拾われた後は

なか

文字の大きさ
23 / 53

23.馬車に乗りました

しおりを挟む
   1ヶ月近く経った。以前言われていたように、一度は王宮に行かなくてはいけないらしい。

   この世界に来て初めての外出だ。丈の長い上着を着て、フードを目深に被る。
   優しい人たちに囲まれていたけど、僕は隠さなきゃいけない、異質な存在なんだと改めて突きつけられた気分がした。


   言葉少なに馬車で王宮に向かう。慣れない乗り物と緊張からか、気分が悪い。

「ハルカ、もう少しだが、気分が悪いんじゃないのか?顔色が良くない。今日はやめてもらうおうか。」

   並んで座っていたカイルさんが、そっと頬を撫でてくれる。そう簡単に偉い人との予定をキャンセルできないはずだ。

「大丈夫です。緊張してるだけです。」

  カイルさんは何も言わず、僕を引き寄せて膝に横坐りにさせた。
   体格差があるから、カイルさんの胸にすっぽりと僕は収まってしまう。軽く抱き込み、背中をゆっくりしたリズムでぽんんぽんと叩いてくれる。

   小さな子供みたいだ。
   今は着くまでだけと、僕は素直にその胸に甘えた。


   ほどなくして馬車が止まった。カイルさんの胸に顔を埋めていたので、外の様子が分からない。

   顔を上げるとカイルさんが安心させるように、フードをずらして額にキスを落とす。留め具を確認され、さらにフードを目深に被らされる。
   
   一旦僕を膝から降ろしたカイルさんが、馬車の外から僕に手を伸ばしてくれる。
   僕はその手を取ると、ふわりと抱き上げられた。そのまま大きくて豪華な建物の中に入って行く。


   案内する人に続いて、しばらく広い廊下を歩くと、ある部屋に通された。ソファに僕を抱いたまま、カイルさんが腰を下ろす。膝に乗った状態の僕の腰に手を回し、片手でフードを取ってくれた。

「できるだけ人目につかずに、連れてきたかったんだ。窮屈な思いをさせてすまない。」

「大丈夫です。ありがとうございます。」

   少し周りを見渡すと、ヨーロッパのお城みたいな部屋だった。そこまで煌びやかさはないけれど、とても豪華だ。

「陛下、王様のことだが、怖がらなくて大丈夫だ。聞かれたことには正直に答えてくれていいからな。」

「はい。頑張ります。」

   緊張している僕より、カイルさんの方が心配そうな顔をしている。
   すぐ脇にあった水差しから片手で器用に水を注いで、渡してくれる。冷たい水を飲んで体を預けていると、気分も大分回復した。


   しばらくしてドアがノックされて開くと、どことなくカイルさんに似た、威厳のある黒髪の男性が入ってきた。
   カイルさんと同じような軍服を着ているが、装飾が少し多い。

「陛下がお待ちだ。行くぞ。」

   僕の方をちらりと見て、カイルさんを促した。膝に乗ってるのを見られてしまった。慌てて膝から降りて、フードを被り直した。

「大丈夫か?」

   心配ですという顔のカイルさんにしっかり頷く。そっと笑って手を繋いでくれた。

   
   
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

追放された味見係、【神の舌】で冷徹皇帝と聖獣の胃袋を掴んで溺愛される

水凪しおん
BL
「無能」と罵られ、故郷の王宮を追放された「味見係」のリオ。 行き場を失った彼を拾ったのは、氷のような美貌を持つ隣国の冷徹皇帝アレスだった。 「聖獣に何か食わせろ」という無理難題に対し、リオが作ったのは素朴な野菜スープ。しかしその料理には、食べた者を癒やす伝説のスキル【神の舌】の力が宿っていた! 聖獣を元気にし、皇帝の凍てついた心をも溶かしていくリオ。 「君は俺の宝だ」 冷酷だと思われていた皇帝からの、不器用で真っ直ぐな溺愛。 これは、捨てられた料理人が温かいご飯で居場所を作り、最高にハッピーになる物語。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

処理中です...