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ソラリスの逃亡 ※
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聖女ソラリスは、ヴァイオレット王女の双子の姉だった。
彼女には、母アストリアと同じ力が宿っている。それは単に優秀な聖女だからというだけではない。
アストリアやアキラと同じく、特別な存在だったのだ。
このゲーム世界の人間側は、二柱の神――エリス神とアイリス神を信奉している。
その神々に、直接愛された者たち。
アストリアはフェニックスやアリア、アルマダらに成長力を与えたように、ソラリスもまた数人にその力を与えていた。
彼女の付き人たちがまさにその者たちである。
一方、ヴァイオレットにはその力が無かった。いや、どんな魔物を倒しても成長できず、誰ともパーティを組むことすらできなかった。
「ヴァイオレット、私の護衛は私が育てるから、いらないわ」
「でも……」
「見えてるんでしょ? 私の力も」
「ええ……ごめんなさい」
ソラリスは幼い頃から魔物の森に入り、冒険者レベルを上げることに決めていた。
最初はフェニックスがついてきたが、途中からは新たに選んだ執事とメイド二人だけを連れて森に潜った。
「魔法防御、物理防御、治癒魔法、光魔法……」
大人になってから冒険者レベルを上げたアストリアとは違い、彼女は本物の若き天才となっていた。
もちろん、そんなことは限られた者にしか知られていない。
捨てられた宮殿であったのが幸いしたとも言える。
もし彼女の実力が知られれば、手に入れようとどれだけの勢力が押し寄せるか、想像に難くない。
「街道を行くと、あの馬鹿王子に会いそうね」
「それなら、いつものように!」メイドの一人が答えた。
執事のカイエンはフェニックスに憧れ、メイドのルノとピノはノワールとアリアに憧れ、ともにアストリアに拾われた子たちだった。
「捕まえてきました!」
大きなホワイトタイガーだった。
「エレファントが良かったのに」
「我儘言わないの。この子が可哀想よ!」魔獣導師のルノが虎の頭を撫でながら言う。
「そういうつもりじゃないのよ。怪我は治してあげるから、ちゃんと働いてね」
ソラリスはホワイトタイガーの体に触れるだけで、傷は一つ残らず消え、緑の膜が包み込んだ。
「これで無敵よ! あなたも強くなれる。頑張ってどんどん倒していきましょう!」
ホワイトタイガーの背にルノとソラリス。カイエンとピノは走って追いかける。
「我慢せずに乗ってもらえばいいのに!」
「あいつらは、こうして後でソラリス様に褒めてほしいのと甘えたいのよ」
「じゃあ、カイエン、ピノ、勝負よ! よーい、スタート!」
だがホワイトタイガーは走り出そうとしない。
「ハンデが必要だからね」
ソラリスは笑った。
彼女はアストリアの若い頃の姿に似ているとフェニックスがよく言っていた。
だが性格はもっと似ている。ヴァイオレットの方がアストリアに似ているように見えるが、実は真逆だ。
先の見えるヴァイオレットは心配性だからだ。
アストリアだって子供の頃は大人しく見せていた。そう、今のソラリスのように。
「じゃあ、行くわよ! そうだ、全員、物理防御、魔力防御、自動治癒よ! 経験値を稼ぎなさい!」
その一言で、パーティ全員が無敵となった。
※※※
時雨の隠れ家では、二人が画面に釘付けになっている。
「え? ぜんぜんお淑やかじゃないよ!」
「まるで山吹みたいね!」
「どこがよ! そろそろ三分経つわよ」
カップラーメンの蓋を開け、二人は食べ始める。まるでレース中継に夢中になっているかのように。
「てか、どんどん減ってない?借金?」
「それにアクティブポイントも、マイナスがどんどん減ってる」
まるで無敵モードのカートのように、魔物を吹き飛ばし進んでいる。
一体どこまで進むつもりなのだろう。
だがそう言った矢先、ソラリスが叫んだ。
「進軍おしまい。疲れたから」
「予定の半分も来てませんよぉ」
「眠いから無理。寝よう」
それだけの会話で、全てを理解したカイエンたちは宿泊に適した場所を探す。
いつの間にかテントやテーブルなどが設置され、食料も用意されていた。
それらはまるで当たり前のように準備されている。
やがて美味しそうな料理と高級なワインを楽しみ、全員が眠りに落ちた。
「不思議ね。まるで逃亡者の悲壮感がない」
「うん、普通にキャンプを楽しんでる」
「誰も警備に立ってないよ?」
「本当だ。襲われないのかな?」
真っ暗で動きのなくなった画面に、つまらなくなった二人も仮眠をとることにした。
山吹は兄と兄の友達と行ったキャンプを思い出して夢を見ていた。
「起きて! 早く!」
「もっとゆっくりしようよ、時雨」
どうせ今日も一日、自宅警備で画面を見るだけなのだ。
あまりの強い揺すりに、仕方なく目を覚ました。
画面を見て驚いた。
彼らのキャンプ場の周囲には、魔物たちの死骸が山ほど転がっている。
「え? 何が起きたの?」
それはソラリスの魔法だった。
魔物が結界に触れると倒れるほどの強い罠。
テントからソラリスが一人で起き上がり、こちらへ歩いてくるように見えた。
「おはようございます!」
誰に言っているのだろう、私たちに向けてだろうか?
