとした。そこをレイノルドに阻まれ、縛りつけられていた。事情を聞いた後は、自害防止に見張りをつけていたが最近は家族の支えもあり落ち着いたようだった。
どんな事情があれ仲間を裏切った事は事実であり、規律違反の者をこのまま軍に置いておく訳にはいかない。処分は免れないが、時期を見て何かしら仕事を紹介するつもりでいる。
「これで愚か者たちを排除できれば、結果としてはまずまずだろ。とにかくさっさと片をつけるぞ」
「はいはい、分かってますよ。俺、ちょっと会計のほう行ってくる。帰りになんか食べ物持ってくるわ、そろそろ腹が限界」
紙の束を持って、うちであったかいごはん食べたーいと呟きながら去っていったレイノルドの背中を見送る。
息を吐き出し、俺も再度手元の資料に目を通し始めた。
今回の件は軍部も一部関わっていたこともあり、煩雑な事後処理に追われているのは俺もこいつも変わらない。
終わったらしばらく休みをもぎ取る!と息巻いていたが、2人とも定期の休みすらまともに取れていない。
叩けば埃だらけのガリアス公爵家の家宅捜査に始まって、武器商人やら出入りの業者、さらに関係する貴族や文官たちを調べ上げている。
内容が内容だけに、数人の信頼できる部下に限定して、追加調査と過去資料の精査を含め、様々な処理にあたっていることも仕事量が膨大になっている要因でもある。
それ故に、一刻も早く片をつけたいという気持ちは一致している。
「にしてもさぁ、動機があんまにあんまりじゃない?」
「俺たちには分からない世界だな」
「いや、お前だって貴族なんだしって…、無理か。結局、要は、気に食わないからだなんて、我儘なクソガキかよ」
地方の弱小貴族の俺が、将軍までなったのが気にくわないから始まり、そこそこ邪魔や妨害工作も多かった。それはそれで、老害だと思い無視してきたが、それが気に食わなかったらしい。
さらに先日の褒賞としての伯爵の地位と、王族であるシェリルノーラとの結婚が、貴族として許せないというのが、公爵の動機といえば動機のようだった。戦も終わり、目障りだから潰してやるという。
軍部の改革で、長年裏で受け取っていた金が得られなくなったこともあるようだが。
そんなに金を溜め込んで何がしたいのか、俺には分からないが奴には奴の論理があるのだろう。例え、腐り切っていたとしても。
姑息な手や悪事にだけ頭が回る男だったようだ。今まで影でこそこそ動くことは得意なのか、意外と尻尾を出さなかった。
それがここに来て気が急いたのか、おおっぴらに動きすぎた。
南はガリアス公爵家の広大な領地もある。屋敷に浸入した男の南の訛りも、そちらの関係者だろう。
行方をくらませているが、残していった剣を分析させた結果、一部に南の領地でしか使われない鉱石が使われていた。
部下であるザイルは妹と母親をガリアス公爵の手の者に誘拐され、それを元に脅されていたらしい。俺の情報を流すだけで解放すると言われ、休みや耳にしたことを伝えていた。
それを元に遠乗の際も金を使い、野盗に襲わせたことが分かっている。
この時点で相談してくれていたらとは思うが、怪しい動きを少しでもしたら2人がどうなるか分からないと脅されれば仕方なかっただろう。しかし、上司として信頼されてなかったのは自分の責任でもある。
業を煮やした公爵は直接屋敷に忍び込み、俺に罪を擦りつけるための証拠を仕込みたかったようだ。
そのために警備の者たちを使えなくしたのもザイルだった。予定があるからと担当を交代し、その夜の警備に付いて隙を見て渡された薬を使った。この時も薬で動けなくさせるだけで、誰も危害は加えないと言われ、やむなく協力したと。
自分も薬の影響が出たが、正気になり状況が分かると自害しようとした。そこをレイノルドに阻まれ、縛りつけられていた。事情を聞いた後は、自害防止に見張りをつけていたが最近は家族の支えもあり落ち着いたようだった。
どんな事情があれ仲間を裏切った事は事実であり、規律違反の者をこのまま軍に置いておく訳にはいかない。処分は免れないが、時期を見て何かしら仕事を紹介するつもりでいる。
「これで愚か者たちを排除できれば、結果としてはまずまずだろ。とにかくさっさと片をつけるぞ」
「はいはい、分かってますよ。俺、ちょっと会計のほう行ってくる。帰りになんか食べ物持ってくるわ、そろそろ腹が限界」
紙の束を持って、うちであったかいごはん食べたーいと呟きながら去っていったレイノルドの背中を見送る。
息を吐き出し、俺も再度手元の資料に目を通し始めた。
874
あなたにおすすめの小説
聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています
八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。
そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
ちっちゃな婚約者に婚約破棄されたので気が触れた振りをして近衛騎士に告白してみた
風
BL
第3王子の俺(5歳)を振ったのは同じく5歳の隣国のお姫様。
「だって、お義兄様の方がずっと素敵なんですもの!」
俺は彼女を応援しつつ、ここぞとばかりに片思いの相手、近衛騎士のナハトに告白するのだった……。
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り
結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。
そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。
冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。
愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。
禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。
契約結婚だけど大好きです!
泉あけの
BL
子爵令息のイヴ・ランヌは伯爵ベルナール・オルレイアンに恋をしている。
そんな中、子爵である父からオルレイアン伯爵から求婚書が届いていると言われた。
片思いをしていたイヴは憧れのベルナール様が求婚をしてくれたと大喜び。
しかしこの結婚は両家の利害が一致した契約結婚だった。
イヴは恋心が暴走してベルナール様に迷惑がかからないようにと距離を取ることに決めた。
......
「俺と一緒に散歩に行かないか、綺麗な花が庭園に咲いているんだ」
彼はそう言って僕に手を差し伸べてくれた。
「すみません。僕はこれから用事があるので」
本当はベルナール様の手を取ってしまいたい。でも我慢しなくちゃ。この想いに蓋をしなくては。
この結婚は契約だ。僕がどんなに彼を好きでも僕達が通じ合うことはないのだから。
※小説家になろうにも掲載しております
※直接的な表現ではありませんが、「初夜」という単語がたびたび登場します
【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
2/28 番外編を更新しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる