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24.王様に会いました

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   その将軍だという方に先導されて、大きな扉から入ると正面奥、少し高くなっている場所に1人の男性が座っていた。

   将軍さんは右脇に控えるように立ち、カイルさんと僕は正面に進む。
   立ち止まると隣でカイルさんが右手を胸に当て、頭を下げた。僕も頭を下げる。


「今日はわざわざ来てくれてすまないね。略式の場だから畏まらないでいいよ。顔を上げて。迷い人よ、上着を取って、姿を見せてくれないか。」

   思っていたよりも柔らかな声が聞こえて、2人で頭を上げる。

   繋いでいた手を離して、上着の留金を外そうとするがうまくいかない。
   すっとカイルさんが僕の前に立ち、留金を外してマントみたいな上着を脱がせてくれた。乱れた髪を手櫛で梳いて整えてくれる。

「ほぉ。」

   王様が面白そうな声を出した。王様は金に近い茶色の髪に青い瞳で、40代くらいかな。整っているが優しい印象だ。しかし、一般の人とは違うオーラがあるような気がした。

「相川遥です。ハルカが名前です。はじめまして。」

   どう言えばいいか分からないから、簡単に挨拶をした。

「事情は聞いているよ。大変な目にあったね。私はこの国を治めているイザードだ。
   うーん、耳が違うくらいで、見た感じはあまり変わらないのかな。尻尾はないんだよね。」

「はい。」

「迷い人とはいえ、この国に現れたからには私の国民と同じだ。君には出来る限りの支援をする。
   過去の迷い人は異世界の知識や技術をもたらしてくれたらしいけど、君はまだ子どもだ。今後どうするかは急いで決めなくていいからね。
   申し訳ないが、君を元の世界に戻す術を私たちは持っていない。せめて、この国で幸せに生活してくれたらと思っているよ。」

   ゆっくりそう言って、王様はにっこりしてくれた。僕の緊張を解そうとしてしてくれるのが分かる。

「成人するまでは、勉強したりこの世界を知るのに勤しんだらいい。王宮で暮らしてもいいし、このまま大佐にお願いするのも君次第だよ。まだ時間はたくさんあるから、ゆっくり考えて、大きくなったらいいよ。」

「僕、何にもお役に立てないのに……、申し訳ありません。」

「小さい子がそんなこと気にしなくていいんだよ。何か困ってることはない?聞いておきたいこととか。」

「困っていることはありません。とてもよくしてもらってます。
   あの、ひとつだけお聞きしてもよろしいですか?」

   話の中で気になることがあり、勇気を振り絞った。
  


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