拾われた後は

なか

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42.ごめんなさい

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   広場の近くに軍の詰所があるらしいけど、僕はカイルさんに抱かれたまま、家に戻った。
   玄関先に皆が心配そうに集まっていた。僕の姿を見て、マリアさんもナターシャさんも卒倒しそうだった。

「心配かけて、ごめんなさい。」

「帰っきたんならいいのよ。カイル様、お医者様をお呼びしますか?」

「いや、一晩様子をみて必要なら来てもらう。マリア、部屋に手当てに必要なものを持って来てくれ。皆もありがとう。大丈夫だから今日はもう休んでくれ。」

   皆と玄関で別れた後、部屋に救急箱をマリアさんが持って来てくれた。カイルさんはずっと僕に何も言わない。勝手なことをして、迷惑かけて、怒っているのだろう。

「カイルさん、…ごめんなさい。助けてくれてありがとうございます。」

   カイルさんは無言で目を合わせてもくれない。こんなことは初めてで、どうしたらいいのか分からない。
   ぽとりと涙が一粒落ちた。

   ぎょっとしたようにカイルさんが僕を見た。ぽたぽたと、膝の上で握った手の甲に涙が落ちる。
   カイルさんが慌ててソファに座る僕の前に跪き、両手を取った。
   
「ハルカ、泣かないでくれ。謝らなくてもいい。怒ってるんじゃないんだ。」

「ごっ、ごめんな、さい。」

  自分が悪いのに泣くなんて最低だと思うけど、涙が止まらない。
 カイルさんが伸び上がって、僕の流れる涙を唇でそっと拭った。両目元にも優しく口付けられる。

「ハルカ、お前がいなくなったと知らせを受けた時、あの場所で男にのしかかられているお前を見た時、傷付いたお前の姿を見た時、俺がどんな気持ちだったか分かるか。
   お前を失うかもしれないと思った時、目の前が真っ暗になった。怖かったよ。」

   真っ直ぐな深い青色の目で僕を見る。胸が苦しい。

「ハルカ、お前が好きだ。お前を失いたくない。」

「えっ……。」

   びっくりして涙が止まった。

「迷い人とか、保護とか関係ない。ハルカを愛しく思う。そばにいてほしい。」

   僕の頭の中で、カイルさんの言葉がじわじわと意味を理解していく。また涙が流れる。
   
「僕、すごく怖くて、カイルさんに会いたくて。逃げなきゃって。そしたらカイルさんが来てくれて、嬉しくてっ。
   カイルさんは、王様の命令だから、責任があるから、迷い人の僕のこと、優しくしてくれてるのに、僕が、カイルさんを好で。でも、でも、僕はっ、これ以上カイルさんに迷惑かけちゃいけないって思ってて。」

   思わずソファから下りて、カイルさんの胸にしがみつく。泣いてるせいで、うまく言葉が紡げない。頭に浮かぶ言葉をそのまま、なんとか口に出す。

「そんなこと考えてたのか。気づいてあげられなくてごめんな。」

   そっと背中を撫でてくれる。

「今日は怖かったな、よく頑張った。」

   そのいつもの手つきにホッとして、また涙があふれる。しばらくすると、少しずつ気持ちが落ち着いてきた。名前を呼ばれて、顔を上げる。きっと涙でぐちゃぐちゃだ。

「俺のこと、好きだと言ったな。」

   カイルさんは初めて見る幸せそうな笑顔を僕にそう言った。

「えっっ。」

   言った?言ってないよね?いや、言ったかもしれない。


   
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