使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん

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「秘密……?」
お姉様は怪訝な顔をした。演技ではないようだ。
「何の事ですの?」 「私が追放された本当の理由よ。ただの厄介払いじゃない。あの男……謎の術師が言っていたわ。私は『人間であり人間でない』と。お姉様なら、家の記録や帳簿から何か気づいているんじゃないかと思って」
お姉様の表情が凍りついた。 それは「知らない」顔ではない。「触れてはいけないものに触れた」顔だ。
「……アメリス。あなた、その話を誰から……」 「答えて。私は何者なの?」
お姉様は唇を噛み、視線を床に落とした。その手は微かに震えている。
「……帳簿には、奇妙な出費の記録がありましたわ。あなたが生まれた直後から、毎年莫大な金額が『研究費』として計上されていたの。宛先は不明。ただ、備考欄に一度だけ記述があったわ」
お姉様は声を潜め、私に耳打ちするように言った。
「『器(うつわ)の維持費』と」
背筋に冷たいものが走った。器? 私が?
「それ以上のことは知りませんわ。知ろうとすれば、母様に消されると本能が告げていましたから。……でも、あなたがそれに気づいたというなら、事情は変わりますわね」
お姉様は立ち上がり、私を見下ろした。
「いいでしょう、アメリス。あなたの提案に乗りましょう。ただし、勘違いしないでちょうだい。私はあくまで『ロナデシアの利益』のために動くだけです。あなたのためではありませんわ」 「ええ、わかっているわ。お姉様らしいわね」
私は手を差し出した。お姉様は一瞬躊躇ったが、その手を取った。 冷たい手だったが、強く握り返してきた。
「交渉成立ね。……それとアメリス、一つ忠告しておきますわ」 「何?」 「その男装、やめておきなさい。……見ていて、調子が狂いますわ」
お姉様は顔を背け、赤くなった耳を隠すように早足で部屋を出て行った。 扉が閉まる音と共に、私はソファに崩れ落ちた。
「はぁ~~~~! 死ぬかと思った……!」
どっと疲れが出た。でも、成功だ。 これでようやく、反撃の狼煙を上げることができる。
待っていて、ヨーデル、アルド、ロストス、ルネ、そしてローナ。 そして覚悟して、お父様、お母様、そしてあの男。
私の物語は、ここからが本当の始まりなのだから!
私は再びタキシードの上着を羽織ると、颯爽と部屋を後にした。 その足取りは、来る時よりもずっと軽く、力強いものになっていた。
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