アクティブポイントがいつの間にかプラスに変わっている。
昨夜からの魔物虐殺の成果だ。
思わず私は時雨と頷き合い、マイクを入れた。
「おはよう、ソラリス」
彼女には、母アストリアと同じ力が宿っている。それは単に優秀な聖女だからというだけではない。
アストリアやアキラと同じく、特別な存在だったのだ。
このゲーム世界の人間側は、二柱の神――エリス神とアイリス神を信奉している。
その神々に、直接愛された者たち。
アストリアはフェニックスやアリア、アルマダらに成長力を与えたように、ソラリスもまた数人にその力を与えていた。
彼女の付き人たちがまさにその者たちである。
一方、ヴァイオレットにはその力が無かった。いや、どんな魔物を倒しても成長できず、誰ともパーティを組むことすらできなかった。
「ヴァイオレット、私の護衛は私が育てるから、いらないわ」
「でも……」
「見えてるんでしょ? 私の力も」
「ええ……ごめんなさい」
ソラリスは幼い頃から魔物の森に入り、冒険者レベルを上げることに決めていた。
最初はフェニックスがついてきたが、途中からは新たに選んだ執事とメイド二人だけを連れて森に潜った。
「魔法防御、物理防御、治癒魔法、光魔法……」
大人になってから冒険者レベルを上げたアストリアとは違い、彼女は本物の若き天才となっていた。
もちろん、そんなことは限られた者にしか知られていない。
捨てられた宮殿であったのが幸いしたとも言える。
もし彼女の実力が知られれば、手に入れようとどれだけの勢力が押し寄せるか、想像に難くない。
「街道を行くと、あの馬鹿王子に会いそうね」
「それなら、いつものように!」メイドの一人が答えた。
執事のカイエンはフェニックスに憧れ、メイドのルノとピノはノワールとアリアに憧れ、ともにアストリアに拾われた子たちだった。
「捕まえてきました!」
大きなホワイトタイガーだった。
「エレファントが良かったのに」
「我儘言わないの。この子が可哀想よ!」魔獣導師のルノが虎の頭を撫でながら言う。
「そういうつもりじゃないのよ。怪我は治してあげるから、ちゃんと働いてね」
ソラリスはホワイトタイガーの体に触れるだけで、傷は一つ残らず消え、緑の膜が包み込んだ。
「これで無敵よ! あなたも強くなれる。頑張ってどんどん倒していきましょう!」
ホワイトタイガーの背にルノとソラリス。カイエンとピノは走って追いかける。
「我慢せずに乗ってもらえばいいのに!」
「あいつらは、こうして後でソラリス様に褒めてほしいのと甘えたいのよ」
「じゃあ、カイエン、ピノ、勝負よ! よーい、スタート!」
だがホワイトタイガーは走り出そうとしない。
「ハンデが必要だからね」
ソラリスは笑った。
彼女はアストリアの若い頃の姿に似ているとフェニックスがよく言っていた。
だが性格はもっと似ている。ヴァイオレットの方がアストリアに似ているように見えるが、実は真逆だ。
先の見えるヴァイオレットは心配性だからだ。
アストリアだって子供の頃は大人しく見せていた。そう、今のソラリスのように。
「じゃあ、行くわよ! そうだ、全員、物理防御、魔力防御、自動治癒よ! 経験値を稼ぎなさい!」
その一言で、パーティ全員が無敵となった。
※※※
時雨の隠れ家では、二人が画面に釘付けになっている。
「え? ぜんぜんお淑やかじゃないよ!」
「まるで山吹みたいね!」
「どこがよ! そろそろ三分経つわよ」
カップラーメンの蓋を開け、二人は食べ始める。まるでレース中継に夢中になっているかのように。
「てか、どんどん減ってない?借金?」
「それにアクティブポイントも、マイナスがどんどん減ってる」
まるで無敵モードのカートのように、魔物を吹き飛ばし進んでいる。
一体どこまで進むつもりなのだろう。
だがそう言った矢先、ソラリスが叫んだ。
「進軍おしまい。疲れたから」
「予定の半分も来てませんよぉ」
「眠いから無理。寝よう」
それだけの会話で、全てを理解したカイエンたちは宿泊に適した場所を探す。
いつの間にかテントやテーブルなどが設置され、食料も用意されていた。
それらはまるで当たり前のように準備されている。
やがて美味しそうな料理と高級なワインを楽しみ、全員が眠りに落ちた。
「不思議ね。まるで逃亡者の悲壮感がない」
「うん、普通にキャンプを楽しんでる」
「誰も警備に立ってないよ?」
「本当だ。襲われないのかな?」
真っ暗で動きのなくなった画面に、つまらなくなった二人も仮眠をとることにした。
山吹は兄と兄の友達と行ったキャンプを思い出して夢を見ていた。
「起きて! 早く!」
「もっとゆっくりしようよ、時雨」
どうせ今日も一日、自宅警備で画面を見るだけなのだ。
あまりの強い揺すりに、仕方なく目を覚ました。
画面を見て驚いた。
彼らのキャンプ場の周囲には、魔物たちの死骸が山ほど転がっている。
「え? 何が起きたの?」
それはソラリスの魔法だった。
魔物が結界に触れると倒れるほどの強い罠。
テントからソラリスが一人で起き上がり、こちらへ歩いてくるように見えた。
「おはようございます!」
誰に言っているのだろう、私たちに向けてだろうか?
アクティブポイントがいつの間にかプラスに変わっている。
昨夜からの魔物虐殺の成果だ。
思わず私は時雨と頷き合い、マイクを入れた。
「おはよう、ソラリス」
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