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蠱惑の魔剣
依頼
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「ドラガンさんの頼みなら、多くの恩がありますし、断るわけにはいきませんが……」
「恩なんてないよ。サガンとは同じパーティの冒険者だったから、奴の不始末はパーティ仲間の俺の責任でもある。すまなかった」
「何を言うんですか!」
「詳しい話をしたい。場所を変えよう。ついてきてくれ」
ドラガンはノルドを連れて、ギルドの応接室に案内した。ノルドが席に着くと、ドラガンは棚からウイスキーを取り出し、一気にあおった。
「お前も飲むか?」とドラガンは机の上にコップを置いた。
「いえ、遠慮します」ノルドは即座に返答した。ドラガンはその反応を予想していたかのように、微笑みながら水を注いで話し始めた。
「誰にも、もちろんミミにも話していないのだが、その貴族というのが、公国の第三王子でな。公国は、小国だが面倒な国でな」
「はぁ……」
「事件で明らかになったのは、お前の清廉さだ。今回、荷運び人で再び問題が起きれば、冒険者ギルドも、シシルナ島も大変なことになる。だから、島主様の了解を得て、お前を指名した」
ドラガンが報告したら、島主のガレアは、大反対していたが無理やり捩じ込んだ。
「そうでしか」
「しかし、冒険者たちから仕事の予約もいただいていますし」ノルドは心の中で葛藤していた。依頼の重要性と、自身の責任感の間で揺れている。
「知ってるよ。その冒険者たちには、慰謝料を払うことに決まった。奴らも、十分に満足する額だ。もちろん、ノルドに支払う報酬も期待していてくれ」
「わかりました。一度、その冒険者に会って話をしてもよいですか?」ノルドは依頼を受ける際、必ず依頼主と話をすることにしている。これは、仕事を始めた2年前から変わらぬルーチンだった。同じ仕事を受ける常連のパーティでも、同様だ。
「もちろんだ。ラゼル王子一行は、昨日着いて、今日は島主主催の歓迎会で、島都の港町にいる。迷宮町に来るのは早くて明日以降だろうな」
「そうですか。貴族の冒険者で、歓迎会とは珍しいですね」
「ああ、身分を隠す奴らはほとんどだからな。そんな奴らは堅苦しいのは嫌うし。実は俺も歓迎会に呼ばれている。どんな奴か、見てくるよ」
そう言うと、ドラガンは「準備をする」と言って出て行った。
※
冒険者の酒場に顔を出すと、昼間から酒を飲んでいる冒険者たちが多くいた。
「ノルド、お前、貴族様の荷物持ちだってな」すでにその話で酒場は持ちきりだった。シシルナ島の冒険者たちは、世界各地から絶えず新しい者が集まってくる。
「断れませんでした」
「そうだろうよ。お前が女でなくて良かったな」冒険者たちの甲高い笑い声が響く。どうせ碌でもない噂話でもしているのだろう。
「ところで、アレンさんは知りませんか?」ノルドは周囲を見回しながら尋ねた。
「アレンさんなら、新しく来た田舎者のパーティと出かけているよ」
「そうですか。ありがとう」アレンのいる場所は訓練所か、近くの魔物の森、あるいはダンジョンの一階層あたりだろう。ノルドは、アレンに仕事のキャンセルの件で謝罪したかっただけでなく、相談もしたかった。
酒場を出ると、前からひょこっと散歩を終えたヴァルが現れた。
「ヴァル、アレンのところに連れて行って」
「ワオーン」
ヴァルの進んだ先はダンジョンだった。入口の守衛の一人が、ノルドに声をかける。
「今日はどうした?」暇を持て余している守衛たちが、一斉にノルドを見る。荷運び人が一人で来るのは珍しいことだ。
「アレンさんに会いに来ました。来てますよね?」ノルドは入場料の一金貨を守衛に手渡した。安くない金額だ。
「ああ、アレンさんなら、新しく来た冒険者たちと一緒に潜って行ったよ」守衛がダンジョンの入口を開け、ノルドとヴァルを中に入れる。
ダンジョンは、人工的に作られた数十段の階段を降りて、地下1階から始まる。階段を降りる途中やダンジョン内の至る所には、照明器具として魔道具が取り付けられている。
シシルナ島の島主が大金を投じて設営管理しているもので、入場料の一部はその維持費に充てられている。
ヴァルが「ついてこい」と言わんばかりの表情で目標に向かって走り始めた。照明のない脇道を通り、最短ルートを進む。ノルドは獣人族の血が入っているため夜目が利く。
さらに聴覚も優れており、状況に応じた行動ができる。しかし、この能力はあまり知られたくないため、ノルドは念のために魔法を使うことにした。
「ライト」基本的な生活魔法で、光の精霊を召喚する。蝋燭のような淡い光が道を照らす。
「ノルド、なぜ私を呼ばないの?」突然、
ビュアンが羽を激しく揺らしながら怒りの声で現れた。彼女は風と水の精霊で、光の上位精霊の子供らしい。
「だって、君を道案内に使うのは申し訳ないよ」
「ふん、私がやるわ! お前、消えなさい!」ビュアンが言うと、光の精霊は瞬く間に消え、代わりに夏の真昼のような眩しい光が道を照らした。
「ビュアン、さすがだね。でも、もう少し暗い方が助かるんだけど」
「あ、そうね。ノルドには明るすぎるわね」ビュアンが調整してくれた光は少し抑えられたものの、それでも遠くまで届く明るさだった。
主要道に抜けると、戦いの音が響いてきた。
「恩なんてないよ。サガンとは同じパーティの冒険者だったから、奴の不始末はパーティ仲間の俺の責任でもある。すまなかった」
「何を言うんですか!」
「詳しい話をしたい。場所を変えよう。ついてきてくれ」
ドラガンはノルドを連れて、ギルドの応接室に案内した。ノルドが席に着くと、ドラガンは棚からウイスキーを取り出し、一気にあおった。
「お前も飲むか?」とドラガンは机の上にコップを置いた。
「いえ、遠慮します」ノルドは即座に返答した。ドラガンはその反応を予想していたかのように、微笑みながら水を注いで話し始めた。
「誰にも、もちろんミミにも話していないのだが、その貴族というのが、公国の第三王子でな。公国は、小国だが面倒な国でな」
「はぁ……」
「事件で明らかになったのは、お前の清廉さだ。今回、荷運び人で再び問題が起きれば、冒険者ギルドも、シシルナ島も大変なことになる。だから、島主様の了解を得て、お前を指名した」
ドラガンが報告したら、島主のガレアは、大反対していたが無理やり捩じ込んだ。
「そうでしか」
「しかし、冒険者たちから仕事の予約もいただいていますし」ノルドは心の中で葛藤していた。依頼の重要性と、自身の責任感の間で揺れている。
「知ってるよ。その冒険者たちには、慰謝料を払うことに決まった。奴らも、十分に満足する額だ。もちろん、ノルドに支払う報酬も期待していてくれ」
「わかりました。一度、その冒険者に会って話をしてもよいですか?」ノルドは依頼を受ける際、必ず依頼主と話をすることにしている。これは、仕事を始めた2年前から変わらぬルーチンだった。同じ仕事を受ける常連のパーティでも、同様だ。
「もちろんだ。ラゼル王子一行は、昨日着いて、今日は島主主催の歓迎会で、島都の港町にいる。迷宮町に来るのは早くて明日以降だろうな」
「そうですか。貴族の冒険者で、歓迎会とは珍しいですね」
「ああ、身分を隠す奴らはほとんどだからな。そんな奴らは堅苦しいのは嫌うし。実は俺も歓迎会に呼ばれている。どんな奴か、見てくるよ」
そう言うと、ドラガンは「準備をする」と言って出て行った。
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冒険者の酒場に顔を出すと、昼間から酒を飲んでいる冒険者たちが多くいた。
「ノルド、お前、貴族様の荷物持ちだってな」すでにその話で酒場は持ちきりだった。シシルナ島の冒険者たちは、世界各地から絶えず新しい者が集まってくる。
「断れませんでした」
「そうだろうよ。お前が女でなくて良かったな」冒険者たちの甲高い笑い声が響く。どうせ碌でもない噂話でもしているのだろう。
「ところで、アレンさんは知りませんか?」ノルドは周囲を見回しながら尋ねた。
「アレンさんなら、新しく来た田舎者のパーティと出かけているよ」
「そうですか。ありがとう」アレンのいる場所は訓練所か、近くの魔物の森、あるいはダンジョンの一階層あたりだろう。ノルドは、アレンに仕事のキャンセルの件で謝罪したかっただけでなく、相談もしたかった。
酒場を出ると、前からひょこっと散歩を終えたヴァルが現れた。
「ヴァル、アレンのところに連れて行って」
「ワオーン」
ヴァルの進んだ先はダンジョンだった。入口の守衛の一人が、ノルドに声をかける。
「今日はどうした?」暇を持て余している守衛たちが、一斉にノルドを見る。荷運び人が一人で来るのは珍しいことだ。
「アレンさんに会いに来ました。来てますよね?」ノルドは入場料の一金貨を守衛に手渡した。安くない金額だ。
「ああ、アレンさんなら、新しく来た冒険者たちと一緒に潜って行ったよ」守衛がダンジョンの入口を開け、ノルドとヴァルを中に入れる。
ダンジョンは、人工的に作られた数十段の階段を降りて、地下1階から始まる。階段を降りる途中やダンジョン内の至る所には、照明器具として魔道具が取り付けられている。
シシルナ島の島主が大金を投じて設営管理しているもので、入場料の一部はその維持費に充てられている。
ヴァルが「ついてこい」と言わんばかりの表情で目標に向かって走り始めた。照明のない脇道を通り、最短ルートを進む。ノルドは獣人族の血が入っているため夜目が利く。
さらに聴覚も優れており、状況に応じた行動ができる。しかし、この能力はあまり知られたくないため、ノルドは念のために魔法を使うことにした。
「ライト」基本的な生活魔法で、光の精霊を召喚する。蝋燭のような淡い光が道を照らす。
「ノルド、なぜ私を呼ばないの?」突然、
ビュアンが羽を激しく揺らしながら怒りの声で現れた。彼女は風と水の精霊で、光の上位精霊の子供らしい。
「だって、君を道案内に使うのは申し訳ないよ」
「ふん、私がやるわ! お前、消えなさい!」ビュアンが言うと、光の精霊は瞬く間に消え、代わりに夏の真昼のような眩しい光が道を照らした。
「ビュアン、さすがだね。でも、もう少し暗い方が助かるんだけど」
「あ、そうね。ノルドには明るすぎるわね」ビュアンが調整してくれた光は少し抑えられたものの、それでも遠くまで届く明るさだった。
主要道に抜けると、戦いの音が響いてきた。
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