22 / 27
21.水は方円の器に従う
しおりを挟む
窮鼠猫を噛む。
そんなことすら、許される状況ではないジェイドは一人緊迫状態にあった。
「ジェイド王子、冷静になってくれますか?」
未だ剣の柄から手を離せないでいるジェイドに対して、マハラジャはいつものように穏やかに話しかける。優位な立場になったといっても、驕ることなく人当たりがいいのは、厳しい情勢の中でも国民が自分を信頼し続けてくれたから人に対して感謝の念を持っていられるからなのかもしれない。逆に言えば、そんな彼だったからこそ国民はマハラジャを信頼したのかもしれない。
それに対して、ジェイドの落ちぶれぶりは激しかった。一度傾いた国や王家に対して、逃げられる貴族や知識人は王家を見限って国外に逃げてしまったし、豊かな暮らしが当たり前になり、少し雨が続くだけでもすぐにミシェルに嫌味を言っていたような国民たちは我慢することなど知らず、蓄えても来なかったので、日照りにすぐにしびれを切らして、ジェイドが待てと言っても、我慢できず各地で暴動が起きていた。
「困っているのであれば、助力いたしましょう。といっても、10倍は無理ですが・・・ね」
「ぐぬぬぬぬぬっ」
マハラジャは場を和ませようとして、にこっと笑った。でも、ジェイドにとってはマハラジャの善意は悪意にしか感じず、屈辱でしかなかった。
「ミシェルを・・・返せっ」
ジェイドは歯を食いしばって腹の底から絞り出したような声を出した。
(まだ、懲りないのか・・・)
本来であれば他国の王家に対して、そんなことを想うような教育を受けていない衛兵たちですら呆れてしまった。
「それは・・・できないかな」
マハラジャは真剣な顔でジェイドを見る。
「てめぇ・・・」
「エバーガーデニア王国、由緒正しい素敵な国であり、ミシェルの母国。もちろん、彼女自身が祖国に帰りたいと言うのであれば、喜んで見送りましょう。けれどね、ジェイド王子はミシェルをエバーガーデニア王国に連れて行ったら、悲しませて雨を降らせるでしょう。それは、僕は許すことができない。だって・・・僕は彼女を愛していますから」
マハラジャの言葉で毅然としていたミシェルが今日初めて、照れた少女らしい年相応の恥じらいを浮かべた。
「そんな、うじうじした女を好きなんて・・・どうかしているわっ!」
ジェイドは二人の仲の良さを見せつけられ、ミシェルの可愛い一面を初めて見て、悔しさと劣等感にそう言わずに入られなかった。
「ミシェルは最初から素敵な女性ですよ。これは余計なお世話かもしれませんが、彼女の才能、彼女らしさを活かすことができなかったのだとすれば、国家として人材育成を見直さなければならないと思いますよ」
ミシェルのことを悪く言われたので、マハラジャは笑顔だったけれど少しだけ声に敵意が含まれていた。
そんなことすら、許される状況ではないジェイドは一人緊迫状態にあった。
「ジェイド王子、冷静になってくれますか?」
未だ剣の柄から手を離せないでいるジェイドに対して、マハラジャはいつものように穏やかに話しかける。優位な立場になったといっても、驕ることなく人当たりがいいのは、厳しい情勢の中でも国民が自分を信頼し続けてくれたから人に対して感謝の念を持っていられるからなのかもしれない。逆に言えば、そんな彼だったからこそ国民はマハラジャを信頼したのかもしれない。
それに対して、ジェイドの落ちぶれぶりは激しかった。一度傾いた国や王家に対して、逃げられる貴族や知識人は王家を見限って国外に逃げてしまったし、豊かな暮らしが当たり前になり、少し雨が続くだけでもすぐにミシェルに嫌味を言っていたような国民たちは我慢することなど知らず、蓄えても来なかったので、日照りにすぐにしびれを切らして、ジェイドが待てと言っても、我慢できず各地で暴動が起きていた。
「困っているのであれば、助力いたしましょう。といっても、10倍は無理ですが・・・ね」
「ぐぬぬぬぬぬっ」
マハラジャは場を和ませようとして、にこっと笑った。でも、ジェイドにとってはマハラジャの善意は悪意にしか感じず、屈辱でしかなかった。
「ミシェルを・・・返せっ」
ジェイドは歯を食いしばって腹の底から絞り出したような声を出した。
(まだ、懲りないのか・・・)
本来であれば他国の王家に対して、そんなことを想うような教育を受けていない衛兵たちですら呆れてしまった。
「それは・・・できないかな」
マハラジャは真剣な顔でジェイドを見る。
「てめぇ・・・」
「エバーガーデニア王国、由緒正しい素敵な国であり、ミシェルの母国。もちろん、彼女自身が祖国に帰りたいと言うのであれば、喜んで見送りましょう。けれどね、ジェイド王子はミシェルをエバーガーデニア王国に連れて行ったら、悲しませて雨を降らせるでしょう。それは、僕は許すことができない。だって・・・僕は彼女を愛していますから」
マハラジャの言葉で毅然としていたミシェルが今日初めて、照れた少女らしい年相応の恥じらいを浮かべた。
「そんな、うじうじした女を好きなんて・・・どうかしているわっ!」
ジェイドは二人の仲の良さを見せつけられ、ミシェルの可愛い一面を初めて見て、悔しさと劣等感にそう言わずに入られなかった。
「ミシェルは最初から素敵な女性ですよ。これは余計なお世話かもしれませんが、彼女の才能、彼女らしさを活かすことができなかったのだとすれば、国家として人材育成を見直さなければならないと思いますよ」
ミシェルのことを悪く言われたので、マハラジャは笑顔だったけれど少しだけ声に敵意が含まれていた。
19
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
醜い傷ありと蔑まれてきた私の顔に刻まれていたのは、選ばれし者の証である聖痕でした。今更、態度を改められても許せません。
木山楽斗
恋愛
エルーナの顔には、生まれつき大きな痣がある。
その痣のせいで、彼女は醜い傷ありと蔑まれて生きてきた。父親や姉達から嫌われて、婚約者からは婚約破棄されて、彼女は、痣のせいで色々と辛い人生を送っていたのである。
ある時、彼女の痣に関してとある事実が判明した。
彼女の痣は、聖痕と呼ばれる選ばれし者の証だったのだ。
その事実が判明して、彼女の周囲の人々の態度は変わった。父親や姉達からは媚を売られて、元婚約者からは復縁を迫られて、今までの態度とは正反対の態度を取ってきたのだ。
流石に、エルーナもその態度は頭にきた。
今更、態度を改めても許せない。それが彼女の素直な気持ちだったのだ。
※5話目の投稿で、間違って別の作品の5話を投稿してしまいました。申し訳ありませんでした。既に修正済みです。
本当に妹のことを愛しているなら、落ちぶれた彼女に寄り添うべきなのではありませんか?
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアレシアは、婿を迎える立場であった。
しかしある日突然、彼女は婚約者から婚約破棄を告げられる。彼はアレシアの妹と関係を持っており、そちらと婚約しようとしていたのだ。
そのことについて妹を問い詰めると、彼女は伝えてきた。アレシアのことをずっと疎んでおり、婚約者も伯爵家も手に入れようとしていることを。
このまま自分が伯爵家を手に入れる。彼女はそう言いながら、アレシアのことを嘲笑っていた。
しかしながら、彼女達の父親はそれを許さなかった。
妹には伯爵家を背負う資質がないとして、断固として認めなかったのである。
それに反発した妹は、伯爵家から追放されることにになった。
それから間もなくして、元婚約者がアレシアを訪ねてきた。
彼は追放されて落ちぶれた妹のことを心配しており、支援して欲しいと申し出てきたのだ。
だが、アレシアは知っていた。彼も家で立場がなくなり、追い詰められているということを。
そもそも彼は妹にコンタクトすら取っていない。そのことに呆れながら、アレシアは彼を追い返すのであった。
傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~
キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。
両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。
ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。
全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。
エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。
ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。
こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。
熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください。私は、堅実に生きさせてもらいますので。
木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアルネアには、婚約者がいた。
しかし、ある日その彼から婚約破棄を告げられてしまう。なんでも、アルネアの妹と婚約したいらしいのだ。
「熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください」
身勝手な恋愛をする二人に対して、アルネアは呆れていた。
堅実に生きたい彼女にとって、二人の行いは信じられないものだったのである。
数日後、アルネアの元にある知らせが届いた。
妹と元婚約者の間で、何か事件が起こったらしいのだ。
そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。
木山楽斗
恋愛
伯爵家の令嬢であるアルシエラは、高慢な妹とそんな妹ばかり溺愛する両親に嫌気が差していた。
ある時、彼女は父親から縁を切ることを言い渡される。アルシエラのとある行動が気に食わなかった妹が、父親にそう進言したのだ。
不安はあったが、アルシエラはそれを受け入れた。
ある程度の年齢に達した時から、彼女は実家に見切りをつけるべきだと思っていた。丁度いい機会だったので、それを実行することにしたのだ。
伯爵家を追い出された彼女は、商人としての生活を送っていた。
偶然にも人脈に恵まれた彼女は、着々と力を付けていき、見事成功を収めたのである。
そんな彼女の元に、実家から申し出があった。
事情があって窮地に立たされた伯爵家が、支援を求めてきたのだ。
しかしながら、そんな義理がある訳がなかった。
アルシエラは、両親や妹からの申し出をきっぱりと断ったのである。
※8話からの登場人物の名前を変更しました。1話の登場人物とは別人です。(バーキントン→ラナキンス)
堅実に働いてきた私を無能と切り捨てたのはあなた達ではありませんか。
木山楽斗
恋愛
聖女であるクレメリアは、謙虚な性格をしていた。
彼女は、自らの成果を誇示することもなく、淡々と仕事をこなしていたのだ。
そんな彼女を新たに国王となったアズガルトは軽んじていた。
彼女の能力は大したことはなく、何も成し遂げられない。そう判断して、彼はクレメリアをクビにした。
しかし、彼はすぐに実感することになる。クレメリアがどれ程重要だったのかを。彼女がいたからこそ、王国は成り立っていたのだ。
だが、気付いた時には既に遅かった。クレメリアは既に隣国に移っており、アズガルトからの要請など届かなかったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる